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酸化性液体はなぜ燃焼時間の比較で判定するのか|硝酸水溶液を基準にした試験の仕組みを解説

酸化性液体は燃焼時間の比較で決まるのか アイキャッチ

酸化性液体という言葉は、消防法の第六類に分類される危険な液体を指しますが、実際に該当するかどうかは酸性の強さや刺激臭といった見た目の印象だけでは決まりません。
現場では「強い酸だから危険物だろう」という感覚で判断してしまいがちです。
実は消防法は木粉との混合物を燃やし、燃焼時間を基準物質と比べるという独特な試験で酸化力の強さを判定する仕組みを定めています。
今回はこの燃焼時間の比較試験がどのような仕組みで酸化性液体を判定するのかを、政令と省令の条文からたどっておきます

酸化性液体は強い酸なら該当すると思っていました。

酸性の強さだけでは決まりません。
政令で定める燃焼時間の比較試験で判断します。

燃焼時間を比べるとはどういうことですか。

危険物の規制に関する政令が硝酸の90パーセント水溶液を基準に置いた比較試験を定めています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防法別表第一備考第20号は、酸化性液体を「政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの」と定義しています
  • その試験は危険物の規制に関する政令第1条の8が定めています
  • 硝酸の90パーセント水溶液と木粉の混合物、試験物品と木粉の混合物をそれぞれ燃やして燃焼時間を比べる試験です
  • 試験物品の燃焼時間が基準物質と等しいか、これより短ければ酸化性液体に該当します
  • 燃焼時間が短いほど酸化力が強いと判定され、細目は省令別表第十四が定めています

酸化性液体の判定手順を示す図解(硝酸水溶液と試験物品の燃焼時間を比較)

酸化性液体とはどのような危険物を指すのか

液体入りの容器を掲げる人物と書類を持つ人物
酸化性液体という区分は、消防法の別表の中でも試験の仕組みが独特です。
まずは条文がどう定義しているのかを確認します。
消防法別表第一備考第20号 酸化性液体とは、液体であつて、酸化力の潜在的な危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すものであることをいう。
性状の判定はすべて試験の結果に委ねられています
別表第一備考第20号は、酸性の強さや腐食性ではなく政令で定める試験の結果だけで酸化性液体かどうかを決める書き方にしています。
条文にある「酸化力の潜在的な危険性」とは、他の物質の燃焼を助長する力のことで、試験物品そのものが燃えるかどうかとは別の話です。
つまり試験物品自体は燃えにくい液体であっても、他の可燃物の燃焼を強く助長すれば酸化性液体に該当します。
この危険性を実際にどう測るのか、次に見ていきます。

試験物品そのものが燃えなければ安全だと思っていました。

そこが誤解されやすい点です。
次に試験の具体的な仕組みを確認しましょう。

酸化力の潜在的な危険性はどうやって判断されるのか

天秤のように並んだ二つの蒸発皿と薬品瓶
政令は硝酸の90パーセント水溶液を基準物質に置いた比較試験を定めています。
条文はその比較の仕組みを一つの条文の中でまとめて定めています。
危険物の規制に関する政令第1条の8第1項 法別表第一備考第20号の酸化力の潜在的な危険性を判断するための政令で定める試験は、燃焼時間の比較をするために行う次に掲げる燃焼時間を測定する試験とする。 一 硝酸の90パーセント水溶液と木粉との混合物の燃焼時間 二 試験物品と木粉との混合物の燃焼時間 第2項 法別表第一備考第20号の政令で定める性状は、前項の試験において同項第二号の燃焼時間が同項第一号の燃焼時間と等しいか又はこれより短いこととする。
試験物品そのものの燃焼時間ではなく、木粉との混合物の燃焼時間を基準物質と比べる仕組みです
基準物質は硝酸の90パーセント水溶液で、これと木粉を混ぜて燃やした場合の燃焼時間がものさしになります。
試験物品も同じように木粉と混ぜて燃やし、その燃焼時間を基準物質の燃焼時間と比較します。
酸化力が強い液体ほど木粉の燃焼を助長するため、燃焼時間は短くなるという関係になります。
この比較の具体的な手順を、次に見ていきます。

燃焼時間が短いほうが危険というのは、少し意外な感覚です。

木粉が早く燃え尽きるほど酸化力が強いという考え方です。
次は試験の細目を見ていきます。

燃焼時間の比較試験は具体的にどう行うのか

円錐形に積んだ木粉に点火源を近づける人物
試験の細目は省令が定めています。
省令の別表が装置と手順を細かく定めています。
危険物の試験及び性状に関する省令第6条(第6類の危険物の試験) 令第1条の8第1項の燃焼時間を測定する試験の細目その他必要な事項は、別表第十四に定めるところによる。 別表第十四(第6条関係) 木粉は目開きが500マイクロメートルの網ふるいを通過し、250マイクロメートルの網ふるいを通過しないものとし、試験場所は温度20度、湿度50パーセント、気圧1気圧の無風の場所とする。硝酸の90パーセント水溶液に係る実施手順は、外径120ミリメートルの平底蒸発皿の上に木粉15グラムを高さと底面の直径の比が1対1.75となるように円錐形にたい積させて1時間放置し、これに硝酸の90パーセント水溶液15グラムを均一に注いで混合し、直径2ミリメートルのニクロム線を温度1000度に加熱した点火源を基部の全周が着火するまで(接触時間は10秒まで)接触させて燃焼時間を測定する。試験物品に係る実施手順も同様の手順で行い、外径120ミリメートル及び80ミリメートルの蒸発皿にそれぞれ木粉15グラム及び6グラムを積み、試験物品15グラム及び24グラムを注いで混合し、同じ手順で燃焼時間を測定して短い方の時間を採用する。(略)
木粉の規格から点火源の温度まで、装置と手順のすべてが数値で細かく定められています
木粉は500マイクロメートルから250マイクロメートルの間の粒度に統一され、円錐形に積む比率も一対一・七五に固定されています。
点火源は温度1000度に加熱したニクロム線で、基部の全周に10秒以内で着火させる決まりです。
試験物品は蒸発皿と木粉の量を変えて2回測定し、短い方の燃焼時間を採用する点も見落としやすい細目です。
これらの細目を踏まえたうえで、実務で見落としやすい点を次に確認します。

