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危険物施設はなぜ台風前に浸水対策を求められるのか|ホームタンクの点検と少量危険物の届出も解説

危険物施設はなぜ台風前に浸水対策を求められるのか|ホームタンクの点検と少量危険物の届出も解説

台風が近づくたびに、危険物施設は浸水や土砂災害の危険にさらされます。
消防庁は令和元年から令和3年にかけて通知とガイドラインを繰り返し発出し、平時の備えと発災時の対応を具体的に示しました。
そこには、事業所の施設だけでなく家庭用の灯油タンク(ホームタンク)まで含まれています。
通知が示したのは浸水前に何を確認し、浸水後に何を点検するかという一連の手順です。

台風のニュースを見るたびに、うちの危険物施設は大丈夫かと不安になります。

浸水想定区域に入っているかどうかで、備え方が変わります。
まずは自施設の立地から確認しましょう

少量危険物のタンクくらいなら、そこまで気にしなくていいですよね。

いいえ、少量危険物施設こそ見落とされがちです。
ガイドラインが示す手順を一緒に確認していきましょう。

この記事の結論
  • 危険物施設の風水害対策は令和2年のガイドラインと令和3年の改定通知で示されています
  • 対象には事業所の施設だけでなく少量危険物施設や家庭用の灯油タンク(ホームタンク)も含まれます
  • 台風接近時は浸水防止設備の閉鎖や配管の弁を閉めるなどの応急対策が求められます
  • 少量危険物施設は無届のまま風水害で発覚する事例が報告されています
  • 明日からの一歩は自施設がハザードマップの浸水想定区域に入っているかの確認です

危険物施設の風水害対策をハザードマップ確認・弁を閉める・通過後の点検・ホームタンクも対象になる四つの場面で示した図解

台風が来るたびに危険物施設の通知はなぜ繰り返し出されるのか

台風が接近する空の下で事業所の危険物タンクと住宅の灯油タンクの両方が風雨にさらされていることを示したイメージ
危険物施設の風水害対策は、令和元年の台風被害を経て、通知とガイドラインが段階を追って積み重ねられてきました。
令和3年の通知は、その積み重ねの最新版にあたります。
危険物施設の風水害対策の一層の推進について(令和3年3月30日付け消防災第41号・消防危第49号) 危険物施設の風水害対策については、「危険物施設の風水害対策ガイドラインについて」(令和2年3月27日付け消防災第55号・消防危第86号)において「危険物施設の風水害対策ガイドライン」をお示しし、これによる運用をお願いしているところです。(略)今般取りまとめられた検討会報告書を踏まえ、下記のとおり「危険物施設の風水害対策ガイドライン」を一部改定するとともに、対策推進上の留意事項を取りまとめましたので通知します。
一度示して終わりではありません
令和2年3月にまずガイドラインが示され、同じ年の5月には防災基本計画の修正を踏まえた運用のお願いが出ました。
そして令和3年、消防庁が設けた検討会の報告書を踏まえてガイドラインが第2版に改定されています。
つまりこの分野は、一度の通知で完結せず、被害の報告や検討会の議論を反映して内容そのものが更新され続けているということです。
自分の施設が参照している資料が最新の第2版かどうかを、まず確かめておきましょう。

古いガイドラインをそのまま保管していて、更新されているのに気づいていませんでした。

よくあることです。
消防庁のホームページで最新の第2版を一度確認しておいてください

どの危険物施設のどんな備えが対象になるのか

事業所の危険物タンクと住宅の灯油タンクの両方を点検する様子を示したイメージ
対象は許可を受けた大きな施設だけではありません。
指定数量に満たない少量危険物施設や、家庭用の灯油タンクまで含まれています。
少量危険物施設や家庭用の灯油タンク(いわゆるホームタンク)の破損等による危険物流出の被害が報告されていることから、各消防本部にあっては、事故の未然防止及び危険物流出による影響の拡大防止・軽減の観点から、当該施設等を適切に点検するよう施設関係者や住民等に呼びかけられたい。
消防法第9条の4 危険物についてその危険性を勘案して政令で定める数量(以下「指定数量」という。)未満の危険物(略)の貯蔵及び取扱いの技術上の基準は、市町村条例でこれを定める。
指定数量の多い少ないで対象から外れるわけではありません
指定数量以上の施設は消防法そのものが基準を定めますが、指定数量未満(少量危険物)は市町村条例が基準を定める別枠の存在です。
枠が違うぶん、事業所側も届出の要不要を把握しづらく、風水害対策の呼びかけからも漏れやすくなります。
一般家庭の灯油タンク(ホームタンク)も、量としては少量危険物の範囲に入り、破損すれば同じように危険物が流出します。
自分の敷地内に、指定数量未満の危険物を保管する場所が他にないか、一度棚卸ししておくとよいでしょう。

裏の物置にある灯油缶も、同じ枠で考えればいいんですね

そのとおりです。
量が少ないからと油断せず、保管場所を敷地全体で洗い出してみてください。

ガイドラインは風水害の備えに何を求めているのか

土のうを積み配管の弁を閉める作業員と浸水後の施設を点検する作業員を示したイメージ
求めているのは、台風が来てから慌てることではありません。
平時・接近時・通過後という3つの場面ごとに、やることが具体的に示されています。
浸水防止用設備の閉鎖や、土のうや止水板の設置等により危険物施設内への浸水や土砂流入を防止・低減する。(略)配管の弁やマンホールを閉鎖し、危険物の流出を防止するとともに、タンクや配管への水や土砂の混入を防止する。
浸水した施設では、電気設備のほか、危険物を取り扱う設備や配管も損傷している可能性があるため、目視点検だけでなく、作動状況や気密性、危険物への水の混入状況等について確認を実施する。
やることは接近前と通過後で違います
接近時は、浸水防止設備の閉鎖や土のう・止水板の設置に加え、配管の弁やマンホールを閉じて危険物の流出そのものを防ぎます。
通過後は、目に見える壊れ方をしていなくても作動状況や気密性まで確かめることが求められています。
浸水した配管は、外側がきれいでも内部に水や土砂が混入していることがあるためです。
点検を目視だけで終わらせず、動かして確認する工程まで含めて計画しておく必要があります。

