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危険物を売る店舗はなぜ二つに分かれるのか|第一種と第二種で変わる壁と窓の耐火基準を解説

白いヘルメットとえんじ色の作業着姿の担当者が塗料缶が並ぶ棚を点検する様子

店舗の棚に灯油や塗料の缶がそのまま並んでいるのを見て、消防法上どんな施設に当たるか考えたことはあるでしょうか。
容器に入れたまま危険物を小売りする店舗は「販売取扱所」と呼ばれ、実は建物の造りに細かい基準が定められています。
扱う量が増えるほど基準は厳しくなり、途中に区分の境目が置かれています。
この記事では指定数量の倍数で分かれる第一種と第二種の建築基準の違いを、政令の条文にそって解説します。

店で灯油や塗料の缶をそのまま並べて売っているんですが、これも許可がいる施設なんでしょうか。

容器のまま危険物を小売りする店舗は「販売取扱所」という許可施設になります。

うちみたいに小さい店でも同じ基準になるんですか。

いいえ。
扱う量に応じて基準が二段階に分かれています

この記事の結論
  • 店舗で容器のまま危険物を小売りする施設は「販売取扱所」と呼ばれ、指定数量の倍数によって二種類に区分されます
  • 指定数量の倍数が十五以下なら第一種、十五を超え四十以下なら第二種になります
  • 第一種は建築物の一階に限られ、壁は準耐火構造以上とする必要があります
  • 第二種になると壁・柱・床・はりのすべてを耐火構造にしなければなりません
  • 窓や出入口には防火設備を、延焼のおそれがある部分には自動閉鎖の特定防火設備を設けます

危険物を売る店舗は容器のまま小売りする販売取扱所で指定数量の倍数が十五倍以下なら第一種四十倍まで第二種に区分され規模が大きくなるほど耐火性能が求められることを示した図解

販売取扱所とは何を指すのか

容器入りの危険物を並べた棚がある店舗と隣の倉庫の外観
危険物を店舗で売っているからといって、必ずしも普通の小売店と同じ扱いにはなりません。
容器に入れたまま危険物を販売する店舗は、消防法令上「販売取扱所」という独立した施設として区分されます。
危険物の規制に関する政令第三条 法第十条の取扱所は、次のとおり区分する。(略) 二 店舗において容器入りのままで販売するため危険物を取り扱う取扱所で次に掲げるもの(以下略)
容器に入れたまま危険物を売る店舗は、政令が定める独立した施設区分です。
灯油や塗料、殺虫剤などを容器入りのまま店頭で販売する場合、指定数量以上を扱うのであれば販売取扱所としての許可が必要になります。
一般の雑貨店やホームセンターの売場であっても、指定数量を超えれば例外ではありません。
まずは自分の店が「容器入りのまま危険物を扱っている」施設に当たるかどうかを確認することが出発点です。

普通の雑貨店との違いがよく分かりません。

容器のまま危険物を扱う点が違います。
次は区分の分かれ目を見てみましょう。

第一種と第二種はどこで分かれるのか

壁の厚みが異なる小さな店舗と大きな二階建ての店舗が並ぶ様子
販売取扱所は、扱う危険物の量によって二段階に区分されています。
政令はこの倍数を条文の中で具体的な数値で定めています。
危険物の規制に関する政令第三条第二号 (略) イ 指定数量の倍数(法第十一条の四第一項に規定する指定数量の倍数をいう。)が十五以下のもの(以下「第一種販売取扱所」という。) ロ 指定数量の倍数が十五を超え四十以下のもの(以下「第二種販売取扱所」という。)
指定数量の倍数が十五を境に、第一種と第二種に分かれます。
指定数量の倍数が十五以下であれば第一種販売取扱所、十五を超え四十以下であれば第二種販売取扱所です。
四十を超える量を店舗で扱うことは、そもそも販売取扱所としては認められていません。
複数の危険物を扱う店舗は、それぞれの数量を指定数量で割った値を合算して倍数を求めます。

うちの店の倍数、計算したことがありませんでした。

棚卸しの数量から一度計算してみてください。
十五と四十が目安になります。

第一種にはどんな建築基準があるのか

店舗内部でオレンジ色の隔壁が売場と奥の保管室を仕切る様子
第一種販売取扱所には、建物の位置や構造に関する具体的な基準が定められています。
規模は小さくても、内容は詳細です。
危険物の規制に関する政令第十八条 第一種販売取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。 一 第一種販売取扱所は、建築物の一階に設置すること。 二 見やすい箇所に標識及び掲示板を設けること。 三 建築物の第一種販売取扱所の用に供する部分は、壁を準耐火構造とすること(他の部分との隔壁は耐火構造とすること)。 四 はりを不燃材料で造り、天井を設ける場合は不燃材料で造ること。 五 上階がある場合は上階の床を耐火構造とし、上階のない場合は屋根を耐火構造とし、又は不燃材料で造ること。 六 窓及び出入口には防火設備を設けること。 七 窓又は出入口にガラスを用いる場合は網入ガラスとすること。 八 電気設備は製造所の例によること。(以下略)
第一種は「一階限定」「壁は準耐火構造以上」が基本です。
まず建築物の一階にしか設置できず、上階や地階に設けることはできません。
壁は準耐火構造とし、隣接する他の部分との隔壁は一段重い耐火構造にする必要があります。
窓や出入口には防火設備を設け、ガラスを使う場合は網入ガラスにするなど、開口部にも細かい条件が付きます。

