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違反を知って取得した土地はなぜ処分の対象になるのか|都市計画法の監督処分と立入検査を解説

空き地のフェンスに設置された標識と身分証を示す行政職員

土地の造成や建築には都市計画法にもとづく許可や届出が必要ですが、違反したまま工事を進めてしまう例は今でもあります。
実は都市計画法には、違反した本人だけでなく、その土地や建物をあとから引き継いだ人にまで及ぶ処分の仕組みがあります。
知らずに土地を購入したつもりでも、対象になるかどうかの線引きは条文で細かく決まっています。
本記事では都市計画法が定める監督処分の対象と内容、そして立入検査の仕組みを条文にもとづいて解説します

相続した土地に、開発許可を取らずに建てられた倉庫があるみたいなんです。
これってうちの責任になるんですか。

都市計画法の監督処分には、承継のしかたによって責任が及ぶ場合があります。
条文で順番に確認しましょう。

違反したのは前の所有者なのに、うちにまで話が及ぶことがあるんですね。

ポイントは違反の事実を知っていたかどうかです。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 都市計画法第八十一条は、許可等の取消しから改築・移転・除却命令までを国土交通大臣・都道府県知事・市町村長に認めています。
  • 対象は違反者本人に限らず、違反の事実を知って土地や工作物を譲り受けた者・賃借した者にも及びます。
  • 命令すべき相手が確知できないときは、行政が自ら措置を代行できる仕組みがあります。
  • 命令の内容は標識の設置によって公示され、土地の所有者・管理者・占有者は設置を拒めません。
  • 立入検査を行う職員は身分を示す証明書の携帯・提示が義務づけられ、検査の権限は犯罪捜査のためではありません。

都市計画法の監督処分の対象と命令内容と立入検査の関係を示した図解

都市計画法に違反した土地建物にはどんな処分が科されるのか

建物の骨組みが並ぶ造成地と行政庁舎が並んで建つ様子
都市計画法には、開発許可や建築の制限に違反した場合に備えて、行政が是正を求めるための仕組みが用意されています。
その中心となるのが監督処分の規定です。
都市計画法第八十一条第一項 国土交通大臣、都道府県知事又は市町村長は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、都市計画上必要な限度において、この法律の規定によつてした許可、認可若しくは承認を取り消し、変更し、その効力を停止し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて、建築物その他の工作物若しくは物件(以下この条において「工作物等」という。)の改築、移転若しくは除却その他違反を是正するため必要な措置をとることを命ずることができる。(以下、一号〜四号略)
都市計画法の監督処分は、許可の取消しから工作物の除却命令まで幅広い手段を用意しています
権限を持つのは国土交通大臣・都道府県知事・市町村長で、違反の内容や規模に応じて命令の主体が分かれます。
条文にある「工作物等」には建築物だけでなく、その他の工作物や物件も含まれるため、対象は建物に限られません。
この処分がどんな相手に向けられるのかは、続く各号で細かく定められています。
次は、実際に処分の対象になる人の範囲を見ていきましょう。

許可の取消しだけでなく、除却まで命じられることがあるんですね。

はい、工作物等の改築・移転・除却まで命令できます。
次は対象になる人の範囲です。

監督処分の対象になるのは違反した本人だけなのか

書類にサインする人物と建物の骨組みのそばの警告表示を指し示す人物の様子
監督処分は違反者本人だけに向けられるものではありません。
条文は対象になる者を四つの類型に分けて定めています。
都市計画法第八十一条第一項第一号 この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこれらの規定に基づく処分に違反した者又は当該違反の事実を知つて、当該違反に係る土地若しくは工作物等を譲り受け、若しくは賃貸借その他により当該違反に係る土地若しくは工作物等を使用する権利を取得した者
違反そのものをした者だけでなく、違反の事実を知って土地や工作物を譲り受けたり借りたりした者も対象に含まれます
このほか、第二号は違反工事の注文主や請負人(下請人を含む)、第三号は許可等の条件に違反している者、第四号は詐欺その他不正な手段で許可等を受けた者を挙げています。
ここで重要なのは「知つて」という要件です。違反の事実を知らずに取得した場合は、この一号の対象には含まれません
逆にいえば、違反があると知りながら取得を進めると、前の所有者の違反を自分が引き継ぐことになります。
土地や建物を取得する前に、開発許可や建築確認の状況を確認しておく重要性がここにあります。

知らずに買った場合は対象にならないんですか。

知らずに取得した場合はこの一号の対象外です。
次は命令の中身を見ましょう。

実際に命じられる措置にはどんな種類があるのか

行政職員が停止を求めるジェスチャーをする建設現場で作業を止める作業員の様子
第八十一条第一項が認める措置は、許可の取消しから工作物の除却命令まで幅広く、状況に応じて選ばれます。
大きく分けると三つの方向性があります。
都市計画法第八十一条第一項(再掲・要点) (略)許可、認可若しくは承認を取り消し、変更し、その効力を停止し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて、(略)工作物等の改築、移転若しくは除却その他違反を是正するため必要な措置をとることを命ずることができる。
命令の内容は許可等そのものの取扱いと、行為・工作物への直接の是正命令の二段構えになっています
一つ目は許可等の取消し・変更・効力停止・条件変更で、法律上の地位そのものに手を加える措置です。
二つ目は工事その他の行為の停止命令で、違反状態がこれ以上広がらないようにその場で止めます。
三つ目は改築・移転・除却その他の是正措置命令で、すでにある工作物等を是正させるものです。
命令には相当の期限が定められ、その期限内に対応することが求められます。

