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壁のない自動車車庫はなぜ普通の建物と違う扱いになるのか|簡易な構造の建築物に対する制限緩和の基準を解説

壁のない開放的な自動車車庫の前で建物を見上げる点検員

壁のない自動車車庫やテント屋根のスポーツ施設は、普通の建物とは違う建築基準法の扱いを受けることがあります。
「開放的だから基準がゆるい」と思われがちですが、実際には代わりに満たすべき条件が細かく決められています。
屋上を車庫として使う建物では、むしろ普通の建物にはない追加の要件が課されることもあります。
本記事では建築基準法第八十四条の二が定める緩和の範囲と、その代わりに求められる基準を条文にもとづいて解説します

今度、壁のない立体駐車場を建てる予定なんですが、普通の建物より審査が簡単になるって聞きました。

建築基準法上は簡易な構造の建築物として、一部の規定が適用除外になる仕組みがあります。

じゃあ、耐火とか防火の基準は特に気にしなくていいってことですか。

いいえ、緩和される代わりに別の基準が用意されています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 建築基準法第八十四条の二は、壁のない自動車車庫やスポーツの練習場などを「簡易な構造の建築物」として指定し、一部の規定を適用除外にしています。
  • 対象になるのは階数が1で床面積が3,000平方メートル以内の、壁のない開放的な建物か帆布屋根の建物に限られます。
  • 緩和される代わりに、主要構造部の柱やはりを準耐火構造か不燃材料にする基準が求められます。
  • 屋上を自動車車庫として使う開放的簡易建築物は、隣地境界線からのへいと、地上へ通じる2以上の直通階段が必要です。
  • 建築基準法の指定を受けても、消防法上の用途区分や設備基準は別に生き続けます

簡易な構造の建築物に対する緩和と屋上車庫の追加基準を示した図解

なぜ壁のない自動車車庫は普通の建物と違う扱いになるのか

壁のない開放的な自動車車庫と壁のある通常の建物が並ぶ様子
建物は本来、火災の延焼を防ぐため主要構造部や外壁に一定の基準が求められます。
ただし壁を持たない開放的な建物や、帆布屋根の建物は、通常の建物と同じ基準を当てはめにくい構造をしています。
建築基準法第八十四条の二 壁を有しない自動車車庫、屋根を帆布としたスポーツの練習場その他の政令で指定する簡易な構造の建築物又は建築物の部分で、政令で定める基準に適合するものについては、第二十二条から第二十六条まで、第二十七条第一項及び第三項、第三十五条の二、第六十一条、第六十二条並びに第六十七条第一項の規定は、適用しない
建築基準法は、壁のない開放的な建物を通常の建物と別枠で扱う仕組みを設けています
除外の対象になるのは屋根の不燃化や防火区画など、政令が具体的に指定する規定だけです。
どんな建物でも対象になるわけではなく、政令が定める形状と用途に当てはまることが前提になります。
条文だけでは対象が具体的にわからないため、次に政令が定める要件を確認しましょう。

壁がないだけで、この緩和の対象になるんですか。

いいえ、形と用途の両方が政令で細かく決められています。
次に見ていきましょう。

どんな建物が簡易な構造の建築物として指定されるのか

自動車車庫とスケートリンクと帆布屋根のスポーツ施設が並ぶ様子
政令は緩和の対象になる建物の形と用途を具体的に列挙しています。
壁がない建物と、帆布屋根の建物という2つの型に分かれます。
建築基準法施行令第百三十六条の九 (略)次に掲げるもの(略)とする。
一 壁を有しない建築物(略)であつて、次のイからニまでのいずれかに該当し、かつ、階数が一で床面積が三千平方メートル以内であるもの(次条において「開放的簡易建築物」という。) イ 自動車車庫の用途に供するもの ロ スケート場、水泳場、スポーツの練習場その他これらに類する運動施設 ハ 不燃性の物品の保管その他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない用途に供するもの ニ 畜舎、堆肥舎並びに水産物の増殖場及び養殖場
二 屋根及び外壁が帆布その他これに類する材料で造られている建築物(略)で、前号ロからニまでのいずれかに該当し、かつ、階数が一で床面積が三千平方メートル以内であるもの
対象になるのは階数が1で床面積3,000平方メートル以内の、壁のない建物か帆布屋根の建物に限られます
壁のないタイプは自動車車庫やスケート場、水泳場、スポーツ練習場など、用途が具体的に決められています。
帆布屋根のタイプも同じ用途の範囲に限られ、自動車車庫は含まれません
畜舎や水産物の増殖場のような一次産業施設も、実は同じ緩和の対象に含まれています。
自分の建物がこの形と用途に当てはまるかを確認したら、次に求められる基準を見ていきましょう。

うちの建物は自動車車庫で壁もありません。
対象になりそうです。

床面積3,000平方メートル以内で階数1なら対象です。
次は求められる基準を確認しましょう。

緩和される代わりに何を満たさなければならないのか

準耐火構造の柱とはりでできた開放的な建物の骨組み
規定が適用除外になっても、火災の延焼を防ぐ最低限の基準は残ります。
主要構造部である柱やはりに、代わりの基準が用意されています。
建築基準法施行令第百三十六条の十 (略)次に掲げるものとする。
一 主要構造部である柱及びはりが次に掲げる基準に適合していること。イ 防火地域又は準防火地域内にある建築物(略)にあつては、準耐火構造であるか、又は不燃材料で造られていること。(略)
二 (略)外壁(略)及び屋根が、準耐火構造であるか、不燃材料で造られているか、又は国土交通大臣が定める防火上支障のない構造であること
柱やはりを準耐火構造か不燃材料にすることが、緩和の代わりに求められる最低条件です
建物が防火地域や準防火地域にあるかどうかで、求められる範囲が変わります。
外壁と屋根についても、同じように準耐火構造か不燃材料であることが求められます。
延べ面積が大きくなるほど、対象になる部分の範囲も広くなる点に注意してください。
これはあくまで一般の建物の基準で、次に見る特別なケースにはさらに条件が加わります。