2回測定して短い方を採用するのはなぜですか。

より酸化力が強く出た結果を採用して安全側に判定するためです。
次は判定時の落とし穴を確認します。

実務で見落としやすいのはどこか

同じ長さの燃焼時間を示す二つの蒸発皿を見比べる人物
燃焼時間が基準物質と同じだった場合の扱いを誤ると、危険な見落としにつながります。
条文の「等しいか又はこれより短いこと」という言葉をもう一度確認します。
危険物の規制に関する政令第1条の8第2項(再掲) 法別表第一備考第20号の政令で定める性状は、前項の試験において同項第二号の燃焼時間が同項第一号の燃焼時間と等しいか又はこれより短いこととする。
試験物品の燃焼時間が基準物質と同じだった場合も、酸化性液体に該当します
条文は「これより短いこと」だけでなく「等しいこと」も性状の要件に含めており、短い場合だけが対象ではありません。
また燃焼時間が短いほど危険性が高いという関係も直感と逆なので注意が必要です。
試験物品が自然にはほとんど燃えない液体であっても、木粉との混合物の燃焼時間だけで判定される点を見落としてはいけません。
試験成績書を確認するときは、基準物質と試験物品の燃焼時間の両方が明記されているかを必ず見てください。

燃焼時間が同じという結果が出た成績書を見たことがあります。

その場合も酸化性液体として扱うのが正しい判断です。

明日からなにを確認すればよいのか

左に書類を手渡す人物 右に来訪者
試験成績書を受け取ったら、まず2つの燃焼時間がそろっているかを確認します。
確認する項目を絞れば、判断の手順そのものは難しくありません。
  • 対象物品について硝酸の90パーセント水溶液と木粉の混合物、試験物品と木粉の混合物の両方の燃焼時間が試験成績書に明記されているか確認する
  • 試験物品の燃焼時間が基準物質の燃焼時間と等しいか短いかを確認する(同じ場合も該当することに注意する)
  • 燃焼時間しか記載が無い成績書は、両方の数値がそろっているか試験機関に確認する
  • 該当していれば酸化性液体(第六類)として指定数量や貯蔵・取扱いの基準を確認する
試験成績書は2つの燃焼時間がそろって初めて判定材料になります
基準物質の数値が書かれていない成績書だけでは、酸化性液体かどうかを判断できません。
数値が欠けている場合は、試験機関に相談して測定からやり直す必要があります。
該当性が確定したら、指定数量や貯蔵・取扱いの基準は別途確認が必要です。
判断に迷ったときは、所轄消防署に相談すれば適切な対応が分かります。

まずは手元の試験成績書に2つの燃焼時間がそろっているか確認してみます。

それが判定の第一歩です。
数値が欠けていれば先に試験機関へ確認しておいてください。

よくある質問

Q酸化性液体は強い酸性の液体なら自動的に該当しますか?
Aいいえ。政令第1条の8が定める燃焼時間の比較試験(硝酸の90パーセント水溶液と木粉の混合物、試験物品と木粉の混合物の燃焼時間を比較する試験)の結果で判断するもので、酸性の強さや腐食性だけでは判定できません。
Q試験物品の燃焼時間が基準物質と同じだった場合はどうなりますか?
A政令第1条の8第2項は「等しいか又はこれより短いこと」と定めているため、燃焼時間が同じ場合も酸化性液体に該当します。これより短い場合だけが対象ではありません。
Q燃焼時間が短いほうが安全なのではないですか?
Aいいえ。この試験は木粉との混合物がどれだけ速く燃え尽きるかを見るもので、燃焼時間が短いほど酸化力が強く、危険性が高いと判定されます。
Q燃焼時間を測定する試験は自社の設備で実施できますか?
A省令別表第十四は木粉の規格・試験場所の条件・点火源の温度まで細かく定めており、専用の試験設備が必要です。一般的には試験機関に依頼して試験成績書の交付を受けることになります。

まとめ

酸化性液体は消防法別表第一備考第20号が定める第六類の危険物です
該当性は危険物の規制に関する政令第1条の8が定める燃焼時間の比較試験で判断されます
硝酸の90パーセント水溶液と木粉の混合物、試験物品と木粉の混合物をそれぞれ燃やして燃焼時間を比べます
試験物品の燃焼時間が基準物質と等しいか、これより短ければ酸化性液体に該当します
燃焼時間が短いほど酸化力が強いと判定される点は直感と逆なので注意が必要です
試験の細目は危険物の試験及び性状に関する省令別表第十四が定めています
試験は試験機関に依頼し、2つの燃焼時間がそろった試験成績書を確認します

まずは基準物質と試験物品の両方の燃焼時間をそろえます!

数値がそろえば試験機関への依頼もスムーズです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)別表第一備考第20号
  • 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第1条の8
  • 危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)第6条・別表第十四
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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