BLOG

宅地開発の許可はなぜ消防水利まで問われるのか|防火水槽の設置義務と完成後の管理帰属を解説

宅地開発の建設現場で防火水槽の点検口を確認する点検員

宅地を造成して分譲住宅地や店舗を建てる開発行為には、都市計画法の開発許可が必要です。
建築基準法や消防法の設備基準とは別に、実はこの開発許可の審査基準の中に消防水利の確保が組み込まれています。
周辺の消防水利が足りない土地では、開発者自身が防火水槽を作らなければならないこともあります。
本記事では都市計画法が定める消防水利の確保義務と、防火水槽が完成した後の管理の行方を条文にもとづいて解説します

今度、うちの土地の一部を売るために宅地開発をすることになったんですが、消防とも関係あるんですか。

はい。
都市計画法の開発許可の基準の中に、消防水利に関する条件が含まれています。

消防の設備は建物ができてから考えるものだと思っていました。

実は土地を造成する段階から確認が必要になることがあります。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 都市計画法第三十三条第一項第二号は、開発許可の基準として消防水利の確保を公共空地の設計に組み込むことを求めています。
  • 対象になるのは自己の居住の用に供する住宅の建築を目的とする開発行為以外で、分譲住宅地や店舗などの開発が該当します。
  • 周辺の消防水利が足りているかどうかは、消防庁が勧告する消防水利の基準に適合しているかで判断されます。
  • 貯水施設は開発者が設計・設置する義務を負いますが、完成後は原則として市町村の管理に移ります。
  • 管理者の切り替えのタイミングを取り違えると、引き継ぎ漏れや自主管理の続けすぎにつながります。

宅地開発の許可における消防水利の確保義務と管理帰属を示した図解

宅地開発の許可はなぜ消防水利まで問われるのか

広い土地を区画した宅地開発地と測量する人の様子
住宅地や店舗用地を新しく造成するには、都市計画法にもとづく開発許可が必要です。
この許可の基準には、道路や公園と並んで消防水利に関する条件が含まれています。
都市計画法第三十三条第一項 都道府県知事は、開発許可の申請があつた場合において、当該申請に係る開発行為が、次に掲げる基準(略)に適合しており(略)と認めるときは、開発許可をしなければならない。
二 (略)道路、公園、広場その他の公共の用に供する空地(消防に必要な水利が十分でない場合に設置する消防の用に供する貯水施設を含む。)が、(略)環境の保全上、災害の防止上、通行の安全上又は事業活動の効率上支障がないような規模及び構造で適当に配置され(略)ていること。
開発許可の基準には、消防水利の条件があらかじめ組み込まれています
道路や公園などの公共の用に供する空地の中に、消防に必要な水利の貯水施設が含まれると条文に明記されているのが特徴です。
つまり水利が足りない土地では、公共空地の設計の一部として防火水槽などを盛り込まなければなりません。
建築基準法や消防法の設備基準とは別に、土地の造成段階で確認すべき基準があるということです。
次に、この基準がどんな開発行為に適用されるのかを見ていきましょう。

開発許可の基準に、消防の話が入っているとは知りませんでした。

道路や公園と同じ扱いで盛り込まれています。
次は対象になる開発行為を見ましょう。

どんな開発行為が消防水利の確保を求められるのか

自己用の一戸建てと分譲住宅地の三棟が並ぶ様子の比較
消防水利の確保が求められるのは、開発行為であれば何でも対象になるわけではありません。
開発の目的によって、対象になるかどうかがはっきり分かれています。
都市計画法第三十三条第一項第二号 主として、自己の居住の用に供する住宅の建築の用に供する目的で行う開発行為以外の開発行為にあつては、道路、公園、広場その他の公共の用に供する空地(消防に必要な水利が十分でない場合に設置する消防の用に供する貯水施設を含む。)が、次に掲げる事項を勘案して(略)配置され(略)ていること。
イ 開発区域の規模、形状及び周辺の状況 ロ 開発区域内の土地の地形及び地盤の性質 ハ 予定建築物等の用途 ニ 予定建築物等の敷地の規模及び配置
自分が住むための一戸建てを建てる開発行為は、この基準の対象から外れます
対象になるのは、分譲住宅地や店舗、事務所などを目的とする開発行為です。
複数の区画を造成して人に住んでもらったり利用してもらったりする開発ほど、周辺への影響が大きいと考えられているためです。
配置を決めるときは、開発区域の規模や形状、地形、予定される建物の用途や敷地配置まで含めて検討します。
自分の計画がこの対象に当てはまるかどうかは、開発許可の窓口となる都道府県や指定都市の担当課に確認できます。

うちは分譲用の宅地開発なので、対象になりそうですね。

自己居住用の住宅でなければ対象です。
次は水利が足りているかの判断基準です。

消防水利が足りているかどうかは何で判断するのか

地下の防火水槽と公共空地を示す断面のイメージ
公共空地に貯水施設を設けるかどうかは、周辺の消防水利がすでに足りているかどうかで決まります。
その判断のものさしは、消防法にもとづく基準で定められています。
都市計画法施行令第二十五条第八号 消防に必要な水利として利用できる河川、池沼その他の水利が消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第二十条第一項の規定による勧告に係る基準に適合していない場合において設置する貯水施設は、当該基準に適合しているものであること
消防法第二十条第一項 消防に必要な水利の基準は、消防庁がこれを勧告する
消防水利が足りているかどうかは、消防庁が勧告する消防水利の基準で判断されます
周辺の河川や池沼などが、あらかじめこの基準に適合していれば、新たな貯水施設は必要ありません。
逆に基準に届いていない場合は、開発区域内に設ける貯水施設そのものも同じ基準に適合するものでなければなりません。
容量や配置の具体的な内容はこの基準の告示で定められており、所轄消防署が判断の窓口になります。
「足りているかどうか」を自己判断せず、計画段階で消防機関に確認するのが確実です。

