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文化財建造物の防火対策はなぜ監視カメラや炎センサーまで求めるのか|相次いだ焼失を受けた消防庁通知の3つの徹底事項を解説

国宝や重要文化財に指定された木造の社殿建築と敷地に設置された監視カメラ

国宝や重要文化財に指定された建造物は、多くが木造で、ひとたび焼失すれば取り返しがつきません。
実際に平成19年から21年にかけて、旧モーガン邸本棟や吉志部神社本殿など、貴重な文化財建造物の焼失が全国で相次ぎました。
これを受けて消防庁は、建物内部の消防用設備だけでなく、敷地の巡視や監視カメラの設置にまで踏み込んだ通知を出しています。
この記事では、その通知が求める3つの徹底事項と、実務で見落としやすいポイントを解説します。

うちは古い木造の社殿を管理しているんですが、放火や火の不始末が心配です。

文化財建造物は消防庁が防火対策の徹底を求めています。
巡視や監視カメラの設置まで踏み込んだ通知が出ているんですよ。

巡視だけでなく監視カメラまで必要なんですか。

はい、平成21年に相次いだ文化財の焼失を受けて出された通知です。
今日はその中身を一緒に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 平成19年から21年にかけて相次いだ文化財建造物の焼失を受け、消防庁が防火対策の徹底を通知しました。(平成21年3月23日 消防予第122号)
  • 対象は国宝・重要文化財等だけでなく、これに準ずる歴史的建造物も含まれます。
  • 通知は巡視の励行・防犯カメラや炎センサーの設置・敷地内への入場管理・可燃物管理の徹底を求めています。
  • 防犯カメラや炎センサーは消防法令上の義務設備ではなく、任意の警備対策として求められています。
  • 実務では夜間や閉館後の無人時間帯の警備体制をどう補うかが最大のポイントです。

文化財建造物における巡視・監視カメラ・入場管理・可燃物管理の4つの徹底事項をまとめた図解

文化財建造物の防火対策はなぜ徹底を求められたのか

伝統的な木造の社殿建築と駆けつける消防車
平成19年から21年にかけて、全国で貴重な文化財建造物の焼失が相次ぎました。
消防庁はこれを受け、防火対策を点検し徹底するよう通知しています。
文化財建造物やこれに準ずる歴史的建造物(以下「文化財建造物等」という。)において火災による被害が発生しているところであり、平成19年5月及び平成20年1月には神奈川県藤沢市の旧モーガン邸本棟等が、平成20年5月には大阪府吹田市の吉志部神社本殿(重要文化財)が焼失しており、特に平成21年3月には、奈良県天理市の石上神宮摂社出雲建雄神社拝殿(国宝)、神奈川県横浜市の旧住友家俣野別邸(重要文化財)、神奈川県大磯町の旧吉田邸が焼失等するなど被害が続発しています。(文化財建造物等における防火対策の徹底について 平成21年3月23日 消防予第122号)
平成19年から21年にかけて、国宝や重要文化財を含む建造物の焼失が相次いで発生しました。
旧モーガン邸本棟、吉志部神社本殿、石上神宮摂社出雲建雄神社拝殿など、全国各地で被害が続発しています。
これらの文化財建造物等は、我が国にとってかけがえのない文化的財産です。
そこで消防庁は、都道府県を通じて市町村に対し、文化財建造物等における防火対策の点検と徹底を要請しています。
まずはこの通知がどの建物を対象にしているかを確認しましょう。

うちの建物もこういう被害に遭うかもしれないと思うと怖いです。

木造建造物は一度着火すると延焼が早いので、早期発見と初動対応が命綱になります。
次は対象になる建物を確認しましょう。

どの建物がこの通知の対象になるのか

伝統的な木造の文化財建造物と洋風の歴史的建造物
対象になるのは、国宝や重要文化財に指定された建物だけではありません。
これに準ずる歴史的建造物も対象に含まれます。
文化財建造物やこれに準ずる歴史的建造物(以下「文化財建造物等」という。)において火災による被害が発生している(略)。(文化財建造物等における防火対策の徹底について 平成21年3月23日 消防予第122号)
文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)の規定によつて重要文化財、重要有形民俗文化財、史跡若しくは重要な文化財として指定され、又は旧重要美術品等の保存に関する法律(昭和八年法律第四十三号)の規定によつて重要美術品として認定された建造物(消防法施行令別表第一(十七)項)
対象は国宝・重要文化財等に限らず、これに準ずる歴史的建造物も含まれます。
消防法施行令別表第一(十七)項では、文化財保護法に基づき指定・認定された建造物が防火対象物として区分されています。
さらに通知は、各地方公共団体が条例で指定した文化財についても、この対策を参考にすることが望ましいとしています。
つまり国指定か条例指定かにかかわらず、歴史的な価値を持つ木造建造物は幅広く対象になり得るということです。
自分の建物が対象になるかどうかを確認したうえで、次は通知が求める中身を見ていきましょう。

