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ボイラー室や厨房設備はなぜ不活性ガス消火設備が必要になるのか|床面積の算出方法と大型消火器で足りる場合を解説

ボイラー室で不活性ガス消火設備を点検する技術者の写真

ボイラー室や厨房設備は、床面積が一定以上になると不活性ガス消火設備などの追加設置が必要になります。
対象になるのは鍛造場やボイラー室だけでなく、給湯設備やヒートポンプ冷暖房機まで幅広く含まれます。
床面積の数え方や、小規模なら大型消火器で足りる条件を知らないまま設計を進めると、後から設備の追加を迫られかねません。
この記事では消防法施行令第13条が求める設置基準と、床面積の算出方法、特例の考え方を解説します。

うちのボイラー室、床面積が広くなってきたんですが、消火器だけで大丈夫でしょうか。

床面積や設備の熱量によっては、消火器だけでは足りない場合があります。

どんな設備が対象になるのか、まったく分かっていません。

鍛造場やボイラー室だけでなく、厨房設備なども対象になり得ます。
順番に確認しましょう。

この記事の結論
  • 鍛造場・ボイラー室・乾燥室など多量の火気を使用する部分は、床面積が二百平方メートル以上になると不活性ガス消火設備等の設置対象になります。
  • 対象設備は炉やボイラーに限らず、厨房設備や給湯設備、ヒートポンプ冷暖房機まで幅広く含まれ得ます。
  • 床面積は設備の周囲を一定の範囲で区切って算出し、防火戸などで区画されていれば区画部分だけで数えられます。
  • 同じ室内に複数の対象設備があるときは床面積を合算して判定します。
  • 一定の条件を満たせば、不活性ガス消火設備等を設けなくても大型消火器で足りる場合があります。

ボイラー室の消火設備基準を示した図解

ボイラー室や厨房設備はなぜ消火設備の対象になるのか

ボイラー室の消火設備配管とガス消火剤の貯蔵容器
消防法は、火を多く使う場所や熱を発生させる設備がある部分について、通常の消火設備だけでなく追加の設備を求めることがあります。
その対象になる代表例が、鍛造場やボイラー室、乾燥室です。
別表第一に掲げる防火対象物の鍛造場、ボイラー室、乾燥室その他多量の火気を使用する部分で、床面積が二百平方メートル以上のものには、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のいずれかを設置するものとする。(消防法施行令第13条第1項)
床面積二百平方メートルが分かれ目です。
鍛造場やボイラー室、乾燥室は、いずれも高温になる設備や炎を扱う作業がある場所で、火災が起きたときに燃え広がりやすいという共通点があります。
消防法施行令は、こうした「その他多量の火気を使用する部分」を一つの号にまとめ、床面積が二百平方メートル以上になった時点で、不活性ガス消火設備、ハロゲン化物消火設備又は粉末消火設備のいずれかを設置するよう求めています。
三つの設備のうちどれを選ぶかは、防火対象物ごとの事情に応じて設計段階で決めることになります。
まずはこの号がどこまでの設備を指しているのか、次の項目で確認していきましょう。

鍛造場やボイラー室は火を使うから、というのは分かる気がします。

はい、その考え方の延長で対象設備の範囲も決まっています。

どんな設備が対象になるのか

厨房設備と給湯設備とヒートポンプ冷暖房機の並び
条文の「その他多量の火気を使用する部分」という書き方だけでは、具体的にどこまでが対象になるのか分かりません。
そこで消防庁は通達で、対象になる設備の範囲を具体的に示しています。
  • 鍛造場・ボイラー室・乾燥室
  • 金属溶解設備
  • ごみ焼却炉・火葬場
  • 温風暖房設備
  • 厨房設備・給湯設備・ヒートポンプ冷暖房機
対象は炉やボイラーだけではありません。
通達は、鍛造場やボイラー室、乾燥室と並べて、金属溶解設備やごみ焼却炉、火葬場、温風暖房設備、そして厨房設備・給湯設備・ヒートポンプ冷暖房機まで例示しています。
飲食店の厨房のように、一見すると「多量の火気」に見えにくい設備でも、条文の号が指す範囲に含まれ得るということです。
どの設備が対象になるかを見極めたら、次は床面積の数え方を確認する必要があります。
床面積の算出方法を誤ると、二百平方メートルという基準の判定そのものがずれてしまいます。

厨房設備まで入るとは思っていませんでした。

同じ室内にまとまってあると、面積を合算するので対象になりやすいです。

床面積はどうやって数えるのか

防火戸で区画されたボイラー室の床面積算出のイメージ
対象になる設備が分かっても、床面積の数え方が分からなければ、二百平方メートルという基準に届くかどうか判断できません。
消防庁の通達は、床面積の具体的な算出方法も示しています。
  • 設備の周囲を一定の範囲で区切った部分の面積を床面積とする
  • 不燃材料の壁・天井・床や防火戸で区画されていれば、区画された部分の面積とすることができる
  • 同じ室内に対象設備が2箇所以上あるときは、それぞれの面積を合算する
区画すれば面積を抑えられます。
設備の周囲をそのまま床面積とするのが原則ですが、不燃材料の壁や防火戸で仕切られた部屋に設置されている場合は、その区画された部分の面積だけで判定できます。
逆に、区画のない広い室内に同じ種類の設備が複数置かれていると、それぞれの面積を合算して判定するため、想定より早く二百平方メートルに達することがあります。
新築やリフォームの計画段階で防火戸の設置を検討する価値があるのはこのためです。
面積の数え方を押さえたら、次は基準に達した場合でも大型消火器で済む場合があるという特例を見ていきましょう。