水利が足りているかどうかは、自分たちで測って判断していいんですか。

いいえ、所轄消防署の確認が必要です。
次は完成後の管理の話です。

防火水槽を作った後の管理は誰が引き継ぐのか

開発者から市町村の担当者へ書類を手渡す様子
消防水利施設は、本来は市町村が設置し維持管理するものと消防法で定められています。
ところが開発許可の場面では、話が少し違ってきます。
消防法第二十条第二項 消防に必要な水利施設は、当該市町村がこれを設置し、維持し及び管理するものとする。但し、水道については、当該水道の管理者が、これを設置し、維持し及び管理するものとする。
都市計画法第三十九条 開発許可を受けた開発行為又は開発行為に関する工事により公共施設が設置されたときは、その公共施設は、(略)公告の日の翌日において、その公共施設の存する市町村の管理に属するものとする。ただし、他の法律に基づく管理者が別にあるとき、又は(略)協議により管理者について別段の定めをしたときは、それらの者の管理に属するものとする。
貯水施設を作るのは開発者ですが、完成後の管理は原則として市町村に移ります
工事が完了して検査済証が交付され、公告があった日の翌日から、公共施設としての管理主体が切り替わる仕組みです。
このタイミングを取り違えて、完成後もずっと自主管理を続けてしまう例や、引き継ぎの手続をしないまま放置してしまう例が見落としやすい落とし穴です。
ただし他の法律に管理者が定められている場合や、事前の協議で管理者を別に定めた場合はその内容が優先されます。
自分の開発区域の貯水施設がどちらに当たるかは、開発許可の協議記録を確認すればわかります。

作った後もずっとうちで管理するものだと思っていました。

公告の日の翌日から切り替わります。
次は計画段階での確認手順です。

開発の計画段階で何を確認すればよいか

窓口で担当者に相談する人の様子
消防水利の基準は、建築の設計が固まってからでは手戻りが大きくなります。
計画の早い段階で確認しておきたい点を整理します。
  • 開発区域が自己居住用の住宅建築を目的とする開発行為かどうかを確認し、対象外か対象かを見極める
  • 開発協議の早い段階で所轄消防署に周辺の消防水利の充足状況を照会する
  • 水利が不足している場合は、貯水施設の容量や配置が消防水利の基準に適合するかを消防機関と事前に協議する
  • 工事完了届・検査済証・公告の日を確認し、貯水施設の管理がいつ市町村へ切り替わるかを記録しておく
  • 管理者について別段の定めがある場合は、その協議内容を書面で残しておく

建築の設計より先に、消防に相談したほうがよさそうですね。

早い段階の相談ほど手戻りが少なくなります。

よくある質問

Q自分が住むための家を建てる開発行為でも、消防水利の確保は必要ですか?
Aいいえ。都市計画法第三十三条第一項第二号の対象は自己の居住の用に供する住宅の建築を目的とする開発行為以外です。分譲住宅地や店舗などの開発が対象になります。
Q消防水利が足りているかどうかは誰が判断しますか?
A消防庁が勧告する消防水利の基準にもとづいて所轄消防署が判断します。周辺の河川や池沼がこの基準を満たしていれば新たな設置は不要です。
Q開発区域に作った防火水槽は、誰がずっと管理するのですか?
A設置するのは開発者ですが、工事完了の公告の日の翌日から原則として市町村の管理に移ります。別段の定めがある場合を除きます。
Q消防水利の確認はいつごろ行えばよいですか?
A建築の設計が固まる前、開発許可の協議の早い段階で所轄消防署に確認するのが望ましいです。

まとめ

都市計画法第三十三条第一項第二号は、開発許可の基準に消防水利の確保を組み込んでいます。公共空地の設計の一部として貯水施設が扱われます。
対象になるのは自己居住用の住宅建築を目的とする開発行為以外で、分譲住宅地や店舗などの開発が該当します。
開発区域の規模や形状、地形・地盤、予定建築物の用途・敷地配置を勘案して、貯水施設を含む公共空地の配置が決められます。
水利が足りているかどうかは、消防庁が勧告する消防水利の基準に適合しているかで判断されます。
貯水施設は開発者が設計・設置する義務を負いますが、工事完了の公告の翌日から原則として市町村の管理に移ります。
他の法律に管理者が定められている場合や、事前の協議で別段の定めをした場合はその内容が優先されます。
消防水利の確認は、建築の設計が固まる前の開発協議の早い段階で行うのが望ましいです。

開発の段階から消防にも相談すべきとわかって安心しました。

消防水利や防火水槽のご相談も、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

まずはWebで無料お見積りを!

お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 都市計画法第三十三条第一項第二号(開発許可の基準)
  • 都市計画法施行令第二十五条第八号(開発許可の基準を適用するについて必要な技術的細目)
  • 都市計画法第三十九条(開発行為等により設置された公共施設の管理)
  • 消防法第二十条(消防水利)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

BLOGカテゴリ
最新の記事
防火管理者代行サービス
無料1分概算見積
宅地開発の建設現場で防火水槽の点検口を確認する点検員
宅地を造成して分譲住宅地や店舗を建てる開発行為には、都市計画法の開発許可が必要です。 建築基準法や消防法の設備基準とは別に、実はこの開発許可の審査基準の中に消防水利の確保が組み込まれています。 周辺の消防水利が足りない土...