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地上の建物の地階はなぜ地下街と同じ基準になるのか|消防法施行令第9条の2が定める指定とみなし規定を解説

地下通路の入口で点検用のクリップボードを持つ作業員の写真

地下鉄の駅や地下街と直結したビルは、街のあちこちで見かけます。
そうした建物の地階は、実は自分の建物の基準ではなく地下街の基準で管理されていることがあります。
消防法施行令第9条の2は、地上の建物の地階を地下街の一部とみなす規定です。
今回はどんな地階が対象になり、どの設備の基準が変わるのかを解説します

うちのビル、地下で地下街とつながってるんですが、これって設備の基準に関係ありますか。

地階が地下街と一体だと指定されていると、設備の基準が変わることがあります。

え、うちの建物なのに地下街の基準になるということですか。

はい、条文で決まっている仕組みです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防法施行令第9条の2は、地上の建物の地階を地下街の一部とみなす規定です
  • 対象になるのは(一)項から(四)項・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(16)項イの地階に限られます
  • 指定を受けると、スプリンクラー設備・自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備・非常警報設備の基準が地下街と同じになります
  • 基準は一律に厳しくなるわけではなく、設備によって緩和される場合もあります
  • 自分の建物が指定を受けているかどうかは所轄消防署に確認できます

地上の建物の地階が消防長等の指定で地下街と一体とみなされ四つの設備基準が切り替わる仕組みを示した図解

なぜ地上の建物の地階が地下街の基準になるのか

地上に建つビルの階段が地下通路を通じて地下街につながっている様子のイメージ
地下鉄の駅や商業施設の地下部分は、隣の地下街と自由に行き来できることがあります。
このとき、建物の地階だけが地下街の一部として扱われる仕組みが条文で定められています。
別表第一(一)項から(四)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ又は(16)項イに掲げる防火対象物の地階で、同表(16の2)項に掲げる防火対象物と一体を成すものとして消防長又は消防署長が指定したものは(略)、同表(16の2)項に掲げる防火対象物の部分であるものとみなす。(消防法施行令第9条の2)
地階だけが地下街の基準に切り替わる根拠は、この一条だけです。
条文の主語は消防長又は消防署長で、指定を受けて初めて効果が生じます。
指定を受けていない建物には、この規定は働きません。
つまり地下街に接しているだけでは足りず、行政の個別判断が必要になります。
自分の建物が指定を受けているかどうかは、後述のとおり消防署で確認できます。

うちの地階、地下鉄の改札とつながってるので気になります。

つながっているだけでなく、消防長等の指定があるかがポイントです。

どんな建物のどの地階がこの指定を受けるのか

建物の断面図で地上部分と地階部分の境界に枠が付いているイメージ
対象になる用途は限られており、すべての建物が当てはまるわけではありません。
条文が列挙する用途を確認しましょう。
別表第一(一)項から(四)項まで、(5)項イ、(6)項、(9)項イ又は(16)項イに掲げる防火対象物の地階で、同表(16の2)項に掲げる防火対象物と一体を成すものとして消防長又は消防署長が指定したものは(略)。(消防法施行令第9条の2)
対象は劇場や病院など、不特定多数が出入りする用途に限られます。
(一)項は劇場等、(二)項はキャバレー等、(三)項は料理店・飲食店、(四)項は百貨店等です。
(5)項イは旅館・ホテル等、(6)項は病院や福祉施設等、(9)項イは公衆浴場の一部を指します。
(16)項イは特定用途を含む複合用途防火対象物です。
事務所専用ビルや共同住宅単独の建物は、この列挙に含まれません。

うちは(6)項のクリニックが入ったビルなんですが、対象になりそうです。

その用途なら対象の可能性があります。
地階が地下街とつながっているか確認しましょう。

地下街の基準に切り替わるのはどの設備なのか

スプリンクラーヘッドと感知器と受信機とガス検知器と天井スピーカーを横に並べたイメージ
指定を受けた地階では、4つの設備の設置基準がまとめて変わります。
それぞれの基準を条文で確認しましょう。
(略)第十二条第一項第六号、第二十一条第一項第三号(同表(16の2)項に係る部分に限る。)、第二十一条の二第一項第一号及び第二十四条第三項第一号(同表(16の2)項に係る部分に限る。)の規定の適用については、同表(16の2)項に掲げる防火対象物の部分であるものとみなす。(消防法施行令第9条の2)
切り替わるのは4つの設備です。
スプリンクラー設備は延べ面積千平方メートル以上(第12条第1項第6号)、自動火災報知設備は300平方メートル以上(第21条第1項第3号イ)になります。
ガス漏れ火災警報設備は千平方メートル以上(第21条の2第1項第1号)、非常警報設備は面積を問わず必要になります(第24条第3項第1号)。
消火器具や誘導灯など、この4つに含まれない設備は通常どおり自分の用途の基準で判断します。

