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特定建築物定期調査の避難階段はどこを見るのか|階段室の構造から特別避難階段の付室まで解説

避難階段の付室の窓を確認する調査員

特定建築物定期調査では、階段の寸法や手すりだけでなく、火災時に避難路として機能し続けるための構造も調査の対象です。
階段室を囲む壁や扉、屋外階段の開放性、特別避難階段の付室やバルコニーには、それぞれ細かな基準が定められています。
これらは日頃の維持管理次第で機能が損なわれやすく、内装の改修や物品の放置が要是正の原因になることも少なくありません。
本記事では、階段室の防火区画から特別避難階段の付室の排煙設備まで、避難階段の構造にまつわる5つの調査項目を解説します。

今度の調査で、階段室の構造まで見られると聞いて少し不安です。
うちは屋内階段しかないと思うんですが。

屋内避難階段だけでなく、屋外階段や特別避難階段の付室にもそれぞれ基準があります。
まずは階段室の壁と扉の構造から確認していきましょう。

階段室の壁の構造まで細かく決まっているとは知りませんでした。
うちのビルがどの種別か、図面で確認してみます。

種別によって求められる構造が変わります。
まずは避難階段の基本から見ていきますね。

この記事の結論
  • 屋内避難階段の階段室は、耐火構造の壁で囲み、内装を不燃材料とすることが求められます。
  • 屋外に設ける避難階段は、外気に開放されていることが安全性の前提になっています
  • 特別避難階段では、屋内と階段室をバルコニー又は付室を通じて連絡させなければなりません。
  • 付室等の面積は、店舗で居室面積の合計の100分の8以上、事務所で100分の3以上を確保する必要があります。
  • 要是正の判断は、内装材料・窓の面積・排煙設備の作動・物品の放置の有無で行います

階段室の構造から特別避難階段の付室の排煙設備までの関係を示す図解

階段室の構造の状況はどう判定するか

階段室の壁と天井の不燃仕上げを確認する調査員
屋内に設ける避難階段は、火災時に煙や熱から避難者を守るための独立した空間として設計されています。
まずは階段室そのものを囲む壁や仕上げ材の構造から確認します。
建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(平成20年国土交通省告示第282号)別表1 階段室の構造の状況 方法:目視等及び設計図書等により確認する。屋内の避難階段の構造について設計図書等で確認し、目視等で現状の使用状況を調査する。基準:要是正:建築基準法施行令第123条第1項(令第129条の2第1項の規定が適用され、かつ全館避難安全性能に影響を及ぼす修繕等が行われていない場合にあっては第一号及び第六号を除く。)の規定に適合しないこと。例:避難階段の内装に不燃材料が使われていない。避難階段の壁に設けた屋内に面する窓の面積が1㎡を超えている。階段が避難階まで直通していない。
階段室は、耐火構造の壁で囲むことが基本です。
天井や壁の室内に面する部分は不燃材料で仕上げ、下地も不燃材料とすることが求められます。
屋内に面する窓を設ける場合は、面積を1㎡以内とし、防火設備のはめごろし戸にしなければなりません。
出入口の扉は直接手で開けられ自動的に閉まる防火設備とし、避難の方向に開く構造にする必要があります。
そして階段そのものは耐火構造とし、避難階まで直通していることが前提です。

