「うちの立体駐車場、天井から水のカーテンみたいなものが降りてくると聞いたんですが、あれも点検の対象なんですか」——防火管理者から㈱防災屋によく寄せられる質問です。
ドレンチャーその他水幕を形成する防火設備は、火災の熱で自動的に作動し、水のカーテンで炎を遮って延焼を防ぐ随時作動式の防火設備です。
防火設備定期検査では、設置場所の周囲状況から散水ヘッド、開閉弁、排水設備、水源まで、6つの検査項目が定められています。
本記事では、ドレンチャー等を支えるこの6項目を定期検査で実際にどう確認するのか、判定基準とあわせて解説します。
うちの立体駐車場、天井から水のカーテンみたいなものが降りてくると聞いたんですが、あれも点検の対象なんでしょうか。
普段はほとんど意識したことがありません。
はい、ドレンチャーもドアやシャッターと同じく防火設備定期検査の対象です。
散水ヘッドや開閉弁、水源まで、まとめて確認しています。
水のカーテンで本当に火を止められるものなんでしょうか。
仕組みがいまいち想像できません。
熱や煙を感知して自動的に水幕を作り、防火区画のように延焼を遮る仕組みです。
散水ヘッド1本でも設置状態が悪いと、水幕全体が壊れてしまいます。
- 設置場所の周囲状況は、水幕を形成する部分(面)そのものに物品や照明器具、懸垂物がないかを確認します。
- 散水ヘッドは1本でも設置状態が悪いと必要な水幕が形成できないため、全数を確認します。
- 開閉弁は一斉開放弁を中心に、遠隔起動弁・手動起動弁・止水弁など複数の弁で構成されます。
- 排水設備は放水試験ができる場合とできない場合で検査方法が変わります。
- 水源は貯水槽の水量・水質に加え、給水装置による自動補給の状況まで確認します。
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目次
設置場所の周囲状況はなぜ水幕を形成する部分全体で見るのか

随時作動式のドレンチャー等は、火災時に水幕を形成して防火区画をつくる設備です。
水幕を形成する部分(面)に障害物があると、その効果が発揮できません。
水幕は面全体がそろって初めて機能します。
検査では、水幕による区画形成部の床面・壁面・空間に、水幕形成の妨げとなる物や排水の妨げとなるものがないかを目視等で確認します。
物品が置かれて手動作動装置(現地操作部)を操作するスペースが確保できていない例や、天井や壁付けの照明器具が水幕形成部の妨げとなる部分に設置されている例は、いずれも要是正です。
増改築等によって水幕を形成する区画の設定そのものが変わっていないかも、設計図書等と照らして確認します。
駐車場や通路、ロビー、大空間など設置場所によって障害物の種類は様々なので、用途に応じた視点で確認します。
駐車場に置いてある看板とか、あれも水幕の邪魔になるんでしょうか。
言われてみると気になってきました。
はい、水幕を形成する面に架かる位置にあれば要是正です。
点検の際に、水幕の通り道に置かれた物がないかもあわせて確認します。
散水ヘッドはなぜ1本ずつではなく全数を確認するのか

水幕は複数の散水ヘッドが同時にそろって初めて完成します。
どれか1本でも状態が悪いと、その部分だけ水幕に穴が開いてしまいます。
散水ヘッドは全数を確認する必要があります。
散水ヘッドは、遮炎性能の確認実験で放射圧力・放水量・取付けピッチ・散水分布形状・設置高さなどの詳細条件が個体ごとに規定されているため、設計図書等で性能や諸元を予め確認します。
検査では変形・損傷・著しい腐食の有無に加え、他のものの支えや吊りに利用されていないかを確認します。
垂れ壁や吊り物などの障害物によって散水分布が妨げられていないか、水幕を正常に形成できる位置にあるかも確認します。
改修等で必要な部分に散水ヘッドが未設置のままになっていないかも、設計図書等とあわせて確認します。
散水ヘッドって、天井にたくさん並んでいるあれ全部を見るんですか。
数が多くて大変そうです。
はい、区画を形成するにはヘッド全てが良好でなければならないので、全数を確認します。
異物の付着など、見落としやすい汚れも一つずつチェックしています。
開閉弁はなぜこれだけ多くの弁で構成されるのか

