地下駐車場や電算室で、白い大きなガスボンベを見たことはありませんか。
あれはハロゲン化物消火設備という、水や泡を使わずに火を消す設備です。
ただし中身の薬剤は、いま自由に補充できるものではありません。
通知が示したのはオゾン層を守るために新しい生産が止められたという事実です。
うちの機械室にも古いガスの消火設備があります。
最近、補充できないと業者に言われたのですが本当ですか。
本当です。
ハロン消火剤はオゾン層を壊す物質に指定され、新しい生産ができなくなりました。
でも今もハロンの設備自体は使われていますよね。
はい、使えます。
ただし補充のしくみが大きく変わりました。順番に見ていきましょう。
- ハロンは「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」で特定物質に指定され新たな生産が禁止されました
- 根拠は平成3年8月16日 消防予第161号・消防危第88号「ハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等について」です
- 対象は駐車場や機械室だけでなく、美術品庫や危険物施設の計器室のような水や泡が使えない部屋にも及びます
- 既存設備の補充や廃棄にはハロンバンク推進協議会の管理委員会の承認が必要です
- 補充できない設備は代替の消火設備への切替えも検討対象になります
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目次
なぜハロン消火設備は使用が控えられるようになったのか

何が起きて、どんな決定がされたのかを確認しましょう。
オゾン層は、太陽からの有害な紫外線を吸収して地上の生き物を守る役目を持っています。
ハロンなど一部の物質がこの層を壊すことが分かり、「オゾン層の保護のためのウィーン条約」とその実施細則にあたるモントリオール議定書で、生産と消費が段階的に規制されました。
消防庁はこれを受けてハロン抑制対策検討委員会を設け、新設の抑制方法を検討したうえで、この通知を発しています。
つまりハロンの消火設備は、性能ではなく地球環境への影響を理由に、新しく作ることができなくなったということです。
うちのビルにも古いハロン設備があるので、他人事じゃないですね。
はい、まずはいつ設置されたものかを確認しておくと、この先の話が早くなります。
どんな建物や設備がハロン消火設備を使っているのか

どんな場所でハロンが選ばれてきたのかを見てみましょう。
通知が示す使用用途の例には、重要文化財や美術品庫、展覧室、展示室、危険物施設の計器室、研究試験室、書庫のような場所が並びます。
これらに共通するのは、水や泡をかけると設備や中身のほうが壊れてしまうという事情です。油絵などの美術品は消火剤が直接かかっただけで変質するおそれがあると、通知自身が注意を促しています。
だからこそ電気絶縁性があり、放射後に拭き取る手間も少ない気体の消火剤が選ばれてきました。ハロンはその代表格だったということです。
自分の建物のどの部屋がこれに当たるのか、消防計画や設備台帳で確認しておきましょう。
うちの資料室にも似た設備があります。水をかけられないから、というのは納得です。
そのとおりです。
次は、その設備のガスの供給そのものに通知が何を求めているかを見ていきます。
通知はハロンの供給に何を求めているのか

通知が用意した仕組みを確認します。
消防庁の指導のもと設立されたハロンバンク推進協議会が、平成6年3月から全国のハロンのデータベース管理と回収・供給の調整を行っています。
設備を新設したり、ガスを補充したりする「ハロンの供給」を受けるには、協議会に置かれたハロン管理委員会の承認が必要です。着工届出の際には、承認印の押された供給申請書の写しを添付することとされています。
つまり今あるハロンは、新品ではなく回収・再生されたガスを、承認を受けたうえで使い回している状態だということです。
設備を廃棄するときも、事前に消防署か協議会へ連絡することが求められています。
補充イコール新品購入、だと思っていました。
多くの方がそう思われます。
実際には承認を受けた回収ガスだけが使えるという点が見落とされがちです。
実務で見落としやすいのはどこか

点検や更新のときに確認したいポイントです。
ガスを補充したり容器を入れ替えたりするときは、通常の設置届や設置許可の申請にあわせて、管理委員会の承認印がある供給申請書の写しを添付することが求められています。
この承認を取らずに業者まかせで補充してしまうと、届出の段階で書類不備を指摘されることになります。
また、設備を古い建物ごと廃棄する場合も、10日前までに所轄消防署か協議会へ連絡することになっているため、解体や大規模改修の工程に組み込んでおく必要があります。
「昔からある設備だから」と後回しにせず、次の点検や更新の前に一度、この手続きの有無を業者に確認しておきましょう。
うちは何十年も同じ設備なので、承認のことなんて考えたこともなかったです。
多くの建物がそうです。
次の更新や点検の前に、承認の記録が残っているかを一度確認してみましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

難しい手続きではなく、確認と相談が中心です。
消防計画や点検報告書には、消火剤の種類が記載されています。「ハロン1301」「ハロン1211」などの表記があれば対象です。
次に、点検業者や消防設備士に供給申請書や承認印の記録が残っているかを確認してもらいます。記録が見当たらない場合は、次の補充や更新の前に協議会への確認を依頼しましょう。
そのうえで、老朽化が進んでいる設備については、二酸化炭素消火設備やスプリンクラー設備など代替の消火設備への切替えも選択肢に入れて検討します。
どの方法を選ぶにせよ、水や泡が使えない部屋である以上、専門家に相談しながら計画的に進めることが遠回りに見えて一番確実です。
まずは消防計画を見返して、うちの設備がハロンかどうか確かめてみます。
それが第一歩です。
わからないことがあれば、点検の機会にあわせて相談してください。
よくある質問
まとめ
自分の設備がハロンかどうか、まず確認してみます!
思っていたより見通しが立ちました。
そうしていただくと安心です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- ハロゲン化物消火設備・機器の使用抑制等について(通知)(平成3年8月16日 消防予第161号・消防危第88号)
- ハロンバンクの運用等について(通知)(消防庁)
- 「オゾン層の保護のためのウィーン条約」及び「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





