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移送取扱所はなぜ配管の経路ごとに通報設備と巡回監視車を置くのか|警報設備と資機材倉庫の設置基準を解説

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移送取扱所は、長い配管が住宅地や山林をまたいで危険物を運ぶ施設です。
どこか一か所で漏えいや火災が起きても、現場から離れた場所まで被害が及ぶおそれがあります。
だからこそ規則は、配管の経路そのものに通報・警報・巡回の体制を組み込むよう求めています。
今回は、危険物の規制に関する規則第28条の36から第28条の38が定める通報設備・警報設備・巡回監視車と資機材倉庫の基準を解説します。

うちの配管は敷地の外まで延びているんですが、事故が起きたときにどうやって知らせる仕組みになっているのか、正直よく分かっていません。

移送取扱所には、配管の経路そのものに通報設備・警報設備・巡回監視車を設ける義務があります。
まずは通報から巡回まで、配管が長いほど設備が増える仕組みを一緒に確認しましょう。

通報だけでなく警報や巡回まで規則で決まっているんですね。
どこにどれだけ設ければよいのか気になります。

結論から確認して、そのあと条文の中身を順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 配管の経路には緊急通報設備と消防機関に通報する設備の両方を設けなければならない
  • 緊急通報設備の発信部は、山林原野以外の地域では配管の経路の約2キロメートルごとに設ける
  • 移送基地には非常ベル装置と拡声装置、ポンプ室には危険物に応じた警報設備を設ける
  • 配管の経路には巡回監視車と資機材倉庫を設けなければならないのが原則
  • 特定移送取扱所以外は、配管が短ければ巡回監視車や資機材倉庫を省略できる場合がある

移送取扱所の通報設備警報設備巡回監視車資機材倉庫を4ステップで示す図解

移送取扱所はなぜ配管の経路に沿って監視と通報の体制を敷くのか

配管の経路に沿って巡回監視車と資機材倉庫が点在する移送取扱所
移送取扱所は、危険物を貯蔵所や製造所の中だけで扱う施設とは違い、配管そのものが長い距離を移動します。
だから規則は、配管の「経路」に対して独立した保安設備を求めています。
(通報設備) 第二十八条の三十六 配管の経路には、次の各号に定める通報設備を設けなければならない。 一 緊急通報設備 二 消防機関に通報する設備 (危険物の規制に関する規則)
配管の経路そのものが監視の対象になります。
危険物の規制に関する規則第28条の36から第28条の38は、配管の経路に「通報設備」「警報設備」「巡回監視車及び資機材倉庫等」の3種類を設けるよう定めています。
条文の多くは「告示で定めるところにより」と細目を告示に委任していますが、この告示(危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示)が、発信部の間隔や資機材の内容まで具体的に数字で決めています。
つまり規則だけを読んでも「何をどれだけ備えればよいか」までは分からず、告示と合わせて初めて実務の基準になる構造です。
次の見出しから、通報・警報・巡回の順に中身を見ていきます。

規則だけ見ても告示で定めると書いてあるだけで、具体的な数字が出てこないんですね。

そのとおりです。
次の見出しで、告示が定める発信部の間隔から具体的に見ていきましょう。

緊急通報設備と消防機関へ通報する設備はどう違うのか

配管脇の緊急通報設備の発信部と管理室の受信部の対比
規則第28条の36は、通報設備を「緊急通報設備」と「消防機関に通報する設備」の2種類に分け、それぞれ役割を分担させています。
まずは条文で、発信部と受信部の置き場所を確認します。
2 緊急通報設備は、発信部を告示で定める場所に、受信部を緊急の通報を受信した場合に直ちに必要な措置を講ずることができる場所にそれぞれ設けなければならない。 3 消防機関に通報する設備は、専用設備とし、かつ、緊急通報設備の受信部を設ける場所に設けなければならない。 (危険物の規制に関する規則) 第五十一条 規則第二十八条の三十六第二項に規定する告示で定める場所は、山林原野以外の地域にあつては配管の経路の約二キロメートルごとの箇所、山林原野にあつては配管の経路の保安上必要な箇所とする。 (危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示)
発信部は現場に、受信部は対応できる場所にまとめて置きます。
緊急通報設備の発信部は、山林原野以外の地域なら配管の経路の約2キロメートルごとに設けるという具体的な間隔が告示で決まっています。
受信部は「緊急の通報を受信した場合に直ちに必要な措置を講ずることができる場所」、つまり常時人がいて対応できる管理室のような場所に置きます。
消防機関へ通報する設備は、緊急通報設備とは別の専用設備として、この受信部と同じ場所にまとめて設けなければなりません。
発信部は配管の経路に沿って複数箇所、受信部と消防機関通報設備は1か所に集約する、という構造だと理解すると整理しやすくなります。