壁がなくても、柱とはりは普通の建物並みの基準が要るんですね。

開放的な建物ほど、骨組みの防火性能が重要になります。

屋上を自動車車庫にする開放的簡易建築物はなぜ二つの直通階段まで必要になるのか

屋上を自動車車庫にした建物のへいと二つの直通階段
壁のない建物の中でも、屋上を車庫として使うケースにはさらに特別な基準が加わります。
隣の建物や敷地境界に近い部分の安全対策が、通常の緩和とは別に求められます。
建築基準法施行令第百三十六条の十第三号 前条第一号イに該当する開放的簡易建築物にあつては、(略)次に掲げる基準に適合していること。
ロ 隣地境界線(略)に面する外壁の開口部及び屋上(自動車車庫の用途に供する部分に限る。)の周囲で(略)水平距離がそれぞれ一メートル以下の部分について、(略)塀その他これに類するもの(略)が設けられていること。
ハ 屋上を自動車車庫の用途に供し、かつ、床面積が千平方メートルを超える場合にあつては、屋根が(略)基準に適合しているとともに、屋上から地上に通ずる二以上の直通階段(誘導車路を含む。)が設けられていること。
屋上を車庫にする開放的簡易建築物には、へいと二以上の直通階段という追加の基準が課されます
「壁がないから基準がゆるい」という思い込みは、この屋上車庫のケースでは逆転します
隣地境界線から1メートル以内の開口部や屋上の周囲には、延焼を遮るへいの設置が求められます。
床面積が千平方メートルを超える屋上車庫では、避難のための階段も2つ以上確保しなければなりません。
屋上を車庫として使う計画があるなら、設計の早い段階でこの2つの基準を織り込む必要があります。

屋上を車庫にするだけで、そんなに条件が増えるとは思いませんでした。

避難経路の確保が特に重視されるためです。
次は建てる前の確認手順です。

簡易な構造の建築物を建てる前になにを確認すればよいか

図面を見ながら建築と消防の担当者に確認する人の様子
緩和の仕組みは複雑なので、計画段階で確認しておきたい点を整理します。
建築側の基準を満たしていても、それだけで安全対策が完結するわけではありません。
  • 建てようとする建物が床面積3,000平方メートル以内・階数1という要件に収まっているか図面で確認する
  • 用途が自動車車庫・スケート場・水泳場・スポーツ練習場など政令が指定する範囲に含まれているか確認する
  • 敷地が防火地域や準防火地域に当たるかを特定行政庁に確認し、主要構造部の基準を確定する
  • 屋上を自動車車庫にする計画があるなら、へいと二以上の直通階段を設計段階で織り込む
  • 建築基準法上の指定を受けても消防法上の用途区分や消防用設備等の基準は別に生きているため、所轄消防署にもあわせて確認する

建築とだけ思っていましたが、消防の窓口にも相談しないといけないんですね。

両方の基準がそろってはじめて安全に使えます。

よくある質問

Q壁のない自動車車庫はどんな建物でも緩和の対象になりますか?
Aいいえ。階数が1で床面積が3,000平方メートル以内という要件があり、用途も自動車車庫やスケート場など政令が指定する範囲に限られます。
Q帆布屋根の建物も自動車車庫として緩和を受けられますか?
A受けられません。帆布屋根タイプの用途はスケート場・水泳場・スポーツ練習場・畜舎などに限られ、自動車車庫は壁のないタイプにしか含まれません。
Q防火地域にある簡易な構造の建築物はどう扱われますか?
A防火地域や準防火地域にある場合は、主要構造部の柱やはりを準耐火構造か不燃材料にする基準の適用範囲が広がります。
Q屋上を自動車車庫にする場合はなにが変わりますか?
A床面積が千平方メートルを超えると、隣地境界線からのへいと地上へ通じる二以上の直通階段が必要になります。

まとめ

建築基準法第八十四条の二は、壁のない自動車車庫やスポーツの練習場などを「簡易な構造の建築物」として指定し、一部の規定を適用除外にしています。
対象は壁のない開放的な建物か帆布屋根の建物で、用途と階数・床面積の要件を満たすものに限られます。
用途は自動車車庫・スケート場・水泳場・スポーツ練習場・不燃物品の保管・畜舎などに限定されています。
緩和される代わりに、主要構造部の柱やはりを準耐火構造か不燃材料にする基準が求められます。
防火地域や準防火地域にある建物は、求められる範囲がさらに広がります
屋上を自動車車庫にする開放的簡易建築物は、へいと二以上の直通階段という追加の基準が課されます。
建築基準法の指定を受けても、消防法上の用途区分や消防用設備等の基準は別に生き続けます

開放的な建物でも、代わりの基準がちゃんとあるとわかって安心しました。

消防設備や防火管理のご相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第八十四条の二(簡易な構造の建築物に対する制限の緩和)
  • 建築基準法施行令第百三十六条の九(簡易な構造の建築物の指定)
  • 建築基準法施行令第百三十六条の十(簡易な構造の建築物の基準)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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