防火扉や防火シャッター、耐火クロススクリーンは、火災のときに閉じて延焼と煙の拡大を防ぐ設備です。
ところが「閉じる」という同じ動作の裏側には、すき間をなくすための構造や、閉じる前に人へ知らせる装置など、聞き慣れない用語がいくつも隠れています。
「相じゃくり」「カーテン部」「ガイドレール」「注意喚起装置」「注意灯」という言葉も、それぞれの役割を知れば点検の見方が変わります。
この記事では、防火設備がすき間なく閉じ、降下前に人へ知らせるための5つの基本用語を整理します。
うちには防火扉と防火シャッターの両方があるのですが、点検のときに相じゃくりやカーテン部といった聞き慣れない言葉をよく耳にします。
いったい何を指しているのか、恥ずかしながらよく分かっていません。
相じゃくりやカーテン部は、防火設備がすき間なく閉じるための構造や呼び方を指す言葉です。
まずはすき間をなくす仕組みから、順番に見ていきましょう。
すき間があると、そんなに大きな問題になるものなんですか。
閉じてさえいれば十分だと思っていました。
閉じていても、炎や煙が通り抜けるすき間があっては防火の意味がありません。
今日はすき間対策と、降下前に知らせる警報装置まで、5つの用語を順番に解説します。
- 相じゃくりは防火戸を閉じたとき、戸と枠のすき間をなくすために重ね合わせた構造をいう
- カーテン部は防火シャッターと耐火クロススクリーンに共通する呼び方で、シャッターでは「シャッターカーテン」ともいう
- ガイドレールはカーテン部を左右で保持し、開閉時にすき間なく誘導するレールをいう
- 注意喚起装置は防火シャッターが降下を始める前に、音声で周囲の人へ知らせる装置である
- 注意灯は音声に加えて光で降下を知らせ、聴覚だけに頼らない警報を行う
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目次
相じゃくりはなぜ防火戸のすき間をなくす構造なのか

このすき間をなくすために使われる構造が、相じゃくりです。
建築基準法施行令第109条の2は、防火設備について加熱開始後20分間、加熱面以外の面に火炎を出さないという遮炎性能を求めています。
戸と枠のあいだにすき間があれば、この性能を満たしていても実際には炎や煙が漏れてしまいます。
図面上は「相じゃくり」のほか「戸当り」「定規縁」といった重ね合わせ方があり、いずれも同じ目的ですき間をなくす工夫です。
点検では、戸を閉鎖した状態で相じゃくりの部分に変形やすき間が生じていないかを確認します。
相じゃくりの部分に変形があると、具体的にどんな不具合が起きるのでしょうか。
戸と枠のかみ合わせがずれると、閉鎖してもそこにすき間ができ、遮炎性能が発揮できません。
点検では建具の変形やゆがみも含めて確認します。
カーテン部とシャッターカーテンはなぜ設備によって呼び方が違うのか

その可動部分は、設備によって呼び方が少しずつ異なります。
防火シャッターのカーテン部はスラットという金属製の部材と座板を組み合わせたもので、シャッターカーテンという呼び方もします。
耐火クロススクリーンのカーテン部は金属ではなく、耐火クロスという布状の部材と座板を組み合わせています。
建築基準法施行令第112条第19項第1号イは、これらの設備が随時閉鎖又は作動できる構造であることを求めており、カーテン部はその動作を実際に担う部分です。
点検で「カーテン部」「シャッターカーテン」という言葉が出てきたら、どちらも同じ役割を指していると考えて差し支えありません。
うちの防火シャッターは「シャッターカーテン」、取引先の耐火クロススクリーンは「カーテン部」と呼ばれていて、同じものだと思っていませんでした。
どちらも同じ役割を持つ部分です。
設備の種類によって素材と呼び方が変わると覚えておくと分かりやすいですよ。
ガイドレールはなぜカーテン部を保持し誘導できるのか

その動きを左右で支え、正しい位置へ導いているのがガイドレールです。
ガイドレールがなければ、カーテン部は自重で降下する途中に左右へぶれ、壁とのあいだにすき間が生じるおそれがあります。
遮煙性能を求められる防火シャッター・耐火クロススクリーンでは、遮煙材が組み込まれたガイドレールを使い、閉鎖時のすき間をさらに減らします。
建築基準法施行令第112条第19項第2号ロは、区画に用いる防火設備について避難上及び防火上支障のない遮煙性能を求めており、ガイドレールはこの要求を支える部材の一つです。
点検では、ガイドレールの変形やゆがみによってカーテン部の動きが妨げられていないかを確認します。
ガイドレールがゆがんでいると、シャッター自体に問題がなくても、うまく閉まらないことがあるんですね。
そのとおりです。
点検ではシャッター本体だけでなく、ガイドレールの通りやゆがみも必ず確認します。
注意喚起装置はなぜ降下前に音声で知らせるのか

降下が始まる前に周囲へ知らせる役割を持つのが、注意喚起装置です。
建築基準法施行令第112条第19項第1号ロは、防火設備の閉鎖・作動に際して周囲の人の安全を確保できることを構造上の要件としています。
この要件を実現する仕組みの一つが、降下前に警報を鳴らす注意喚起装置です。
音声発生装置によって案内を流し、開口部の下や周囲にいる人へ退避を促します。
点検では、感知器の作動に連動して注意喚起装置が確実に鳴動するかを確認します。
火災のときにシャッターがいきなり降りてきたら、逃げ遅れそうで怖いです。
その不安を減らすために、注意喚起装置が先に音声で知らせる仕組みになっています。
次に説明する注意灯と合わせて、二重に知らせる工夫がされています。
注意灯はなぜ音声だけでなく光でも知らせるのか

そこで注意喚起装置と組み合わせて使われるのが、光で知らせる注意灯です。
工場や店舗のように機械音や人の声で騒がしい場所では、音声だけの警報が聞き取りにくいことがあります。
注意灯はランプの点滅などでシャッターの作動を知らせ、聴覚に頼らない警報手段として機能します。
相じゃくりやガイドレールがすき間なく閉じる仕組みを支え、注意喚起装置と注意灯が閉じる前の安全を支えることで、防火設備は初めて安心して使える設備になります。
点検では、音声・視覚の両方の警報が正常に作動するかをあわせて確認します。
音と光の両方があれば、耳が聞こえにくい方や、機械音がうるさい現場でも気づいてもらえそうです。
はい、音声と視覚の両方で知らせることが、周囲の人の安全確保につながります。
次回の点検でも、両方が正常に作動しているかを確認しますね。
よくある質問
まとめ
すき間対策と警報装置が、閉じる前後の安全をそれぞれ支えていることがよく分かりました。
次の点検では、この5つの用語を意識して確認します。
すき間なく閉じる仕組みと、降下前に知らせる仕組みは、どちらも人の安全を守るための大切な工夫です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法(昭和25年法律第201号)第12条第3項
- 建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第109条・第109条の2・第112条第19項第1号・第2号
- 昭和48年建設省告示第2563号
※本記事は執筆時点の法令等に基づき一般的な情報を解説するものであり、個別の建築物における判断を保証するものではありません。実際の点検・報告に際しては、必ず最新の法令及び所管行政庁の指導によってご確認ください。





