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製造所の建築物はなぜ床や換気にも基準があるのか|採光照明換気と蒸気排出設備の技術基準を解説

担当者が製造所建築物の床の傾斜と貯留設備を確認している写真

製造所の建築物には、壁や窓の耐火構造だけでなく床や換気にも技術上の基準が定められています。
床の傾斜や貯留設備、採光・照明・換気の設備、蒸気や粉じんを排出する設備の3つが対象です。
いずれも危険物の規制に関する政令第九条第一項に定められた基準で、規模や用途を問わずすべての製造所に適用されます。
この記事では、製造所の建築物内部に求められる床・採光照明換気・蒸気排出の3つの基準を順番に整理します。

床にちょっと傾斜を付けて、排水口があれば足りますよね。

いいえ、傾斜と貯留設備の両方が必要です。

採光や換気にも決まった基準があるんですか。

はい、ただし数値までは政令に定められていません

この記事の結論
  • 製造所の建築物には、危険物の規制に関する政令第九条第一項第九号から第十一号までの基準が適用されます。
  • 床は危険物が浸透しない構造とし、傾斜と貯留設備を設けます。
  • 採光・照明・換気の設備は、必要な機能を満たせば足り、具体的な数値基準は政令に定められていません。
  • 可燃性の蒸気や微粉が滞留するおそれのある建築物には、屋外の高所へ排出する設備が必要です。
  • 貯留設備の定義は、屋外貯蔵所の特例基準など他の規定でも引用されています。

製造所の建築物に求められる床の傾斜と貯留設備、採光照明換気の設備、蒸気の屋外排出設備をまとめた図解

製造所の建築物にはなぜ床や換気にも基準があるのか

製造所の建築物の内部に、傾斜した床と貯留設備、窓、屋根の排出設備が組み込まれている全体像のイメージ
製造所の壁や窓、屋根については、耐火構造や防火設備としての基準がすでに個別の号で定められています。
その内側、建築物の中身にあたる床・採光・照明・換気・蒸気の排出にも、別の基準が用意されています。
危険物の規制に関する政令第九条第一項 法第十条第四項の製造所の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。(第九号 床の傾斜及び貯留設備/第十号 採光、照明及び換気の設備/第十一号 可燃性の蒸気又は可燃性の微粉を屋外の高所に排出する設備)
製造所の建築物には、外側の構造とは別に内部の設備にも基準があります。
壁・窓・屋根の耐火構造や防火設備はすでに個別の号で定められています。
これに加えて、床の構造、採光・照明・換気の設備、蒸気や粉じんの排出設備という3つの号が用意されています。
性質の異なる3つの基準なので、それぞれの号ごとに何を求めているかを順番に見ていきます。

床や換気は、耐火構造の基準と何が違うんですか。

建築物の中身の安全を守るための基準です。

床にはどんな構造が求められるのか

傾斜のついた床の先に設けられた貯留設備のイメージ
液状の危険物は、こぼれた瞬間に床へ広がってしまいます。
そこで床そのものの構造にも基準が定められています。
危険物の規制に関する政令第九条第一項第九号 液状の危険物を取り扱う建築物の床は、危険物が浸透しない構造とするとともに、適当な傾斜を付け、かつ、漏れた危険物を一時的に貯留する設備(以下「貯留設備」という。)を設けること。
床は危険物が浸透しない構造にし、傾斜と貯留設備をセットで備えます。
コンクリートなど危険物が染み込まない材料で床をつくることが前提です。
そのうえで適当な傾斜を付け、こぼれた危険物を一箇所に集める貯留設備までつなげる構造にします。
この貯留設備という定義は、屋外貯蔵所の特例基準など他の危険物施設の規定でも引用されています。
つまり製造所だけの決まりではなく、危険物施設に共通する考え方の起点になっています。

貯留設備は製造所だけの仕組みなんですか。

いいえ、屋外貯蔵所の特例でも同じ定義が使われます。

採光や照明や換気はどこまで細かく決まっているのか

窓と換気設備が備えられた製造所建築物の壁面のイメージ
危険物を扱う作業は、暗い場所や空気がこもった場所では危険が増します。
そのための設備も、政令にはっきりと位置づけられています。
危険物の規制に関する政令第九条第一項第十号 危険物を取り扱う建築物には、危険物を取り扱うために必要な採光、照明及び換気の設備を設けること。
採光・照明・換気は「必要な設備を設けること」までしか定められていません。
照度や換気回数といった具体的な数値基準は、この号には書かれていません。
危険物を安全に取り扱えるだけの明るさと空気の入れ替えを確保する、という機能面の要求です。
数値が無いからといって設備そのものを省略してよいわけではなく、作業の実態に応じて必要な設備を備える必要があります。
許可申請の段階では、設計図面のどの設備がこの号に対応するのかを明確にしておくことが実務上重要です。