緊急通報設備と消防機関への通報設備は、同じ電話を兼用してはいけないんですか。

条文は「専用設備」と明記しているので、兼用はできません。
受信部だけは同じ場所にまとめられます。

警報設備と巡回監視車・資機材倉庫は何を備えなければならないのか

移送基地の警報設備と巡回監視車・資機材倉庫の配置
通報設備が「知らせる仕組み」なら、警報設備と巡回監視車・資機材倉庫は「現場で気づき、動く仕組み」です。
それぞれ告示が備えるべき内容を具体的に定めています。
第五十二条 規則第二十八条の三十七の規定により、移送取扱所には、次の各号に掲げるところにより警報設備を設けなければならない。 一 移送基地には非常ベル装置及び拡声装置を設けること。 二 可燃性蒸気を発生する危険物の送り出しの用に供されるポンプ等のポンプ室には可燃性蒸気警報設備を、その他のポンプ等のポンプ室には自動火災報知設備(自動信号装置を備えた消火設備を含む。)を設けること。 第五十三条 規則第二十八条の三十八の規定により、配管の経路には、次の各号に掲げるところにより巡回監視車、資機材倉庫及び資機材置場を設けなければならない。 一 巡回監視車は、次に掲げるところによること。 イ 配管系の保安の確保上必要な箇所に設けること。 ロ 平面図、縦横断面図その他の配管等の設置の状況を示す図面、ガス検知器、専用通信機、携行照明器具、応急漏えい防止器具、拡声器、耐熱服、消火器、警戒ロープ、シャベル、ツルハシ、ポール、巻尺その他点検整備に必要な機材を備えること。 二 資機材倉庫は、次に掲げるところによること。 イ 資機材倉庫は、移送基地及び配管の経路の五十キロメートル以内ごとの防災上有効な箇所並びに主要な河川上、湖沼、海上及び海底を横断する箇所の近傍に設けること。 (危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示)
警報は場所によって種類を変え、巡回は機材と拠点をセットで備えます。
警報設備は、移送基地に非常ベル装置と拡声装置を設けるほか、ポンプ室では取り扱う危険物の性質に応じて可燃性蒸気警報設備か自動火災報知設備のどちらかを設置します。
巡回監視車は、平面図や縦横断面図などの図面のほか、ガス検知器・専用通信機・応急漏えい防止器具・消火器・シャベルといった点検整備用の機材一式を備えたうえで配置します。
資機材倉庫は、移送基地と配管の経路の50キロメートル以内ごとの防災上有効な箇所、そして主要な河川・湖沼・海上・海底を横断する箇所の近くにも設けなければなりません。
資機材倉庫には泡消火薬剤400リットル以上・耐熱服5着以上といった消火活動用の資機材も備えます(詳しくはよくある質問で解説します)。

資機材倉庫は50キロメートルごとなんですね。
思っていたより離れた場所にも置くんだと分かりました。

河川や海上を横断する箇所の近くにも別途置く必要があります。
配管の経路全体をカバーする発想です。

巡回監視車や資機材倉庫を省略できるのはどんなときか

長い配管の巡回監視車ありと短い配管の巡回監視車なしの対比
ここまでの基準は、すべての移送取扱所に一律で課されるわけではありません。
「特定移送取扱所」に当たらない小規模な移送取扱所には、告示に明確な緩和規定があります。
7 特定移送取扱所以外の移送取扱所に係る配管の経路には、第五十三条の規定にかかわらず、巡回監視車を設けないことができる。 8 特定移送取扱所以外の移送取扱所に係る資機材倉庫のうち移送基地に設けるものは、第五十三条第二号イの規定にかかわらず、移送基地のうち危険物の受入れをする部分又は危険物の払出しをする部分のいずれかに設けることができる。 9 特定移送取扱所以外の移送取扱所に係る配管の経路が半径五キロメートルの円の範囲内にとどまるものには、第五十三条及び前項の規定にかかわらず、資機材倉庫を設置することを要しない。 (危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示第六十八条)
配管が短ければ、巡回監視車も資機材倉庫も要らない場合があります。
配管の延長が15キロメートル超、または圧力0.95メガパスカル以上かつ延長7キロメートル以上の「特定移送取扱所」に当たらない移送取扱所は、巡回監視車を設けないことができます
資機材倉庫についても、配管の経路が半径5キロメートルの円の範囲内に収まっていれば設置そのものが不要になり、移送基地に置く場合の設置場所の制約も緩みます。
一方で通報設備の発信部の間隔(約2キロメートルごと)は、配管の延長が2キロメートル未満のものに限って適用が除外される仕組みで、警報設備の基準自体には特定移送取扱所以外を対象にした緩和はありません。
「巡回・倉庫は規模で緩む」「通報・警報は原則どおり」という線引きを覚えておくと、自社の施設がどちらに当たるかを見誤りにくくなります。