開閉弁は、水幕を形成する区画付近のパイプシャフト等に制御弁室として設置されることが多い設備です。
一斉開放弁を中心に、複数の弁が役割分担して構成されています。
開閉弁は1つの部品ではなく弁の集合体です。
弁本体、一次側止水弁、二次側止水弁、放水試験弁、遠隔起動弁(電動弁又は電磁弁)、手動起動弁、誤作動防止用の自動排水弁、ろ過装置、圧力スイッチ、圧力計などで構成され、装置メーカーによって構成機器が異なります。
検査に先立って構成機器を十分に確認し、常時の開閉位置や検査時の開閉位置を把握したうえで、間違っても誤放水を起こさないよう十分に注意します。
遠隔起動弁や手動起動弁を作動させると開閉弁本体が開放するため、必ず二次側止水弁を閉止してから操作し、遠隔起動により配線接続がある場合は端子部の緩みや脱落、配線の損傷もあわせて確認します。
開閉弁本体の周囲に、メンテナンススペースや緊急時の操作スペースが確保されているか、設置場所を示す標識があるかも確認します。
うちの制御弁室、弁がたくさんあって何が何だか分かりませんでした。
全部意味があったんですね。
はい、一つ間違えると誤放水につながるので、操作前に必ず開閉位置を確認しています。
検査の際は管理者様と協議のうえで進めています。
排水設備の検査はなぜ放水できるかどうかで方法が変わるのか

設計水量を一斉に散水するため、散水量はかなり多くなります。
この水を適正に排水できるかどうかも、検査項目の一つです。
排水設備の検査方法は放水できるかどうかで変わります。
実際に排水能力を確認できる場合は、設備を作動させて放水し、目視等により排水の状況を確認します。
実際に放水させることが難しい場合は、排水口のつまり等を目視等により確認するにとどめます。
放水させない場合でも、排水の経路が竣工当時のように確保されているか、排水設備の大きさ(排水管の太さ)等に修正や変更がないかを設計図書等から確認したうえで、排水能力が適正かどうかを判断します。
排水溝の内部にゴミ等が詰まっていると、水幕面全体が構成されていても排水が追いつかず、床面に水があふれるおそれがあります。
排水口が詰まっているかどうかなんて、普段は気にしたこともありませんでした。
そんなところまで見るんですね。
はい、放水できない現場では特に、排水口のつまりを重点的に確認しています。
落ち葉やゴミが詰まっていないか、日頃からの確認もおすすめしています。
水源の水量と給水装置はどう確認するのか

水幕形成のための水源は、設備の重要な要素です。
貯水槽の状態と、水が減ったときに自動的に補う給水装置の両方を確認します。
水源は水幕を最後まで維持する土台です。
貯水槽については、コンクリート水槽ならひび割れ、パネル水槽なら腐食など材質ごとに異なる着眼点で変形・損傷・漏水・漏気の有無を確認し、水質は著しい腐敗や浮遊物、沈殿物の有無を確認します。
必要な水源水量は、一斉に放射される区画のヘッド最大個数×個々のヘッドの放水量×水幕形成(継続)時間で求められ、他の水源と兼用する場合は優先して使用できる有効水量が規定量以上あるかを検尺等で確認します。
給水装置は、水源水量が不足するとボールタップなどの機構で自動的に補給するもので、弁類の開閉位置が正常か、腐食や変形がなく減水時に確実に補給するかを目視等及び操作により確認します。
水位計が設けられている場合は、その機能が正しく作動しているかを確認したうえで水量を確認します。
水源って、他の設備と兼用していることもあるんですね。
うちのタンクがどっちなのか確認してみます。
はい、兼用の場合は優先して使える水量が確保されているかがポイントです。
設計図書があれば、点検の際にご一緒に確認しましょう。
よくある質問
まとめ
設置状況から水源の水量まで、ドレンチャーにこんなに細かい確認項目があるとは思いませんでした。
誤放水に気をつける弁があるという話も、社内で共有しておきます!
それは心強いです。
ドレンチャー等の水幕形成部や水源の詳しい点検は、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条・第109条の2・第112条第19項第2号
- 平成12年建設省告示第1360号(防火設備の構造方法を定める件)
※本記事は公表されている建築基準法令に基づく一般的な解説です。個別の建物における検査項目の判定は、実際の検査結果や特定行政庁の指導によって異なる場合があります。詳細は検査資格者または所轄の特定行政庁にご確認ください。





