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大規模な木造ビルはなぜ火災が消えるまでの時間で主要構造部を作るのか|建築基準法施行令が定める通常火災終了時間の基準を解説

木造の大規模建築物の前で図面を確認する点検員の様子

「地上4階建て以上」や「延べ面積3,000平方メートル超」というと、鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物を思い浮かべるかもしれません。
しかし近年は、こうした規模の建築物を木造で建てる事例が増えています。
木造は燃えやすい材料だからこそ、鉄骨造や鉄筋コンクリート造とは違う独自の物差しで主要構造部の性能が決められています。
その物差しの名前が「通常火災終了時間」で、建物ごとに算定される時間だけ倒壊と延焼を防げればよいという考え方です

うちが管理してるビルで木造の大規模な建て替え計画が出ているんです。
木造でこの規模の建物なんて建てられるんですか。

はい、条件を満たせば木造の大規模建築物も建てられます。
ただし通常火災終了時間という専用の防火基準に適合させる必要があります。

専用の基準ってどんなものなんですか。
普通の耐火建築物とは違うんですか。

はい、建物ごとに算定される時間で判断する仕組みです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 地階を除く階数が4以上、高さが16メートルを超える、または特定の用途で高さが13メートルを超える建築物は、主要構造部に木材などの可燃材料を使う場合にこの基準の対象になります
  • 求められるのは「絶対に燃え抜けない」ことではなく、通常火災終了時間が経過するまで倒壊と延焼を防ぐことです。
  • 通常火災終了時間は建物ごとに算定される時間で、どれだけ短くても最低45分間とみなされます
  • 壁・柱・床・はりの4部位は通常火災終了時間、屋根と階段は一律30分間で足りるというように、部位ごとに必要な時間が分かれています。
  • 延べ面積が3,000平方メートルを超える建築物には、これとは別に延焼を防ぐための基準が上乗せされます

大規模な木造ビルが通常火災終了時間の基準に対応する流れを示した図解

大規模な木造建築物はなぜ時間で区切った基準で作られるのか

木造の建物の横に大きな時計が置かれている様子
木造の建物というと、燃え広がりやすいイメージが強いかもしれません。
けれど建築基準法は、木造の大規模建築物にも建てられる道を用意しています。
(建築基準法第21条第1項)次の各号のいずれかに該当する建築物(その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いたものに限る。)は、その特定主要構造部を通常火災終了時間(建築物の構造、建築設備及び用途に応じて通常の火災が消火の措置により終了するまでに通常要する時間をいう。)が経過するまでの間当該火災による建築物の倒壊及び延焼を防止するために特定主要構造部に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
木造でも建てられる道が用意されています
条件に当てはまる建築物のうち、主要構造部に木材などの可燃材料を使うものが対象です。
こうした建築物は、耐火建築物のように一律の時間で燃え抜けないことを求められるわけではありません。
その建物で通常の火災が消火活動によって収まるまでの時間だけ、倒壊と延焼を防げればよいとされています。
この時間のことを通常火災終了時間と呼び、建物ごとに個別に算定されます。
条件を満たして技術的基準に適合させれば、木造でもこの規模の建築物を建てることができます。

うちの場合、この基準に当てはまるのかまだよく分かりません。
どこを見ればいいんでしょう。

階数や高さ、それに用途によって対象かどうかが決まります。
次にその条件を確認しましょう。

どの建築物がこの基準の対象になるのか

階数を示す目盛りが付いた建物と、荷台のあるトラックが停まる倉庫のような建物が並ぶ様子
対象になるかどうかは、階数や高さ、用途によって決まります。
自分の建物が当てはまるかどうかを確認してみましょう。
(建築基準法第21条第1項)一 地階を除く階数が以上である建築物 二 高さが16メートルを超える建築物 三 別表第一(い)欄(五)項又は(六)項に掲げる用途に供する特殊建築物で、高さが13メートルを超えるもの
3つの基準のどれかに当てはまれば対象です
地階を除く階数が以上、高さが16メートルを超える、または倉庫や自動車車庫・自動車修理工場などの用途で高さが13メートルを超えるもののいずれかが対象になります。
さらに、主要構造部の政令で定める部分に木材やプラスチックなどの可燃材料を使っている場合に限られます。
鉄骨造や鉄筋コンクリート造など、可燃材料を使わない構造であればこの基準の対象外です。
延べ面積が3,000平方メートルを超える建築物には、これとは別の基準も上乗せされます。

うちのビルは3階建てなので、この基準とは関係なさそうです。
それでも確認しておいた方がいいですか。

増築で4階建てになる予定があるなら、事前に確認しておくと安心です。
次は具体的にどんな性能が求められるかを見ていきましょう。

主要構造部は何時間の火熱に耐えなければならないのか

壁と柱の断面の上に大きな時計、屋根と階段の上に小さな時計が置かれている様子
対象になった建築物には、部位ごとに耐える時間が細かく定められています。
すべての部位が同じ時間というわけではありません。
(建築基準法施行令第109条の5第1号イ)次の表の上欄に掲げる建築物の部分にあつては、当該部分に通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後それぞれ同表の下欄に掲げる時間において構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものであること。間仕切壁(耐力壁に限る。)・外壁(耐力壁に限る。)・柱・床・はり=通常火災終了時間通常火災終了時間が45分間未満である場合にあつては、45分間)。屋根(軒裏を除く。)・階段=30分間
壁や柱は通常火災終了時間、屋根と階段は一律30分間です
間仕切壁・外壁・柱・床・はりの5部位は、通常火災終了時間が経過するまで変形や破壊を生じない性能が求められます。
通常火災終了時間がどれだけ短く算定されても、45分間を下回ることはありません。
一方で屋根(軒裏を除く)と階段は、通常火災終了時間の長さに関わらず一律30分間で足りるとされています。
建物を支える主要な部分と、それ以外の部分とで求められる水準が分けられている形です。