取消しだけでなく、工事をその場で止められることもあるんですね。

工事の停止命令で違反の拡大を防ぎます。
次は命令の相手が分からないときの話です。

命令すべき相手が分からないときはどうなるのか

空き地のフェンスに設置された行政の標識と近づく担当者の様子
土地の所有者が転々としていたり、相続が繰り返されたりすると、命令を出すべき相手が特定できないことがあります。
そのための代行の仕組みと、公示の方法が条文に定められています。
都市計画法第八十一条第二項 前項の規定により必要な措置をとることを命じようとする場合において、過失がなくて当該措置を命ずべき者を確知することができないときは、(略)その者の負担において、当該措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者にこれを行わせることができる。(略)第三項 (略)標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。第四項 (略)当該土地又は工作物等若しくは工作物等の敷地の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない
命令すべき相手が確知できないときは、行政が費用をその者の負担として自ら措置を代行できます
代行する場合も、あらかじめ相当の期限を定めて措置を行う旨を公告する手続きが必要です。
命令をしたときは標識の設置による公示が義務づけられ、この標識は土地や工作物等の敷地内に設置できます。
見落としやすいのは、所有者・管理者・占有者は標識の設置を拒んだり妨げたりできないという点です。
自分の土地に見慣れない標識が立っていたら、それは行政処分の公示である可能性を疑うべきです。

標識を勝手に外したりしたら、それも問題になりますか。

設置を拒む・妨げることは条文で禁じられています
次は立入検査の話です。

監督処分のための立入検査では何が求められるのか

身分証明書を提示しながら土地を確認する行政職員の様子
監督処分の権限を実際に行使するには、現地の状況を確かめる必要があります。
そのための立入検査についても、条文で手続きが定められています。
都市計画法第八十二条第一項 (略)前条の規定による権限を行うため必要がある場合においては、当該土地に立ち入り、当該土地若しくは当該土地にある物件又は当該土地において行われている工事の状況を検査することができる。第二項 前項の規定により他人の土地に立ち入ろうとする者は、その身分を示す証明書を携帯しなければならない。第四項 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない
立入検査を行う職員は身分を示す証明書の携帯が義務づけられ、関係人の請求があれば提示しなければなりません
また条文は立入検査の権限は犯罪捜査のためのものではないと明記しており、行政上の是正のための調査であることがはっきりしています。
読者にとっての実務は、土地や建物を取得する前に開発許可・建築確認の適合状況を自治体の窓口で確認することです。
現地に見慣れない標識が立っていないかも、取得前の確認事項に加えておくと安心です。
違反の有無を調べずに取得を進めると、監督処分を知らないまま引き継ぐ事態になりかねません。

土地を買う前に、役所で確認しておいたほうがよさそうですね。

取得前の窓口確認がいちばん確実です。

よくある質問

Q違反があると知らずに土地を購入した場合も監督処分の対象になりますか?
A都市計画法第八十一条第一項第一号の対象は違反の事実を知つて取得した者です。知らずに取得した場合はこの号の対象には含まれません。
Q監督処分ではどんな内容の命令が出されますか?
A許可等の取消し・変更・効力停止・条件変更、工事等の停止命令、そして工作物等の改築・移転・除却その他の是正措置命令があります。
Q自分の土地に見慣れない標識が設置されていたらどうすればよいですか?
A監督処分を公示する標識である可能性があります。所有者・管理者・占有者は設置を拒んだり妨げたりできませんので、内容を確認のうえ窓口に問い合わせてください。
Q立入検査は令状がなくても行われますか?
A条文上、立入検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならないとされています。職員は身分証明書を携帯し、求めがあれば提示します。

まとめ

都市計画法第八十一条は許可の取消しから工作物の除却命令まで幅広い監督処分を認めています。権限を持つのは国土交通大臣・都道府県知事・市町村長です。
対象は違反者本人のほか、違反の事実を知って土地や工作物を譲り受け・賃借した者、違反工事の注文主・請負人、条件違反者、不正手段で許可等を受けた者に及びます。
知らずに取得した場合は一号の対象には含まれませんが、取得前の確認を怠ると違反の有無を見落とすおそれがあります。
命令の内容は許可等の取消し・変更・効力停止・条件変更、工事等の停止命令、工作物等の改築・移転・除却命令の三方向に分かれます。
命令すべき相手が確知できないときは、行政がその者の負担で自ら措置を代行できます。
命令は標識の設置により公示され、土地の所有者・管理者・占有者は設置を拒んだり妨げたりできません。
立入検査を行う職員は身分証明書の携帯・提示が義務で、権限は犯罪捜査のためのものではありません。

相続した土地は、まず窓口で確認してみます。
知らずに引き継ぐリスクがあるとわかって安心しました。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 都市計画法第八十一条(監督処分等)
  • 都市計画法第八十二条(立入検査)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。個別の土地・建物の状況によって判断が異なる場合があります。取得や利用の前に、開発許可・建築確認の状況は所轄の自治体窓口にご確認ください。

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