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二硫化炭素の屋外貯蔵タンクはなぜ水槽に沈めるのか|禁水性物品の被覆設備とあわせて解説

二硫化炭素の屋外貯蔵タンクがなぜ水槽に沈められるのかを解説する記事のアイキャッチ画像

危険物の規制に関する政令は、屋外タンク貯蔵所の位置・構造・設備について、鋼板の厚さや防油堤など共通の技術基準を定めています。
ところが、貯蔵する危険物の性質によっては、この共通基準だけでは足りない専用の例外が用意されています。
なかでも固体の禁水性物品と二硫化炭素の屋外貯蔵タンクは、水との関わり方が正反対になる珍しい組み合わせです。
この記事では政令第11条が定める被覆設備・水没構造・防油堤の除外までを整理します

敷地の隅に、水を張ったコンクリートの水槽にタンクが沈んでいる設備があるんですが、あれは何なんでしょうか。

それは二硫化炭素専用の屋外貯蔵タンクですね。
まずは基準の全体像から確認していきましょう。

普通の屋外タンクとは、どこがどう違うんですか。

水との付き合い方がまったく違います。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 屋外貯蔵タンクの共通基準には、危険物の性質に応じた専用の例外が用意されています。
  • 固体の禁水性物品の屋外貯蔵タンクには、防水性の不燃材料で造った被覆設備を設けなければなりません。
  • 二硫化炭素の屋外貯蔵タンクは、厚さ〇・二メートル以上の鉄筋コンクリートの水槽に水没させたものでなければなりません。
  • 禁水性物品は政令第10条第1項第十号の区分で、水との反応性試験(政令第1条の5第5項)で判定されます。
  • 二硫化炭素は液体の危険物ですが、規則第22条第1項により防油堤の対象から除かれます

屋外貯蔵タンクの基準を示す図解。固体の禁水性物品は防水被覆で守り、二硫化炭素は水槽に沈めて隔離し、液体タンクは防油堤で囲むのが原則だが水没タンクは防油堤の対象外になるという四段階を整理

屋外貯蔵タンクの基準になぜ物質専用の例外があるのか

通常の鋼板製屋外貯蔵タンクが並ぶ列と、その脇で水槽に沈められた特殊なタンクが並んでいるイメージ
危険物の規制に関する政令は、屋外貯蔵タンクの位置・構造・設備について共通の基準を定めています。
ただし、危険物の性質によっては、この共通基準だけでは足りない専用の例外があります。
危険物の規制に関する政令第11条第1項 屋外タンク貯蔵所(次項に定めるものを除く。)の位置、構造及び設備の技術上の基準は、次のとおりとする。(略)十六 固体の禁水性物品の屋外貯蔵タンクには、防水性の不燃材料で造つた被覆設備を設けること。 十七 二硫化炭素の屋外貯蔵タンクは、厚さ〇・二メートル以上の壁及び底を有する水漏れのない鉄筋コンクリートの水槽に入れて水没したものであること。
屋外貯蔵タンクの基準には、危険物の性質に応じた専用の例外が2つ用意されています
一つは固体の禁水性物品の屋外貯蔵タンクに関するもの、もう一つは二硫化炭素の屋外貯蔵タンクに関するものです。
どちらも、鋼板の厚さや防油堤を組み合わせるだけの通常の基準とは異なり、物質そのものの性質に着目した構造が求められます。
次の項目から、この2つの基準を順番に確認していきます。

屋外にあるタンクは、全部同じ基準だと思っていました。

物質の性質によっては別の基準になります。
まずは禁水性物品から見ていきましょう。

固体の禁水性物品にはどんな被覆が必要なのか

固体の禁水性物品を格納するタンクに防水性の不燃シートをかぶせ、雨粒が弾かれているイメージ
屋外貯蔵タンクに固体の禁水性物品を貯蔵する場合、通常の基準に加えて専用の設備が必要です。
まず、対象になる危険物の範囲から確認します。
危険物の規制に関する政令第11条第1項第十六号 固体の禁水性物品の屋外貯蔵タンクには、防水性の不燃材料で造つた被覆設備を設けること。
固体の禁水性物品を屋外貯蔵タンクに置くときは、防水性の不燃材料で造った被覆設備が必要です
禁水性物品は政令第10条第1項第十号が定める区分で、カリウムやナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウムなどが含まれます。
これらは政令第1条の5第5項の水との反応性試験で、発火やガス発生の性状を示したものとして選ばれた物質です。
被覆設備そのものの材料や構造の細かな規格までは条文に定めがなく、防水性と不燃性という性能を満たすことが求められています。
雨水がタンクの外面に直接触れないようにすることが、この基準の狙いです。

防水シートのようなものを掛ければ足りるのでしょうか。

防水性と不燃性の両方が条件です。
次は二硫化炭素の基準を見ましょう。

二硫化炭素の屋外貯蔵タンクはなぜ水槽に沈めるのか

鉄筋コンクリートの水槽に完全に沈められたタンクの断面と水面のイメージ
同じ屋外貯蔵タンクでも、二硫化炭素を貯蔵する場合はさらに独特な構造が求められます。
条文が定めているのは、被覆どころか水槽への水没です。
危険物の規制に関する政令第11条第1項第十七号 二硫化炭素の屋外貯蔵タンクは、厚さ〇・二メートル以上の壁及び底を有する水漏れのない鉄筋コンクリートの水槽に入れて水没したものであること。
二硫化炭素の屋外貯蔵タンクは、厚さ〇・二メートル以上の鉄筋コンクリートの水槽に沈めて水没させなければなりません
理由までは条文に書かれていませんが、二硫化炭素は空気に触れると発火しやすい性質を持つ物質として知られており、水中に沈めて空気との接触を断つことが目的と考えられます。
水槽は「水漏れのない」ものでなければならず、単に水をかぶせるだけの構造では足りません。
被覆設備で雨水を防ぐ号十六とは正反対に、こちらは水の中に積極的に沈めるという基準になっています。
次の項目では、この水没構造がもたらすもう一つの違いを見ていきます。

