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移送取扱所で災害のおそれが生じたら周辺市町村はどう動けるのか|第12条の4の要請と第12条の5の事前協議を解説

移送取扱所が市町村をまたぐとだれが動けるのかを解説する記事のアイキャッチ画像、パイプライン設備の前で作業着姿の担当者が説明している写真

石油やガスをパイプラインで運ぶ移送取扱所は、一つの市町村の中だけで完結する施設とは限りません。
配管が市町村の境界をまたいで延びていると、災害のおそれが生じたときに「誰が動けるのか」が分かりにくくなります。
実は消防法は、こうした場面のために関係する市町村長が動ける仕組みと、事故が起きる前にあらかじめ取り決めておく仕組みを別々に用意しています。
この記事では、消防法第12条の4が定める関係市町村長の要請と、第12条の5が定める事前協議の仕組みを、実際の条文にもとづいて解説します。

うちの近くに配管が何本も通っている移送取扱所があるんですが。
市町村をまたいでいると、なにか特別な決まりがあるんですか。

移送取扱所は配管でつながっているため、消防法にも他の施設とは違う仕組みがあります。

災害のおそれが出てきたとき、周りの市町村はなにもできないんですか。

いいえ、関係市町村長が動ける規定があります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 移送取扱所は配管で市町村をまたぐため、都道府県知事又は総務大臣が許可を出す仕組みになっています(消防法第11条第1項第4号)
  • 関係市町村長は、移送取扱所に災害が発生するおそれがあると認めるときは、許可した知事等に必要な措置を講ずるよう要請できます(消防法第12条の4第1項)
  • 要請を受けた知事等は必要な調査を行い、是正命令や使用停止命令等の措置を講じたうえで関係市町村長へ速やかに通知しなければなりません(消防法第12条の4第2項・第3項)
  • 政令で定める移送取扱所の所有者等は、事故が起きる前にあらかじめ応急の措置について関係市町村長と協議しておかなければなりません(消防法第12条の5)
  • この事前協議の義務そのものには、消防法上の罰則が定められていません

移送取扱所が市町村をまたぐ配管でつながっている図と、市町村長の要請・知事等の措置・事前協議の流れを示した図解

移送取扱所とはどんな施設で なぜ市町村をまたぐ規定があるのか

パイプラインが市町村の境界線をまたいで走り 両側に別々の建物群があるイラスト
危険物を扱う施設の多くは、一つの市町村の中に収まっています。
ところが配管でつながる移送取扱所は、この前提そのものが変わります。
製造所、貯蔵所又は取扱所を設置しようとする者は、(略)次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める者の許可を受けなければならない。(略)四 前号の移送取扱所以外の移送取扱所 当該移送取扱所が設置される区域を管轄する都道府県知事(二以上の都道府県の区域にわたつて設置されるものについては、総務大臣)(消防法第11条第1項第4号)
移送取扱所は、配管によって危険物の移送を行う施設として区別されています。
一つの消防本部等所在市町村の区域だけに収まる移送取扱所は市町村長が許可を出しますが、それ以外は都道府県知事が、二以上の都道府県にまたがる場合は総務大臣が許可を出します。
許可権者がこのように分かれているのは、配管が行政区域をまたいで延びるという移送取扱所の性質そのものが理由です。
この先で見る第12条の4・第12条の5は、この「区域をまたぐ」という性質があるからこそ置かれている規定です。

普通のタンクや工場と違って、配管はずっと先まで延びていますもんね。

はい、だからこそ関係する市町村が複数出てくることがあります。

関係市町村長はどんなときに知事等へ要請できるのか

小さな市役所の建物から大きな県庁の建物へ 注意マーク付きの書類フォルダが手渡されるイラスト
許可を出したのは知事等であっても、日々の異変に気づくのは近くの市町村であることが少なくありません。
そこで消防法は、関係市町村長が動ける入り口を用意しています。
関係市町村長は、第11条第1項第4号の規定による都道府県知事又は総務大臣(以下この条において「知事等」という。)の許可に係る移送取扱所の設置若しくは維持又は当該移送取扱所における危険物の取扱いに関し災害が発生するおそれがあると認めるときは、当該知事等に対し、必要な措置を講ずべきことを要請することができる。(消防法第12条の4第1項)
要請できるのは、災害が発生する「おそれ」がある段階からです。
条文が対象にしているのは、移送取扱所の設置・維持そのものと、そこでの危険物の取扱いの両方です。
要請の相手は、その移送取扱所に許可を出した知事等に限られます。
ここでいう「関係市町村長」は、必ずしも許可を出した市町村長と同じとは限らず、配管が通る区域の市町村長も含まれ得ます。
まずは自分の市町村が「関係市町村」にあたるかどうかを、配管のルートで確認しておくことが出発点です。

