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焼入れや放電加工を専ら行う一般取扱所はなぜ危険な温度を知らせる装置が必要なのか|指定数量の倍数で分かれる区画基準を解説

焼入れタンクとコンパクトな炉が置かれた金属熱処理工場の内部写真

焼入れや放電加工のために危険物を使う工場や作業場には、一般の基準とは別に専用の特例が定められています。
対象になるのは、引火点が七十度以上の第四類危険物を指定数量の倍数三十未満で扱う施設だけです。
建物の中に設ける場合は、区画の造り方と警報装置の設置が基準の中心になります。
この記事では、危険物の規制に関する規則が定める焼入れ・放電加工専用の一般取扱所の基準を条文にそって整理します。

うちは金属の焼入れをしているだけですが、危険物の基準も関係あるんですか。

はい、引火点が七十度以上の第四類危険物を使っていれば対象になります。
まずは施設の区分から確認しましょう。

区画や警報装置まで必要になるんですか。

はい、指定数量の倍数によって基準の中身も変わります。
条文にそって順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 焼入れや放電加工を専ら行う一般取扱所には、専用の位置・構造・設備の基準が定められています
  • 対象は引火点が七十度以上の第四類危険物を扱う施設に限られます
  • 建物の中に設ける場合は厚さ七十ミリメートル以上の鉄筋コンクリート等で他の部分と区画します
  • 危険物が危険な温度に達するまでに警報できる装置の設置が必要です
  • 指定数量の倍数が十未満なら区画に代えて空地で対応できる場合があります

焼入れや放電加工の一般取扱所に区画と警報装置が必要になる基準を示す四段のインフォグラフィック、用途と危険物の確認・区画の構造・警報装置の設置・指定数量の倍数の確認という手順を示す

焼入れや放電加工を専ら行う一般取扱所とは何を指すのか

金属の焼入れタンクとコンパクトな炉が並ぶ作業場の奥に危険物の容器が置かれた低い作業台があるイメージ
一般取扱所にはさまざまな区分があり、焼入れや放電加工もそのひとつです。
まずは対象になる施設の条件を条文で確認します。
危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第二号 令第十九条第二項第二号に掲げる一般取扱所 専ら焼入れ又は放電加工のために危険物(引火点が七十度以上の第四類の危険物に限る。)を取り扱う一般取扱所で指定数量の倍数が三十未満のもの(危険物を取り扱う設備を建築物に設けるものに限る。)
専ら焼入れまたは放電加工のために危険物を扱う施設だけが対象です。
対象になる危険物は引火点が七十度以上の第四類危険物に限られます。
指定数量の倍数が三十未満で、危険物を取り扱う設備を建築物の中に設けている場合が要件です。
焼入れや放電加工以外の作業をあわせて行う施設は、この特例の対象になりません。
まずは自社の施設がこれらの条件を満たすかどうかを確認します。

放電加工でも同じ基準になるんですか。

はい、条文上は焼入れと放電加工が同じ号でまとめて扱われています。
要件は共通です。

建物の中に設けるにはどんな区画が必要か

厚い鉄筋コンクリートの壁と床で焼入れタンクのある部屋と隣の部屋を区画し防火戸が設けられているイメージ
対象になる施設だと分かったら、次は建物側の区画基準を確認します。
ここは指定数量の倍数にかかわらず共通してかかる基準です。
同条第二項第一号 建築物の一般取扱所の用に供する部分は、壁、柱、床及びはりを耐火構造とするとともに、出入口以外の開口部を有しない厚さ七十ミリメートル以上の鉄筋コンクリート造又はこれと同等以上の強度を有する構造の床又は壁で当該建築物の他の部分と区画されたものであること。
同項第二号 建築物の一般取扱所の用に供する部分は、上階がある場合にあつては上階の床を耐火構造とし、上階のない場合にあつては屋根を不燃材料で造ること。
壁・柱・床・はりを耐火構造にし、出入口以外の開口部を持たない厚さ七十ミリメートル以上の鉄筋コンクリート等で他の部分と区画します。
この区画基準は、指定数量の倍数にかかわらず必ず満たす必要があります。
上階がある建物では上階の床も耐火構造にし、上階が無い建物では屋根を不燃材料で造ります。
出入口そのものの扱いは、次の見出しで確認する基準の中に含まれています。
図面上の壁・床・屋根の材料と厚みを最初に確認します。

七十ミリメートルという数字、意外と厚いんですね。

はい、鉄筋コンクリート造を想定した厚みです。
同等以上の強度があれば他の構造でも構いません。

警報装置と地階や窓の基準はどこまで及ぶのか

焼入れタンクの上の壁に警報装置が設置され右手には屋根まで伸びる排気ダクトがあるイメージ
区画の基準に加えて、建物の使い方そのものにも基準が及びます。
ここは見落とされやすいポイントです。
同条第二項第三号 建築物の一般取扱所の用に供する部分には、危険物が危険な温度に達するまでに警報することができる装置を設けること。
同項第四号 第二十八条の五十五第二項(第二号を除く。)に掲げる基準に適合するものであること。
危険物が危険な温度に達する前に警報できる装置の設置が義務付けられています。
これに加えて、地階を持たないこと・窓を設けないこと・出入口に特定防火設備を設けることなど、吹付塗装作業の特例(第二十八条の五十五)が定める基準も準用されます。
床の浸透しない構造、採光・照明・換気の設備、蒸気や微粉を屋外の高所へ排出する設備、ダンパーの設置も同様に求められます。
前の見出しで見た区画の基準とあわせて、建物全体としての安全対策が重ねて組まれている形です。
警報装置の設置場所と、これらの付随する基準の有無を現地で一つずつ確認します。

