移動タンク貯蔵所(タンクローリー)に是正命令が出るとき、命令を出す市町村長と、もともと許可を出した市町村長等が別の自治体になることがあります。
このとき法律は「許可元へ速やかに通知しなければならない」と定めていますが、通知の中身そのものは条文上に書かれていません。
中身を定めているのは危険物の規制に関する規則で、実際には六つの項目が具体的に決められています。
この記事では規則第七条の四が定める通知事項と、現地への公示との違いを解説します。
許可元へ通知しなければならないのは知っていますが、何を書くのかまでは知りませんでした。
条文が委任している総務省令を見ると、六つの項目まで具体的に決まっています。
順番に確認しましょう。
通知が届いたら、許可自体はどうなるんでしょうか。
そこも誤解しやすい部分です。
公示との違いも含めて見ていきましょう。
- 移動タンク貯蔵所に命令を出した市町村長は、許可をした市町村長等へ速やかに通知しなければなりません(消防法第十一条の5第3項)
- 通知する事項は危険物の規制に関する規則第七条の四が具体的に定めています
- 六つの項目には命令をした市町村長・命令を受けた者の氏名等・設置者や常置場所や許可番号・違反の内容・命令の内容及びその履行状況・その他必要な事項が含まれます
- 命令が出た事実は規則第七条の五が定める官報や公報への掲載などの方法で現地にも公示され、許可元への通知とは別の仕組みで動きます
- 通知も公示も許可そのものを取り消すものではなく、取消しや使用停止は別の規定で判断されます
▼

目次
移動タンク貯蔵所の命令はなぜ許可元にも伝わる仕組みになっているのか

命令を出す市町村長と、許可をした市町村長等が別になる場面が生まれます。
条文は速やかにと定めるだけで、通知の中身そのものは総務省令に委ねられています。
この委任先を確認しないと、実際に何を伝えるべきかが分からないままになります。
委任先の規則を、条文の柱書から見ていきましょう。
総務省令というのは、消防法とは別の規則ということですか。
はい、危険物の規制に関する規則という別の省令です。
そこに具体的な項目が並んでいます。
許可元へ通知しなければならないのはどんな命令を出した場合か

規則の柱書が、対象になる命令をはっきり示しています。
柱書は消防法第十一条の五第三項を受けた規定であることを明記しており、通知の相手方も許可をした市町村長等と特定しています。
命令を出した市町村長がその場で対応を終えるのではなく、必ず許可元へ知らせる場面がここで決まります。
では実際に何を書けばよいのか、六つの項目を見ていきましょう。
命令を出す市町村長が、そのまま通知する側になるんですね。
そのとおりです。
受け取る側の許可元は、内容までは決められません。
通知には具体的にどんな六つの事項を書くのか

言い換えず、条文の並びどおりに確認します。
二 命令を受けた者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名及び住所
三 命令に係る移動タンク貯蔵所の設置者、常置場所及び設置又は変更の許可番号
四 違反の内容
五 命令の内容及びその履行状況
六 その他命令をした市町村長が必要と認める事項(危険物の規制に関する規則第七条の四)
一号から四号は命令の当事者と違反の内容を特定する項目で、五号は履行状況まで含めている点が実務上重要です。
六号はその他必要と認める事項という受け皿で、命令を出した市町村長の判断に委ねられています。
許可元は、この六項目を通じて命令の全体像と現在の是正状況までを把握できることになります。
履行状況まで通知されるのは、思ったより踏み込んでいますね。
はい、是正の途中経過まで共有される仕組みです。
ただしこれで許可がどうにかなるわけではありません。
現地への公示と許可元への通知はどう違うのか

両者は目的も相手方も異なります。
消防法第十一条の五第四項は標識の設置その他総務省令で定める方法による公示を命令権者に義務付けており、規則第七条の五はその「その他の方法」を官報又は公報への掲載などと具体化しています。
規則第七条の四の通知が許可元の市町村長等だけに宛てた内部連絡であるのに対し、公示は現地や広く一般に向けた手続きという違いがあります。
そしてどちらの手続きにも、許可を取り消したり使用を止めたりする効果はありません。許可の取消しや使用停止は、消防法第十二条の二など別の規定に基づいて判断されます。
通知も公示も、それだけでは許可に手を付けないということですね。
そのとおりです。
最後に、複数市町村をまたぐ事業者の備え方を整理しましょう。
複数市町村をまたぐ移動タンク貯蔵所はどう備えればよいか

日頃からできる整理は、大きく分けて三つあります。 まずは走行先で命令を受けたときの記録の残し方を決めておきましょう。
六項目のうち違反の内容と履行状況は事業者自身の記録とも一致させておく必要があります。
常置場所や許可番号を運転者がすぐ答えられるよう、車両に許可の写しを備え付けておくと現地でのやり取りが早くなります。
命令を受けたら、その場の是正だけで終わらせず、許可元の窓口へも自ら状況を伝えておくと今後の手続きが滞りません。
日頃の点検で基準への適合を確認しておくことが、そもそも命令を受けない一番の備えです。
許可の写しを積んでおくだけでも、現地でのやり取りが違いそうです。
はい。
走行先の基準も自分の施設と同じ重みで確認をお願いします。
よくある質問
まとめ
六項目の中身まで分かって、すっきりしました!
複数市町村をまたぐ運用があれば、記録の整理から見直してみてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第十条第3項・第十一条第1項・第十一条の五・第十二条の二
- 危険物の規制に関する規則第七条の四・第七条の五
- e-Gov法令検索
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