水に沈めるほうが、かえって安全になるんですね。

はい、空気との接触を断つための構造です。
次は防油堤との関係を見ましょう。

液体なのに防油堤が要らないのはなぜか

防油堤で囲まれた通常の液体タンクと、防油堤のない水没タンクが並んで比較されているイメージ
液体の危険物を貯蔵する屋外貯蔵タンクには、周囲に防油堤を設けるのが原則です。
ところが、二硫化炭素の屋外貯蔵タンクはこの原則から外れています。
危険物の規制に関する規則第22条第1項 令第11条第1項第十五号(同条第2項においてその例による場合を含む。)の規定により、液体の危険物(二硫化炭素を除く。)の屋外貯蔵タンクの周囲には、防油堤を設けなければならない。
二硫化炭素の屋外貯蔵タンクは、規則第22条第1項によって防油堤の設置義務から明文で除かれています
二硫化炭素は液体の危険物なので、通常であれば政令第11条第1項第十五号により防油堤が必要になるはずの物質です。
ところがこのタンクは水槽の中に水没させる構造そのものが漏えいを閉じ込める役割を果たすため、防油堤までは求められません。
「液体だから防油堤が要る」という思い込みで点検すると、この除外を見落としやすくなります。
防油堤(号十五)・被覆設備(号十六)・水没構造(号十七)は、同じ屋外貯蔵タンクの基準の中でも水との関わり方が正反対になる組み合わせです。

液体のタンクなら防油堤は必須だと思い込んでいました。

水槽構造そのものが代わりを果たしています。
最後に点検の手順を確認しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員が被覆設備の劣化と水槽の水位を確認しているイメージ
最後に、禁水性物品と二硫化炭素の屋外貯蔵タンクを点検するときに確認しておきたい点を整理します。
どちらも、見た目だけでは基準を満たしているか分かりにくい設備です。
  • 固体の禁水性物品用タンクの被覆設備に破れやめくれがないか、雨水が浸入していないかを確認する
  • 二硫化炭素用の鉄筋コンクリートの水槽に水漏れがないか、水位がタンクの頂部を上回っているかを確認する
  • 水槽の壁及び底の厚さが〇・二メートル以上を保っているか、ひび割れがないかを確認する
  • 二硫化炭素用タンクの周囲は防油堤が省略されていることを前提に、水槽自体の防水性能を重点的に点検する
  • 禁水性物品・二硫化炭素以外の液体タンクには、通常どおり防油堤が設けられているかを確認する
見た目が特殊なタンクほど、根拠となる号を確認してから点検することが大切です
被覆設備や水槽は経年劣化が外から分かりにくいため、定期的な内部点検の記録を残しておくことをおすすめします。

被覆と水槽、どちらも点検の記録を残しておきます。

記録の積み重ねが安全確認の近道です。
次のよくある質問もあわせてご覧ください。

よくある質問

Q禁水性物品とはどんな危険物を指しますか?
A政令第10条第1項第十号に定める区分で、政令第1条の5第5項の水との反応性試験で発火やガス発生の性状を示したものをいい、カリウムやナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウムなどが含まれます。
Q二硫化炭素はなぜ水槽に沈める必要があるのですか?
A条文に理由は明記されていませんが、二硫化炭素は空気に触れると発火しやすい性質を持つ物質として知られており、水中に沈めて空気との接触を断つための構造と考えられます。
Q被覆設備や水槽には具体的な規格がありますか?
A政令第11条第1項第十六号・第十七号には防水性の不燃材料厚さ〇・二メートル以上の鉄筋コンクリートという要件は定められていますが、それ以上の細かな規格までは条文に規定されていません。
Qこの基準は屋内タンク貯蔵所や地下タンク貯蔵所にも同じように適用されますか?
A今回取り上げたのは屋外タンク貯蔵所の政令第11条の基準です。屋内タンク貯蔵所(第12条)や地下タンク貯蔵所(第13条)にはそれぞれ別の条文があり、根拠となる号も異なります。

まとめ

屋外貯蔵タンクの共通基準には、危険物の性質に応じた専用の例外があります。
固体の禁水性物品には、防水性の不燃材料で造った被覆設備が必要です。
二硫化炭素の屋外貯蔵タンクは、厚さ〇・二メートル以上の鉄筋コンクリートの水槽に水没させたものでなければなりません。
禁水性物品は政令第10条第1項第十号の区分で、水との反応性試験(政令第1条の5第5項)で判定されます。
二硫化炭素は液体の危険物ですが、規則第22条第1項により防油堤の対象から除かれます
防油堤・被覆設備・水没構造は、同じ屋外貯蔵タンクの基準でも水との関わり方が正反対になる組み合わせです。
特殊な構造のタンクほど、根拠となる号を確認してから点検することが大切です。

被覆と水槽の点検を、さっそく確認してみます。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令第11条第1項第十五号・第十六号・第十七号(屋外タンク貯蔵所の基準)
  • 危険物の規制に関する政令第10条第1項第十号(禁水性物品の定義)
  • 危険物の規制に関する政令第1条の5第4項・第5項・第6項(水との反応性試験)
  • 危険物の規制に関する規則第22条第1項(屋外貯蔵タンクの防油堤の設置義務及び除外)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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