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危険物施設への是正命令はなぜ総務大臣も指示できるのか|第十六条の八の二が定める緊急時の対象事務と通知を解説

作業服姿の担当者が複数の自治体の窓口一覧をクリップボードで確認しているイメージ

危険物施設で法令違反が見つかったときの是正命令は、ふだん消防本部を置く市区町村の長や都道府県知事などの市町村長等が出しています。
しかし、公共の安全に関わる緊急の場面では、これとは別に国が動く仕組みも用意されています。
その仕組みが、消防法第十六条の八の二が定める総務大臣の指示です。
この記事では指示の対象となる事務と、移動タンク貯蔵所が絡む場合の通知のルールを整理します

危険物施設の是正命令は、うちの市が全部出していると思っていました。

ふだんはそのとおりですが、緊急時には別の仕組みもあります。
まずは条文を確認しましょう。

国が関わってくることもあるんですね。

はい、消防法第十六条の八の二を確認していきましょう。

この記事の結論
  • 危険物施設への是正命令は、通常は市町村長等の権限で完結します
  • しかし公共の安全の維持又は災害の発生の防止のため緊急の必要があるときは、消防法第十六条の八の二により総務大臣が指示できます
  • 指示の対象は政令第三十九条の三が定める5種類の事務に限られます
  • 総務大臣が直接向き合うのは都道府県知事や市町村長で、事業者に直接命令する権限は持ちません
  • 移動タンク貯蔵所が絡む場合は、命令をした市町村長が車両の設置許可をした市町村長等へ通知しなければなりません

危険物施設の是正命令はふだん市町村長等が出し緊急時のみ総務大臣が指示できる仕組みと移動タンク貯蔵所への通知の流れを示した図解

危険物施設の是正命令はふだん誰が出しているのか

市役所の建物から命令書が事業所へ渡されるイメージ
危険物施設で法令違反が見つかったときの是正命令は、消防本部を置く市区町村の長や都道府県知事などの市町村長等が出すのが原則です。
しかし、この原則の外側に、国が動く仕組みも用意されています。
消防法第十六条の八の二 総務大臣は、公共の安全の維持又は災害の発生の防止のため緊急の必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、都道府県知事又は市町村長に対し、この章又は前条の規定に基づく政令の規定により都道府県知事又は市町村長が行うこととされる事務のうち政令で定めるものの処理について指示することができる。
この条文が定めるのは、総務大臣が都道府県知事や市町村長に事務処理を指示できる仕組みです
指示ができるのは公共の安全の維持又は災害の発生の防止のため緊急の必要があると総務大臣が認めた場合に限られます。
ふだんの是正命令は市町村長等の権限で完結しますが、この条文はその外側に置かれた例外的な仕組みです。
指示の中身や対象となる事務は、さらに政令に委任されています。
次でその対象を具体的に確認します。

国が消防の是正命令に関わることもあるんですね。

はい、緊急の場面に限られる仕組みです。
次はその対象を見てみましょう。

総務大臣の指示はどんな事務が対象になるのか

中央省庁の建物から都道府県庁舎へ5つの書類束が渡されるイメージ
消防法第十六条の八の二は「政令で定める事務」とだけ書いており、対象は政令に委任されています。
危険物の規制に関する政令第三十九条の三が、その中身を具体的に列挙しています。
危険物の規制に関する政令第三十九条の三 法第十六条の八の二の政令で定める事務は、法第十一条の五第一項及び第二項、第十二条第二項、第十二条の三第一項、第十六条の三第三項及び第四項並びに第十六条の六第一項の規定により都道府県知事又は市町村長が行うこととされる事務とする。
対象になる事務は、危険物施設への是正命令など5種類に限定されています
具体的には、技術基準に従うべきことを命じる命令(第十一条の五第一項・第二項)、修理・改造・移転を命じる命令(第十二条第二項)、使用停止・制限を命じる命令(第十二条の三第一項)、応急措置を命じる命令(第十六条の三第三項・第四項)、無許可貯蔵等の除去を命じる命令(第十六条の六第一項)の5つです。
これらはいずれも、ふだんは市町村長等が独自の判断で出している命令です。
総務大臣の指示は、この5つの事務の処理について都道府県知事や市町村長に働きかけるものに限られます。

対象がこの5つだけと決まっているのは意外でした。

はい、限定列挙です。
次は指示の相手方を確認しましょう。

総務大臣は事業者に直接命令できるのか

知事の庁舎から事業所へ命令書が渡される一方で総務省の建物とは線がつながっていないイメージ
対象になる事務が分かったところで、次は指示の相手方を確認します。
条文の文言を丁寧に読むと、総務大臣が直接向き合う相手が見えてきます。
消防法第十一条の五第一項 市町村長等は、製造所、貯蔵所(移動タンク貯蔵所を除く。)又は取扱所においてする危険物の貯蔵又は取扱いが第十条第三項の規定に違反していると認めるときは、当該製造所、貯蔵所又は取扱所の所有者、管理者又は占有者に対し、同項の技術上の基準に従つて危険物を貯蔵し、又は取り扱うべきことを命ずることができる。
命令の相手方は施設の所有者、管理者又は占有者であって、総務大臣ではありません
第十一条の五第一項が命令の主体として定めているのはあくまで市町村長等で、名宛人は施設の所有者、管理者又は占有者です。
一方、第十六条の八の二で総務大臣が向き合う相手は都道府県知事又は市町村長であって、施設の事業者ではありません。
つまり総務大臣は事業者に直接なにかを命じる権限を持たず、実際に命令を出すのは指示を受けた市町村長等です。
事業者から見れば、命令の出どころが市町村長等であることに変わりはありません。

