危険物の規制に関する政令は、移動タンク貯蔵所の技術上の基準を第15条にまとめています。
ただしアルキルアルミニウムのように性質が特殊な危険物には、総務省令でこの基準を超える特例を定められると規定されています。
この特例は、安全装置の作動圧力から配管の取り付け位置、外面の色まで、通常の基準とはまったく別物と言えるほど踏み込んだ内容になっています。
この記事では規則第24条の8が定める特例の中身を条文から整理します。
うちはアルキルアルミニウムを運ぶタンクローリーの導入を検討しているんですが、普通のタンクローリーとは全然違う仕様になると聞きました。
はい、アルキルアルミニウム等には専用の特例基準があります。
まずは全体像から確認していきましょう。
安全装置や配管の位置、色まで細かく決まっているんですか。
はい、外面の塗装まで含めて通常より厳しい基準が求められます。
順番に見ていきましょう。
- アルキルアルミニウム等を運ぶ移動タンク貯蔵所には、政令第15条第4項に基づき通常の基準を超える特例(規則第24条の8)が課されます。
- 安全装置は、水圧試験の圧力の三分の二を超え五分の四以下という狭い範囲でしか作動しない構造にする必要があります。
- 配管及び弁等はタンクの頂部に取り付けることが義務付けられ、底からの排出口は設けられません。
- タンクの外面は赤色に塗装したうえで、「禁水」と「火気厳禁」の両方を白い文字で表示する必要があります。
- これらの基準は取扱う危険物の性質によって細かく決まっているため、通常の移動タンク貯蔵所の感覚で運用しないことが重要です。
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目次
アルキルアルミニウム等を運ぶ移動タンクはなぜ通常と別の基準になるのか

ただし危険物の性質によっては、この基準だけでは足りない場合があります。
この委任を受けて、危険物の規制に関する規則第24条の8が具体的な特例基準を定めています。
消防法別表第一で、アルキルアルミニウムは第三類の危険物のうち自然発火性物質及び禁水性物質に区分されており、空気や水に触れると激しく反応する性質があります。
この性質の特殊さが、安全装置・配管の位置・外面の塗装まで踏み込んだ特例につながっています。
次の項目から、条文で定められた特例の中身を一つずつ確認していきます。
通常のタンクローリーをそのまま使うことはできないんですか。
専用の特例基準を満たす必要があります。
次は安全装置から見ていきましょう。
安全装置はなぜ狭い圧力範囲でしか作動しないのか

アルキルアルミニウム等を運ぶタンクでは、この作動条件そのものが特別に定められています。
低すぎる圧力で作動すれば通常の使用でも頻繁に開いてしまい、高すぎればタンクが変形・破損する前に作動しません。
規則第24条の8第1項第一号が定める鋼板厚十ミリメートル以上・水圧試験一メガパスカル以上という頑丈な構造を前提に、この圧力範囲が計算されています。
この範囲を外れる安全装置は、作動すること自体に問題がなくても基準を満たしません。
仕様書の作動圧力の記載を、水圧試験の実測値と突き合わせて確認することが欠かせません。
うちの安全装置は何キロパスカルで作動すればいいんですか。
水圧試験の実測値の三分の二超五分の四以下の範囲です。
次は配管の位置を見ましょう。
配管と弁をなぜタンクの頂部にだけ集めるのか

アルキルアルミニウム等を運ぶタンクでは、この配管の取り付け位置そのものが変わります。
通常の移動タンク貯蔵所の基準(政令第15条第1項第九号)は下部の排出口に底弁と閉鎖装置を設けることを求めていますが、アルキルアルミニウム等ではこの規定そのものが適用されません。
底に開口部があると、万一の損傷時に内容物が地面に直接流出する危険が高いため、頂部への集約という発想の措置です。
配管を上に集めることで、漏れが起きても液面より上でとどまりやすくなります。
新設時の設計だけでなく、既存車両を改造するときもこの点が守られているかの確認が必要です。
底に排出口があるほうが作業はしやすそうですが。
頂部への集約は漏えい対策のためです。
次は外面の塗装を見ましょう。
外面はなぜ禁水と火気厳禁を両方掲げるのか

アルキルアルミニウム等を運ぶタンクでは、色と表示の両方に専用の基準があります。
第十八条第一項第四号は、禁水性物品には「禁水」、自然発火性物品には「火気厳禁」の掲示を求めています。
アルキルアルミニウムは、この両方の定義(禁水性物品・自然発火性物品)に明示的に含まれる危険物です。
つまり一つの掲示板だけでは足りず、禁水と火気厳禁の両方を掲げなければ基準を満たしません。
片方だけの表示で済ませてしまう見落としが起きやすい箇所です。
禁水だけ書いておけば十分だと思っていました。
アルキルアルミニウムは両方の性質を持つので両方必要です。
最後に確認の手順をまとめます。
明日からなにを確認すればよいのか

新設のときも、既存車両を点検するときも同じ視点で使えます。
- 自社が運ぶ危険物がアルキルアルミニウム等に該当するかをまず確認する
- 安全装置の作動圧力が水圧試験の実測値の三分の二を超え五分の四以下の範囲に収まっているかを仕様書で確認する
- 配管及び弁等がタンクの頂部にだけ取り付けられ、底部に排出口が無いかを確認する
- 外面が赤色に塗装され、禁水と火気厳禁の両方の掲示があるかを確認する
- タンク内を不活性の気体で封入できる構造になっているかもあわせて確認する
新設だけでなく、車両の入替えや改造のときにも同じ確認が必要になります。
記録を整理しておくと、点検や更新の際の確認もスムーズになります。
うちのタンクローリーがこの基準に当たるか、まず仕様書で確認してみます。
仕様書と現物の両方を確認してみてください。
次のよくある質問もあわせてご覧ください。
よくある質問
まとめ
車両の仕様確認を、この機会にしてみます。
早めのご相談がおすすめです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法別表第一(危険物の品名及び性質の区分)
- 危険物の規制に関する政令第15条第1項・第4項(移動タンク貯蔵所の基準及びその特例)
- 危険物の規制に関する規則第18条第1項第四号(掲示板の注意事項)
- 危険物の規制に関する規則第24条の8(アルキルアルミニウム等の移動タンク貯蔵所の特例)
- 危険物の規制に関する規則第10条第1項第十号(禁水性物品の定義)
- 危険物の規制に関する規則第25条第1項第三号(自然発火性物品の定義)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





