オフィスビルの中には、廊下の幅や階段の位置が施行令の数値基準どおりに見えない建物があります。
それでも、必ずしも違反にはなりません。
建築基準法施行令第129条は、計算によって安全性を確かめれば数値基準の適用を除外できる仕組みを定めています。
この記事では条文にそって、この仕組みがどんな計算を求めているのかを順番に確認します。
うちのビルは廊下が施行令の基準より狭い気がするのですが、それでも合法なのでしょうか。
数値基準を満たしていなくても、計算で安全性を確かめれば合法になる仕組みがあります。
設計段階でその計算をしているかどうかがポイントです。
計算で確かめるとはどういうことですか。
建築基準法施行令第129条が階避難安全検証法という方法を定めています。
今日はその中身を順番に確認していきましょう。
- 廊下の幅や直通階段の設置など施行令の数値基準を満たしていなくても、計算で安全性を確かめれば適法になる仕組みがあります
- この仕組みが使えるのは主要構造部が準耐火構造または不燃材料造の階、あるいは国土交通大臣の認定を受けた階に限られます
- 検証するのは「階避難安全性能」=避難が終わるまでの間、煙やガスが避難上支障のある高さまで降りてこないことです
- 検証法を使った階で間仕切りや用途を変えると、計算の前提が崩れて確認申請の審査対象になることがあります
- 自分の建物が検証法を使っているかどうかは確認済証や設計図書で確認できます
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目次
廊下や階段の基準どおりでない建物はなぜ合法になるのか

計算で代わりの答えを出す道も用意されています。
建築物の階のうち、当該階が階避難安全性能を有するものであることについて、階避難安全検証法により確かめられたもの(主要構造部が準耐火構造である建築物又は主要構造部が不燃材料で造られた建築物の階に限る。)又は国土交通大臣の認定を受けたものについては、第百十九条、第百二十条(略)の規定は、適用しない。
第129条は階避難安全検証法という計算方法で階の安全性を確かめた場合、廊下幅や階段の設置位置などを定めた個別の条文の適用を除外すると定めています。
除外を受けるのはあくまで計算で確かめた階だけで、建物全体が自動的に対象になるわけではありません。
開放的なオフィスフロアで柱や壁が少なく見えても、無秩序に設計されているのではなく、この計算を経ている場合があります。
どの条文が除外されているかは、次の項目で具体的に確認します。
数値基準がまるごと外れてしまうのは少し不安に感じます。
基準が無くなるのではなく計算による基準に置き換わるだけです。
次の項目で対象になる階の条件を見ていきましょう。
階避難安全検証法とはどんな方法でどの基準が適用除外になるのか

条文には複数の条番号がまとめて列挙されています。
第百十九条、第百二十条、第百二十三条第3項第1号、第2号、第10号(屋内からバルコニー又は付室に通ずる出入口に係る部分に限る。)及び第12号、第百二十四条第1項第2号、第百二十六条の2、第百二十六条の3並びに第百二十八条の5(第2項、第6項及び第7項並びに階段に係る部分を除く。)の規定は、適用しない。
第119条の廊下の幅、第120条の直通階段の設置に加え、避難階段の付室やバルコニーに関する構造の一部(第123条)、物品販売業の店舗の出入口幅(第124条)、排煙設備の設置と構造(第126条の2・第126条の3)、内装制限の一部(第128条の5)が対象になっています。
除外されるのはこれらの条文の全部ではなく、条文の中でも該当する号や部分に限られます。
そのため設計図書を見ても「この条文がまるごと無い」のではなく、「この条文の一部が計算に置き換わっている」という読み方になります。
対象になる条文がこんなに多いとは知りませんでした。
廊下・階段・排煙・内装と避難に関わる規定一式が対象になっています。
次は肝心の計算の中身を見ていきましょう。
階避難安全性能は何を確かめているのか

何と何を比べているのかを条文で確認します。
前項の「階避難安全性能」とは、当該階のいずれの火災室で火災が発生した場合においても、当該階に存する者の全てが当該階から直通階段の一までの避難を終了するまでの間、当該階の各居室及び各居室から直通階段に通ずる主たる廊下その他の建築物の部分において、避難上支障がある高さまで煙又はガスが降下しないものであることとする。
条文が求めているのは、階にいる全員が避難を終えるまでの間、廊下や居室に煙やガスが避難の妨げになる高さまで降りてこないことです。
避難にかかる時間と、煙が危険な高さまで降下するまでの時間をそれぞれ計算し、避難のほうが先に終わることを確かめる仕組みになっています。
具体的な計算式は国土交通大臣が別途定めており、居室の用途・床面積・内装の仕上げ材料・排煙設備の性能などが計算の材料になります。
この計算結果が、廊下幅や階段位置の数値基準に代わる根拠になります。
煙が降りてくる前に逃げ切れるかどうかを計算しているということですね。
避難時間と煙の降下時間を比べて確かめています。
この計算の前提が崩れると何が起きるかを次に見ていきます。
検証法を使った階を増改築するときに何を見落としやすいのか

前提が変わればやり直しが必要になります。
建築主は、(略)建築物を建築しようとする場合(略)当該工事に着手する前に、(略)確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。
(増築、改築又は移転についてもこの規定を準用する。)
階避難安全検証法の計算は、当初の居室の用途・床面積・内装仕上げの材料などを前提にしています。
増築や改築、間仕切りの追加・撤去、内装材の変更はこの前提を変える工事にあたり、建築基準法第6条の確認申請の審査対象になることがあります。
申請を経ずに前提を崩す工事をしてしまうと、廊下幅などの数値基準も検証法の計算結果もどちらも満たさない状態になりかねません。
テナントの入れ替えなどで間仕切りを動かす工事は、防火管理者が直接立ち会わないことも多く見落としやすいポイントです。
テナントの内装工事のときに間仕切りを動かした記憶があります。
その工事が確認申請を経ているかどうかを設計者や管理会社に確認してください。
記録が無ければ次の項目の手順で調べていきましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

条文の要件をそのままチェック項目に置き換えます。
- 確認済証・検査済証・建築計画概要書で自分の建物が階避難安全検証法を使っているか確認する
- 廊下の幅や階段の位置が施行令の数値基準を満たしていない箇所がないか実測して記録する
- テナント入れ替えや間仕切りの変更工事が確認申請を経ているか設計者や管理会社に確認する
- 記録が見当たらない場合は特定行政庁の建築指導課に相談する
数値基準どおりに見えない箇所を見つけても、それだけで違反と決めつけないことが大切です。
検証法を使っている記録があれば問題ありませんが、記録が見当たらないまま放置すると増改築の際に思わぬ手戻りになります。
消防計画の維持管理項目に、増改築時の確認申請の有無を確かめる欄を加えておくと見落としを防げます。
まずは確認済証が手元にあるかどうかを探してみます。
見当たらなければ特定行政庁に確認するのが確実です。
設計者に問い合わせる方法もあります。
よくある質問
まとめ
見た目だけで違反と決めつけないことがよく分かりました!
確認済証の有無だけでもぜひ次の機会に調べてみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法施行令第129条(避難上の安全の検証を行う建築物の階に対する基準の適用)
- 建築基準法施行令第119条・第120条・第123条・第124条・第126条の2・第126条の3・第128条の5(適用除外の対象となる規定)
- 建築基準法第6条(建築物の建築等に関する申請及び確認)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