4つも設備の基準が変わるんですね。

はい、まとめて確認しておくと安心です。

指定を受けると基準は厳しくなるのかゆるくなるのか

二つの建物を比較し片方に基準が適用されるチェックマークもう片方に適用されない印を付けたイメージ
指定を受けたからといって、すべての設備が一律に厳しくなるわけではありません。
設備ごとに条文を見比べる必要があります。
自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物(略)(六)項イ(1)から(3)まで及びロ(略)に設置するものとする(第二十一条第一項第一号)。/非常ベル及び放送設備又は自動式サイレン及び放送設備は、(16の2)項及び(16の3)項に掲げる防火対象物に設置するものとする(第二十四条第三項第一号)。(消防法施行令)
自動火災報知設備は、むしろ緩和される側にまわることがあります。
通常の(6)項イであれば面積を問わず設置義務ですが、地下街の基準(第21条第1項第3号イ)は300平方メートル以上なので、指定によって基準が変わる余地があります。
一方で非常警報設備は、通常なら収容人員に応じた基準ですが、地下街の基準では面積を問わず非常ベルと放送設備の両方を求めます。
スプリンクラー設備とガス漏れ火災警報設備は、地下街特有の基準がそのまま新たに適用されます。
どちらに動くかは設備ごとに違うため、思い込みで判断しないことが大切です。

厳しくなる設備もあれば緩くなる設備もあるって、ややこしいですね。

一つずつ条文で確認すれば大丈夫です。

明日からなにを確認すればよいのか

窓口で担当者が書類を手渡している様子のイメージ
自分の建物が対象かどうかは、次の手順で確認できます。
  • 建物の地階が地下街と地下でつながっているかを確認する
  • 用途が(一)項〜(四)項・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(16)項イに当てはまるかを確認する
  • 地階が地下街との一体指定を受けているかを所轄消防署に確認する
  • 指定を受けている場合は、4つの設備の基準を条文ごとに再確認する
  • 増改築や用途変更のときは、指定の有無が変わっていないか改めて確認する

まずは消防署に確認してみます。

それが一番確実な近道です。

よくある質問

Q地下街と一体の指定を受けているかどうかは、どこで確認できますか?
A所轄消防署に問い合わせれば確認できます。消防用設備等点検の結果報告書に記載されていることもあります。
Q指定を受けると必ず設備が増えるのですか?
A増えるとは限りません。自動火災報知設備のように基準がゆるくなる場合もあります。
Q一体を成すと指定されるのは地階だけですか?
Aはい、条文が対象にしているのは地階の部分だけです。地上階には影響しません。
Q事務所専用のビルにもこの規定は関係ありますか?
A別表第一の列挙に含まれない用途であれば対象外です。ただし複合用途の建物では該当する部分があるか確認が必要です。

まとめ

消防法施行令第9条の2は、地上の建物の地階を地下街の一部とみなす規定です
対象は(一)項〜(四)項・(5)項イ・(6)項・(9)項イ・(16)項イの地階に限られます
指定するのは消防長又は消防署長で、自動的に適用されるわけではありません
切り替わるのはスプリンクラー・自動火災報知設備・ガス漏れ火災警報設備・非常警報設備の4つです
自動火災報知設備のように、基準がゆるくなる設備もあります
非常警報設備のように、基準が厳しくなる設備もあります
自分の建物が対象かどうかは所轄消防署に確認しましょう

地階の基準がこんな仕組みになっているとは知りませんでした。
これで安心です

地下街の指定が気になったら、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第9条の2
  • 消防法施行令第十二条第一項第六号・第二十一条第一項第一号及び第三号・第二十一条の二第一項第一号・第二十四条第二項及び第三項第一号

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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