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自然発火性物質はなぜろ紙の上で発火実験をするのか|禁水性物質の水との反応性試験も解説

実験室でろ紙の上の試料を水に浸けて観察する作業服の人物

危険物の規制では、固体や液体の物品も性質によって細かく分類されます。
その一つが「自然発火性物質及び禁水性物質」ですが、何をもってこの区分に当たると判定されるのでしょうか。
実は消防法令には、専用の器具を使って発火の危険性を判定する具体的な試験手順が定められています。
政令と省令が定める試験の中身を、条文から確認します。

うちの倉庫にある薬品なんですが、水に濡れると危ないと聞いたことがあります。
禁水性物質に当たるのかどうか、見た目だけでは判断できません。

見た目ではなく、決められた試験の結果で判定しますよ。
順番に確認しましょう。

どんな試験を使えば、自然発火性物質や禁水性物質だと確認できるんでしょうか。

政令が指定する専用の試験があります。
まずは定義から確認しましょう。

この記事の結論
  • 自然発火性物質及び禁水性物質とは、固体又は液体であって空気中での発火の危険性又は水と接触して発火し、若しくは可燃性ガスを発生する危険性を判断する政令で定める試験で、政令の定める性状を示すものをいいます。
  • その試験の名称そのものが政令に書かれており、自然発火性試験と水との反応性試験の2つが指定されています
  • 自然発火性試験の判定基準は、試験物品が発火すること又はろ紙を焦がすことです。
  • 水との反応性試験の判定基準は、発生するガスが発火・着火すること又は発生量が試験物品1キログラムにつき1時間当たり200リットル以上で可燃性成分を含むことです。
  • カリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・アルキルリチウム及び黄りんは、試験を経ずにこの性状を示すものとみなされます

自然発火性試験と水との反応性試験の判定手順を示す図解(20度と200リットルの基準)

自然発火性物質及び禁水性物質とはどんな物品を指すのか

倉庫の棚に並ぶ薬品容器と注意表示のイラスト
危険物の規制では、固体や液体の物品もその性質によって細かく分類されます。
消防法の別表第一には、自然発火性物質及び禁水性物質をどう定義するかがあらかじめ書かれています。
消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)別表第一備考第八号 自然発火性物質及び禁水性物質とは、固体又は液体であつて、空気中での発火の危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの又は水と接触して発火し、若しくは可燃性ガスを発生する危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すものであることをいう。
自然発火性物質及び禁水性物質も、試験の結果で決まる区分です。
見た目が危なそうかどうかではなく、政令で定める試験で一定の性状を示すかどうかで判断します。
条文には「空気中での発火の危険性」と「水と接触して発火し、又は可燃性ガスを発生する危険性」という2つの視点が書かれています。
どちらの試験を使うかは、この先の政令の条文まで確認する必要があります。
まずは試験の名前を見てみましょう。

自然発火性か禁水性か、どちらか一方でも当てはまれば規制の対象になるんですね。

そのとおりです。
どちらか一方でも該当すれば対象になります。

どんな試験で発火や可燃性ガスの危険性を判定するのか

試験装置の前に立つ作業服姿の人物のイラスト
消防法別表第一の定義を受けて、実際の試験名を指定しているのが政令です。
条文を確認します。
危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第一条の五(抜粋) 法別表第一備考第八号の空気中での発火の危険性を判断するための政令で定める試験は、自然発火性試験とする。(略)法別表第一備考第八号の水と接触して発火し、又は可燃性ガスを発生する危険性を判断するための政令で定める試験は、水との反応性試験とする。(略)法別表第一備考第八号の水と接触して発火し、又は可燃性ガスを発生する危険性に係る政令で定める性状は、水との反応性試験において発生するガスが発火し、若しくは着火すること又は発生するガスの量が試験物品一キログラムにつき一時間当たり二百リットル以上であり、かつ、発生するガスが可燃性の成分を含有することとする。
指定されている試験は、自然発火性試験と水との反応性試験の2つです。
自然発火性試験は、試験物品が空気中で発火するか、又はろ紙を焦がすかどうかを見る試験です。
水との反応性試験は、発生したガスが発火・着火するか、又はガスの発生量が試験物品1キログラムにつき1時間当たり200リットル以上で、かつ可燃性の成分を含むかどうかを見る試験です。
どちらか一方の性状を示せば、自然発火性物質及び禁水性物質に該当します。
ここまでで試験の名前と合否の基準は分かりましたが、具体的な手順はまだ書かれていません。