警報装置って、具体的にどんな設備を指すんですか。

条文は危険な温度に達する前に警報できる装置とだけ定めています。
具体的な機種は現場で選定します。

指定数量の倍数が十未満だと何が変わるのか

左は屋外の焼入れ設備の周囲に空地を確保した建物、右は同じ設備が厚い防火壁のそばに空地なしで置かれた建物を並べたイメージ
ここまでの基準は倍数三十未満の施設に共通のものでした。
指定数量の倍数が十未満まで小さいと、区画以外の道も選べます。
同条第三項第一号 危険物を取り扱う設備(危険物を移送するための配管を除く。)は、床に固定するとともに、当該設備の周囲に幅三メートル以上の空地を保有すること。ただし、当該設備から三メートル未満となる建築物の壁(出入口(随時開けることができる自動閉鎖の特定防火設備が設けられているものに限る。)以外の開口部を有しないものに限る。)及び柱が耐火構造である場合にあつては、当該設備から当該壁及び柱までの距離の幅の空地を保有することをもつて足りる。
指定数量の倍数が十未満の施設には、区画に代えて空地で対応する道が用意されています。
原則は設備の周囲に幅三メートル以上の空地を保有することですが、近くの壁や柱が耐火構造であれば、その距離ぶんの空地で足ります。
ここで注意したいのは、空地で済ませられるのは周囲の距離の話に限られる点です。
床の浸透しない構造や排水溝、そして前の見出しで見た警報装置は、指定数量の倍数にかかわらず引き続き必要です。
「小規模だから区画は要らない」と早合点せず、免除される基準と残る基準を条文で切り分けます。

十未満だと工事の手間がだいぶ減りそうですね。

周囲の距離の話に限ればそのとおりです。
床の構造や警報装置は別に必要です。

実務ではどの順に確認すればよいか

チェックリストのボードの右に小さな建物の模型と虫眼鏡が置かれているイメージ
最後に、実務で確認する順番を整理します。
一つずつ条文と図面を突き合わせながら進めます。
  • 取り扱う危険物が引火点七十度以上の第四類危険物かを確認する
  • 作業が焼入れまたは放電加工に専ら使われているかを確認する(他の作業と併用していないか)
  • 指定数量の倍数を計算し、三十未満・十未満のどちらに該当するかを区分する
  • 倍数にかかわらず必要な警報装置と床の構造を用意する
  • 倍数が十未満なら空地での対応も選べることを踏まえて設計する
順番を守ると、区画工事が必要な部分と空地で済む部分を最初に切り分けられます。
迷ったときは、まず倍数と危険物の要件を数字で確定させることが近道です。

こうして見ると、確認する順番が大事なんですね。

はい、危険物の種類と指定数量の倍数を先に決めるのが近道です。
そこから必要な基準が絞れます。

よくある質問

Q焼入れ作業を専ら行う一般取扱所とはどんな施設ですか?
A専ら焼入れまたは放電加工のために引火点七十度以上の第四類危険物を取り扱う一般取扱所で、指定数量の倍数が三十未満のものです。危険物を取り扱う設備を建築物内に設ける場合が対象です。
Q区画の壁や床はどのくらいの厚さが必要ですか?
A出入口以外の開口部を持たない厚さ七十ミリメートル以上の鉄筋コンクリート造、またはこれと同等以上の強度を持つ構造の床や壁で他の部分と区画します。
Q警報装置はどんな場合でも必要ですか?
Aはい。指定数量の倍数にかかわらず、危険物が危険な温度に達するまでに警報できる装置の設置が必要です。
Q指定数量の倍数が十未満なら区画は不要になりますか?
A区画に代えて周囲に幅三メートル以上の空地を保有する方法を選べます。ただし警報装置や床の構造など、区画以外の基準は引き続き必要です。

まとめ

焼入れや放電加工を専ら行う一般取扱所には、専用の位置・構造・設備の基準が定められています
対象は引火点が七十度以上の第四類危険物を、指定数量の倍数三十未満で扱う施設に限られます
建物内に設ける場合は、壁・柱・床・はりを耐火構造にし、七十ミリメートル以上の鉄筋コンクリート等で他の部分と区画します
危険物が危険な温度に達するまでに警報できる装置の設置は、指定数量の倍数にかかわらず必要です
地階なし・窓なし・出入口の特定防火設備など、吹付塗装作業の特例(第二十八条の五十五)の基準も準用されます
指定数量の倍数が十未満なら、区画に代えて周囲三メートル以上の空地で対応する道もあります
空地で済ませられるのは周囲の距離だけで、床の構造や警報装置は引き続き必要です

焼入れの施設でも、危険物の基準がしっかりあるんですね。
よく分かりました

まずは危険物の種類と指定数量の倍数から確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第十一条第一項・第五項
  • 危険物の規制に関する政令第十九条第一項・第二項第二号
  • 危険物の規制に関する規則第二十八条の五十四第二号・第二十八条の五十五第二項・第二十八条の五十六

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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