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放送設備のスピーカーはL級M級S級のどれを選ぶのか|放送区域の面積で決まる設置基準を解説

天井のスピーカーを見上げて確認する担当者

ホールや工場に放送設備を導入するとき、天井に付けるスピーカーはどれでも同じというわけではありません。
消防法施行規則は、放送区域の広さに応じてスピーカーに求める音圧の号数を細かく分けています。
号数を誤って選ぶと、設置基準そのものを満たせなくなってしまいます。
放送区域の面積を基準に号数を選べば、設置基準を満たすことができます

放送設備のスピーカーって、天井に付いているものは全部同じだと思っていました。

実は放送区域の面積によって使えるスピーカーの号数が変わります

号数って、そんなに厳密に決まっているんですか。

はい。
L級・M級・S級という3段階があり、順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 放送設備のスピーカーにはL級・M級・S級という3段階の音圧区分があります
  • 放送区域が100平方メートルを超えるとL級のスピーカーしか使えません
  • 50平方メートル以下の放送区域ではL級・M級・S級のいずれかを選べます
  • スピーカーは放送区域の各部分から水平距離10メートル以内に設けます
  • 居室や廊下が6平方メートル以下など狭い区域は、隣接スピーカーが8メートル以内に届けば設置を省略できます

放送設備のスピーカーになぜ3つの等級があるのか

音圧の異なるL級M級S級のスピーカーが並ぶイメージ
消防法施行規則は、放送設備のスピーカーに求める音圧の強さを3段階に分けています。
号数が違うと、スピーカーから出せる音の大きさそのものが変わります。
(イ) 次の表の上欄に掲げる種類に応じ、取り付けられたスピーカーから一メートル離れた位置で同表下欄に掲げる大きさであること。L級 九十二デシベル以上/M級 八十七デシベル以上九十二デシベル未満/S級 八十四デシベル以上八十七デシベル未満(消防法施行規則第二十五条の二第二項第三号イ)
号数の違いは音圧の強さの差です
L級がいちばん強い音を出せるスピーカーで、M級・S級の順に許容される音圧の下限が下がっていきます。
音圧が低くても許されるのは、放送区域が狭ければ小さな出力でも隅々まで聞こえるからです。
逆に広い放送区域では、S級やM級では隅まで音が届かず、非常放送が聞き取れない場所ができてしまいます。
だから号数は建物の側で自由に選べるものではなく、次に見る放送区域の面積で決まってきます。

号数の違いは音圧の強さの差なんですね。

そうです。
広い区域ほど強い号数が必要になります。

放送区域の広さでスピーカーの号数はどう決まるのか

広さの違う3つの放送区域にそれぞれ大きさの異なるスピーカーが設置されたイメージ
号数表だけを見ても、どの号数を選べばよいかは決まりません。
実際に音を届ける放送区域の面積が、選べる号数を左右します。
(ロ) スピーカーの設置は、次に定めるところによること。(イ) スピーカーは、階段又は傾斜路以外の場所に設置する場合、百平方メートルを超える放送区域に設置するものにあつてはL級のもの、五十平方メートルを超え百平方メートル以下の放送区域に設置するものにあつてはL級又はM級のもの、五十平方メートル以下の放送区域に設置するものにあつてはL級、M級又はS級のものを設けること(消防法施行規則第二十五条の二第二項第三号ロ(イ))
面積の三段階でスピーカーの号数の選択肢が変わります
100平方メートルを超える広い放送区域では、いちばん強いL級しか使えません。
50平方メートルを超え100平方メートル以下ならL級かM級のどちらかを選べます。
50平方メートル以下まで来て、初めてS級という選択肢が加わります。
つまり放送区域が広いほど、選べるスピーカーの号数の幅は狭くなっていきます。

広い部屋ほど、選べる号数が減っていくんですね。

はい。
まずは放送区域の面積を測ることから始めてください

スピーカーの設置間隔はどう決めるのか

天井のスピーカーから水平距離10メートルの範囲を計測するイメージ
号数を満たすだけでは、放送区域の隅々まで音が届くとは限りません。
設置基準はスピーカーどうしの間隔まで定めています。
(ロ) スピーカーは、(イ)に規定する場所に設置する場合、放送区域ごとに、当該放送区域の各部分から一のスピーカーまでの水平距離が十メートル以下となるように設けること(消防法施行規則第二十五条の二第二項第三号ロ(ロ))
放送区域の隅々まで届かせる基準は水平距離10メートルです
床面のどの位置から測っても、最寄りのスピーカーまで10メートル以内に収まるように配置します。
広い会議室や倉庫では、この10メートルの基準を満たすためにスピーカーを複数台に分けて設けることになります。
号数を上げるだけでなく、配置の密度も音の届き方を左右する要素です。
図面を引くときは、号数の選定と合わせてスピーカーの位置を先に決めておくと後戻りが減ります。