屋根や階段だけ時間が短いのはなぜなんでしょう。
手を抜いていいってことですか。

手を抜いてよいわけではなく、条文で位置づけが分けられているんです。
建物を支える主要な部分により重い基準がかかる仕組みです。

実務で見落としやすいのはどこか

虫眼鏡付きの図面と、点線で敷地の輪郭が示された広い平屋の建物が並ぶ様子
通常火災終了時間は、全国一律の数字ではありません。
建物ごとに個別の算定が必要になる点が見落としやすいポイントです。
(建築基準法第21条第2項)延べ面積が3,000平方メートルを超える建築物(その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)の前項の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いたものに限る。)は、その壁、柱、床その他の建築物の部分又は防火戸その他の政令で定める防火設備を通常の火災時における火熱が当該建築物の周囲に防火上有害な影響を及ぼすことを防止するためにこれらに必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
算定根拠は建物ごとに確認申請の図書に残っています
通常火災終了時間は、建物の構造や建築設備、用途に応じて国土交通大臣が定める方法により個別に算定される時間です。
一律の年数や分数で覚えるものではなく、確認申請の際にその建物ごとの算定根拠が示されます。
さらに延べ面積が3,000平方メートルを超える建築物には、周囲への延焼を防ぐための基準が別途上乗せされます。
新築時の基準だからと油断せず、増改築のときも該当性が変わっていないかを確認することが大切です。

うちのビルは増築の予定があるんですが、前と同じ基準のままで大丈夫でしょうか。
ちょっと不安になってきました。

増改築のときは、当時の算定の前提が変わっていないか確認が必要です。
設計者や特定行政庁に相談しておくと安心ですよ。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員が図面を建物と照らし合わせている様子
通常火災終了時間という基準の中身が分かったところで、実務でどこを確認すればよいかを整理します。
自分の建物に当てはめて、順番にチェックしてみてください。
  • 自分の建物が地階を除く階数以上、高さ16メートル超、または特定用途で高さ13メートル超のいずれかに当てはまるか確認する
  • 主要構造部に木材やプラスチックなどの可燃材料を使っているかどうかを確認する
  • 確認申請時の設計図書に、通常火災終了時間の算定結果が記載されているか確認する
  • 延べ面積が3,000平方メートルを超えていないか、超える場合は別の基準への適合も確認する
  • 増築や用途変更の予定がある場合は、当時の算定の前提が変わっていないか確認する
手順はまず自分の建物の階数や高さ、用途を確認し、この基準の対象になるかどうかを整理することから始めます。
対象になる場合は、確認申請時の図書に記載された通常火災終了時間の算定結果を確かめます。
増改築を予定しているときは、当時の算定の前提が変わっていないかを設計者に確認してください。

確認申請の図書、そういえば見たことなかったです。
今度確認してみます。

はい、まずは図書に算定根拠が残っているかを見てみてください。
次によくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q通常火災終了時間はどうやって決まるのか?
A建物の構造、建築設備、用途に応じて、国土交通大臣が定める方法により建物ごとに個別に算定されます。どれだけ短く算定されても45分間を下回ることはなく、屋根と階段だけは通常火災終了時間の長さに関わらず一律30分間で足ります。
Q鉄骨造や鉄筋コンクリート造の建物にもこの基準は関係あるのか?
A主要構造部の政令で定める部分に木材やプラスチックなどの可燃材料を使っていない建築物には適用されません。可燃材料を使わない構造であれば、この基準の対象外です。
Q通常の耐火建築物の基準と何が違うのか?
A耐火建築物の基準が一律の時間で構造耐力を求めるのに対し、この基準は建物ごとに算定した通常火災終了時間だけ耐えれば足りるとされる点が異なります。木造でも大規模な建築物を計画しやすくする仕組みです。
Q延べ面積が3,000平方メートルを超える場合はどうなるのか?
A通常火災終了時間の基準に加えて、建築基準法第21条第2項が定める延焼を防止するための基準にも適合させる必要があります。延べ面積3,000平方メートルを超えるかどうかも、あわせて確認しておく必要があります。

まとめ

建築基準法第21条第1項は、大規模な木造建築物に、主要構造部の技術的基準への適合を義務付けています
対象になるのは地階を除く階数以上、高さ16メートル超、または倉庫や自動車車庫などの用途で高さ13メートル超の建築物です。
求められるのは、通常火災終了時間が経過するまで倒壊と延焼を防ぐことです
通常火災終了時間はどれだけ短くても45分間を下回りません。
屋根と階段は、通常火災終了時間の長さに関わらず一律30分間で足ります
延べ面積3,000平方メートルを超える建築物には、延焼防止のための基準が別途上乗せされます。
増改築のときも該当性を確認し直す必要があります。

通常火災終了時間という考え方がよく分かりました。
ありがとうございました!

こちらこそご相談ありがとうございます。
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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法(昭和25年法律第201号)第21条第1項・第2項
  • 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条の5

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の建物への適用や特定行政庁の運用は異なる場合があります。個別の判断は建築主事または指定確認検査機関にご確認ください。

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