隣の家から出た火事でうちが燃えても、なぜ隣の家に賠償を請求できないのか、疑問に思ったことはありませんか。
明治時代からある「失火ノ責任ニ関スル法律」が、通常の損害賠償のルールをそっくり打ち消しているからです。
ただし、火の元の管理があまりにもずさんだった場合には、その保護が外れる仕組みになっています。
本記事では失火責任法の仕組みと、消防法上の防火管理義務との違いを解説します。
うちの隣で火事があったら、燃え移らないか心配になります。
もし燃え移ったとき、賠償してもらえるものなんでしょうか。
実は、隣家からのもらい火では原則として賠償請求できないんです。
失火ノ責任ニ関スル法律という法律が理由になっています。
え、そんな法律があるんですか。
知らずに火の元の管理を怠っていたら怖いです。
重大な過失があると保護が外れます。
順番に見ていきましょう。
- 隣家からのもらい火では、民法上の損害賠償責任が原則として発生しません。
- 根拠は失火ノ責任ニ関スル法律という明治32年制定の法律です。
- この法律は民法第709条の適用を失火の場合に限って除外しています。
- 火の元の管理に重大な過失があれば、この保護は外れます。
- 民事上の免責と消防法上の防火管理義務は、まったく別の話です。
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目次
失火責任法はなぜできたのか

明治時代の日本の住まい方を振り返ると、その背景が見えてきます。
ひとたび火が出れば隣家へ燃え移ることを完全には防ぎようがなく、失火者に通常どおりの重い賠償責任を負わせるのは酷だという考え方です。
そこで明治32年、失火の場合に限って民法の損害賠償規定を適用しないという特別な法律がつくられました。
制定から120年以上たった今も、条文は一字も改正されていません。
住宅の構造が変わった現代でも、この考え方はそのまま生きています。
そんなに古い法律が今も生きているんですね。
知りませんでした。
民法ができる前から続く、特別法のひとつです。
次に、具体的に何を除外しているのか見てみましょう。
民法第709条の適用は何が除外されるのか

失火責任法は、この基本ルールの一部だけをピンポイントで打ち消しています。
ところが失火責任法は、失火という場面に限ってこの第709条を適用しないと定めています。
つまり軽い不注意による火の不始末で隣家に燃え移っても、原則として損害賠償を請求されません。
「失火」とは故意でない出火のことで、放火は最初から対象に含まれません。
除外されるのはあくまで民事上の賠償責任で、刑事上の責任とは別に考える必要があります。
じゃあ、ちょっと不注意で火を出してしまっても大丈夫なんですか。
それなら安心できます。
軽い不注意ならそうです。
ただし重大な過失があると話が変わってきます。
重大な過失があるとどう変わるのか

「重大な過失」と評価されると、この法律の保護そのものが働かなくなります。
重大な過失とは、少し注意すれば火の不始末を防げたのに、ほとんど見過ごしに近い状態で放置したような場合を指すとされています。
火にかけた鍋を長時間放置してその場を離れる、消したはずのたばこの火を確かめないといった行為が、代表的な例として挙げられます。
軽度の不注意との境目は個別の事情で判断されるため、一律の基準があるわけではありません。
だからこそ、日頃の火の始末そのものを丁寧に行うことが最善の備えになります。
どこからが重大な過失になるのか、境目が難しそうですね。
気をつけないといけません。
はい、線引きは個別の事情次第です。
次は消防法上の義務との関係を見てみましょう。
消防法上の義務まで免除されるのか

民事責任と行政上の義務は、はじめから別の枠組みです。
消防吏員は屋外での危険な火の使用を発見すれば、失火が実際に起きたかどうかにかかわらず、禁止や制限を命じることができます。
また防火対象物では、防火管理者が消防計画に基づいて火気の使用や取扱いを監督する義務を負っています。
失火責任法はあくまで民事上の賠償の話であり、これらの行政上の義務とは適用される場面がそもそも違います。
「賠償されないなら安全対策は不要」という考え方は成り立ちません。
賠償の話と防火管理の話は、別物として考えないといけないんですね。
混同していました。
義務は義務として残ります。
最後に、日頃の備えを確認しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

賠償を請求されない立場でも、備えておくべきことは変わりません。
ストーブやコンロのそばを離れるときの習慣、喫煙後の後始末など、重大な過失と評価されうる行為を洗い出しておくと安心です。
防火対象物であれば、防火管理者による火気の監督が消防法上の義務として続いていることも忘れないでください。
そのうえで、類焼損害保険など、もらい火による被害そのものに備える保険への加入も検討する価値があります。
賠償を請求できない前提だからこそ、自衛の備えが重要になります。
賠償をあてにできない以上、自分で備えておくしかないんですね。
保険も見直してみます。
日頃の備えが最終的にご自身を守ります。
気になることがあれば、いつでもご相談ください。
よくある質問
まとめ
失火責任法の意味がよく分かりました。
火の始末を今日から見直します!
日頃の備えが一番の対策になります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 失火ノ責任ニ関スル法律(明治32年3月8日法律第40号)
- 民法第709条
- 消防法第3条第1項・第8条第1項
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。重大な過失に当たるかどうかは個別の事情によって判断が分かれます。個別の事案についての法的な判断は弁護士に、消防法令の適用は所轄消防署にご確認ください。





