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特定屋外貯蔵タンクの溶接部はなぜ4つの試験に分かれているのか|放射線透過試験から水張試験の測定までを解説

屋外貯蔵タンクの側板の継手を検査する作業員のイメージ写真

屋外に設置する大きな貯蔵タンクは、完成検査を受ける前に溶接部の品質を確かめる試験を受けます。
この試験は政令が総務省令に委任するかたちで、規則の条文に細かく書き込まれています。
試験の種類は放射線透過試験・磁粉探傷試験等・漏れ試験・水張試験の測定の四つに分かれます。
この記事では、特定屋外貯蔵タンクの溶接部がどんな試験を受けるのかを条文から順番に整理します。

タンクの溶接部の検査って、そんなに細かく決まっているんですか。

はい、試験の種類ごとに条文が分かれています

全部で四つあるんですね。

はい、条文の号ごとに一つずつ見ていきましょう。

この記事の結論
  • 特定屋外貯蔵タンクの溶接部の試験は、政令第十一条第一項第四号の二の委任を受けて規則第二十条の六から第二十条の九までが定めています。
  • 側板の縦継手・水平継手には原則として放射線透過試験を行います。
  • 底部の溶接継手には磁粉探傷試験を原則とし、状況に応じて浸透探傷試験や渦電流探傷試験に代えられます。
  • 底部の補修溶接、接液部以外の側板、屋根・浮き蓋、ノズルやマンホール等の溶接部は漏れ試験の対象になります。
  • 水張試験等では、水を満たす前後の水平度と、直後の底部の凹凸状態という二つの測定もあわせて行います。

特定屋外貯蔵タンクの溶接部が放射線透過試験磁粉探傷試験等漏れ試験水張試験の測定という四つの試験を受けることを示す図解

特定屋外貯蔵タンクの溶接部はなぜ四つの試験を受けるのか

特定屋外貯蔵タンクの側板の溶接継手と四種類の非破壊試験の道具が並んでいるイメージ
まずは試験の全体像を確認します。
条文がどのようにこの四つの試験を指定しているかを見ていきます。
危険物の規制に関する規則第二十条の六(溶接部の試験等) 令第十一条第一項第四号の二の総務省令で定めるところにより行う試験は、次条から第二十条の九までに定める試験とし、令第十一条第一項第四号の二の総務省令で定める基準は、これらの試験に係る規定に定める基準とする。
溶接部の試験は四つに分かれます。
政令第十一条第一項第四号の二は、特定屋外貯蔵タンクの溶接部について総務省令で定める試験を義務付けています。
その受け皿が規則第二十条の六で、次条から第二十条の九までに定める試験と基準がそのまま適用されます。
つまり放射線透過試験・磁粉探傷試験等・漏れ試験・水張試験の測定という一連の試験体系が、ここでまとめて指定されているということです。

一つの条文がまとめて四つの試験を指定しているんですね。

はい、第二十条の七から第二十条の九が中身です。
次は側板と底部の違いを見ましょう。

側板の継手と底部の継手では受ける試験が違うのか

作業員が側板の縦継手にフィルムを当て別の作業員が底部の継手に探傷器具を当てているイメージ
四つの試験のうち、まず場所によって使い分けられる二つを確認します。
側板と底部では条文が指定する試験そのものが変わります。
危険物の規制に関する規則第二十条の七(放射線透過試験) 特定屋外貯蔵タンクの側板の縦継手及び水平継手(略)は、放射線透過試験を行い、次項に定める基準に適合するものでなければならない。第二十条の八(磁粉探傷試験、浸透探傷試験及び渦電流探傷試験) 特定屋外貯蔵タンクの側板とアニュラ板(アニュラ板を設けないものにあつては、底板)、アニュラ板とアニュラ板、アニュラ板と底板及び底板と底板との溶接継手(略)は、磁粉探傷試験を行い、次項に定める基準に適合するものでなければならない。ただし、磁粉探傷試験によることが困難な場合には浸透探傷試験を、底部の溶接継手(略)が対象となる場合には渦電流探傷試験を行うことができる。
側板と底部では受ける試験が違います。
規則第二十条の七により、側板の縦継手及び水平継手には放射線透過試験を行います。
規則第二十条の八により、アニュラ板や底板どうしの底部の溶接継手には磁粉探傷試験を原則とします。
磁粉探傷試験が難しい場合は浸透探傷試験を、条件を満たす底部の継手であれば渦電流探傷試験を行うこともできます。
継手の位置によって、受ける試験の種類そのものが変わるということです。

側板は放射線、底部は磁粉と覚えればいいんですね。

はい、原則はそのとおりです。
次は漏れ試験の対象を見ましょう。

漏れ試験の対象になるのはどの溶接部か

タンクの断面に底部側板屋根ノズルマンホールという四つの溶接部位が示されているイメージ
放射線透過試験や磁粉探傷試験等とは別に、漏れの有無そのものを確かめる試験もあります。
対象になる部位を条文で確認します。
危険物の規制に関する規則第二十条の九(漏れ試験) 特定屋外貯蔵タンクの溶接部で次の各号に掲げるものは、真空試験、加圧漏れ試験、浸透液漏れ試験等の試験によつて漏れがないものでなければならない。一 構造上の影響を与える有害な変形がないタンクの底部に係る溶接部(略)二 接液部以外の側板に係る溶接部(取替え工事に係るものを除く。)三 屋根(浮き屋根のものにあつては、その総体とする。)及び浮き蓋の総体に係る溶接部四 ノズル、マンホール等に係る溶接部
漏れ試験の対象は四つの部位です。
規則第二十条の九は、タンクの底部に係る溶接部(補修工事に限る)を漏れ試験の対象の一つに挙げています。
続けて接液部以外の側板、屋根や浮き蓋の総体、ノズル・マンホール等の溶接部も対象になります。
真空試験・加圧漏れ試験・浸透液漏れ試験等、いずれかの方法で漏れの有無を確かめます。
放射線透過試験等とは別に、漏れそのものを確認する試験が用意されているわけです。

