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自走式駐車場の隣地との距離はどんなときに2m必要になるのか|多段式車庫の開放性基準と感知器の省略要件を解説

夕暮れに照明が灯る多段式の自走式自動車車庫を見上げたイメージ

立体駐車場の外壁を見上げると、壁がほとんど無く柱と手すりだけということがあります。
これは自走式自動車車庫という形式で、屋上まで自分で運転して上がる駐車場です。
一層二段・二層三段・三層四段まではすでに個別の通知がありましたが、実際に建物がもっと高くなったため新しい通知が必要になりました。
消防庁が示したのは階数が増えるほど設備の条件も一段厳しくなるという線引きです。

うちのビルの立体駐車場、壁が無くて吹きさらしなんです。
消火設備もずいぶん簡単な作りだと聞きました。

それは自走式自動車車庫という形式ですね。
開放されているぶん煙がこもりにくいので、消火設備を移動式にできるんです。

うちは五階建てなんですが、それでも同じ扱いになるんですか。

そこがポイントです。
階数が上がるほど条件も変わるので、開放性隣地との距離の2つを順に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 一層二段・二層三段・三層四段はすでに個別の通知(84号・154号・3号)があり、四層五段以上の登場を受けて2006年に包括的な新通知(110号)が出されました
  • 開放性など(1)から(4)の基準を満たせば、泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の消火設備を移動式にできます
  • 外周の開口部は常時外気に開放し、床面積の5%以上かつ外周長×0.5m以上を確保する必要があります
  • 五層六段以上になると、隣地境界線との距離が2m以上に引き上げられます
  • 開口部から5m未満の範囲は、感知器を設置しないことができるとされています

段数がふえるほど自走式自動車車庫と隣地境界線との距離も広がることを示した図解

多段式の自走式駐車場はなぜ新たに通知が出されたのか

二層・三層・五層以上と高さの異なる自走式自動車車庫が並んでいることを示したイメージ
自走式自動車車庫の消防用設備は、階数の低いものから順に個別の通知で扱われてきました。
一層二段は平成3年、二層三段は平成6年、三層四段は平成12年です。
多段式の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について(平成18年3月17日消防予第110号) 一層二段、二層三段及び三層四段の自走式自動車車庫にあっては、それぞれ「一層二段の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について」(平成3年5月7日付消防予第84号)、「二層三段の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について」(平成6年6月16日付消防予第154号)及び「三層四段の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について」(平成12年1月7日付消防予第3号)において既に通知(以下「84号通知等」という。)しているところですが、今般、四層五段以上の自走式自動車車庫が見受けられることから、それらを含め、多段式の自走式自動車車庫における消防用設備等の取扱いについて、下記のとおりとしたので通知します。(略)
建物の高層化に基準が追いついた形です
一層二段・二層三段・三層四段は、すでにそれぞれの通知(84号154号3号)でカバーされていました。
そこへ四層五段以上の車庫が実際に登場したため、平成18年にそれらをまとめて扱う110号通知が出され、平成21年の129号でさらに条件が追加されました。
つまりこの通知は事故を受けたものではなく、建物の実態に法整備が追いついたという性格のものです。
自分の駐車場が何号の通知に当たるのかは、まず階数と段数を数えることから始まります。

事故がきっかけじゃなくて、建物のほうが先に高くなっていたんですね。

そのとおりです。
まずは何層何段の車庫なのか、竣工図で数えておいてください。

どんな自走式車庫がこの通知の対象になるのか

運転者が自分で車を運転して内部のスロープを上がっていく自走式自動車車庫を示したイメージ
対象になるのは、機械が車を持ち上げる立体駐車場ではありません。
運転者自身がハンドルを握って車室まで移動する形式に限られます。
多段式の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について(平成18年3月17日消防予第110号) 自走式自動車車庫(自動車の駐車の用に供し、車室等に駐車する場合の移動を、自動車を運転させることにより行う形式の自動車車庫をいう。)にあっては、それぞれ(略)通知(以下「84号通知等」という。)しているところですが、今般、四層五段以上の自走式自動車車庫が見受けられることから、それらを含め、多段式の自走式自動車車庫における消防用設備等の取扱いについて、下記のとおりとしたので通知します。
運転して自分で移動する形式かどうかが分かれ目です
パレットに乗せて機械で昇降させるタワー式や垂直循環式の立体駐車場は、この通知の対象ではありません。
対象は一層二段から五層六段以上まで幅があり、段数が上がるほど後の章で見る条件も重くなります。
自分の車庫がどちらの形式かは、車をどう動かして駐車するかを思い出せばすぐに分かります。

