移送取扱所の配管は、危険物を長距離にわたり圧力をかけて送るための特別な設備です。
そのため配管の強度基準は、屋外タンクなどとは別に、独自の考え方で定められています。
基準の中心にあるのは、荷重の組合せによって許容される応力の範囲です。
この記事では、圧力単独の場合と地震などを含む複合荷重の場合とで、なぜ許容基準が変わるのかを条文から整理します。
うちの移送取扱所、配管の太さや厚みってどうやって決まっているんですか。
配管が受ける力に応じて、規則で応力の基準が細かく定められています。
実は基準が一つではなく、二段階になっているんです。
二段階とはどういうことでしょうか。
今日は、圧力だけの場合と地震などが重なった場合とで、なぜ許容基準が変わるのかを条文から解説します。
- 移送取扱所の配管は主荷重と従荷重の両方を考えて設計する必要があります
- 内圧だけで生じる応力は、規格最小降伏点の40パーセント以下に抑えなければなりません
- 主荷重と従荷重を組み合わせた複合応力は、規格最小降伏点の90パーセント以下まで許容されます
- この二つの基準はどちらか一方ではなく両方を満たす必要があります
- 配管の最小厚さは告示の基準か破損試験で確認され、移送基地内は別扱いになります
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目次
移送取扱所の配管はなぜ独自の強度基準を持つのか

その根拠は政令にさかのぼります。
危険物の規制に関する政令第18条の2は、この基準を石油パイプライン事業法の技術基準に準じて定めるよう総務省令に委任しています。
長距離にわたって圧力をかけて危険物を送る配管は、破損すれば影響が周囲に大きく及ぶため、独自の強度基準が必要とされているのです。
この基準の中心にあるのが、次に見る荷重の組合せと、圧力単独時・複合時で変わる許容応力度の考え方です。
順に見ていきましょう。
移送取扱所の配管って、石油パイプライン事業法の基準を参考にしているんですね。
はい。
長距離を圧力で送る点が共通しているため、その基準に準じて定められています。
配管の設計ではどんな力を組み合わせて計算するのか

条文はこの二種類を明確に区別しています。
規則第28条の5第1項は、危険物の重量や内圧、自重、土圧、水圧、列車荷重、自動車荷重、浮力などを主荷重と位置づけています。
一方で風、雪、温度変化、振動、地震、投びようによる衝撃、波浪や潮流、設置時の荷重、他工事の影響などは従荷重として区別されています。
主荷重は常時かかり続ける力、従荷重は地震や工事などの特定の状況でだけ加わる力という違いがあります。
この二種類の荷重の組合せをもとに、次の許容基準が決まります。
主荷重と従荷重って、常にかかる力とたまにかかる力の違いなんですね。
そのとおりです。
次は、この二つの荷重をもとにした実際の許容基準を見てみましょう。
圧力単独と複合荷重で許容基準はどう変わるのか

数値そのものを条文で確認します。
規則第28条の5第2項第2号は、内圧だけで生じる円周方向応力度を規格最小降伏点の40パーセント以下に抑えるよう求めています。
一方、同項第3号は、主荷重と従荷重を組み合わせたときの複合応力度を規格最小降伏点の90パーセント以下まで許容しています。
同じ配管でも、常時かかる圧力だけの基準と、地震など稀にしか起きない複合荷重の基準とで、許容の幅が大きく異なります。
数字だけを見ると90パーセントのほうが緩く感じますが、それには理由があります。
90パーセントのほうが数字が大きいので、複合荷重のほうが厳しいのかと思っていました。
感覚とは逆になりやすいところです。
次の落とし穴と合わせて確認しましょう。
二つの基準はどちらか一方で足りるのか

条文には、もう一つの基準が用意されています。
規則第28条の5第2項第1号は、主荷重や複合荷重で生じる応力度が、告示で定める継手効率と安全率をもとにした許容応力度を超えないことも別途求めています。
つまり配管は、①許容応力度の範囲内であること、②内圧単独で40パーセント以下であること、③複合荷重で90パーセント以下であること、という三つの基準を同時に満たす必要があります。
さらに橋に配管を設置する場合は、橋のたわみや伸縮、振動に対しても安全な構造であることが同項第4号で求められています。
基準が枝分かれしている分、どれか一つを確認して終わりにしないよう注意が必要です。
どちらか一方をクリアすれば安心、というわけではないんですね。
はい。
三つの基準をすべて満たしているかを、設計段階で確認する必要があります。
配管の厚さはどうやって確認すればよいのか

最後にこの点を見ておきましょう。
規則第28条の5第2項第5号は、配管の最小厚さが告示で定める基準に適合することを原則としています。
ただし告示で定める方法による破損試験で破損しないと確認されたものや、移送基地と同一敷地内に設置・埋設するものは、この限りでないとされています。
これら以外の詳細な事項は、規則第28条の5第4項により告示にさらに委任されています。
自社の配管がどの基準や試験の記録で確認されているか、設計計算書や試験記録を確認しておくとよいでしょう。
うちの配管がどの方法で厚さを確認しているか、記録を見てみます。
それが分かれば、今後の点検や更新の計画も立てやすくなります。
よくある質問
まとめ
配管の基準がここまで細かいとは知りませんでした。
まずは設計計算書の確認から始めてください。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第18条の2
- 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第28条の5
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





