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移動貯蔵タンクの計量棒はなぜ静電気対策の装置が必要なのか|接地導線と表示標識の基準も解説

タンクローリーの後部で作業員が接地ケーブルを手に取り接続しようとしている様子

タンクローリーが敷地に出入りする事業所でも、あの車体そのものの構造基準まで意識する場面は少ないかもしれません。
移動貯蔵タンクには、外面の塗装や配管の弁といった基本の構造から、静電気による災害を防ぐための装置まで、政令が細かく基準を定めています。
とくにガソリンのように静電気が発生しやすい危険物を積むタンクでは、接地導線や計量棒まわりの防災装置が欠かせません。
この記事では、移動貯蔵タンクに求められる基本構造と静電気対策の基準を条文から順に整理します。

うちにもタンクローリーが出入りしますが、あの車体自体の基準までは考えたことがなくて。

塗装や配管から静電気対策まで、政令で細かく決まっています。

静電気対策というと、接地くらいしか思い浮かびません。

接地導線のほかに、計量棒用の装置や表示・標識も義務です。

この記事の結論
  • 移動貯蔵タンクは、危険物の規制に関する政令第十五条第一項により、外面塗装から静電気対策まで細かな構造基準が定められています。
  • 移動貯蔵タンクの外面にはさびどめの塗装をし、配管の先端には弁等を設けなければなりません。
  • 可燃性蒸気が滞留するおそれのある場所の電気設備は、蒸気に引火しない構造にしなければなりません。
  • ガソリンなど静電気による災害のおそれがある危険物を積むタンクには接地導線を、計量棒で計量するタンクには静電気対策の装置を設けます。
  • タンクには内容物を表示する設備と、規則で定める「危」の標識の両方を掲げる必要があります。

移動貯蔵タンクの塗装配管弁防爆構造の電気設備接地導線計量棒の静電気対策をまとめた図解

移動貯蔵タンクの外面と配管にはどんな基本基準があるのか

タンクローリーの外面塗装と配管先端の弁を示すイメージ
まずは移動貯蔵タンクの外面と配管まわりの基本基準を確認します。
どんなタンクにも共通する土台の基準です。
危険物の規制に関する政令第十五条第一項第八号 移動貯蔵タンクの外面には、さびどめのための塗装をすること。 同項第十二号 移動貯蔵タンクの配管は、先端部に弁等を設けること。
移動貯蔵タンクの外面には、さびを防ぐための塗装が義務づけられています。
第八号により、タンクの外面はさびどめの塗装を施さなければなりません。
第十二号により、配管の先端部には弁等を設ける必要があります。
塗装と配管の弁は、タンク自体の腐食や漏えいを防ぐための基本の構造です。
次の項目からは、静電気や引火のリスクに関わる、より踏み込んだ基準を確認します。

塗装まで法令で決まっているとは知りませんでした。

はい、外面と配管の両方が対象です。

可燃性蒸気がたまる場所の電気設備にはなぜ引火しない構造が必要なのか

タンク付近の密閉型電気スイッチと立ち込める蒸気を示すイメージ
続いて、タンクや附属装置の電気設備の基準を確認します。
蒸気がたまりやすい場所が対象になります。
危険物の規制に関する政令第十五条第一項第十三号 移動貯蔵タンク及び附属装置の電気設備で、可燃性の蒸気が滞留するおそれのある場所に設けるものは、可燃性の蒸気に引火しない構造とすること。
可燃性蒸気がたまるおそれのある場所の電気設備は、引火しない構造にしなければなりません。
対象になるのは移動貯蔵タンク本体だけでなく、マンホールや安全装置などの附属装置の電気設備も含みます。
場所を限定しているのがポイントで、可燃性蒸気が滞留するおそれのある場所に設ける場合に限って構造が問われます。
火花を発しない密閉型のスイッチや配線が、この基準を満たす代表的な例です。
点検の際は、電気設備の設置場所が蒸気のたまりやすい位置になっていないかもあわせて確認します。

普通のスイッチとは違う部品なんですね。

はい、火花を発しない構造が必要です。

ガソリンを積む移動貯蔵タンクにはなぜ接地導線を備え付けるのか

移動貯蔵タンクから接地棒へ伸びる接地導線を示すイメージ
次に、静電気による災害のおそれがある危険物に関わる基準です。
タンクに備え付ける設備そのものの話です。
危険物の規制に関する政令第十五条第一項第十四号 ガソリン、ベンゼンその他静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物の移動貯蔵タンクには、接地導線を設けること。
ガソリンなど静電気による災害が発生するおそれのある危険物を積むタンクには、接地導線を設けなければなりません。
ここで問われているのは、注入時の接地の作業手順ではなく、タンクに接地導線という設備を備え付ける義務そのものです。
対象になる危険物はガソリン・ベンゼンに限らず、静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物全般です。
接地導線を備え付けていなければ、そもそも作業時に正しく接地することができません。
備え付けの状態を点検で確認したうえで、実際の注入作業では所定の手順で接地電極とつなぎます。

