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特定建築物定期調査の防煙区画と排煙口はどこを見るのか|防煙壁の劣化から手動開放装置の操作性まで解説

防煙区画と排煙設備を点検する作業員(特定建築物定期調査)

特定建築物定期調査では、天井から下がる板や壁の小さな開口部まで、
「防煙」と「排煙」という似た言葉の設備を混同せずに見分ける力が求められます。
機械式の排煙設備は建築設備定期検査が担当しますが、防煙区画そのものと自然排煙口の維持状態は特定建築物定期調査の範囲です。
この記事では防煙区画・防煙壁・排煙設備の設置・排煙口の維持保全という4つの調査項目を、なぜそこを見るのかまでわかるように解説します

うちのビルには天井から板が下がっている場所があります。
あれも定期調査の対象になるのか気になっています。

はい、その板は防煙壁という設備で、天井を伝って広がる煙を一定の範囲に閉じ込める役割があります。
特定建築物定期調査ではこの防煙壁と、煙を外へ逃がす排煙設備の両方を確認します。

煙を出す設備は建築設備の点検でも扱っていると聞きました。
両方でどう役割が分かれているのか知りたいです。

機械で煙を吸い出す排煙設備の性能検査は建築設備定期検査が担当します。
特定建築物定期調査が見るのは、防煙区画や自然排煙口という建物側の造りが今も維持されているかです。

この記事の結論
  • 防煙区画は床面積500平方メートル以内ごとに防煙壁で区画されているかを設計図書で確認します
  • 防煙壁は固定式なら亀裂・破損・変形、可動式なら検査記録の有無を見ます。
  • 排煙設備の設置義務は、高さ31メートル以下の居室を100平方メートル以内ごとに防煙壁で区画すれば除外される場合があります。
  • 排煙口の手動開放装置は手が届き、表示が読める状態かを確かめます
  • 自然排煙口の本体が物品でふさがれていないかも見落とせないポイントです。

特定建築物定期調査における防煙区画と排煙設備の点検範囲を示す図解

防煙区画はなぜ調査の前に図面で確認しておく必要があるのか

設計図書で防煙区画の範囲を確認する調査員
防煙区画は天井裏や壁の中まで含む区画なので、現地を歩くだけでは全体像がつかめません。
だからこそ、調査の前に設計図書で範囲をはっきりさせておく必要があります。
(建築基準法施行令第126条の3第1号)建築物をその床面積500平方メートル以内ごとに、防煙壁で区画すること
区画の境目を先に押さえておきます
防煙区画は間仕切り壁だけでなく、天井から50センチメートル以上下がった垂れ壁でも作られます。
現地では天井の板がどこまで垂れているかを目視だけで正確に判断するのは困難です。
このため調査ではまず設計図書や改修履歴を確認し、区画のはずの場所に間仕切りや垂れ壁が実際にあるかを照合します。
改修でパーティションを動かしたときに区画が壊れていないかも、あわせて確認すべき点です。

うちは去年、事務所のレイアウトを変えてパーティションを動かしました。
防煙区画への影響が気になります。

動かした後の図面が残っていれば、それを見せてもらえば十分です。
もし図面がなければ、現地で垂れ壁の位置を実測して記録しておくと安心です。

防煙壁はどこに劣化が出やすいのか

防煙垂れ壁のひび割れを確認する調査員
防煙壁は煙を一時的にせき止める板や垂れ壁です。
可動式のものは開閉を繰り返すため、固定式とは違う劣化の出方をします。
(建築基準法施行令第126条の2第1項かっこ書)間仕切壁、天井面から50センチメートル以上下方に突出した垂れ壁又ははりその他これらと同等以上に煙の流動を妨げる効力のあるもので、準耐火構造であるもの(その下端から床面までの垂直距離が居室の床面積に応じ国土交通大臣の定める距離以上であるものに限る)又は不燃材料で造り、若しくは覆われたもの(防煙壁)。
亀裂・破損・変形の有無を見ます
固定式の防煙壁はボードのひび割れや取付け金物のゆるみが典型的な劣化です。
可動式の防煙垂れ壁は、原則として建築設備定期検査の中で作動確認が行われているはずの設備です。
それでも検査記録が見当たらない場合は、特定建築物定期調査の側でも可能な範囲で劣化や損傷を確認しておくべきとされています。
両方の点検が「確認済みのはず」で素通りしてしまうと、防煙壁の不具合が見落とされたまま残ってしまいます。

可動式の垂れ壁は建築設備の点検で見てもらっていると思っていました。
記録が残っているか確認してみます。

その姿勢で十分です。
記録が見つからないときだけ、この定期調査の側で目視を補ってもらえれば安心です。

排煙設備の設置義務はどんな部屋にかかるのか

居室の床面積を確認しながら排煙設備の要否を調べる調査員
排煙設備は延べ面積や階数、居室の床面積によって設置義務の有無が分かれます。
ただし防煙壁で区画された小さな居室には、設置義務そのものが外れる緩和もあります。
(建築基準法施行令第126条の2第1項)建築物の高さが31メートル以下の部分にある居室で、床面積100平方メートル以内ごとに、防煙壁によって区画されたものを除く
区画してあれば設置しなくてよい部屋もあります
延べ面積が500平方メートルを超える特殊建築物や、階数が3以上かつ延べ面積が500平方メートルを超える建築物の居室は、原則として排煙設備の設置対象です。
ただし高さ31メートル以下にある居室を100平方メートル以内ごとに防煙壁で区画していれば、この設置義務そのものが除外されます。
調査ではこの緩和の前提条件が今も成立しているか、つまり区画がそのまま残っているかまで見る必要があります。
リフォームで防煙壁を撤去したのに排煙設備を追加していない部屋は、この時点で基準から外れてしまいます。