うちの配管は短いから、巡回監視車は要らないと考えていいんでしょうか。

特定移送取扱所に当たらないことが前提です。
まずは配管の延長と圧力を確認しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

担当者が配管の経路図と資機材を確認する場面
最後に、実際の施設で何を確認すればよいかを整理します。
条文の要件は多いですが、確認の起点は配管の延長と圧力です。 まず配管の延長と圧力を確認します。
自社の移送取扱所が「特定移送取扱所」に当たるかどうかで、巡回監視車と資機材倉庫の要否が変わるため、配管の延長・圧力を最初に確認します。
次に、緊急通報設備の発信部が約2キロメートルごとに設けられているか、受信部と消防機関通報設備が同じ場所にまとまっているかを平面図で確かめます。
巡回監視車を保有している場合は、平面図・図面・ガス検知器・応急漏えい防止器具などの備品が最新の配管図に更新されているかも点検の対象です。
資機材倉庫については、備蓄している泡消火薬剤や耐熱服の数量が基準を満たしているかを定期的に棚卸しすることをおすすめします。

まずは配管の延長と圧力を確認するところから始めてみます。

それが分かれば、通報から巡回まで一気に整理できます。
不明な点があれば所轄消防署にも相談してみてください。

よくある質問

Q緊急通報設備と消防機関に通報する設備は、同じ電話回線を兼用してもよいですか?
A兼用はできません。規則第28条の36第3項は消防機関に通報する設備を専用設備と定めており、緊急通報設備とは別の設備として、受信部と同じ場所に設ける必要があります。
Q巡回監視車はどんな移送取扱所でも配置しなければなりませんか?
Aいいえ。特定移送取扱所以外の移送取扱所は、告示第68条第7項により巡回監視車を設けないことができます。自社の配管の延長と圧力を確認して該当するか判断します。
Q資機材倉庫にはどのくらいの資機材を備える必要がありますか?
A告示第53条により、3パーセントに希釈して使う泡消火薬剤400リットル以上、耐熱服5着以上、シャベルとツルハシ各5丁以上その他消火活動に必要な資機材を備えます。流出した危険物を処理する資機材や緊急対策用の資機材も別途必要です。
Q資機材置場と資機材倉庫はどう違いますか?
A資機材置場は、半径5キロメートルの円の範囲内に配管の経路を含む防災上有効な場所に設ける補完的な備蓄場所です。資機材倉庫から5キロメートル以内には設置不要とされ、備える資機材も耐熱服を除いた消火用資機材に限られます。

まとめ

配管の経路には緊急通報設備と消防機関に通報する設備の両方を設ける
緊急通報設備の発信部は、山林原野以外なら配管の経路の約2キロメートルごとに設ける
消防機関に通報する設備は専用設備とし、緊急通報設備の受信部と同じ場所に設ける
移送基地には非常ベル・拡声装置、ポンプ室には危険物に応じた可燃性蒸気警報設備か自動火災報知設備を設ける
巡回監視車には図面や点検整備用の機材一式を備え、資機材倉庫は50キロメートル以内ごとと河川等の横断箇所付近に設ける
特定移送取扱所以外は巡回監視車や資機材倉庫を省略できる場合がある
まずは自社の配管の延長と圧力を確認し、特定移送取扱所に当たるかどうかを判断する

配管の延長と圧力を確認するところから始めてみます!

通報・警報・巡回の体制づくりは、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する規則第28条の36・第28条の37・第28条の38
  • 危険物の規制に関する技術上の基準の細目を定める告示(昭和49年自治省告示第99号)第51条・第52条・第53条・第68条

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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