特定共同住宅等では、共同住宅用スプリンクラー設備を代替設備として設置する場面がよくあります。
しかし条文をよく読むと、一定の条件を満たせばそのスプリンクラー設備自体を設置しないことができる場合があります。
省略の道は内装の準不燃化と防火戸によるものと、水道に直結したスプリンクラーによるものの2つに分かれます。
どちらの道を使えるかは建物の構造類型と階数で変わるため、条文を正しく読み解く必要があります。
うちのマンションはスプリンクラーを入れなくてもいい場合があると聞いたのですが。
それは初期拡大抑制性能の設置緩和という規定です。
まずどんな条件があるか確認しましょう。
内装を工夫すればスプリンクラーが要らなくなるということですか。
条件を満たせばその可能性があります。
ひとつずつ整理していきますね。
- 40号省令第3条第4項は、一定の条件を満たせば共同住宅用スプリンクラー設備そのものを設置しないことができると定めています。
- 省略の道は内装の準不燃化と防火戸によるものと特定施設水道連結型スプリンクラー設備によるものの2つです。
- 内装と防火戸のルートは、開放型では14階以下、二方向避難・開放型には階数の上限がありません。
- 特定施設水道連結型スプリンクラー設備のルートは、10階以下の階にある特定住戸利用施設だけに認められます。
- スプリンクラー設備を有効範囲内に設置すれば、共同住宅用自動火災報知設備や住戸用自動火災報知設備も設置しないことができます。
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目次
特定共同住宅等のスプリンクラー設備はなぜ省略できることがあるのか

条文にはさらにその設備自体を省略できる規定も置かれています。
条文が定めているのは、代替設備として設置した共同住宅用スプリンクラー設備を、さらに設置しなくてよい場合があるという二段階の緩和です。
省略が認められるのは号で定めた条件を満たしたときだけで、自動的に免除されるわけではありません。
条件は大きく分けて2つあり、次の章からひとつずつ確認していきます。
うちはスプリンクラーを入れたのに、まだ省略の話があるんですか。
はい代替設備を入れたあとの、さらに先の話です。
順番に条件を見ていきましょう。
内装の準不燃化と防火戸があれば省略できるのはどんな建物か

共用室と共用室以外の部分を区画する壁の防火性能がかぎになります。
住戸・共用室・管理人室の壁と天井を準不燃材料で仕上げるだけでなく、共用室とそれ以外を区画する壁の開口部にも特定防火設備である防火戸が必要です。
開放型廊下や開放型階段に面する部分は、外気に開放されているためこの区画の対象から除かれます。
内装材の仕様と防火戸の型式を両方とも図面で確認しないと、条件を満たしているかは判断できません。
内装を変えるだけじゃなくて、防火戸もセットなんですね。
そのとおりです片方だけでは条件を満たせません。
改修のときは両方まとめて計画しましょう。
特定住戸利用施設だけに認められるもうひとつの省略ルートとは

ただしこの道が使えるのは特定住戸利用施設に限られます。
特定施設水道連結型スプリンクラー設備は、水源をためる水槽を持たず、水道管に直接つなぐことで放水する設備です。
高齢者施設などの特定住戸利用施設を通常の防火対象物とみなして技術基準を当てはめ、その基準どおりに設置した場合にだけ、この道が開かれます。
イの内装・防火戸ルートとは違い、こちらは設備そのものを別の型に置き換える発想です。
水道に直結するタイプなら水槽を置く場所を悩まなくていいんですね。
そのとおりですただし対象は特定住戸利用施設に限られます。
一般の住戸部分には使えないので注意してください。
開放型で15階建以上になると省略の対象から外れるのはなぜか

この上限を見落とすと、高層階で条件を満たしていないまま省略してしまうおそれがあります。
条文は開放型特定共同住宅等について「14階以下のものに限り」と明記しており、15階建以上の階ではこのルートを使えません。
一方で二方向避難・開放型特定共同住宅等には、この階数の上限が付いていません。
同じ内装と防火戸を整えても、建物の構造類型によって省略できる階数が変わることを見落とさないようにしてください。
うちは開放型だから内装さえ整えれば大丈夫だと思っていました。
階数によっては対象外になることがあります。
まず建物の構造類型と階数を確認しましょう。
スプリンクラーを省略した後は自動火災報知設備の要否をどう確認するか

有効範囲を正しく把握することが次の確認事項です。
住戸・共用室・管理人室に共同住宅用スプリンクラー設備を技術基準どおりに設置した部分は、その範囲内で自動火災報知設備を重ねて設置する必要がなくなります。
住戸利用施設にある部分はこの対象から除かれるため、施設の種類ごとに範囲を分けて確認する必要があります。
まずは自分の建物がイ・ロどちらのルートに当てはまるかを特定し、そのうえで自火報の範囲を図面に落とし込んでください。
スプリンクラーの範囲によって自火報も変わってくるんですね。
はい範囲を正確に図面へ落とし込むことが大切です。
迷ったら所轄消防署にも相談してください。
よくある質問
まとめ
スプリンクラーを省略できる条件がよく分かりました!
構造類型と階数をあわせて確認するのが確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令(平成17年総務省令第40号)第3条第4項
- 消防法施行令第12条第2項第3号の2
- 消防法施行規則第13条第2項第1号ロ・ハ
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