許可は県が出しているのに、うちの市が声を上げてもいいんですか。

はい、関係市町村長として要請できる仕組みです。
気づいた時点で早めに声を上げてください。

要請を受けた知事等はどんな措置を講じ どう通知するのか

配管のバルブ基地でレンチを使い作業する作業員と チェックマークの掲示板のイラスト
要請を受けたからといって、知事等がそのまま措置を強制されるわけではありません。
条文は、要請のあとに調査を挟む二段構えになっています。
知事等は、前項の要請があつたときは、必要な調査を行い、その結果必要があると認めるときは、第11条の5第1項、第12条第2項又は前条第1項の規定による措置その他必要な措置を講じなければならない。知事等は、前項の措置を講じたときは、速やかに、その旨を関係市町村長に通知しなければならない。(消防法第12条の4第2項・第3項)
要請のあとに来るのは、まず調査です。
知事等は要請を受けたら必要な調査を行い、そのうえで必要と認めた場合に限り、是正命令(第11条の5)・修理改造移転命令(第12条第2項)・使用の一時停止や制限(第12条の3)などの措置を講じます。
措置を講じたときは、速やかに関係市町村長へ通知することも義務づけられています。
つまり要請した市町村は、その後の結果を知らされないまま放置されることはありません。
要請してから通知が来るまでの間、状況を照会してよい相手は許可を出した知事等になります。

要請すればすぐに措置してもらえるわけではないんですね。

はい、調査が先に入ります。
そのぶん結果は必ず通知されます。

事故が起きる前になぜ事前協議をしておかなければならないのか

合意書を手にした作業員と 書類なしで漏れに慌てる作業員を比べたイラスト
ここまでは、災害の「おそれ」が生じたあとの話でした。
消防法は、事故そのものが起きる前に済ませておくべき手続も別に定めています。
政令で定める移送取扱所の所有者、管理者又は占有者は、当該取扱所について危険物の流出その他の事故が発生し、危険な状態となつた場合において講ずべき応急の措置について、あらかじめ、関係市町村長と協議しておかなければならない。(消防法第12条の5)
この協議は、事故が起きてからでは間に合いません。
対象になるのは政令で定める移送取扱所に限られ、すべての移送取扱所が対象になるわけではありません。
協議しておく中身は、流出などの事故が発生し危険な状態になった場合に講ずべき応急の措置そのものです。
第16条の3が定める事故発生後の応急措置・通報の義務とは別に、事前の準備として置かれている規定になります。
条文を見るかぎり、この事前協議を怠ったこと自体への罰則は定められていません。とはいえ協議をしていなければ、実際に事故が起きたときの連携が遅れることは避けられません。

罰則が無いなら、後回しにしても大丈夫ということですか。

いいえ、法律上の義務であることに変わりはありません。
後回しにせず早めに済ませましょう。

明日から移送取扱所についてなにを確認すればよいのか

デスクでチェックリストを確認する作業員と 複数の市町村エリアを示す卓上模型のイラスト
要請の仕組みも事前協議の仕組みも、平時のうちに確認しておけば難しくありません。
次の点を押さえておきましょう。 備えは事故の前にしかできません。
以下のポイントを、日頃から確認しておきましょう。
  • 自社の移送取扱所の配管がどの市町村の区域を通っているかを地図で把握しているか
  • 許可を出した知事等(都道府県知事又は総務大臣)の連絡先を把握しているか
  • 自社の施設が第12条の5の政令で定める移送取扱所にあたるかを確認しているか
  • 事故発生時の応急の措置について、関係市町村長との協議を済ませているか
  • 協議の内容が、設備や体制の変更にあわせて古いままになっていないか

まずは配管がどの市町村を通っているか、社内で地図を作り直してみます。

それがいいですね。
関係市町村の洗い出しが、協議の第一歩になります。

よくある質問

Q移送取扱所ではない普通の給油取扱所にも第12条の4や第12条の5は適用されますか?
A第12条の4は移送取扱所全般が対象ですが、第12条の5の事前協議の義務は政令で定める移送取扱所に限られます。通常の給油取扱所はこの義務の対象に含まれません。
Q関係市町村長が要請すれば、知事等は必ず措置を講じてくれますか?
A条文は「必要な調査を行い、その結果必要があると認めるときは」措置を講じるとしています。要請があれば無条件に措置が実施されるわけではなく、調査を経て判断される仕組みです。
Q事前協議は一度しておけば、その後はなにもしなくてよいですか?
A条文は協議の見直し時期までは定めていません。ただし設備や体制が変わったときは、内容が古いままにならないよう関係市町村長と確認しておくことが実務上望まれます。
Q第12条の4の要請ができるのは移送取扱所がある市町村だけですか?
A条文がいう「関係市町村長」は、災害発生のおそれがあると認める市町村長であり、許可を出した市町村長と同一とは限りません。配管が通る市町村であれば、関係市町村になり得ます。

まとめ

移送取扱所は配管で市町村をまたぐため、都道府県知事又は総務大臣が許可を出します(消防法第11条第1項第4号)
関係市町村長は、災害発生のおそれがあると認めるときに知事等へ必要な措置を要請できます(消防法第12条の4第1項)
要請を受けた知事等は必要な調査を行い、是正命令や使用停止命令等の措置を講じなければなりません(消防法第12条の4第2項)
知事等は講じた措置を速やかに関係市町村長へ通知しなければなりません(消防法第12条の4第3項)
政令で定める移送取扱所の所有者等は、事故が起きる前にあらかじめ応急の措置を関係市町村長と協議しておかなければなりません(消防法第12条の5)
この事前協議を怠っても、消防法上の罰則は定められていません
とはいえ協議をしていなければ、実際に事故が起きたときの対応が遅れかねません

要請と事前協議が別の仕組みだと分かって、頭が整理できました

関係市町村との協議の進め方は、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法第11条第1項第4号(移送取扱所の許可権者)
  • 消防法第12条の4(関係市町村長の要請と知事等の措置・通知)
  • 消防法第12条の5(移送取扱所の事故発生時における応急措置の事前協議)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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