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ガス漏れ事故はなぜガス事業者が遮断を担うのか|警戒区域内の消防・警察・電気事業者との役割分担を解説

ガス漏れ事故で消防が警戒区域を作れる仕組みを示すイメージ写真

地下街や雑居ビルでガス漏れの通報があると、消防・警察・ガス事業者が同時に現場へ向かいます。
消防が周囲を規制する一方で、実際にガスを止める作業は消防ではなく別の機関が担うと知っていますか。
現場では「誰が何をするか」があらかじめ細かく決められています。
本記事ではガス漏れ事故の警防戦術に関する通達を基に、消防法第二十三条の二による警戒区域の仕組みと、関係機関の役割分担を解説します。

ガス漏れの通報をしたら、消防だけじゃなくガス会社の人も来ていました。
みんな何をしに来ているんですか。

現場では消防・警察・ガス事業者・電気事業者が、それぞれ違う役割を持って動いています。
順番に見ていきましょう。

消防が全部やってくれるわけじゃないんですね。

はい、たとえばガスを止める作業は原則ガス事業者の仕事です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 消防法第二十三条の二により、ガス等の漏えいで火災発生のおそれが著しく大きいときは、火災が起きる前でも消防が火災警戒区域を設定できます
  • 対象となるのは地下街等、つまり地下街や地下街に準ずる施設、不特定多数が出入りする大規模な地階などです。
  • 警戒区域は地下街等なら施設全体、地上部分ならガス漏れ場所から半径100メートルを超える範囲が目安です
  • ガスの遮断は原則としてガス事業者が行い、消防隊が遮断するのは緊急やむを得ない場合に限られます。
  • 現場では消防・警察・ガス事業者・電気事業者が、あらかじめ役割分担を協定等で確認しておくことが求められています。

ガス漏れ事故現場で消防が警戒区域を設定しガス事業者がガスを遮断する役割分担を示す図解

ガス漏れ事故になぜ警防戦術の通達が出されたのか

地下街の階段入口に規制テープを張る消防隊員と消防車のイラスト
地下街や繁華街の地階でガス漏れが起きると、火災に至る前の段階でも重大な被害につながるおそれがあります。
実際にある事故をきっかけに、消防庁は警防戦術を全国に示す通知を出しました。
「ガス漏れ事故に関する警防戦術等について」(通知)(昭和55年 消防消第188号) ガス漏れ事故に際しての警防活動面からの対応のあり方については、当庁としてはガス漏れ事故に関する警防戦術等調査研究会議を設置し、現在鋭意調査研究を進めているところであるが、特に地下街等におけるガス漏れ事故に対する警防戦術等については、早急にその整備、強化を図ることが要請されていることにかんがみ、当面特に留意すべき事項を下記のとおり取りまとめたので通知する。
地下街のガス漏れは、火災に至る前から避難と規制が必要になる特殊な事故です。
この通知が出された同じ年には、静岡駅前で大きなガス爆発事故が起きており、消防庁が発出した別の通知にもその事故が契機になったことが明記されています。
つまり一件の重大事故を教訓に、全国共通の警防戦術としてまとめられたのがこの通知です。
昭和55年という古い通知ですが、根拠となる消防法第二十三条の二の条文は現在も改正されていません。
次は、この通知がどんな場所を対象にしているのかを見ていきましょう。

うちのビルの近くでガス漏れがあったわけじゃないのに、なんで消防が通達まで出すんですか。

同じような大惨事を二度と起こさないためです。
次はどんな場所が対象になるのか見ていきましょう。

どんな場所のガス漏れ事故が対象になるのか

地下街の店舗が並ぶ通路と一般住宅の地階を並べたイラスト
通達が想定しているのは、どこでも起きるガス漏れではありません。
特に被害が大きくなりやすい場所に絞って手順が定められています。
「ガス漏れ事故に関する警防戦術等について」(通知)(昭和55年 消防消第188号) 地下街、地下街に準ずる形態のもの及び不特定多数の者が出入りする建築物の地階で大規模なもの(以下「地下街等」という。)でガス漏れ事故があり、爆発の危険性があるような場合には、消防活動上次の事項について特に留意するものとする。
対象になるのは地下街等に限られ、一般の住宅の地階までは想定されていません。
地下街そのものだけでなく、地下街に準ずる形態の施設や、不特定多数が出入りする建物の地階で規模が大きいものも含まれます。
逆に言えば、閉鎖的で人の出入りが少ない小規模な地階は、この通知が直接想定する範囲ではありません。
ただしどの範囲であっても、消防法第二十三条の二の警戒区域そのものは要件を満たせば設定できる点は変わりません。
次は、実際に警戒区域をどう決めるのかを見ていきましょう。

うちは小さい雑居ビルなんですが、対象外なら安心していいんでしょうか。

地下街等でなくても、危険が大きいと判断されれば同じ考え方が適用されます。
次は警戒区域の決め方を見てみましょう。

警戒区域はどうやって決めるのか

道路のマンホール周囲にロープと三角コーンで境界線を作るイラスト
警戒区域の範囲は、勘や経験だけで決めるわけではありません。
通達には具体的な目安が示されています。
「ガス漏れ事故に関する警防戦術等について」(通知)(昭和55年 消防消第188号) 警戒区域は、原則として地下街等に設定する場合にあっては当該地下街等全体に、地上部分に設定する場合にあってはガス漏れ場所から半径100メートルを超える範囲に、それぞれ速やかに設定するものとする。この場合においては、風位、風速、附近の状況、ガス検知器等による測定結果等を考慮して、必要に応じて設定範囲を拡大又は縮小するものとする。
地上なら半径100メートルが目安ですが、そのまま固定されるわけではありません。
風向きや風速、周辺の状況、ガス検知器の測定結果によって、範囲は拡大も縮小もされます。
地下街等の場合は、部分的な規制ではなく施設全体を警戒区域にするのが原則です。
この区域を設定する権限そのものの根拠(消防法第二十三条の二)や、区域内に立ち入れる人の範囲については、既存の解説記事に詳しく整理されています。
次は、警戒区域の中で実際に誰が何をするのかを見ていきましょう。