数値が無いなら、設備を付けなくてもいいんですか。

いいえ、機能を満たす設備は必ず必要です。

蒸気や粉じんの排出設備はどんな建築物に必要になるのか

屋根の上に設けられた蒸気の屋外排出設備のダクトのイメージ
可燃性の蒸気や粉じんは、建築物の中にたまるとそれ自体が危険源になります。
そこで政令は、排出先を明確に限定しています。
危険物の規制に関する政令第九条第一項第十一号 可燃性の蒸気又は可燃性の微粉が滞留するおそれのある建築物には、その蒸気又は微粉を屋外の高所に排出する設備を設けること。
対象になるのは、蒸気や微粉が滞留するおそれのある建築物だけです。
すべての製造所に一律で求められる設備ではなく、取り扱う危険物の性質によって要否が決まります。
排出先も「屋外」かつ「高所」に限定されており、室内で循環させるだけの換気設備では足りません。
建物の中にとどめず、外の高い場所まで確実に追い出す設備であることが条文の要求です。
取り扱う危険物が蒸気や微粉を発生させる性質かどうかを、まず確認することが出発点になります。

うちの製造所には、この設備は必要ないかもしれません。

取り扱う危険物の性質次第なので、まず確認しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

担当者が製造所建築物の床と換気設備を確認している様子
ここまでの3つの基準を、現場で確認できる形に落とし込みます。
図面と現地の両方を突き合わせることが確実です。
  • 床が危険物の浸透しない構造で、傾斜と貯留設備が備わっているかを確認する。
  • 取り扱う危険物の性質から、蒸気や微粉が滞留するおそれがあるかを洗い出す。
  • 滞留のおそれがある場合は、屋外の高所へ排出する設備が設けられているかを確認する。
  • 採光・照明・換気の設備が、作業に必要な機能を満たしているかを点検する。
  • 設計図面上で、どの設備が第九号・第十号・第十一号のどれに対応するかを整理しておく。
改修や増設の計画があるときは、この整理を設計の早い段階で行うと手戻りを防げます。

まずは床と換気設備の図面から見直してみます。

はい、図面と現地の両方で確認するのが確実です。

よくある質問

Q採光・照明・換気の設備には、照度や換気回数の基準がありますか?
Aいいえ。危険物の規制に関する政令第九条第一項第十号は必要な設備を設けることまでを求めており、具体的な数値基準は定められていません。
Q蒸気の排出設備はすべての製造所に必要ですか?
Aいいえ。対象になるのは可燃性の蒸気又は微粉が滞留するおそれのある建築物に限られ、取り扱う危険物の性質によって要否が決まります。
Q貯留設備は製造所以外の施設でも使われる仕組みですか?
Aはい。危険物の規制に関する政令第九条第一項第九号の貯留設備の定義は、屋外貯蔵所の特例基準など他の規定でも引用されています。
Q排出設備は屋内で換気するだけでは足りませんか?
A足りません。条文は排出先を屋外の高所に限定しており、室内で循環させる換気設備だけでは基準を満たしません。

まとめ

製造所の建築物には、政令第九条第一項第九号から第十一号までの基準が適用されます。
床は危険物が浸透しない構造とし、傾斜と貯留設備を備えます。
採光・照明・換気の設備は、具体的な数値基準ではなく必要な機能を満たすことが求められます。
蒸気や微粉の排出設備は屋外の高所への排出に限定されています。
対象になるのは、蒸気や微粉が滞留するおそれのある建築物だけです。
貯留設備の定義は屋外貯蔵所の特例基準など他の規定でも使われています。
図面と現地の両方で確認してください。

まずは床の構造から図面を見直してみます!

建築物内部の基準の確認は、お気軽にご相談ください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第九条第一項第九号・第十号・第十一号
  • 危険物の規制に関する規則第二十四条の十三(貯留設備の定義の準用例)
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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