台風が過ぎて見た目に問題がなければ、そのまま動かしていました。

そこが危ないところです。
次からは動かしてみて異音や漏れがないかまで確認してください。

実務で見落としやすいのはどこか

消防職員が立入検査で無届のまま設置された少量危険物のタンクを確認している場面を示したイメージ
見落としやすいのは、対策そのものより手前の話です。
届出をしていない少量危険物施設が、被害が出て初めて見つかるという指摘があります。
少量危険物施設の中には、事前に適切な届出がなされておらず、風水害時に初めて無届施設であったことが判明する事例が散見されることから、各消防本部は所有者等に対し、平時から適切に届出がなされるよう指導するとともに、併せてガイドラインも準用し、適切な対策を講じられるよう周知されたい。
対策以前に届出が抜けている施設があります
少量危険物は市町村条例で基準が決まる分、届出の窓口も消防法本体とは別になり、担当者が変わると引き継がれないことがあります。
風水害でタンクが破損し、消防機関が対応に入って初めて無届施設だったと分かる、という順番は避けたいところです。
届出がない施設は、ガイドラインの呼びかけそのものが届かないという二重の見落としにもつながります。
自分の施設の届出台帳を、少量危険物のぶんまで含めて一度確認しておいてください。

災害のときになって無届だったと分かるのが一番困るということですね。

そのとおりです。
所轄消防署に一度、届出の要不要から確認してみてください。

明日からなにを確認すればよいのか

施設担当者がハザードマップを広げて浸水想定区域を確認している場面を示したイメージ やることは多く見えますが、最初の一歩は1つです。
自分の施設がどの区域にあるのかを、ハザードマップで確認することから始まります。
危険物施設が所在する地域のハザードマップを参照し、当該施設が浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っているかどうかや、降雨や高潮に伴う浸水高さ等を確認しておく。(略)「ハザード地区における危険物施設の流出防止対策の促進について」(令和元年9月20日付け消防危第143号)のとおり、ハザードマップを作製している各地域の市区町村の危機管理担当部局や河川管理者が水害リスクに関する助言を実施することが可能であることから、必要に応じて相談等を行う。
ハザードマップの確認が最初の一歩です
市区町村が作るハザードマップを見れば、自施設が浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っているかがわかります。
判断に迷う場所は、自己判断せず市区町村の危機管理担当部局や河川管理者に相談してよいことになっています。
確認した内容は、予防規程やそれに準じる社内文書に位置づけ、誰が見ても分かる形で残しておくことが大切です。
まずは今日、自施設の住所でハザードマップを開くところから始めてください。

ハザードマップなら、今すぐスマホでも確認できますね。

そのとおりです。
見た結果を予防規程に書き残すところまでやりましょう

よくある質問

Q家庭用の灯油タンクも点検の対象になりますか?
A通知は少量危険物施設に加えて、家庭用の灯油タンク(ホームタンク)についても、破損による危険物流出の被害が報告されているとして点検を呼びかけています。
Q危険物施設が浸水想定区域に入っているかはどこで確認できますか?
Aガイドラインは、施設が所在する地域のハザードマップを参照し、浸水想定区域や土砂災害警戒区域に入っているかを確認するよう求めています。市区町村の危機管理担当部局や河川管理者に相談することもできます。
Q台風が近づいたら具体的に何をすればよいですか?
A浸水防止用設備の閉鎖や土のう・止水板の設置、配管の弁やマンホールの閉鎖など、浸水や危険物の流出を防ぐ措置を講じることが示されています。
Q少量危険物施設は届出をしていなくても問題になりませんか?
A届出をしていない少量危険物施設が、風水害で被害が出て初めて無届施設だったと判明する事例が報告されています。平時からの届出が求められています。

まとめ

危険物施設の風水害対策は令和2年のガイドラインと令和3年の改定通知で示されています
対象には事業所の施設だけでなく家庭用の灯油タンク(ホームタンク)も含まれます
平時の備えとしてハザードマップで浸水想定区域を確認しておくことが求められます
台風接近時は浸水防止設備の閉鎖や配管の弁を閉めるなど応急対策を講じます
天候回復後は目視だけでなく作動状況や気密性まで点検することが求められます
少量危険物施設は無届のまま風水害で発覚する事例が報告されています
明日からの一歩は自施設がハザードマップの浸水想定区域に入っているかの確認です

ハザードマップの確認から始めればいいと分かりました。
台風が来る前にやってみます!

ハザードマップの確認、弁を閉める備え、そして通過後の点検。
この3つを押さえれば大きく外しません
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 危険物施設の風水害対策の一層の推進について(令和3年3月30日付け消防災第41号・消防危第49号)
  • 危険物施設の風水害対策ガイドラインについて(令和2年3月27日付け消防災第55号・消防危第86号)
  • ハザード地区における危険物施設の流出防止対策の促進について(令和元年9月20日付け消防危第143号)
  • 消防法第9条の4

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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