マンションの一室に、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅などの福祉施設が入ることがあります。
このとき「もとは住宅なのだから今までの設備のままでよい」と考えてしまいがちです。
しかし共同住宅の一部にこうした施設が加わると、共同住宅用スプリンクラー設備の設置範囲が変わります。
この記事では住戸利用施設と特定住戸利用施設の違い、そして設置範囲の決まり方を解説します。
うちのマンションの1階に、小さなデイサービスが入ることになりました。
これって今までの設備のままでいいんでしょうか。
それは住戸利用施設が加わったケースですね。
面積や階によっては共同住宅用スプリンクラー設備の範囲が広がります。
住戸利用施設と特定住戸利用施設、何が違うんでしょうか。
対象になる施設の種類と規模で分かれます。
ひとつずつ整理していきましょう。
- マンションの一部にデイサービスや福祉ホームが入ると「住戸利用施設」という扱いになる
- 住戸利用施設のうち一定の要件に当てはまる部分は「特定住戸利用施設」としてさらに重い基準がかかる
- 共同住宅用スプリンクラー設備は11階以上の階と特定住戸利用施設のある10階以下の階には必ず設置する
- 住戸利用施設の床面積の合計が3,000平方メートル以上になると、その階全体に設置範囲が広がる
- 特定住戸利用施設だけは特定施設水道連結型スプリンクラー設備での代替が認められている
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目次
共同住宅に高齢者施設が入ると何が変わるのか

このとき、消防法令上は建物の扱いそのものが変わります。
マンション(令別表第一(5)項ロ)の中に、老人ホームなど(5)項イや(6)項ロ・ハの用途の部分が混じると、その部分は住戸利用施設という特別な扱いになります。
住戸利用施設が加わっても、建物全体が特定共同住宅等の枠組みの中にとどまる点は変わりません。
ただし住戸利用施設の存在そのものが、共同住宅用スプリンクラー設備の設置範囲を左右する基準になります。
次のセクションで、どんな施設が住戸利用施設に当たるのかを具体的に見ていきます。
うちは普通のマンションのつもりだったのに、扱いが変わるんですか。
入居者は施設の利用者さんだけなんですが。
はい、用途で判断するので入居者の人数は関係ありません。
まずは住戸利用施設に当たるかどうかを一緒に確認しましょう。
どんな施設が住戸利用施設や特定住戸利用施設に当たるのか

どちらに当たるかで、この先の設置基準の厳しさが変わります。
イ 令別表第一(六)項ロ(1)に掲げる防火対象物の用途に供される部分
ロ 令別表第一(六)項ロ(5)に掲げる防火対象物の用途に供される部分(消防法施行規則第十二条の三に規定する者を主として入所させるもの以外のものにあっては、床面積が二百七十五平方メートル以上のものに限る。)(同省令第2条第1号の3)
(6)項ロ(1)(自力避難が困難な高齢者等を主に入所させる施設)は面積を問わず特定住戸利用施設になります。
一方(6)項ロ(5)(サービス付き高齢者向け住宅など)は、主として自力避難が困難な人を入所させる施設でない限り、床面積が275平方メートル以上の場合だけ特定住戸利用施設になります。
避難に配慮した一定の構造を備えていれば、この特定住戸利用施設からは外れます。
まずは自分の建物の施設がどちらの号に当たるかを、用途と床面積の両方で確認します。
うちの施設は面積が小さいんですが、それでも重い基準になりますか。
施設の種類によっては面積を問いません。
まずは(6)項ロ(1)か(5)か、号から確認しましょう。
共同住宅用スプリンクラー設備はどの階のどの部分に要るのか

条文は3つの階・部分を並べて定めています。
(イ) 特定共同住宅等の十一階以上の階及び特定住戸利用施設(十階以下の階に存するものに限る。)
(ロ) 特定共同住宅等で、住戸利用施設の床面積の合計が三千平方メートル以上のものの階のうち、当該部分が存する階((イ)に掲げる階及び部分を除く。)
(ハ) 特定共同住宅等で、住戸利用施設の床面積の合計が三千平方メートル未満のものの階のうち、当該部分が存する階で、当該部分の床面積が、地階又は無窓階にあっては千平方メートル以上、四階以上十階以下の階にあっては千五百平方メートル以上のもの((イ)に掲げる階及び部分を除く。)(同省令第3条第3項第2号イ)
それ以外の階は、建物全体の住戸利用施設の床面積の合計が3,000平方メートル以上かどうかで判定が変わります。
3,000平方メートル未満でも、地階・無窓階は1,000平方メートル以上、4階以上10階以下は1,500平方メートル以上の住戸利用施設があれば、その階が対象になります。
つまり住戸利用施設が広いほど、対象になる階が増える仕組みです。
自分の建物がどの区分に当たるかは、階ごとに床面積を積み上げて確認します。
うちは11階建てで、10階に小さな施設が入っています。
11階には設置済みですが、10階も要りますか。
はい、10階の施設が特定住戸利用施設に当たれば、その階にも設置が要ります。
面積の合計もあわせて確認しましょう。
特定住戸利用施設だけの代替手段を見落としていないか

見落とすと、不要な工事の見積りを取ってしまうことになりかねません。
これは福祉施設で広く使われている特定施設水道連結型スプリンクラー設備を、そのまま流用できる規定です。
一般的な共同住宅用スプリンクラー設備のような加圧送水装置や送水口を新設しなくても済むケースがあります。
ただし対象になるのは特定住戸利用施設の部分だけで、住戸利用施設全体や普通の住戸には及びません。
どちらの設備で満たすかは、工事費用にも直結するので早めに検討します。
特定住戸利用施設のためだけに、大掛かりな配管工事をしないといけないんでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
特定施設水道連結型スプリンクラー設備という代替の選択肢もあります。
高齢者施設が入る共同住宅では何を確認すればよいのか

自己判断で「今までのままでよい」と決めつけないことが大切です。 用途と床面積を先に確認してから、階ごとの設置範囲を洗い出します。
①建物内に(5)項イや(6)項ロ・ハの用途に供される部分がないかを確認します。
②該当する部分が(6)項ロ(1)か(6)項ロ(5)か、床面積275平方メートル以上かどうかを確認し、特定住戸利用施設に当たるかを判定します。
③11階以上の階、10階以下の特定住戸利用施設、そして住戸利用施設の床面積の合計を階ごとに集計し、共同住宅用スプリンクラー設備の設置範囲を洗い出します。
④特定住戸利用施設については、特定施設水道連結型スプリンクラー設備での代替が可能かどうかもあわせて検討します。
迷ったら自己判断で終わらせず、所轄の消防署に相談します。
確認することが多いんですね。
順番にやれば迷わずにすみそうです。
はい、用途と面積を先に固めれば設置範囲は機械的に決まります。
迷ったら所轄の消防署に相談してください。
よくある質問
まとめ
住戸利用施設と特定住戸利用施設の違い、やっとすっきりしました!
床面積の集計や設置範囲の判定は複雑になりがちです。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第2条第1号の2・第1号の3
- 同省令第3条第3項第2号イ・第4項第1号ロ
- 消防法施行令第12条第1項第1号・第2項第3号の2
- 消防法施行規則第12条の2・第12条の3
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