機械式のパレット駐車場とは、そもそも別の話なんですね。

はい、別の基準が適用されます。
運転して上がる形式かどうかをまず確認してください

消防用設備等はどんな条件で移動式にできるのか

外周に壁が無く常時開放された自走式自動車車庫の開口部を点検員が確認しているイメージ
固定式の消火設備は配管が長くなりがちで、開放された車庫には不向きです。
そこで(1)から(4)の基準を満たせば、移動式でよいとされました。
多段式の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について(平成18年3月17日消防予第110号、改正平成21年3月消防予第129号) 次の(1)から(4)の全ての基準に適合する多段式の自走式自動車車庫にあっては、消防法施行規則第18条第4項第1号「火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所」以外の場所及び規則第19条第6項第5号「火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所以外の場所」に含まれるものであり、また、その他の規定にかかわらず、泡消火設備、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備を設置する場合にあっては、移動式の消火設備とすることができること。(略)(2) 自走式自動車車庫部分の外周部の開口部の開放性は、次のアからウの全ての基準を満たしていること。ア 常時外気に直接開放されていること。イ 各階における外周部の開口部の面積の合計は、当該階の床面積の5%以上であるとともに、当該階の外周長さに0.5mを乗じて得た値を面積としたもの以上とすること。ウ 車室の各部分から水平距離30m以内の外周部において12㎡以上の有効開口部が確保されていること。
消防法施行規則第18条第4項第1号 火災のとき著しく煙が充満するおそれのある場所に設けるものは、固定式のものとすること。/第19条第6項第5号 火災のとき煙が著しく充満するおそれのある場所以外の場所に設置すること。
壁が無いことが技術的な根拠になっています
規則が固定式を求めるのは、煙がこもって移動式では消火に届かない場所を想定しているからです。
自走式車庫は常時外気に開放され、開口部の面積も床面積の5%以上かつ外周長×0.5m以上と具体的に決められているため、煙がこもる場所には当たらないと整理されました。
このほか、車室から30m以内に12㎡以上の開口部を確保すること、直通階段までの水平距離を65m以内にすることも条件に含まれます。
建物側で確かめるのは、竣工図に書かれた開口部の面積が、実際に物を置いてふさがれていないかという点です。

吹きさらしなのは見た目の問題じゃなくて、設備の条件そのものだったんですね。

そのとおりです。
開口部の前に看板や資材を置いていないか、一度歩いて確認してみてください。

隣地との距離はどんなときに2m必要になるのか

車庫の外壁と隣地境界線の間に防火壁と距離を確保していることを点検員が確認しているイメージ
開放されているということは、隣の建物にも火が及びやすいということです。
そこで境界線との距離にも基準が設けられ、階数が上がるとさらに厳しくなります。
多段式の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について(平成18年3月17日消防予第110号、改正平成21年3月消防予第129号) (4) 隣地境界線又は同一敷地内の他の建築物と外周部との間に0.5m以上の距離を確保し、各階の外周部に準不燃材料で造られた防火壁(高さ1.5m以上)を設けること(1m以上の距離を確保した場合を除く。)。ただし、五層六段以上の自走式自動車車庫については、隣地境界線又は同一敷地内の他の建築物との距離は2m以上とし、各階の外周部に準不燃材料で造られた防火壁(高さ1.5m以上)を設けること(3m以上の距離を確保した場合を除く。)
基本は0.5m、五層六段以上は2mです
四層五段以下は、境界線から0.5m以上離すか、準不燃材料の防火壁を設ければ足ります(1m以上確保すれば壁は不要)。
これが五層六段以上になると、距離そのものが2m以上に引き上げられ、防火壁を設けても3m以上離さない限り免除されません。
見落としやすいのは、一層二段・二層三段・三層四段の車庫は、この(1)から(4)の新しい基準を無理に満たす必要がないという点です。従来どおり84号通知等の基準のままで構いません。
建物側で確かめたいのは、増築や改修で階数を増やしたときに、境界線からの距離が古い基準のまま据え置かれていないかです。