号数さえ強くしておけば、間隔はどうでもいいと思っていました。

いいえ。
水平距離10メートルを守らないと隅に届かない場所ができます。

狭い部屋ならスピーカーを省略できるのか

狭い居室にスピーカーを設けず隣接する放送区域のスピーカーで音を届けるイメージ
放送区域のすべてにスピーカーが要るわけではありません。
狭い区域には、条件付きで省略が認められています。
ただし、居室及び居室から地上に通じる主たる廊下その他の通路にあつては六平方メートル以下その他の部分にあつては三十平方メートル以下の放送区域については、当該放送区域の各部分から隣接する他の放送区域に設置されたスピーカーまでの水平距離が八メートル以下となるように設けられているときは、スピーカーを設けないことができるものとする(消防法施行規則第二十五条の二第二項第三号ロ(ロ)ただし書)
狭い放送区域はスピーカーそのものを省略できる場合があります
居室や主たる廊下なら6平方メートル以下、それ以外の小部屋なら30平方メートル以下が対象です。
省略できるのは、隣の放送区域に設けたスピーカーの音が水平距離8メートル以内でその区域まで届く場合に限られます。
省略できる条件を満たさないまま放送区域だけを小さく区切っても、基準を満たしたことにはなりません。
省略の可否は図面上の距離で決まるので、施工前に隣接区域のスピーカーの位置まで確認しておく必要があります。

狭い部屋ならスピーカーを付けなくてよいこともあるんですね。

ただし隣接スピーカーまで8メートル以内という条件付きです。

階段や傾斜路のスピーカーはどう扱うのか

階段の壁面に垂直距離15メートルごとにスピーカーが設置されたイメージ
ここまでの基準はすべて床面を基準にした話でした。
階段や傾斜路だけは、測り方そのものが変わります。
(ハ) スピーカーは、階段又は傾斜路に設置する場合、垂直距離十五メートルにつきL級のものを一個以上設けること(消防法施行規則第二十五条の二第二項第三号ロ(ハ))
階段と傾斜路だけは面積ではなく垂直距離で基準が決まります
横に広がる床面と違い、階段は上下に伸びる空間なので、水平距離ではなく垂直方向の距離で区切ります。
垂直距離15メートルごとに、号数のいちばん強いL級のスピーカーを1個以上設ける必要があります。
避難経路である階段や傾斜路は、非常放送が届かない区間があってはならない場所だからです。
建物の同じ階でも、居室のスピーカーと階段のスピーカーは別の基準で計画することになります。

階段は面積で測れないから、別の基準になるんですね。

そうです。
避難経路だからこそ、垂直距離15メートルで厳しく区切られています。

よくある質問

QL級とM級とS級はどちらが大きな音を出せるのですか?
A音圧の下限がいちばん高いのはL級で、次にM級、S級の順に下がります。放送区域が広いほど強い号数が必要になるため、選べる号数の幅は面積によって変わります。
Q放送区域とはどこまでの範囲を指すのですか?
A防火対象物の2以上の階にわたらず、かつ床・壁・戸で区画された部分を指します。ふすまや障子のように遮音性能が著しく低いもので仕切られた部分は区画に含めません。
Q非常ベルや自動式サイレンのスピーカーも同じ号数の基準ですか?
Aいいえ。非常ベルや自動式サイレンの音響装置は取り付け位置から1メートルで90デシベル以上という別の基準で、放送設備のスピーカーのようなL級・M級・S級の区分はありません。
Qスピーカーの号数や配置は誰が最終的に判断するのですか?
A設計段階では号数表と水平距離の基準にもとづいて計画しますが、最終的な適合の判断は所轄の消防署が行います。図面を提出する前に一度相談しておくと手戻りを防げます。

まとめ

放送設備のスピーカーにはL級・M級・S級という3段階の音圧区分があります
100平方メートルを超える放送区域ではL級しか使えません
50平方メートルを超え100平方メートル以下ならL級かM級を選べます
50平方メートル以下ではL級・M級・S級のいずれかを選べます
スピーカーは放送区域の各部分から水平距離10メートル以内に設けます
居室や廊下が6平方メートル以下など狭い区域は隣接スピーカーが8メートル以内なら省略できます
階段や傾斜路は面積ではなく垂直距離15メートルごとにL級を1個以上設けます

号数と設置間隔まで確認すれば、うちの放送設備もちゃんと基準を満たせそうです。

放送区域の図面があれば号数まで一緒に確認できます
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第24条
  • 消防法施行規則第25条の2第2項第3号
  • e-Gov 法令検索

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。実際の設計や号数の判定は建物ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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