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自己反応性物質はなぜ2つの試験のどちらか一方だけで決まるのか|熱分析試験と圧力容器試験の判定基準を解説

自己反応性物質はどちらの試験で決まるのか アイキャッチ

自己反応性物質という言葉は、危険物の第五類に分類される固体や液体を指しますが、実際に該当するかどうかは名前や成分表だけでは決まりません。
現場では「爆発しそうな薬品」という感覚的なイメージで判断してしまいがちです。
実は消防法は爆発の危険性と加熱分解の激しさという2つの異なる危険性を、それぞれ別の試験で判定する仕組みを定めています。
今回はこの2つの試験がどちらか一方だけで判定を左右する仕組みを、政令と省令の条文からたどっておきます

自己反応性物質は名前を見れば爆発しそうかどうか分かると思っていました。

名前や成分だけでは決まりません。
政令で定める2つの試験のどちらかに該当するかで判断します。

試験は1つではなく2つあるのですか。

危険物の規制に関する政令が熱分析試験圧力容器試験の2つを定めています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防法別表第一備考第18号は、自己反応性物質を「政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの」と定義しています
  • その試験は危険物の規制に関する政令第1条の7が定めています
  • 熱分析試験は2・4-ジニトロトルエン及び過酸化ベンゾイルを標準物質として発熱開始温度と発熱量を比較します
  • 圧力容器試験は孔径1ミリメートルのオリフィス板を用い、加熱した試験物品が破裂板を破裂させるかを観察します
  • 2つの試験はどちらか一方が政令で定める性状を示すだけで自己反応性物質に該当し、細目は省令別表第十二・第十三が定めています

自己反応性物質の判定手順を示す図解(熱分析試験と圧力容器試験のどちらか一方で該当)

自己反応性物質とはどのような危険物を指すのか

結晶状の薬品を並べた棚と書類を持つ人物
自己反応性物質という区分は、消防法の別表の中でも定義の書き方が独特です。
まずは条文がどう定義しているのかを確認します。
消防法別表第一備考第18号 自己反応性物質とは、固体又は液体であつて、爆発の危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの又は加熱分解の激しさを判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すものであることをいう。
性状の判定はすべて試験の結果に委ねられています
別表第一備考第18号は、成分や見た目ではなく政令で定める試験の結果だけで自己反応性物質かどうかを決める書き方にしています。
条文には「又は」という言葉があり、爆発の危険性加熱分解の激しさという2つの異なる危険性のどちらかを示せば該当する構造になっています。
つまり一方の危険性が無くても、もう一方の危険性を示せば自己反応性物質から外れることにはなりません。
この「又は」がどの試験を指すのか、次に見ていきます。

「又は」と書いてあるだけで、具体的にどんな試験なのか分かりません。

危険物の規制に関する政令が試験の中身を具体的に定めています。
次に確認しましょう。

危険性はどちらの試験で判断されるのか

分岐する道の先に熱分析装置と圧力容器を見る人物
政令は2つの危険性それぞれに専用の試験を割り当てています。
条文はその割り当てを一つの条文の中でまとめて定めています。
危険物の規制に関する政令第1条の7第1項 法別表第一備考第18号の爆発の危険性を判断するための政令で定める試験は、2・4-ジニトロトルエン及び過酸化ベンゾイルを標準物質とする熱分析試験とする。 第4項 法別表第一備考第18号の加熱分解の激しさを判断するための政令で定める試験は、孔径1ミリメートルのオリフィス板を用いて行う圧力容器試験とする。
爆発の危険性は熱分析試験、加熱分解の激しさは圧力容器試験と、2つの危険性に別々の試験が割り当てられています
熱分析試験は2・4-ジニトロトルエン過酸化ベンゾイルという2つの標準物質と比較する仕組みです。
圧力容器試験は孔径1ミリメートルのオリフィス板を使い、破裂板が破裂するかどうかを観察する仕組みです。
この2つはまったく違う視点で危険性を測っており、どちらか一方に該当するだけで自己反応性物質になります。
それぞれの試験が具体的に何を測っているのか、次に見ていきます。

2つの試験はどちらも同じ危険性を確認しているのですか。

熱分析試験は爆発の危険性を、圧力容器試験は加熱分解の激しさを確認する仕組みです。
次は試験の中身を見ていきます。

熱分析試験と圧力容器試験は具体的に何を測るのか

密閉した試料の発熱を測る装置とグラフ表示
2つの試験は装置も手順もまったく違います。
省令の別表がそれぞれの装置と手順の細目を定めています。
危険物の試験及び性状に関する省令別表第十二(第5条関係) 2・4-ジニトロトルエン及び過酸化ベンゾイルを標準物質とする熱分析試験は、示差走査熱量測定装置又は示差熱分析装置を用い、2・4-ジニトロトルエン及び基準物質それぞれ1ミリグラムを破裂圧力が5メガパスカル以上のステンレス鋼製の耐圧性のセルに密封し、60秒間に10度の割合で加熱して発熱開始温度及び発熱量を測定する。過酸化ベンゾイル及び試験物品はそれぞれ2ミリグラムとする。(略) 別表第十三(第5条関係) 孔径が1ミリメートルのオリフィス板を用いる圧力容器試験は、内容量200立方センチメートルの圧力容器の上部に破裂板、側面にオリフィス板を取り付け、底に試験物品5グラムを入れた試料容器を置き、60秒間に40度の割合で温度が上昇するように加熱した圧力容器に入れて、破裂板が破裂するか否かを観察する。(略)
熱分析試験は数値を比較するグラフ判定、圧力容器試験は破裂するかしないかの二択という、判定の仕組みそのものが違います
熱分析試験は試験物品の発熱開始温度と発熱量を、2・4-ジニトロトルエンの発熱量に0.7を、過酸化ベンゾイルの発熱量に0.8を乗じた基準点を結ぶ線と比較して判定します。
圧力容器試験は試験物品を加熱し、破裂板が破裂すればそれだけで政令で定める性状に該当します。
どちらも専用の装置と正確な手順が必要で、担当者が自分の設備で簡易的に確認できるものではありません。
この違いを踏まえたうえで、実務で見落としやすい点を次に確認します。