増築で階数が増えたとき、距離の基準も見直しが要るということですね。

はい、五層六段を超える増築は特に注意です。
設計段階で境界線までの実測距離を確認しておいてください。

明日から自分の駐車場で何を確認すればよいのか

点検員が竣工図を手に自走式自動車車庫の前で確認作業をしているイメージ
開放性の基準を満たす車庫では、自動火災報知設備の感知器にも省略できる範囲があります。
どこまで省略されているのかを知っておくと、点検のときに慌てません。
多段式の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について(平成18年3月17日消防予第110号、改正平成21年3月消防予第129号) 2 自動火災報知設備の設置について 上記1に適合する多段式の自走式自動車車庫については、同(2)に示す開口部から5m未満の範囲の部分は、規則第23条第4項第1号ロの「外部の気流が流通する場所」に該当するものであり、感知器を設置しないことができる
消防法施行規則第23条第4項第1号ロ 上屋その他外部の気流が流通する場所で、感知器によつては当該場所における火災の発生を有効に感知することができないもの。
感知器が無い場所があるのは施工不良ではありません
開口部から5m未満の範囲は気流が通り抜けるため、感知器を置いても有効に感知できないという理由からの除外です。
建物側でやっておきたいのは次の4つです。
①竣工図で自分の車庫が何層何段かを数える。②外周の開口部が塞がれていないか歩いて確認する。③境界線までの距離と防火壁の有無を図面と現地で照らし合わせる。④感知器が無い範囲がどこかを消防計画や設備台帳で把握しておく。
この4つを押さえておけば、点検業者や所轄消防署との話がかみ合いやすくなります。

感知器が少ないと不安でしたが、理由があっての設計だと分かって安心しました。

そうなんです。
竣工図と現地を照らし合わせる4つの確認を、次の点検までにやっておいてください。

よくある質問

Q一層二段の車庫も新しい(1)から(4)の基準を満たさないといけませんか?
Aいいえ。一層二段・二層三段・三層四段の車庫は、従来の84号通知等の基準のままでよいとされています。
Q泡消火設備を移動式にできるのはどんな車庫でも同じですか?
Aいいえ。開放性など(1)から(4)のすべての基準を満たした多段式の自走式自動車車庫に限られます。基準を満たさない場合は固定式が必要です。
Q隣地境界線との距離はどの車庫でも0.5m以上ですか?
Aいいえ。五層六段以上の自走式自動車車庫では、隣地境界線または同一敷地内の他の建築物との距離を2m以上確保する必要があるとされています。
Q感知器が無い範囲があるのは施工不良ですか?
Aいいえ。開口部から5m未満の範囲は、消防法施行規則が定める「外部の気流が流通する場所」に該当し、感知器を設置しないことができるとされています。

まとめ

一層二段・二層三段・三層四段は既存の通知(84号・154号・3号)で個別に扱われてきました
四層五段以上の登場を受けて平成18年に消防予第110号が包括的な基準を示しました
泡・不活性ガス・ハロゲン化物・粉末の消火設備は移動式にできます
移動式にできるのは開放性など(1)から(4)の基準をすべて満たした場合に限られます
開口部は各階の床面積の5%以上かつ外周長×0.5m以上を常時外気に開放する必要があります
五層六段以上は隣地境界線との距離が2m以上に引き上げられます
開口部から5m未満の範囲は感知器の設置を省略できます

階数を数えるところから始めればいいと分かりました。
すっきりしました。

階数、開口部、境界線までの距離。
この3つを押さえれば大きく外しません
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 多段式の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について(平成18年3月17日消防予第110号、改正平成21年3月消防予第129号)
  • 一層二段の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について(平成3年5月7日付消防予第84号)
  • 二層三段の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について(平成6年6月16日付消防予第154号)
  • 三層四段の自走式自動車車庫に係る消防用設備等の設置について(平成12年1月7日付消防予第3号)
  • 消防法施行規則第18条第4項第1号・第19条第6項第5号・第23条第4項第1号ロ
  • 消防実務六法 通達編②

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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