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危険物施設はなぜ架空電線からも距離が必要なのか|電圧で変わる2段階の保安距離を解説

架空電線からも危険物施設はなぜ距離が必要か アイキャッチ

危険物施設の保安距離というと、学校や病院との30メートルばかりが意識されがちです。
実は敷地の上空を通る特別高圧架空電線からも、距離を確保するよう政令が定めています。
しかも求められる距離は電圧によって変わり、塀を建てても短くできない区分があります。
今回はこの架空電線との距離の仕組みを、条文からたどっておきます

うちの敷地の上を電線が通っていますが、これも保安距離の対象になるんですか。

はい、特別高圧架空電線も距離の対象です。
ただし学校等とは条文の作りが違います。

条文の作りが違うとはどういうことですか。

電圧によって距離が二段階に分かれています。
条文を順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号ホ・ヘは、使用電圧が7,000ボルトを超える特別高圧架空電線からも保安距離が必要と定めています
  • 距離は号ホが水平距離3メートル以上、号ヘが水平距離5メートル以上です
  • 電圧が高いほど必要な距離も長くなり、35,000ボルトを境に基準が切り替わります
  • 政令のただし書きによる塀等での緩和は号イから号ハまでに限られ、号ホ・ヘには適用されません
  • 電線の使用電圧は電力会社に確認し、距離が足りないときは所轄消防署へ相談することが実務の要点です

危険物施設が特別高圧架空電線からも保安距離を必要とし政令第9条第1項第1号が電圧で2段階の水平距離を定めることを示す図解

危険物施設の保安距離になぜ架空電線も入っているのか

危険物施設の外壁から架空電線の鉄塔までの距離を測る人物
危険物施設が保安距離を取る相手は、学校や病院、重要文化財だけではありません。
まずは根拠になる条文の全体像を確認します。
危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号 製造所の位置は、次に掲げる建築物等から当該製造所の外壁又はこれに相当する工作物の外側までの間に、それぞれ当該建築物等について定める距離を保つこと。(略)ホ 使用電圧が七千ボルトを超え三万五千ボルト以下の特別高圧架空電線 水平距離三メートル以上 ヘ 使用電圧が三万五千ボルトを超える特別高圧架空電線 水平距離五メートル以上
保安距離を取る相手には、上空を通る特別高圧架空電線も含まれています
号ホ・ヘのほかにも、住居・学校病院・重要文化財・高圧ガス等が同じ第1号の中に並んでいます。
この号は製造所の基準ですが、屋内貯蔵所など他の施設にも準用され、幅広い施設に効いてきます。
号ホ・ヘは、住居や学校のように「施設の種類」ではなく「電線の使用電圧」で区分している点が他の号と異なります。
どのような電線が対象になり、距離が何メートルなのかは、次の号ホから確認します。

電線からも距離が要るとは知りませんでした。

使用電圧が7,000ボルトを超える架空電線が対象です。
まずは架空電線そのものの範囲を見ましょう。

どのような電線が特別高圧架空電線に当たるのか

空中の架空電線と地中に埋設されたケーブルを見比べる人物
「特別高圧架空電線」と一口に言っても、対象になる範囲は条文の文言で決まっています。
号ホの原文を確認します。
危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号ホ 使用電圧が七千ボルトを超え三万五千ボルト以下の特別高圧架空電線 水平距離三メートル以上
「架空電線」とは、地上に架け渡された電線を指す言葉です
条文の文言そのものが対象を電線に限っており、地中に埋設された送電ケーブルはこの号の対象ではありません。
号ホが対象とするのは使用電圧が7,000ボルトを超え35,000ボルト以下の電線で、これより電圧の低い一般的な配電線は対象に含まれません。
「近くに電線があるから対象になる」のではなく、その電線が架空であることと使用電圧の水準の両方で判定します。
号ホに当たると分かったら、次はより高い電圧の区分を確認します。

電線ならなんでも対象になると思っていました。

地上に架けられた電線であることと電圧の水準が条件です。
次はもう一段高い電圧の区分を見ましょう。

使用電圧によって水平距離はどう変わるのか

電圧の異なる二本の鉄塔までの距離を測る人物
号ホより電圧が高い架空電線には、別の号でさらに長い距離が求められています。
号ヘの原文を確認します。
危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号ヘ 使用電圧が三万五千ボルトを超える特別高圧架空電線 水平距離五メートル以上
使用電圧が35,000ボルトを超えると、距離は5メートル以上に伸びます
号ホ(7,000ボルト超35,000ボルト以下)は水平距離3メートル以上、号ヘ(35,000ボルト超)は水平距離5メートル以上と、電圧の高さに応じて二段階に分かれています。
距離はいずれも施設の外壁又はこれに相当する工作物の外側から電線までの、まっすぐな水平距離で測ります。
上空を斜めに横切る電線でも、測るのは高さではなく水平方向の距離である点に注意が必要です。
自社の施設がどちらの区分に当たるかは、電線の使用電圧を確認して初めて判断できます。

