木造の大きな建物を見回っていると、敷地の端が資材や物置でぎっしり埋まっている現場に出くわすことがあります。
実はそのすき間、建築基準法施行令が延焼防止と消防活動のために空けておくよう定めている通路かもしれません。
延べ面積が1,000平方メートルを超える木造建築物には、敷地の周囲に決まった通路を確保する義務があります。
今回はその対象になる建物の条件と、通路の基準、油断しやすい落とし穴までまとめて確認します
うちの体育館、敷地の端に倉庫や資材を置いてしまっているんですが大丈夫でしょうか。
木造の建物なら、敷地の周りに通路を確保する決まりがあります。
まずは延べ面積が1,000平方メートルを超えているかを確認しましょう。
通路って、具体的にどれくらい空けておけばよいものなんでしょうか。
幅そのものは個別の基準に委ねられていますが、
通路は敷地が接する道路までつながっていなければなりません。
- 主要構造部が木造で延べ面積1,000平方メートル超の建築物は、敷地の周囲に通路を設ける義務がある
- 同一敷地内に複数の建物があり合計延べ面積が1,000平方メートルを超える場合も対象になる
- 耐火建築物・準耐火建築物が互いを防火上有効に遮っている場合は、通路の義務が一旦外れる
- ただし延べ面積の合計が3,000平方メートルを超えると再び通路が必要になる
- 通路は敷地が接する道路まで到達していなければならない
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目次
木造の大きな建物にはなぜ敷地に通路が必要なのか

建築基準法施行令はそこで、大きな木造建築物の周囲に通路を確保するよう定めています。
通路があれば、火災のときに隣の建物へ燃え広がる前に消し止めやすくなり、消防隊も建物の周囲へ回り込んで放水できます。
条文がわざわざ「避難上及び消火上有効な」と書いているのは、通路が住人の逃げ道であると同時に消防隊の活動スペースでもあるからです。
自分の建物が木造かどうか、まずは主要構造部(柱・はり・壁・床)の材料を図面で確認してください。
敷地の通路が消防隊のための場所でもあるとは知りませんでした。
木造の校舎や体育館、寺社の本堂などは特に対象になりやすい建物です。
まずは自分の建物の主要構造部を確認してみてください。
どんな建物なら敷地に通路を設ける対象になるのか

同じ敷地に複数の建物が並んでいる場合も、合計面積で判定します。
木造の倉庫や作業棟が敷地内に何棟も点在していると、1棟ごとは小さくても合計が1,000平方メートルを超えることがあります。
その場合は延べ面積1,000平方メートル以内ごとに建物のまとまりを区画し、その周囲へ通路を確保しなければなりません。
自分の敷地にある建物をすべて図面に落とし、木造部分だけの延べ面積を合算して確認してください。
1棟ずつ見ていたら気づかない基準ですね。
そのとおりで、敷地全体を合算するという発想が抜けやすい落とし穴です。
配置図を広げて、まとめて数えてみてください。
通路にはどんな基準が求められているのか

建物の周りをぐるっと囲うだけでなく、敷地が面している道路まで途切れずにつながっている必要があります。
道路まで届いていない通路は、消防車が敷地に入れず、住人も外へ逃げられないので条文の目的を果たせません。
なお道に接する部分や、避難上・消火上支障がないと国土交通大臣が認めた部分は通路の対象から除かれます。
敷地の裏側で通路が途切れているかもしれません。
建物を一周するだけでなく道路まで届いているかを必ず確認してください。
途中で花壇や資材置き場に遮られていないかも見ておきましょう。
耐火建築物で区画していても油断できないのはどこか

ただし、それで永久に安心というわけではありません。
増築や隣接棟の新設で敷地全体の延べ面積が積み上がっていくと、耐火建築物だけの敷地でも通路が再び必要になることがあります。
また条文は、通路を渡り廊下で横切ることを認めていますが、横切る部分の開口の幅は2.5メートル以上、高さは3メートル以上という条件付きです。
渡り廊下を通路の上に架けている建物は、その開口の寸法と、渡り廊下自体の幅3メートル以下という条件を両方確認してください。
敷地の隅に新しい棟を建てただけなのに、通路の義務が復活することもあるんですね。
そのとおりで、増築のたびに敷地全体の合計面積を見直す必要があります。
設計の相談をするときは必ずこの条文のことも伝えてください。
明日から敷地のなにを確認すればよいのか

まず自分の敷地にある建物の主要構造部と延べ面積を洗い出し、木造部分の合計が1,000平方メートルを超えていないか確かめます。
次に建物の周囲をぐるっと歩き、資材や物置、植栽で通路がふさがれていないか、敷地の道路まで途切れなくつながっているかを見ます。
渡り廊下がある場合は、その下の開口の寸法もあわせて確認しておいてください。
今日の点検で、まず敷地を一周してみます。
資材や物置は見つけたその場で動かせるものも多いはずです。
ふさがっている箇所があれば、まずそこから片づけましょう。
よくある質問
まとめ
敷地の通路が法令上の義務だったとよく分かりました。
さっそく敷地を見て回ります。
木造かどうか、延べ面積の合計、道までのつながり、この3点を押さえれば見落としが減ります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第百二十八条の二(大規模な木造等の建築物の敷地内における通路)
- 建築基準法第三十五条(避難施設等の適用範囲)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署または特定行政庁にご確認ください。