うちの店、隔壁が普通の壁のままかもしれません。

隔壁だけは耐火構造が必須です。
設計図で確認してみましょう。

第二種になるとどこが厳しくなるのか

網入りガラスの窓と自動閉鎖の丁番付き出入口がある店舗の正面
扱う量が増える第二種販売取扱所は、第一種の基準に加えていくつかの点が引き上げられます。
特に壁や窓の扱いが変わります。
危険物の規制に関する政令第十八条第二項 第二種販売取扱所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、前項第一号、第二号及び第七号から第九号までの規定の例によるほか、次のとおりとする。 一 建築物の第二種販売取扱所の用に供する部分は、壁、柱、床及びはりを耐火構造とするとともに、天井を設ける場合は不燃材料で造ること。 二 上階がある場合は上階の床を耐火構造とするとともに、上階への延焼を防止するための措置を講ずることとし、上階のない場合は屋根を耐火構造とすること。 三 窓は、延焼のおそれのない部分に限り設けることができるものとし、防火設備を設けること。 四 出入口には防火設備を設けること。ただし、延焼のおそれのある部分に設けられる出入口には、随時開けることができる自動閉鎖の特定防火設備を設けること。
第二種は壁・柱・床・はりのすべてが耐火構造になります。
第一種で「壁だけ準耐火構造」だったところが、第二種では壁・柱・床・はりのすべてを耐火構造にしなければなりません。
窓についても、第一種では設置場所に制限がありませんでしたが、第二種は延焼のおそれのない部分にしか設けられません。
「第一種と同じ感覚で店を大きくした」まま量だけ増やすと、壁・窓・出入口のいずれかで基準に届かなくなる落とし穴があります。

取扱量を増やして第二種にする予定なんですが、そのままの建物で大丈夫でしょうか。

壁と柱と床とはりの構造から見直しが必要です。
増量前に必ず確認してください。

明日からなにを確認すればよいのか

担当者がクリップボードを持ち容器が並ぶ棚を確認する様子
自分の店舗がどちらの区分に当たるかで、必要な建築基準が変わります。
まず倍数を確認したうえで、建物の構造を点検しましょう。
  • 店舗で扱う危険物の指定数量の倍数を計算し直す
  • 倍数が十五以下か、十五を超え四十以下かで区分を確認する
  • 壁・柱・床・はりが区分に応じた耐火性能を満たしているか図面で確かめる
  • 窓や出入口の防火設備・網入ガラスが揃っているかを点検する
危険物の規制に関する政令第三条第二号・第十八条(前掲のとおり)を、自分の店舗の図面や取扱数量と照らし合わせて確認することが実務上の第一歩になります。

今日中に棚の在庫から倍数を計算してみます。

壁と窓の構造もあわせて図面で確認しましょう。

よくある質問

Q販売取扱所と一般の雑貨店はなにが違うのですか?
A危険物を容器に入れたまま小売りする点が違います。取り扱う数量が指定数量以上になると、消防法上の許可施設である販売取扱所として扱われます。
Q指定数量の倍数はどうやって計算するのですか?
A貯蔵し、または取り扱う危険物の数量を、品名ごとの指定数量で割って合計します。複数の危険物を扱う店舗は合算した数値で判定します。
Q第一種と第二種で許可の手続きは違いますか?
Aどちらも市町村長等の設置許可が必要な点は共通です。ただし建築物の基準が異なるため、設計段階で区分を先に確定させておく必要があります。
Q危険物を配合する室にも基準はありますか?
Aあります。床面積や壁の区画、出入口のしきいの高さなど専用の基準が定められています。詳しくは別記事で解説していますのでご確認ください。

まとめ

店舗で容器のまま危険物を小売りする施設は「販売取扱所」と呼ばれる
指定数量の倍数十五以下なら第一種、十五を超え四十以下なら第二種に区分される
第一種は建築物の一階に設置し、標識と掲示板を掲げる
第一種の壁は準耐火構造以上とし、他の部分との隔壁は耐火構造にする
第二種になると壁・柱・床・はりのすべてを耐火構造にする
第二種の窓は延焼のおそれのない部分に限って設けられる
出入口には防火設備を、延焼のおそれがある部分には自動閉鎖の特定防火設備を設ける

今日中に自分の店の指定数量の倍数を計算してみます!

建築の基準は着工前に確認するのが一番確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第三条第二号
  • 危険物の規制に関する政令第十八条
  • e-Gov法令検索

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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