移送取扱所の配管は長距離にわたって危険物を移送するため、地震が起きたときにどう対応するかが被害の大きさを左右します。
条文は、感震装置が一定の地震動を感知した場合と、震度の情報を得た場合とで、取るべき対応を書き分けています。
さらに地震が収まったあとすぐに移送を再開してよいわけではなく、水圧試験で安全を確かめる手順まで定められています。
この記事では、移送取扱所に義務づけられた地震時の対応手順を条文に沿って解説します。
移送取扱所の配管って、地震のときはどうなるんですか。
感震装置と震度の情報、両方をもとに止める仕組みが条文で定められています。
まずは根拠条文から確認していきましょう。
地震が収まったら、すぐに動かしていいんでしょうか。
いいえ、水圧試験で安全を確認してからです。
順番に見ていきましょう。
- 移送取扱所は、地震を感知し、又は地震の情報を得た場合には、直ちに災害の発生又は拡大を防止するため必要な措置を講ずることが政令第二十七条第六項第三号ハで義務付けられています
- 感震装置が加速度40ガルを超えない範囲内で設定した加速度以上の地震動を感知したときは、速やかにポンプの停止と緊急しゃ断弁の閉鎖に向けた準備を整えます
- 震度5弱以上の地震情報を得た場合はポンプ停止と緊急しゃ断弁の閉鎖、震度4の場合は情報収集に努め状況に応じて対応するという二段階の基準になっています
- これらの措置をとったあとは、配管とポンプなど附属設備の安全を確認する巡視を速やかに行わなければなりません
- 告示で定める加速度以上の地震動を受けた配管系は、最大常用圧力の1.25倍の圧力で24時間行う水圧試験で異常がないことを確認してから移送を再開します
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目次
移送取扱所の配管はなぜ震度で止め方を変えるのか

まずは、地震時の対応を義務づけている条文そのものを確認します。
移送取扱所を設置する地域について、地震を感知し、又は地震の情報を得た場合には、直ちに、総務省令で定めるところにより、災害の発生又は拡大を防止するため必要な措置を講ずること。
前者は配管そのものに取り付けた感震装置が地震動を検知する場合、後者は気象庁が発表する震度などの情報を人が受け取る場合を指します。
どちらのルートで地震を把握しても、直ちに必要な措置を講じる義務がある点は同じです。
総務省令=危険物の規制に関する規則が、この「必要な措置」の中身を具体的に定めています。
次のセクションから、その規則の中身を条文に沿って見ていきます。
感知したときと、情報を得たとき、どっちも同じ対応をすればいいんですか。
いいえ、感知したかどうかで求められる対応が変わります。
次で詳しく見ていきましょう。
感震装置が検知したときと震度情報を得たときで何が違うのか

条文を確認します。
特定移送取扱所において感震装置が加速度四十ガルを超えない範囲内で設定した加速度以上の地震動を感知した場合には、速やかにポンプの停止、緊急しゃ断弁の閉鎖、危険物を移送するための配管及びポンプ並びにこれらに附属する設備の安全を確認するための巡視等緊急時における適切な措置が講じられるよう準備すること。
検知の基準となる加速度は40ガルを超えない範囲で個々の移送取扱所ごとに設定されており、この設定値以上の揺れを検知すると、ポンプ停止・緊急しゃ断弁の閉鎖・巡視という一連の措置が速やかに講じられるよう準備する段階に入ります。
「講じられるよう準備する」という書きぶりからも分かるとおり、感震装置の検知だけで自動的にすべてが完了するわけではなく、次に説明する震度の情報とあわせて対応が具体化していきます。
つまり感震装置は、大きな揺れをいち早く捉えて対応の引き金を引く役割を担っています。
40ガルって、結構小さい揺れから反応するイメージですか。
いいえ、各施設が設定する上限であり実際はそれ以下で運用されます。
次は震度の情報を得た場合を見てみましょう。
震度5弱と震度4ではどこまで対応が変わるのか