うちの建物は市の条例で指定された文化財なんですが、対象になりますか。

国指定でなくても対象になり得ます。
条例指定の文化財も参考にすることが望ましいとされていますよ。

通知が求める3つの徹底事項とは何か

敷地を巡視する人と監視カメラ、清掃された建物周辺
通知は具体的に3つの事項の徹底を求めています。
建物内部だけでなく、敷地全体を見渡す視点が特徴です。
1 文化財建造物等における巡視等の励行、防犯カメラや炎センサーの設置、敷地内への入場管理、建造物周辺の可燃物管理等の防火対策を強化徹底すること。2 防火管理、消防用設備等の設置・維持など消防法上の防火対策を確実に実施すること。3 火災発生時の初期対応(通報、初期消火等)を確実に実施できる体制を確保するとともに、訓練により徹底すること。(文化財建造物等における防火対策の徹底について 平成21年3月23日 消防予第122号)
求められているのは、巡視・防犯カメラや炎センサー・入場管理・可燃物管理という周辺警備の徹底です。
まず巡視の励行と、防犯カメラや炎センサーの設置による監視体制の強化が挙げられています。
次に敷地内への入場管理と、建造物周辺に積もった枯れ葉や資材などの可燃物の管理が求められます。
これらに加えて、防火管理者の選任や消防用設備等の設置・維持といった通常の消防法上の対策も、引き続き確実に実施する必要があります。
そのうえで、火災発生時に通報や初期消火を確実に行える体制を確保し、訓練で徹底することが3つ目の柱です。

監視カメラは自分たちで用意しないといけないんですか。

はい、消防用設備等とは別に、防犯目的の設備として用意する必要があります。
設置する範囲は敷地全体を意識してください。

実務で見落としやすいのはどこか

夜間に監視カメラだけが稼働する無人の文化財建造物
3つの事項はどれも重要ですが、現場で特に抜け落ちやすい点があります。
それは、人手による対応が届きにくい時間帯の存在です。
文化財建造物等における巡視等の励行、防犯カメラや炎センサーの設置、敷地内への入場管理、建造物周辺の可燃物管理等の防火対策を強化徹底すること。(文化財建造物等における防火対策の徹底について 平成21年3月23日 消防予第122号)
見落としやすいのは、夜間や閉館後といった無人時間帯の警備です。
日中は職員による巡視が行き届いていても、夜間は誰もいなくなる文化財建造物は少なくありません。
防犯カメラや炎センサーは、こうした人の目が届かない時間帯を補うための対策であり、消防法令上の義務設備ではなく任意の警備設備である点にも注意が必要です。
自動火災報知設備を設置していても、それは火災の早期発見にとどまり、放火の未然防止にはつながりません。
「設備は入れているから大丈夫」という思い込みが、いちばんの落とし穴になります。

夜間は誰もいないので、そこが心配です。

そこが通知の一番のポイントです。
人がいない時間帯こそ、機械警備で補う発想が必要なんです。

明日からなにを確認すればよいのか

巡視ルートの図面を確認する人と落ち葉を掃除する様子
最後に、明日から確認しておきたい手順を整理します。
3つの事項を、順番に自分の建物へ当てはめてみましょう。
各都道府県消防主管部長にあっては、貴都道府県内の市町村に対してその旨周知するようお願いします。なお、本通知は、消防組織法第37条の規定に基づく助言として発出するものであることを申し添えます。(文化財建造物等における防火対策の徹底について 平成21年3月23日 消防予第122号)
まずは巡視のルートと頻度を見直すところから始めましょう。
特に夜間や閉館後の巡視や監視の空白がないかを点検します。
続いて防犯カメラや炎センサーが敷地全体をカバーできているか、死角がないかを確認します。
あわせて建造物周辺の可燃物(枯れ葉・資材・ごみなど)を取り除き、定期的な管理を消防計画に反映しましょう。
この通知は消防組織法第37条に基づく助言であり、罰則を伴うものではありませんが、判断に迷う点は所轄の消防署に相談しておくと安心です。

まずは何から手をつければいいですか。

巡視のルートと頻度を見直すところからです。
あわせて可燃物の除去も済ませておきましょう。

よくある質問

Q防犯カメラや炎センサーの設置は消防法令上の義務ですか?
A義務ではありません。この通知は消防組織法第37条に基づく助言であり、防犯カメラや炎センサーは任意の警備対策として求められています。
Qこの通知の対象は国宝・重要文化財に限られますか?
A限られません。国指定の文化財建造物だけでなく、これに準ずる歴史的建造物も対象とされ、地方公共団体が条例で指定した文化財も参考にすることが望ましいとされています。
Q通知が求める可燃物管理とは具体的に何を指しますか?
A建造物周辺に積もった枯れ葉や資材、ごみなど、放火や延焼の媒介になりうるものを取り除き、管理することを指します。
Qすでに自動火災報知設備を設置していれば追加の対策は不要ですか?
A不要ではありません。自動火災報知設備は火災の早期発見にとどまり、放火の未然防止にはつながらないため、巡視や監視カメラとあわせて行うことが通知の趣旨です。

まとめ

平成19年から21年にかけて相次いだ文化財建造物の焼失を受け、消防庁が防火対策の徹底を通知しました。
対象は国宝・重要文化財等だけでなく、これに準ずる歴史的建造物も含まれます。
通知は巡視の励行・防犯カメラや炎センサーの設置・敷地内への入場管理・可燃物管理の徹底を求めています。
防火管理や消防用設備等の設置・維持など、通常の消防法上の対策も引き続き確実に実施する必要があります。
火災発生時の初期対応体制を確保し、訓練で徹底することが求められます。
防犯カメラや炎センサーは消防法令上の義務設備ではなく、任意の警備対策です。
夜間や閉館後の無人時間帯こそ、巡視や機械警備の空白になりやすい点に注意しましょう。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 文化財建造物等における防火対策の徹底について(通知)(平成21年3月23日 消防予第122号)
  • 消防法施行令(昭和36年政令第37号)別表第一(十七)項
  • 消防組織法(昭和22年法律第226号)第37条

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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