100メートルって結構広いですね。
全部消防が規制するんですか。

区域の設定自体は消防の役割です。
ただし中でやることは機関ごとに分かれています。

ガスの遮断は誰が行うのか

ガス事業者の作業員がバルブを閉め傍らで消防隊員が見守るイラスト
警戒区域を設定した後、現場で「誰が何をするか」を取り違えると混乱します。
特に見落としやすいのが、ガスを止める作業を誰が行うかという点です。
「ガス漏れ事故に関する警防戦術等について」(通知)(昭和55年 消防消第188号) ガスのしゃ断は、原則としてガス事業者において実施するものとし、消防隊によるガスのしゃ断は、緊急やむを得ないものと認める場合に実施するものとする。(中略)現場における各機関の任務分担は、原則として次のとおりとすること。警戒区域の設定:消防/避難誘導等:警察、消防/ガスのしゃ断:ガス事業者/電路のしゃ断:電気事業者
ガスを止める作業は、消防ではなくガス事業者が担うのが原則です。
消防隊がガスを遮断するのは、緊急やむを得ないと認められる特別な場合に限られます。
同じように、電気の配線を止める作業は電気事業者の役割とされています。
これは専門知識を持つ事業者が扱わないと、かえって二次被害を招きかねないためです。
次は、この役割分担を平時からどう備えておけばよいかを見ていきましょう。

じゃあ消防が来ても、ガス自体は勝手に止めてくれるわけじゃないんですね。

はい、ガス事業者の到着を待つのが基本です。
次は実務としての備え方を見ていきましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

可燃性ガス検知器と空気呼吸器を点検する消防隊員のイラスト
ここまでの仕組みを踏まえて、実務としてできる備えを整理します。
通達は資機材の整備と、関係機関との連携体制の両方を求めています。
「ガス漏れ事故に関する警防戦術等について」(通知)(昭和55年 消防消第188号) ガス漏れ事故については、関係機関相互間で十分な連携体制をとる必要があるので、あらかじめ協議を行い、次の点について文書(協定、申し合わせ、申し入れ書等)でその内容を確認しておくものとする。関係機関相互の緊急時における通報体制の整備を図ること。
いざという時に慌てないためには、平時の協議と資機材の整備が欠かせません。
通達は可燃性ガス検知器や空気呼吸器など、個人装備の緊急整備も求めています。
建物側でできることとして、ガス臭に気づいたときの通報先と初動を、日頃から掲示や訓練で共有しておくとよいでしょう。
警戒区域が設定された場合は、指示があるまで区域外への避難誘導を優先してください。
今日のうちに、自分の建物のガス警報設備の位置と、緊急時の通報先を確認しておきましょう。

うちの建物のガス警報の場所、実はあまり意識してませんでした。

まずは場所の確認からで大丈夫です。
次によくある質問をまとめます。

よくある質問

Qガス漏れ事故が起きたら、まず誰が現場の警戒区域を決めるのですか?
A原則として消防長または消防署長が消防法第二十三条の二に基づき火災警戒区域を設定します。現場に消防吏員や消防団員がいない場合や、消防長・消防署長から要求があった場合は、警察署長が同じ権限を行うことができるとされています。
Q一般の住宅街でガス漏れが起きても100メートルの規制になるのですか?
A半径100メートルはあくまで地上部分の目安の下限です。風向きや風速、周辺の状況、ガス検知器の測定結果を踏まえて、必要に応じて拡大または縮小されるとされています。
Q電気の配線を止める作業も消防が担当するのですか?
Aいいえ、電路の遮断は電気事業者の役割とされています。消防はガスの遮断と同様に専門の事業者に任せることが原則で、消防自身が配線を扱うことは想定されていません。
Q建物の管理者は普段からどんな備えをしておけばよいですか?
A通達では関係機関があらかじめ協議し、緊急時の通報体制などを協定や申し合わせで確認しておくことが求められています。建物側でもガス警報設備の位置と通報先を日頃から確認し、共有しておくことが実務上の備えになります。

まとめ

消防法第二十三条の二により、ガス等の漏えいで火災発生のおそれが著しく大きいときは、消防長・消防署長が火災警戒区域を設定できます
対象は地下街等、つまり地下街や地下街に準ずる施設、不特定多数が出入りする大規模な地階が中心です。
警戒区域は地下街等なら施設全体、地上部分なら半径100メートルが目安です
範囲は風向きや周辺状況、ガス検知器の測定結果で拡大または縮小されます。
ガスの遮断は原則としてガス事業者が行い、消防隊が行うのは緊急やむを得ない場合に限られます。
電路の遮断は電気事業者の役割とされています。
平時から関係機関との協議と通報体制の整備が求められています

ガス漏れ事故のときの役割分担がよく分かりました!
うちのガス警報設備の場所も確認してみます。

日頃の確認が一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 「ガス漏れ事故に関する警防戦術等について」(通知)(昭和55年 消防消第188号)
  • 「地下街等のガス保安対策に関する消防機関とガス事業者との連携強化について」(通知)(昭和55年11月21日 消防危第138号)
  • 消防法(昭和23年法律第186号)第23条の2

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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