条文を確認します。
二 移送取扱所を設置する地域において、震度五弱以上の地震の情報を得た場合には、ポンプの停止及び緊急しゃ断弁の閉鎖を行うこと。
三 移送取扱所を設置する地域において、震度四の地震の情報を得た場合には、当該地域についての地震による災害の情報の収集に努めるとともに、その状況に応じて、ポンプの停止及び緊急しゃ断弁の閉鎖を行うこと。
震度5弱以上の情報を得た場合は、状況判断を挟まずポンプの停止と緊急しゃ断弁の閉鎖を行うことが条文上の義務です。
一方震度4の場合は、直ちに停止・閉鎖を行うのではなく、まず地震による災害の情報収集に努め、その状況に応じて停止・閉鎖を判断するという一段階手前の対応になります。
震度4という同じ揺れの強さでも、周辺の被害状況次第でその後の対応が変わりうるということです。
この二段階の基準を事前に理解していないと、震度4の情報が入ったときに「まだ何もしなくてよい」と誤解しかねません。
震度4のときは、様子を見ているだけでいいってことですか。
いいえ、情報収集に努めたうえで状況に応じて対応する義務があります。
次は措置のあとにやるべきことを見ていきましょう。
地震が収まればすぐに移送を再開してよいのか

条文が求める復旧までの手順を確認します。
四 前二号の規定によつてポンプの停止及び緊急しゃ断弁の閉鎖を行つた場合又は安全制御装置が地震によつて作動し、ポンプの停止及び緊急しゃ断弁の閉鎖を行つた場合においては、危険物を移送するための配管及びポンプ並びにこれらに附属する設備の安全を確認するための巡視を速やかに行うこと。
五 配管系が告示で定める加速度以上の地震動を受けたときは、当該配管に係る最大常用圧力の一・二五倍の圧力で二十四時間行う水圧試験において、異常がないことを確認すること。
ポンプ停止・弁閉鎖のあとはまず配管とポンプなど附属設備の安全を確認する巡視を速やかに行い、目に見える異常がないかを確かめます。
さらに告示で定める加速度以上の揺れを受けていた場合は、最大常用圧力の1.25倍の圧力で24時間かける水圧試験を行い、異常がないことを確認してからでなければ通常どおりの移送に戻せません。
なお条文には、1.25倍の圧力での試験が適当でない場合の代替(試験圧力を下げたときは、その圧力を1.25で除した値以下の圧力で移送する)も用意されていますが、まずは原則の手順を押さえておくことが実務では重要です。
「揺れが収まった」ことと「移送を再開してよい」ことはイコールではない、という点が最大の落とし穴です。
揺れが収まっただけで、もう動かしてしまいそうです。
それは危険です。巡視と水圧試験の確認が終わるまで再開できません。
最後に日々の備えをまとめます。
明日から地震対応の何を確認すればよいのか

順番に見ていきましょう。 まず、自社の配管がどの震度基準で動くのかを事前に確認してください。
感震装置の設定加速度が40ガル以下のどの値かと、震度5弱・震度4それぞれで誰が何を判断し操作するのかを、緊急時対応マニュアルに具体的な数値と役割で落とし込みます。
地震後の巡視ルートと、水圧試験を実施できる体制(試験機材・実施できる業者・所要時間の見込み)も、平常時のうちに確認しておく必要があります。
これらは移送取扱所を直接運用する事業者向けの内容ですが、危険物の取扱いに関わる立場であれば、自社の施設がどの区分に当たるかを含めて知っておく価値があります。
点検記録に地震対応の項目を追加し、実際に地震があった際の記録と紐づけておくと、あとから対応の妥当性を振り返りやすくなります。
うちの設定加速度が何ガルか、まず確認してみます。
震度5弱・震度4での役割分担も忘れずに確認してください。
これで確認の流れが一通り整いました。
よくある質問
まとめ
分かりました、設定加速度と震度ごとの役割分担を次のマニュアル見直しで確認します!
地震対応マニュアルの整備は複雑なので、迷ったら早めにご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令第二十七条第六項第三号ハ
- 危険物の規制に関する規則第四十条の四
- 危険物の規制に関する規則第二十八条の三十五(感震装置等)
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





