高さ20メートルを超える建物には、避雷設備の設置が建築基準法で義務づけられています。
その避雷設備が満たすべき構造の基準は、令和7年に大きく書き換えられました。
経過措置の期限はすでに令和8年3月31日で切れており、古い基準のままでよい建物とそうでない建物の線引きが生まれています。
この記事では、何がどう変わり、いつまでにどの建物が対象になるのかを解説します。
避雷設備の基準が変わったと聞きました。
はい、令和7年に告示が改正されています。
まずは何が変わったのかを見ていきます。
うちのビルは対象になるのでしょうか。
建物の高さと工事の時期で判断が変わります。
順番に確認していきましょう。
- 高さ20メートルを超える建築物には、避雷設備の設置が建築基準法第33条で義務づけられています
- 避雷設備の構造基準は令和7年施行の告示改正で参照規格がJIS A4201-2003からJIS Z9290-3-2019へ切り替わりました
- 経過措置により令和8年3月31日までに着工した建物は旧規格のままで構いません
- 新しい規格は屋上の突角部や縁部の保護を新たに求めています
- 増築や大規模修繕をすると既存不適格の扱いが終わり、新しい規格への適合が必要になります
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目次
避雷設備の構造基準はなぜ令和7年に変わったのか

その告示が令和7年に改正され、参照する規格そのものが変わりました。
建築基準法施行令第129条の15第1号が求めているのは「国土交通大臣が定めた構造方法」という枠組みだけで、具体の仕様は告示に委任されています。
その告示(平成12年建設省告示第1425号)は長年、日本産業規格A4201-2003に適合する構造を基準としてきました。
ところが令和6年国土交通省告示第151号による改正で、参照先はJIS Z9290-3-2019へ切り替わりました。
理由は、建築物の落雷被害の大半が屋上の突角部分に集中しているという実態にあります。
建物本体だけでなく規格まで見る必要があるのですね。
そのとおりです。
次は経過措置の期限を見ていきます。
経過措置の期限までに工事に着手した建物はどう扱われるのか

ただし基準になるのは避雷設備そのものではなく、建物本体の着工日です。
猶予の対象になるのは建築物の工事の着手が令和8年3月31日以前である場合で、避雷設備自体をいつ取り付けたかは関係ありません。
建物の着工が期限内であれば、避雷設備の設置が令和8年4月1日以降にずれ込んでも旧規格(JIS A4201-2003)のままで構いません。
逆に着工そのものが期限より後になった建物は、最初から新しい規格に適合させる必要があります。
自分の建物がどちらに当たるかは、検査済証や確認済証に記載された着工日で確認できます。
着工日で分かれるのは意外でした。
設備の設置日ではなく建物の着工日です。
次は新しい規格の中身を見ます。
新しい規格は屋上のどこを重点的に保護するのか

特に屋上の角と縁の扱いが大きく強化されています。
旧規格(JIS A4201-2003)は屋上の突角部や縁部について規定を持たず、上部と側部の保護だけを求めていました。
新しい規格(JIS Z9290-3-2019)はここに新設の項目を設け、金属製の笠木を利用するか、外壁の縁に沿って受雷導体を配置したうえで角にも受雷部を置くことを求めています。
引下げ導線の間隔も、旧規格の25メートル以下から20メートル以下へと厳しくなりました。
屋上の中央に一本立てるだけでは足りない設計に変わったということです。
てっぺんだけでなく端っこも危ないのですね。
実際の被害はむしろ角に集中しています。
次は既存の建物の注意点を見ます。
増築や大規模修繕をすると避雷設備の基準はどうなるのか

ただし増築や大規模な修繕に手を付けた瞬間に扱いが変わります。
建築基準法第3条第2項は、規定の施行や適用の際すでにある建物には新しい規定を及ぼさないという既存不適格の扱いを定めています。
ところが同条第3項第3号は、着工が規定の適用より後になる増築・改築・移転・大規模の修繕・大規模の模様替を除外しており、この除外に当たると既存不適格の扱いは終わります。
つまり高さ20メートルを超える建物で増築や大規模修繕を計画すると、避雷設備も新しい規格(JIS Z9290-3-2019)に適合させる工事が必要になります。
旧規格のまま放置していた設備ほど、改修の範囲が広くなりがちです。
増築の予定があるので他人事ではないです。
計画段階で避雷設備も一緒に見直してください。
次は明日からの確認手順です。
明日からなにを確認すればよいのか

まず建物の情報を三つ集めることから始まります。
まず建物の高さが20メートルを超えているかを図面で確かめてください。
次に検査済証や確認済証で建築物の着工日を確認し、令和8年3月31日以前かどうかを見ます。
そのうえで既存の避雷設備がどちらの規格で作られたかを、施工業者や点検記録から確かめてください。
増築や大規模修繕の計画があるなら、通知が求めるとおり避雷設備の扱いについても設計の早い段階で説明を受けておくと安心です。
やることがはっきりして安心しました。
三つ確認すれば十分です。
次は記事のまとめです。
よくある質問
まとめ
増築のときも避雷設備を忘れないようにします。
計画の早い段階でご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第33条・第3条
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第129条の14・第129条の15
- 雷撃によって生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができる避雷設備の構造方法を定める件(平成12年建設省告示第1425号、令和6年国土交通省告示第151号による改正)
- 国土交通省住宅局建築指導課長「雷撃によって生ずる電流を建築物に被害を及ぼすことなく安全に地中に流すことができる避雷設備の構造方法を定める件の一部を改正する件の施行について(技術的助言)」(国住指第532号・令和7年4月1日)
※本記事は公表されている法令および国土交通省の資料に基づく一般的な解説です。経過措置の適用や増築・大規模修繕への該当性は個別の建物ごとに判断が異なります。具体の判断は所轄の特定行政庁や建築士にご確認ください。