階段室の壁って、そんなに厳密に構造が決まっているんですね。
何十年も前に建った建物なので少し心配です。

古い建物ほど改修履歴の確認が大切です。
設計図書と検査済証を見比べて、不燃材料や窓の面積が変わっていないか確認しましょう。

屋外に設けられた避難階段はどこを見るか

屋外避難階段の防火設備の窓と開放性を確認する調査員
屋外に設ける避難階段は、常に外気に開放されていることが安全性の前提になっています。
そのため、屋内階段とは異なる視点から状態を確認します。
平成20年国土交通省告示第282号別表1 屋内と階段との間の防火区画の確保の状況 方法:目視等及び設計図書等により確認する。屋外階段に面した外壁の2m以下の範囲にある1㎡以上の開口部が、遮炎性能のある防火設備となっているか設計図書等と現況を確認する。基準:要是正:建築基準法施行令第123条第2項(略)の規定に適合しないこと。例:屋外階段から1mの窓のガラスが普通ガラスである。/開放性の確保の状況 方法:目視等及び設計図書等により確認する。設計図書等と現況を確認する。基準:要是正:開放性が阻害されていること。例:周囲が壁で囲まれ、屋外階段としての外気への開放性が損なわれている。
屋外階段は、外気への開放性そのものが防火・防煙の役割を果たしています。
屋内階段のような不燃仕上げや窓の制限が無い代わりに、周囲を壁で囲ってはいけません。
出入口以外の開口部からは2m以上の距離を確保し、屋内に面する窓は防火設備のはめごろし戸とすることが必要です。
建築基準法施行令第121条の2は、屋外の直通階段を木造にすることも禁じています。
風雨にさらされる場所でもあるため、錆や腐食による金物の劣化にも注意が必要です。

屋外階段って、周りが壁で囲われている方が雨風をしのげて安全な気がしていました。

開放されていることが屋外階段の安全性の条件なんです。
後から壁で囲う改修をすると、かえって基準に適合しなくなります。

特別避難階段のバルコニーや付室はどんな構造が必要か

特別避難階段の付室の面積と防火区画を確認する調査員
特別避難階段は、超高層ビルや百貨店などで階段室の手前に付室やバルコニーを設ける、もっとも強力に防護された構造です。
まずはその構造と面積の基準から見ていきます。
平成20年国土交通省告示第282号別表1 バルコニー又は付室の構造及び面積の確保の状況 方法:設計図書等により特別避難階段の位置及びバルコニー又は付室の構造を確認する。付室等はその他の部分と防火区画しなければならず、また出入口以外の開口を設けることができない。これらの適不適については竣工以降改修がなされていなければ適法とみなすことができるので、改修等が行われていないか、それが適正に行われているかを設計図書等及び現況について確認する。基準:要是正:建築基準法施行令第123条第3項(略)の規定に適合しないこと。例:避難バルコニーの周囲を囲い、内部化している。
付室やバルコニーは、煙が階段室へ流れ込むのを防ぐための緩衝空間です。
屋内と階段室はバルコニー又は付室を通じて連絡させ、出入口以外の開口部を設けることはできません。
面積は法令で定められており、店舗では居室面積の合計の100分の8以上、事務所では100分の3以上を確保します。
防災計画評定を受けた建築物では、避難計算によって求めた面積が必要になる場合もあります。
内部を仕切ったり出入口の扉を移動したりして面積が変わっていないか、改修履歴とあわせて確認しましょう。

うちのビルは高層階があるので、特別避難階段があります。
付室が少し狭い気がして気になっていました。

面積は法令で決まっているので、設計図書の数値と現地を照らし合わせて確認しましょう。
仕切りを増やす改修をしていないかも大切なポイントです。

付室等の排煙設備はどう設置されているか

付室の自然排煙口と機械排煙設備の作動を確認する調査員
付室やバルコニーには、火災時の煙を排出するための排煙設備が備わっています。
方式によって確認する視点が変わります。
平成20年国土交通省告示第282号別表1 階段室又は付室(以下「付室等」という。)の排煙設備の設置の状況 方法:目視等及び設計図書等により確認する。機械排煙の給排気口あるいは自然排煙の排煙窓が適正に設置されているかを設計図書等と現況について確認する。基準:要是正:排煙設備が設置されていないこと。例:内装の改修によって排煙窓が外されている。関係規定:平成28年国土交通省告示第696号(特別避難階段の階段室又は付室の構造方法を定める件)。
付室の排煙設備には、自然排煙式・スモークタワー式・機械排煙式の3種類があります。
このほか外気に開放されたバルコニーを付室の代わりにした形式もありますが、スモークタワー式は風道の面積が大きくなるためほとんど採用されていません。
排煙設備そのものの性能は建築設備定期検査で別途確認されるため、この調査では付室の使われ方や自然排煙口の外観など建築的な側面を主に見ます。
内装の改修で排煙窓そのものが撤去されていないか、設計図書と現況を照らし合わせて確認します。
防火区画についても、壁や防火戸が正常に維持されているかをあわせて確認しましょう。

