飲食店の厨房には、コンロや天蓋、そして油煙を屋外へ流す排気ダクトが必ず付いています。
このダクト、実は「耐食性のある不燃材料で造る」という決まりだけでなく、板の厚さそのものまで数値で決まっていることをご存じでしょうか。
根拠は消防庁が発した1本の通知で、直径と厨房設備の入力の大きさに応じて必要な板厚が細かく示されています。
今回は、この板厚基準の中身と、防火管理者が確認すべきポイントを解説します。
厨房のダクト工事の見積りに、鋼板の厚さがいろいろ書いてあったんです。
これって業者さんの言い値じゃないんですか。
言い値ではなく、消防庁の通知で決まった数値なんです。
ダクトの直径と厨房設備の入力ごとに、必要な板厚の下限が表で示されています。
薄い鋼板を使われても、見た目では分からなさそうですね。
そうなんです。
だからこそ、防火管理者が基準の中身を知っておくことが大切なんです。
- 厨房設備に附属する排気ダクトは、材質だけでなく板厚まで数値基準が決まっています。
- 対象は円形の排気ダクトで、同一厨房室内に複数の厨房設備があるときは入力を合算して判定します。
- 板厚はダクトの直径と厨房設備の入力の大小で区分され、ステンレス鋼板は0.5〜0.8ミリメートル、亜鉛鉄板は0.5〜1.2ミリメートル以上と定められています。
- 条文の号は平成4年当時と現行で1号ずれていますが、板厚基準の中身は変わっていません。
- この基準は排気ダクトだけでなく、天蓋に付けるグリス除去装置の材質判断にも準用されます。
▼

目次
なぜ排気ダクトの板厚まで通知で定められたのか

ただし、そのままでは「耐食性を有する鋼板又はこれと同等以上の耐食性及び強度を有する不燃材料」という言葉だけが残り、現場では板の厚さがどこまであれば足りるのか判断できませんでした。
「耐食性のある鋼板」といっても、薄すぎればダクト火災の熱や振動で早期に破損するおそれがあります。
そこで消防庁は、厨房設備の入力とダクトの直径に応じた具体的な板厚の表を示し、市町村がばらばらの判断をしないよう統一を図りました。
条文の号は当時の「第2号イ」から現行の「第3条の4第1項第1号イ」へ1号ずれしていますが、板厚を求める中身そのものは今も変わっていません。
条例の文章に「同等以上の不燃材料」としか書いてなかったら、たしかに現場は困りますね。
その通りです。
だからこそ国が数値の物差しを示して、全国どこでも同じ基準になるようにしたんです。
どんな厨房設備の排気ダクトが対象になるのか

ここで見落としやすいのが、厨房設備が複数あるときの数え方です。
たとえば、こんろが3台並ぶ厨房で排気ダクトが1本にまとまっているなら、3台ぶんの入力を足し算した数値で基準を当てはめます。
1台だけなら基準の下側で済むはずが、合計すると上の区分に切り替わることも珍しくありません。
現在の運用では、この閾値はおおむね21キロワット前後の熱量として扱われています。
うちの厨房、こんろが3台あってダクトは共通なんですが、それぞれ別に数えていいわけじゃないんですね。
はい、合計で見ます。
台数が増えるほど必要な板厚の区分が上がりやすいので、増設のときは特に注意してください。
円形ダクトの板厚はどう決まっているのか

直径が大きくなるほど、必要な板厚も厚くなる仕組みです。
これは耐食性の違いを板厚でおぎなう考え方によるものです。
入力が1万8千キロカロリー毎時以下の区分(表2)でも直径ごとの基準は用意されており、必要な板厚は表1よりわずかに緩やかになります。
見積書やダクトの仕様書に「板厚〇〇ミリメートル」と書かれていたら、この表と照らし合わせて確認できます。
ステンレスのほうが薄くていいのは、錆びにくいからということですか。
そのとおりです。
耐食性と強度のバランスで、材質ごとに必要な厚みが変わる仕組みです。
実務で見落としやすいのはどこか

ここを見落として点検・改修の見積りから漏らしてしまう事例があります。
そのため、通知が示す板厚の考え方はグリス除去装置の選定にも参考にできます。
また、火災予防上支障がないと認められる場合はこの限りでないという例外もあるため、判断に迷うときは自己判断せず所轄消防署に確認するのが安全です。
排気ダクトだけを見て天蓋側の材質確認を後回しにしないようにしましょう。
ダクトさえ換えれば大丈夫だと思っていました。
グリス除去装置もセットで確認してくださいね。
意外とここが抜けやすいポイントです。
明日から何を確認すればよいのか

この2つの数値が分かれば、必要な板厚の区分が決まります。
図面や仕様書に鋼材の種類と板厚が明記されているかをチェックし、記載が無ければ追加で提示を求めましょう。
グリス除去装置についても同じ材質基準が及ぶことを伝え、まとめて確認してもらうと手戻りがありません。
入力と直径さえ伝えれば、あとは業者さんが表に当てはめてくれるということですね。
はい、そのための数値をこちらから伝えることが大切です。
任せきりにせず、確認する習慣をつけましょう。
よくある質問
まとめ
板厚まで数値で決まっているなんて知りませんでした。
次の改修のときは業者さんにきちんと確認します!
それが安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 厨房設備に附属する円形排気ダクト板厚に係る火災予防条例準則の運用について(通知)(平成4年4月9日 消防予第78号)
- 改正火災予防条例準則の運用について(通知)(平成3年10月8日 消防予第206号)
- 火災予防条例(例)第3条の4第1項第1号(総務省消防庁公表版)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