グラフの比較と破裂の有無では、判定のイメージがまったく違いますね。

そのとおりです。
だからこそ両方の試験を確認する必要があります。

実務で見落としやすいのはどこか

圧力容器とオリフィス板と破裂板
一方の試験の結果だけで判断してしまうと、危険な見落としにつながります。
条文の「又は」という言葉の意味をもう一度確認します。
消防法別表第一備考第18号(再掲) 自己反応性物質とは、固体又は液体であつて、爆発の危険性を判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すもの又は加熱分解の激しさを判断するための政令で定める試験において政令で定める性状を示すものであることをいう。
熱分析試験の結果が基準に満たなかったからといって、自己反応性物質ではないと判断してはいけません
条文の「又は」は、熱分析試験圧力容器試験のどちらか一方が該当すれば自己反応性物質になるという意味です。
熱分析試験だけを実施して基準に満たなかった場合でも、圧力容器試験で破裂板が破裂すれば該当することになります。
試験成績書を確認するときは、2つの試験結果がそろっているかを必ず見てください。
一方の試験結果だけが書かれている成績書は、判定が終わっていない可能性があります。

熱分析試験の成績書しか受け取っていない場合はどうすればよいですか。

圧力容器試験の結果も依頼して、両方そろえてから判定してください。

明日からなにを確認すればよいのか

左に書類を手渡す人物 右に来訪者
試験成績書を受け取ったら、まず2つの試験がそろっているかを確認します。
確認する項目を絞れば、判断の手順そのものは難しくありません。
  • 対象物品について熱分析試験圧力容器試験の両方の試験成績書を確認する
  • 熱分析試験は標準物質との比較結果が、圧力容器試験は破裂板が破裂したかどうかが明記されているか確認する
  • 一方の試験結果しかない場合は試験機関に残りの試験を依頼する
  • いずれか一方でも政令で定める性状に該当していれば自己反応性物質として扱う
試験成績書は2つそろって初めて判定材料になります
熱分析試験圧力容器試験のどちらか一方だけでは、自己反応性物質でないと言い切ることはできません。
数値や結果が欠けている場合は、試験機関に相談して測定からやり直す必要があります。
該当性が確定したら、指定数量や貯蔵・取扱いの基準は別途確認が必要です。
判断に迷ったときは、所轄消防署に相談すれば適切な対応が分かります。

まずは手元の試験成績書が2つともそろっているか確認してみます。

それが判定の第一歩です。
足りない試験があれば先に手配しておいてください。

よくある質問

Q熱分析試験だけ受けて基準に満たなければ自己反応性物質ではないと判断してよいですか?
Aいいえ。政令第1条の7は熱分析試験と圧力容器試験のどちらか一方で政令で定める性状を示せば自己反応性物質に該当すると定めているため、熱分析試験の結果だけで該当しないと判断することはできません。
Q熱分析試験の標準物質になぜ2・4-ジニトロトルエンと過酸化ベンゾイルの2つを使うのですか?
A熱分析試験は試験物品の発熱開始温度と発熱量を、2・4-ジニトロトルエンの発熱量に0.7を、過酸化ベンゾイルの発熱量に0.8をそれぞれ乗じた基準点を結ぶ線と比較して判定する仕組みのため、両方の標準物質の測定結果が基準として必要になります。
Q圧力容器試験の孔径が1ミリメートルと9ミリメートルの2種類あるのはなぜですか?
A省令別表第十三は孔径1ミリメートルのオリフィス板による試験を基本とし、孔径9ミリメートルの試験は同じ手順を読み替えて行うものです。自己反応性物質に該当するかどうかは孔径1ミリメートルの試験結果で判断します。
Q熱分析試験や圧力容器試験は自社の設備で実施できますか?
A省令別表第十二・第十三は装置の規格や試料の量、加熱速度まで細かく定めており、示差走査熱量測定装置や圧力容器など専用の試験設備が必要です。一般的には試験機関に依頼して試験成績書の交付を受けることになります。

まとめ

自己反応性物質は消防法別表第一備考第18号が定める第五類の危険物です
該当性は危険物の規制に関する政令第1条の7が定める2つの試験で判断されます
1つは爆発の危険性を判断する熱分析試験です
もう1つは加熱分解の激しさを判断する圧力容器試験です
2つの試験はどちらか一方で政令で定める性状を示せば自己反応性物質に該当します
熱分析試験の細目は省令別表第十二、圧力容器試験の細目は省令別表第十三が定めています
試験は試験機関に依頼し、2つの試験結果がそろった試験成績書を確認します

まずは熱分析試験と圧力容器試験の両方の成績書をそろえます!

2つがそろえば試験機関への依頼もスムーズです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法(昭和23年法律第186号)別表第一備考第18号
  • 危険物の規制に関する政令(昭和三十四年政令第三百六号)第1条の7
  • 危険物の試験及び性状に関する省令(平成元年自治省令第1号)第5条・別表第十二・別表第十三
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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