接地導線は、タンクの装備そのものが基準になるんですね。

はい、備え付けの有無がまず問われます。

計量棒で油量を測るときになぜ静電気対策の装置が必要なのか

計量棒の差込口脇に取り付けられた静電気防止装置を示すイメージ
続いて、計量棒を使うタンクに限った基準です。
接地導線とは別に、もう一段の対策が求められます。
危険物の規制に関する政令第十五条第一項第十六号 ガソリン、ベンゼンその他静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物の移動貯蔵タンクのうち計量棒によつて当該危険物の量を計量するものには、計量時の静電気による災害を防止するための装置を設けること。
計量棒で油量を測るタンクには、計量時の静電気による災害を防止する装置が別に必要です。
接地導線を備えていても、計量棒を差し込む動作そのものが新たに静電気を発生させるおそれがあるためです。
対象は第十四号と同じくガソリン・ベンゼンその他静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物で、計量棒を使うタンクに限られます。
計量方式が違えば求められる装置も変わる、という考え方です。
自分のタンクがどの方式で計量しているかを確認し、計量棒方式であれば装置の有無を点検します。

接地とは別に、計量棒専用の対策もあるんですね。

はい、計量棒を使う場合だけの基準です。

移動貯蔵タンクにはどんな表示と標識が必要なのか

タンク後部に取り付けられた表示板と危険物標識を示すイメージ
最後に、構造や静電気対策とは別の表示義務を確認します。
表示設備と標識の二本立てです。
危険物の規制に関する政令第十五条第一項第十七号 移動貯蔵タンクには、当該タンクが貯蔵し、又は取り扱う危険物の類、品名及び最大数量を表示する設備を見やすい箇所に設けるとともに、総務省令で定めるところにより標識を掲げること。 危険物の規制に関する規則第十七条第二項 令第十五条第一項第十七号の規定による標識は、〇・三メートル平方以上〇・四メートル平方以下の地が黒色の板に黄色の反射塗料その他反射性を有する材料で「危」と表示したものとし、車両の前後の見やすい箇所に掲げなければならない。
移動貯蔵タンクには、内容物を示す表示設備と、規則で定める標識の両方を掲げなければなりません。
令第十五条第一項第十七号により、危険物の類・品名・最大数量を表示する設備を見やすい箇所に設ける必要があります。
規則第十七条第二項により、標識は〇・三メートル平方以上〇・四メートル平方以下の黒地に黄色の反射材で「危」と表示したものと定められています。
標識は車両の前後、見やすい箇所に掲げる必要があります。
明日からは、自分のタンクの塗装・配管、電気設備、接地導線と計量棒の装置、表示と標識の状態を順に確認してください。

表示と標識、どちらも必要なんですね。

はい、表示設備と標識は別物です。

よくある質問

Q配管の弁は、先端以外の場所に設けてもよいですか?
A令第十五条第一項第十二号は先端部に弁等を設けることを求めています。配管の途中だけに弁があり先端に無い状態は、この基準を満たしません。
Q引火しない構造の電気設備は、タンク本体だけが対象ですか?
Aいいえ、令第十五条第一項第十三号は移動貯蔵タンク及び附属装置の電気設備を対象にしています。マンホールや安全装置に付く電気設備も含まれます。
Q接地導線と計量棒の静電気防止装置は、どちらか一方でよいですか?
Aいいえ、令第十五条第一項第十四号と第十六号は別の号です。計量棒で計量するタンクは、接地導線に加えて計量時の静電気防止装置も設ける必要があります。
Q標識の大きさは、〇・三メートル平方ちょうどでなければいけませんか?
A規則第十七条第二項は〇・三メートル平方以上〇・四メートル平方以下という範囲を定めています。この範囲内であれば大きさに幅があります。

まとめ

移動貯蔵タンクは、政令第十五条第一項により外面塗装から静電気対策、表示・標識まで細かな基準が定められています
外面にはさびどめの塗装、配管の先端部には弁等を設けます
可燃性蒸気が滞留するおそれのある場所の電気設備は、引火しない構造にします
ガソリンなど静電気のおそれがある危険物を積むタンクには接地導線を備え付けます
計量棒で計量するタンクには、接地導線とは別に計量時の静電気防止装置が必要です
危険物の類・品名・最大数量を表示する設備を見やすい箇所に設けます
標識は黒地に黄色の反射材で「危」と表示し、車両の前後の見やすい箇所に掲げます

塗装から静電気対策、表示まで、よく分かりました。
早速点検します

まずは接地導線と静電気対策の装置から確認してください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第十五条(移動タンク貯蔵所の基準)
  • 危険物の規制に関する規則第十七条(標識)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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