防火戸で区切れば面積が変わるというのは知りませんでした。

区画の有無で判定が変わるので、設計段階の確認が大切です。

小規模なら本当に不要なのか

小規模な炉に設置する大型消火器と大規模設備のガス消火設備の対比
床面積が二百平方メートルに達しても、実際にはすべての現場で不活性ガス消火設備が必要になるわけではありません。
一定の条件を満たせば、大型消火器で足りる特例があります。
この節の規定は、消防用設備等について、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、この節の規定による消防用設備等の基準によらなくとも、火災の発生又は延焼のおそれが著しく少なく、かつ、火災等の災害による被害を最少限度に止めることができると認めるときにおいては、適用しない。(消防法施行令第32条)
この特例の判断基準を数値で示したのが通達です。
消防庁は同じ通達の中で、対象設備の最大消費熱量の合計が350キロワット未満であれば、施行令第32条の特例を適用し、不活性ガス消火設備等の代わりに大型消火器を設置すれば足りるという考え方を示しています。
熱量が小さいボイラーや厨房設備がまとまっている場合でも、合計値が基準を超えていないかどうかを確認する必要があります。
ただし、この特例を適用するかどうかは所轄消防署の個別判断によるため、床面積や熱量が基準に近いときは、必ず事前に相談してください。
数値の見込みだけで大型消火器に決め打ちすると、後から不活性ガス消火設備の追加を求められることがあります。

うちの設備は熱量が小さいので、大型消火器で足りそうです。

最終的な判断は所轄消防署が行うので、事前の相談が確実です。

明日からなにを確認すればよいのか

点検員がボイラー室の設備を確認している様子
ここまでの内容を、実際の建物でどう確認すればよいかに落とし込みます。
判定の材料は、床面積と消費熱量の2つです。 まず床面積と設備の一覧を洗い出しましょう。
鍛造場・ボイラー室・乾燥室・金属溶解設備・ごみ焼却炉・厨房設備・給湯設備・ヒートポンプ冷暖房機など、対象になり得る設備が同じ室内にないかを確認します。
次に、それぞれの設備の周囲の面積を測り、防火戸などで区画されているかどうかを図面で確かめ、合算した面積が二百平方メートルに達するかを計算します。
達している場合は、対象設備の最大消費熱量の合計を集計し、特例の対象になりそうかどうかも合わせて把握しておきます。
最終的な設置の要否と特例の適用は、所轄消防署に確認しながら進めてください。

床面積と熱量の両方を確認すればよいのですね。

はい、その2つが分かれば所轄消防署への相談もスムーズになります。

よくある質問

Q厨房設備だけでも二百平方メートルの対象になりますか?
A同じ室内にある対象設備の床面積を合算して判断するため、複数の厨房設備がまとまって設置されている場合は対象になり得ます。
Q大型消火器を置けば必ず不活性ガス消火設備を省略できますか?
A特例の適用は所轄消防署の個別判断によるため、条件を満たしていても自動的に省略できるとは限りません。
Q不活性ガス消火設備とハロゲン化物消火設備はどちらを選べばよいですか?
A消防法施行令第13条第1項はいずれかの設置を求めているだけなので、防火対象物の用途や設備の特性に応じて設計段階で選定します。
Q床面積の算出は自分で行ってもよいですか?
A床面積の算出は設置基準の判定に直結するため、消防設備士など専門の資格を持つ設計者や所轄消防署に確認しながら進めることをおすすめします。

まとめ

鍛造場・ボイラー室・乾燥室など多量の火気を使用する部分は消防法施行令第13条第1項の対象です。
床面積が二百平方メートル以上になると不活性ガス消火設備等の設置が必要になります。
対象設備は炉やボイラーに限らず、厨房設備や給湯設備、ヒートポンプ冷暖房機まで含まれ得ます。
床面積は設備の周囲を一定範囲で区切って算出し、防火戸等で区画されていれば区画部分だけで数えられます
同じ室内に複数の対象設備があるときは床面積を合算します。
一定の条件を満たせば大型消火器で足りる特例があります。
特例の適用は所轄消防署の個別判断によるため、必ず事前に相談してください。

うちのボイラー室も、一度床面積を測って確認してみます!

床面積の算出や特例の判断に迷ったら、㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防法施行令第13条第1項
  • 消防法施行令第32条
  • 電気設備が設置されている部分等における消火設備の取扱いについて(昭和51年7月20日 消防予第37号 消防庁予防救急課長)

※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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