水に濡れるとガスが出る、という話は聞いたことがありますが、どのくらい出れば危険なんでしょうか。

1キログラムあたり1時間で200リットル以上という基準が政令にありますよ。
試験のやり方はさらに省令で定められています。

試験は具体的にどんな手順で行われるのか

ろ紙と磁器の器具を使い水を張った容器でガスを観察するイラスト
試験の名前と基準が分かったところで、次は実際の手順を確認します。
細目を定めているのは、政令からさらに委任を受けた省令です。
危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第一号)別表第七・別表第八(抜粋) 試験場所は、温度二十度、湿度五十パーセント、気圧一気圧の無風の場所とする。固体の試験物品は、直径七十ミリメートルの磁器カッセロールの上に置いた直径九十ミリメートルのろ紙の中央に置き、十分以内に自然発火するか否かを観察する。水との反応性試験は、純水に浮かべたろ紙の上に試験物品を置き、発生するガスが自然発火するか否かを観察し、発火しない場合は当該ガスに火炎を近づけて着火するか否かを観察する。
試験の条件は、温度や湿度、器具の寸法まで細かく決められています。
試験場所は温度20度・湿度50パーセントの無風の環境に限られます。
固体の試験物品は、磁器カッセロールの上に置いたろ紙の中央にのせ、10分以内に自然発火するかを観察します。
水との反応性試験では、水面に浮かべたろ紙の上に試験物品を置き、発生するガスが自然発火するか、火炎を近づけて着火するかを順に確認します。
それでも判断できないときは、フラスコと攪拌機を使ってガスの発生量そのものを測定します。

ろ紙や磁器の道具を使うところまで、細かく決まっているんですね。

はい。
条件を揃えることで、誰が試験しても同じ結果になります。

なぜ試験をせずに性状を認められる物品があるのか

試験装置と試験を経ずに認められる金属容器を並べたイラスト
ここまでの試験は、すべての第三類の危険物に行うわけではありません。
一部の物品は、試験を経ずに結論が決まっています。
消防法別表第一備考第九号 カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム及び黄りんは、前号に規定する性状を示すものとみなす。
カリウム・ナトリウムなど5つの物品名は、試験を省略できる物品です。
本来なら自然発火性試験や水との反応性試験で性状を確認するところ、この5つの品名は試験を行わなくても自然発火性物質及び禁水性物質の性状を示すものとみなされます。
条文にみなし規定があることを知らないと、「この物品も試験結果を確認しなければ」と余計な手間をかけてしまいます。
逆に、この5つ以外で自然発火性物質及び禁水性物質に当たりそうな物品は、みなし規定の対象外なので試験の結果を確認する必要があります。
理由までは条文に書かれていませんが、経験的に性状が明らかな物品を試験の対象から外す趣旨と考えられます。

うちで扱っているのはアルキルアルミニウムなんですが、それなら試験をしなくていいということですか。

品名がカリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・アルキルリチウム・黄りんであれば、みなし規定が使えます。
次は実務でどう確認すればよいかを見てみましょう。

試験結果を実務でどう確認すればよいか

受付カウンターで書類を手渡す作業服姿の人物のイラスト
ここまで見てきた試験は、専用の器具と条件を必要とする技術的な試験です。
事業者が自己判断だけで結論を出すのは適切ではありません。
  • 取り扱う物品の品名がカリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・アルキルリチウム・黄りんのみなし規定に当たるかどうかを、まず確認する
  • 当たらない物品は、安全データシートなど製造者の資料で自然発火性試験・水との反応性試験の結果を確認する
  • 資料がない、または境界線上にある物品は、専門の試験機関に依頼して試験を行ってもらう
  • 判定結果は所轄の消防署に相談し、品名や指定数量の考え方をすり合わせておく

結局、自分たちだけで「試験は不要」と決めつけないことが大事なんですね。

はい。
みなし規定の対象かどうかを確認するのが最初の一歩です。

よくある質問

Q自然発火性物質及び禁水性物質とはどんな物品を指すのか?
A消防法別表第一備考第八号により、固体又は液体であって、空気中での発火の危険性、又は水と接触して発火し若しくは可燃性ガスを発生する危険性を判断する政令で定める試験で、政令の定める性状を示すものをいいます。
Qどんな試験で発火や可燃性ガスの危険性を判定するのか?
A危険物の規制に関する政令第一条の五により、自然発火性試験と水との反応性試験の2つが指定されています。
Q試験はどんな条件で行われるのか?
A危険物の試験及び性状に関する省令別表第七・第八により、温度20度・湿度50パーセントの無風の場所で、ろ紙や磁器カッセロールなどの器具を使って観察します。
Qカリウムやナトリウムも同じ試験を受けるのか?
Aいいえ。消防法別表第一備考第九号により、カリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・アルキルリチウム及び黄りんは試験を経ずに性状を示すものとみなされます。

まとめ

自然発火性物質及び禁水性物質とは、固体又は液体であって空気中での発火や水との反応による危険性を判断する政令で定める試験で性状を示すものをいいます。
その試験の名称そのものが政令に書かれており、自然発火性試験と水との反応性試験の2つが指定されています
自然発火性試験の判定基準は、試験物品が発火すること又はろ紙を焦がすことです。
水との反応性試験の判定基準は、発生するガスが発火・着火すること又は発生量が試験物品1キログラムにつき1時間当たり200リットル以上で可燃性成分を含むことです。
試験場所は温度20度・湿度50パーセントの無風の場所という条件まで省令で定められています
カリウム・ナトリウム・アルキルアルミニウム・アルキルリチウム及び黄りんは、試験を経ずに性状を示すものとみなされます。
自社で判定が難しい物品は、試験機関や所轄消防署に相談して確認するのが確実です。

自然発火性試験や水との反応性試験、みなし規定まで、よく分かりました

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)別表第一備考第八号・第九号
  • 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第一条の五
  • 危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第一号)第三条・別表第七・別表第八

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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