総務大臣から直接連絡が来るわけではないんですね。

はい、窓口はいつもの市町村長等です。
次は移動タンク貯蔵所の注意点を見てみましょう。

タンクローリーが絡む指示ではなにに注意するのか

都道府県の境界をまたいで走るタンクローリーと両側の市役所に届く書類のイメージ
対象になる事務のうち、移動タンク貯蔵所(タンクローリー)に関する命令には、もう一段仕組みが加わります。
指示を受けて命令が出た後、別の自治体への通知が必要になる場合があります。
危険物の規制に関する政令第三十九条の二 総務大臣は、法第十六条の八の二の規定により法第十一条の五第二項又は第十六条の三第四項に規定する事務の処理について指示をしたときは、当該指示に係る移動タンク貯蔵所につき法第十一条第一項の規定による許可をした市町村長等に対し、その旨を通知しなければならない。
タンクローリーの稼働先で命令が出ると、車両の設置許可を出した自治体にも通知が届きます
移動タンク貯蔵所は稼働する市町村長が命令を出せる仕組みになっており、その市町村長は必ずしも車両の設置許可をした市町村長等と同じではありません。
総務大臣の指示を受けてこの命令が出たときは、稼働先の市町村長は許可元の市町村長等へ遅滞なくその旨を通知しなければなりません。
つまり、稼働先だけで完結する話ではなく、本拠地の自治体にも情報が伝わる仕組みです。
複数の自治体をまたいで車両を運用している事業者は、この通知の流れを知らないと状況を把握しづらくなります。

稼働先だけでなく、車両の本拠地にも話が伝わるんですね。

はい、許可元への通知まで条文で決まっています。
最後に実務での備え方を整理します。

複数の自治体をまたいで運用する事業者は明日なにをすればよいのか

作業服の担当者が稼働先自治体の一覧表を手に確認しているイメージ
ここまでの条文は、いずれも行政の内部の手続きを定めるものです。
その内容を踏まえて、事業者側でできる備えを整理します。
消防法第十六条の八の二(再掲) 総務大臣は、公共の安全の維持又は災害の発生の防止のため緊急の必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、都道府県知事又は市町村長に対し、この章又は前条の規定に基づく政令の規定により都道府県知事又は市町村長が行うこととされる事務のうち政令で定めるものの処理について指示することができる。
平常時からできる備えは、稼働先ごとの連絡窓口を整理しておくことです
まず、移動タンク貯蔵所を稼働させている全ての市町村・都道府県の消防担当窓口を一覧にしておきます。
次に、車両の設置許可をした市町村長等がどこかを、稼働先とは別に把握しておきます。
命令や指示自体はまれな事態ですが、来たときに連絡先が分からず混乱しないよう、平時に整理しておくことが確実です。
判断に迷う内容が来た場合に備えて、専門家に相談できる体制も合わせて整えておくとよいでしょう。

うちも稼働先の自治体を一覧にしておきます。

判断に迷う場合は、いつでもご相談ください。

よくある質問

Q総務大臣はどんなときに指示できますか?
A消防法第十六条の八の二により、公共の安全の維持又は災害の発生の防止のため緊急の必要があると認めるときに指示できるとされています。
Q指示の対象になる事務はどこで決まっていますか?
A危険物の規制に関する政令第三十九条の三が、技術基準に従うべきことを命じる命令など5種類の事務を列挙しています。
Q総務大臣は事業者に直接命令できますか?
Aいいえ。総務大臣が指示する相手は都道府県知事又は市町村長で、事業者への命令は引き続き市町村長等が行います。
Q移動タンク貯蔵所が絡む場合、通知は必要ですか?
Aはい。政令第三十九条の二により、命令をした市町村長は車両の設置許可をした市町村長等へ遅滞なく通知しなければなりません。

まとめ

危険物施設の是正命令はふだん、市町村長等の権限で完結します
公共の安全の維持又は災害の発生の防止のため緊急の必要があるときは、総務大臣が指示できます(消防法第十六条の八の二)
対象になるのは政令第三十九条の三が定める5種類の事務だけです
総務大臣が向き合う相手は都道府県知事や市町村長で、事業者への直接命令はできません
命令の名宛人は引き続き施設の所有者、管理者又は占有者です
移動タンク貯蔵所の場合、命令後は車両の設置許可をした市町村長等への通知が必要です(政令第三十九条の二)
複数の自治体をまたいで運用する事業者は、平時に稼働先と許可元の窓口を整理しておくと安心です

取引先の窓口も含めて、一度整理してみます

ぜひ整理してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十六条の八の二・第十一条の五第一項
  • 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第三十九条の二・第三十九条の三

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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