電線が高いところを通っていれば距離は短くてもいいんですね。

いいえ、高さではなく水平距離で測ります。
次は見落としやすい緩和の話を確認しましょう。

塀を設ければ架空電線からの距離も緩和されるのか

塀を設けても架空電線までの距離が変わらないことを示す人物
学校や重要文化財には、塀を設けて距離を短くできる仕組みがあります。
同じ考え方が架空電線にも通用するのか、条文のただし書きを確認します。
危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号(ただし書き) ただし、イからハまでに掲げる建築物等について、不燃材料で造つた防火上有効な塀を設けること等により、市町村長等が安全であると認めた場合は、当該市町村長等が定めた距離を当該距離とすることができる。
塀を設けても、号ホ・ヘの距離は短くできません
ただし書きが緩和を認めているのは号イから号ハまでに掲げる建築物等に限られており、号ニ・ホ・ヘはその対象に含まれていません。
号ニ(高圧ガス等)には規則第12条第2項による専用の緩和規定がありますが、特別高圧架空電線の号ホ・ヘには、政令にも規則にもこれに相当する緩和規定は見当たりません。
同じ第1号の中に並ぶ号だからと、住居や学校と同じ感覚で「塀を建てれば短縮できる」と考えてしまうと、実際の距離を見誤ることになります。
号ホ・ヘに該当する施設では、水平距離そのものを確保する計画が前提になります。

塀を建てれば号ホ・ヘの距離も短くできると思っていました。

号イから号ハまでに限られた緩和です。
最後に確認の手順を整理しましょう。

実務では架空電線までの距離をどう確認すればよいのか

左に図面を手渡す人物 右に受け取る人物
号ホ・ヘに当たるかどうかは、電線の情報を確認しないと判断できません。
確認する項目を整理します。
  • 敷地の上空や周囲に特別高圧架空電線が無いか確認する
  • 電線を管理する電力会社に使用電圧を確認する(7,000ボルト超35,000ボルト以下なら号ホ、35,000ボルト超なら号ヘ)
  • 施設の外壁から電線までの水平距離を実測し、3メートルまたは5メートルを確保できているか確認する
  • 不足するときは塀による緩和は使えない前提で、施設配置そのものを見直すか所轄消防署に相談する
確認するのは電線の有無・使用電圧・水平距離・不足時の対応の四つで足ります
使用電圧は電力会社に確認できることが多く、自社で目視だけで判断しないことが大切です。
自社の敷地図に架空電線までの水平距離を書き込み、号ホ・ヘどちらの基準に当たるか早めに確認しておきます。
号ホ・ヘには塀による緩和が無いため、距離が不足する場合は施設配置の見直しが必要になります。
判断に迷ったときは、所轄消防署に相談すれば適切な対応が分かります。

まずは敷地の近くに電線が無いか確認してみます。

電圧まで確認できれば判断も確実です。
距離が足りないときは早めにご相談ください。

よくある質問

Q特別高圧架空電線からの距離は自分の敷地内であれば不要ですか?
A政令第9条第1項第1号ホ・ヘの条文自体には敷地の内外による区別は書かれておらず、使用電圧が7,000ボルトを超える架空電線であれば、該当する区分の水平距離を確保する必要があります。
Q電線の使用電圧が分からないときはどうすればよいですか?
A自社で判断するのではなく、電線を管理する電力会社に確認するのが確実です。使用電圧によって号ホ(3メートル)と号ヘ(5メートル)のどちらが適用されるかが変わります。
Q塀を建てれば号ホ・ヘの距離も短くできますか?
Aいいえ。政令のただし書きが認める塀等による緩和は号イから号ハまでに限られており、特別高圧架空電線を定める号ホ・ヘには適用されません。
Q地中に埋設された送電ケーブルも同じ号の対象になりますか?
A号ホ・ヘはいずれも「架空電線」を対象としており、地上に架け渡された電線を前提とした規定です。地中に埋設されたケーブルはこの号の対象ではありません。

まとめ

危険物の規制に関する政令第9条第1項第1号は、保安距離の対象に特別高圧架空電線も含めています
号ホ・ヘがいずれも対象とするのは、使用電圧が7,000ボルトを超える架空電線です
号ホ(7,000ボルト超35,000ボルト以下)は水平距離3メートル以上、号ヘ(35,000ボルト超)は水平距離5メートル以上です
距離は施設の外壁から電線までの水平距離で測ります
政令のただし書きによる塀等での緩和は号イから号ハまでに限られ、号ホ・ヘには適用されません
電線の使用電圧は自社で推測せず電力会社に確認するのが確実です
距離が確保できないときは、早めに所轄消防署へ相談することが大切です

まずは敷地の上空に特別高圧架空電線が無いか確認します!

水平距離が確保できないときは配置の見直しを一緒に確認しましょう。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第9条第1項第1号
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第12条
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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