屋根やマンホールも漏れ試験の対象になるんですね。

はい、四つの部位すべてが対象です。
次は水張試験の測定を見ましょう。

水張試験では水平度と凹凸の二つを測るのか

作業員が測量機でタンク基礎の水平度を測り別の作業員が定規で底部の凹凸を測っているイメージ
水張試験は漏れの有無を見るだけと思われがちですが、条文はそれ以上を求めています。
実施の時期ごとに求められる測定を確認します。
危険物の規制に関する規則第二十条の十(水張試験等における測定) 特定屋外貯蔵タンクにおいて令第十一条第一項第四号(略)に定める水張試験又は水圧試験(以下この条において「水張試験等」という。)を行う場合は、次の各号に掲げる水張試験等の実施の時期の区分に応じ、当該各号に掲げる測定を行うものとする。一 水張試験等の前及び水張試験等において特定屋外貯蔵タンクに水を満たしたとき 側板最下端(略)の水平度の測定二 水張試験等の直後 特定屋外貯蔵タンクの底部(略)の凹凸状態の測定
水張試験では水平度と凹凸の二つを測ります。
規則第二十条の十は、水を満たす前と満たしたときに側板最下端の水平度を測定するよう定めています。
さらに水張試験等の直後には、タンク底部の凹凸状態も測定します。
「漏れがなければ終わり」と思われがちですが、この二つの測定も条文上の義務です。
完成検査の記録に、この測定結果が残っているかどうかも確認のポイントになります。

つまり水を張って漏れを見るだけでは足りないんですね。

はい、水平度と凹凸の記録もあわせて必要です。
最後に確認の手順をまとめます。

明日から何を確認すればよいのか

作業員がタンクのそばでチェックリストを手に記録を確認しているイメージ
ここまでの試験を、現場で確認する手順に落とし込みます。
完成検査の書類を見ながら進めてください。 新設や変更工事の完成検査前に、放射線透過試験・磁粉探傷試験等・漏れ試験の記録が揃っているかを確認してください。
水張試験等の記録に、水平度と底部の凹凸状態の測定結果が残っているかもあわせて確認してください。
記録が見当たらない場合や試験の実施状況が分からない場合は、施工業者や所轄消防署に確認することをお勧めします。
タンクの変更や補修を検討するときも、事前に所轄消防署へ相談してください。

まずは自分のタンクの完成検査の記録を確かめてみます。

それが一番確実です。
よくある質問もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q放射線透過試験と磁粉探傷試験はどちらも同じ場所に行うのですか?
Aいいえ。規則第二十条の七により側板の縦継手及び水平継手には放射線透過試験を、規則第二十条の八により底部の溶接継手には磁粉探傷試験を原則として行います。対象になる部位が異なります。
Q磁粉探傷試験が難しいときはどうするのですか?
A規則第二十条の八のただし書により、磁粉探傷試験によることが困難な場合は浸透探傷試験を、条件を満たす底部の溶接継手であれば渦電流探傷試験を行うことができます。
Q漏れ試験は放射線透過試験の代わりになりますか?
Aなりません。漏れ試験は規則第二十条の九に基づく別の試験で、底部の補修溶接や屋根・浮き蓋、ノズル・マンホール等の溶接部が対象です。目的も対象も異なります
Q水張試験は漏れがなければ完了ですか?
A完了しません。規則第二十条の十により、水を満たす前後の水平度の測定と、水張試験等の直後の底部の凹凸状態の測定もあわせて行う必要があります。

まとめ

特定屋外貯蔵タンクの溶接部の試験は、政令第十一条第一項第四号の二の委任を受けて規則第二十条の六から第二十条の九までが定めています
側板の縦継手・水平継手には放射線透過試験を行います
底部の溶接継手には磁粉探傷試験を原則とし、困難な場合は浸透探傷試験、条件を満たせば渦電流探傷試験に代えられます
底部の補修溶接、接液部以外の側板、屋根・浮き蓋、ノズルやマンホール等の溶接部は漏れ試験の対象になります
水張試験等では水を満たす前後の水平度を測定します
水張試験等の直後には底部の凹凸状態も測定します
完成検査の前に、これらの試験記録が揃っているかを確認してください

溶接部の試験がこんなに細かく分かれていること、よく分かりました。
助かります

まずは完成検査の試験記録の確認から始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第十一条第一項第四号・第四号の二
  • 危険物の規制に関する規則第二十条の六から第二十条の十まで(溶接部の試験等・放射線透過試験・磁粉探傷試験、浸透探傷試験及び渦電流探傷試験・漏れ試験・水張試験等における測定)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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