排煙設備の点検は、消防用設備の点検で見てもらっていると思っていました。

機械の性能そのものは建築設備定期検査の役割です。
この調査では排煙口が改修で塞がれていないかなど、建物としての状態を見ます。

付室等の窓と物品の放置はなぜ見るのか

付室の自然排煙口の物品と作動を確認する調査員
付室やバルコニーは、非常時に避難者が一時的に集まる空間でもあります。
そのため窓の作動と物品の放置の両方を確認します。
平成20年国土交通省告示第282号別表1 付室等の外気に向かって開くことができる窓の状況 方法:目視等及び作動により確認する。自然排煙口が付室内に置かれた物品などによって開放できなくなっていないか、サッシに異常はないかを目視等及び作動により調査する。基準:要是正:外気に向かって開くことができる窓が開閉しないこと又は物品により排煙に支障があること。例:自然排煙口のサッシのシールが劣化し、貼り付いて開かない。自然排煙口の周囲に物品があり開閉に支障をきたしている。/物品の放置の状況 方法:目視等により確認する。付室はごみ置き場や商品倉庫に転用されるおそれがあるが、火災時には避難上必要な空間であるため、物品を置くのは危険であることから、目視等により確認する。基準:要是正:バルコニー又は付室に物品が放置されていること。例:付室内に物品が置かれているので移動する必要がある。
付室の窓と物品の放置は、どちらも排煙経路を確保するための確認です。
自然排煙口のサッシはゴムシールが劣化して貼り付き、開かなくなることがあります。
付室内に置かれた棚や什器が排煙口の前をふさいでいれば、それも開閉の支障です。
付室はごみ置き場や商品倉庫に転用されやすい空間ですが、非常時には避難者が集まる場所のため物品は置けません。
サッシの作動確認と物品の有無は、日常の点検としても取り入れやすい項目です。

付室に季節用品を少しだけ置いていたかもしれません。
すぐに確認します。

少しの物でも排煙口をふさいでいれば要是正の対象です。
定期的な見回りに付室も加えておきましょう。

よくある質問

Q特別避難階段の付室に物置代わりに荷物を置いてもよいですか?
A認められません。付室やバルコニーは避難上必要な空間として面積が定められており、物品を置くと要是正の対象になります。
Q屋外避難階段の周囲をパネルで囲って目隠しにしてもよいですか?
A屋外階段は外気への開放性が安全性の前提のため、周囲を壁やパネルで囲うと要是正になる可能性があります。改修前に特定行政庁へ確認してください。
Q付室の排煙設備の性能そのものはこの調査で確認しますか?
A排煙設備の作動性能は建築設備定期検査で別途確認されます。特定建築物定期調査では、付室の使われ方や自然排煙口の外観など建築的な側面を確認します。
Q階段室の窓の面積はどのくらいまで認められますか?
A屋内に面する窓を設ける場合、面積は各々1㎡以内とし、防火設備のはめごろし戸にする必要があります。

まとめ

屋内の避難階段は、耐火構造の壁で囲み不燃材料で仕上げることが求められます。
屋外に設ける避難階段は、外気への開放性が安全性の前提になっています
特別避難階段は、屋内と階段室をバルコニー又は付室を通じて連絡させる構造です。
付室等の面積は、店舗で居室面積の合計の100分の8以上、事務所で100分の3以上が必要です。
排煙設備には自然排煙式・スモークタワー式・機械排煙式の3種類があります。
排煙設備そのものの性能は建築設備定期検査で別途確認され、この調査では建築的な側面を見ます
付室の窓の作動と物品の放置の有無は、どちらも排煙経路の確保という同じ視点で確認します。

階段室や付室の構造に、こんなに細かい基準があるとは知りませんでした!
次の調査までに図面を見直しておきます。

避難階段の構造は火災時の命綱です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第121条の2・第122条・第123条(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法第12条・建築基準法施行規則第5条(e-Gov法令検索)
  • 建築物の定期調査報告における調査及び定期点検における点検の項目、方法及び結果の判定基準並びに調査結果表を定める件(平成20年国土交通省告示第282号)
  • 特別避難階段の階段室又は付室の構造方法を定める件(平成28年国土交通省告示第696号)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。調査の方法や判定の適用は建物や特定行政庁の運用ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または専門業者にご確認ください。

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