うちは10年前に間仕切りを撤去して部屋を広げました。
排煙設備が無いままなのが心配になってきました。

広げた後の床面積と天井高を図面で確認しましょう。
緩和の条件から外れていれば、排煙設備の増設について特定行政庁や設計事務所へ早めに相談することをおすすめします。

排煙口の手動開放装置はなぜ操作性を最優先で見るのか

排煙口の手動開放装置のハンドルを確認する調査員
排煙口は火災時に人の手で開けることを前提にした設備です。
どれだけ立派な排煙口でも、その場で開けられなければ意味がありません。
(建築基準法施行令第126条の3第4号・第5号)排煙口には、手動開放装置を設けること。手で操作する部分は、壁に設ける場合においては床面から80センチメートル以上1.5メートル以下の高さの位置に、天井から吊り下げて設ける場合においては床面からおおむね1.8メートルの高さの位置に設け、かつ、見やすい方法でその使用方法を表示すること
手が届いて操作方法が読めるかを確かめます
手動開放装置は法令で高さと表示の両方が決められています。
それでも実際の現場では、ハンドルが折損していたり、収納棚などの家具に隠れて手が届かなかったりする例が報告されています。
表示があっても文字が読めなければ、初めて使う人には開け方が伝わりません。
調査では法令上の設置有無だけでなく、実際に人が操作できる状態かどうかまで確かめます。

手動開放装置の場所は知っていますが、実際に操作したことはありません。
今度、試しに動かしてみようと思います。

動かす前に、ケーブルの緩みやパッキンの固着がないかも見ておくと安心です。
重い動きに気づいたら、そのまま無理に開けず記録して専門業者に相談してください。

自然排煙口の本体はなぜふさがれやすいのか

物品でふさがれた自然排煙口を確認する調査員
自然排煙口は普段閉まったままのことが多く、収納スペースと誤解されがちです。
その結果、気づかないうちに物が置かれて排煙の妨げになっているケースが少なくありません。
(建築基準法第8条第1項)建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない
排煙口そのものがふさがれていないかを見ます
自然排煙口は電源も操作スイッチも無いため、普段は気配が消えている設備です。
そのすきに書類箱や在庫品が積み上げられ、いざというときに排煙口自体が隠れてしまう例があります。
パッキンの劣化で排煙口が固着し、開けようとしても開かない例も報告されています。
法令に適合しているかではなく、今すぐ機能するかという視点で見るのがこの調査項目の役割です。

備品を置く場所を探していて、目立たない窓の下に段ボールを積んでいました。
まさか排煙口だったとは知りませんでした。

気づいたところで撤去していただければ大丈夫です。
あわせて、その周辺には今後も物を置かない目印を付けておくと再発を防げます。

よくある質問

Q防煙壁と防火壁はどう違うのですか?
A防火壁は火の燃え広がりを防ぐための壁で、防煙壁は煙の流動を妨げるための壁です。対象にしている脅威が炎か煙かという点が違い、それぞれ別々の基準で設けられています。
Q機械排煙と自然排煙の維持管理はどちらが特定建築物定期調査の対象ですか?
A機械排煙設備の性能そのもの(排煙機や風道の作動確認)は建築設備定期検査の対象です。防煙区画の範囲や排煙口・手動開放装置がふさがれていないかという建物側の維持状態は特定建築物定期調査で確認します。
Q防煙垂れ壁を一時的に外したままでも大丈夫ですか?
A垂れ壁が外れたままだと防煙区画が成立せず、要是正の対象になります。改修工事の際は必ず復旧を確認し、そのままにしないでください。
Q排煙口の手前に一時的に荷物を置いてもよいですか?
A短時間でも荷物で排煙口や手動開放装置をふさぐと、判定基準上は要是正の対象になります。日常的にも物を置かない運用を徹底することが望まれます。

まとめ

防煙区画は床面積500平方メートル以内ごとに防煙壁で区画されているかを設計図書で確認します
防煙壁は固定式なら亀裂・破損・変形、可動式なら検査記録の有無を見ます。
排煙設備の設置義務は、高さ31メートル以下の居室を100平方メートル以内ごとに防煙壁で区画すれば除外される場合があります。
排煙口の手動開放装置は手が届き、表示が読める状態かを確かめます
自然排煙口の本体が物品でふさがれていないかも見落とせないポイントです。
機械排煙の性能検査は建築設備定期検査、建物側の維持状態は特定建築物定期調査という役割分担があります。
改修や模様替えの際は、防煙区画・防煙壁・排煙設備の条件が崩れていないかをそのつど確認しましょう。

防煙排煙、それぞれの役割がはっきり分かりました!
次の調査のときは自分でも図面と現地を照らし合わせてみます。

図面と現地の食い違いに気づいたときは、遠慮なくご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第8条第1項・第12条第1項
  • 建築基準法施行規則第5条第2項
  • 建築基準法施行令第126条の2・第126条の3

※本記事は公表されている法令および国土交通省等の資料に基づく一般的な解説です。改修や用途変更によって現況が設計時の条件と異なる場合があります。個別の判断は特定行政庁または建築物調査員資格者にご確認ください。

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