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消火設備の種別はどう決まる?大型消火器の能力単位や窒素ガスによる代替も解説

危険物施設の消火設備は政令別表で第一種から第五種まで区分されていますが、実際の設備がどの種別に当たるのかは表を見ただけでは決まりません。
浮屋根式タンクの泡消火設備は何を守るためのものなのか。
大型消火器の能力単位はどれだけ必要なのか。
第三類の危険物に乾燥砂しか適応しないとき、現場はどうすればよいのか。
消火設備の基準について、実際の照会をもとに解説します。

カーバイドの製造工場やねん。
第三類に適応する消火設備が乾燥砂しかないから、計算したら砂が218トンにスコップ4,366丁やで。無理やろ。

その計算は実際に照会された数字です。
消火に十分な量の窒素ガスを保有する送入設備であれば、政令第23条により第三種の消火設備に代わるものと認めて差し支えないとされました。

助かるわ。
ほんなら大型消火器はどれくらいの能力があればええんや。表には書いてへんやろ。

消火器の規格で定められています。
大型消火器の能力単位はA火災に適応するものは10以上B火災に適応するものは20以上です。この記事でまとめて解説します!

この記事の結論
  • チューブシール式の浮屋根タンクの泡消火設備はシール部分の燃焼による火災に対して設置するものであり、エアーホーム消火装置2基で支障ないとされた
  • 浮屋根タンクであっても危険物の規制に関する政令第11条第15号の防油堤の設置は必要
  • ゼネレーターを使用する泡消火設備は、構成によって第三種の消火設備に該当する場合と、別表のいずれにも該当せず第三種に準ずるものとして政令第23条が適用される場合がある
  • 大型消火器(第四種の消火設備)の能力単位は、A火災に適応するものは10以上、B火災に適応するものは20以上
  • 第三類の危険物に適応する消火設備は乾燥砂のみであるため、大量施設では所要単位が数千に達して現実的でない
  • 消火に十分な量の窒素ガスを保有する窒素ガス送入設備は、政令第23条を適用して第三種の消火設備に代わるものと認めて差し支えない

浮屋根タンクの泡消火設備はシール部分の火災に対するもの

ある市内の油槽所からチューブシール式のフローティングルーフタンクの設置申請があり、本タンクの消火装置について疑義があるとして照会がありました。内容は次のとおりです。

本タンクの消火装置としてはエアーホーム消火装置を2基設置することになっている。チューブシール式のフローティングルーフタンクの場合、浮屋根と液面に密接して一応火災危険はないものと思料されるが、シール等の欠陥または故障のため何かの起因で浮屋根下面が火災となった場合、ホームは直接液面をおおうことができず、また浮屋根が飛散した場合はホームデフレクターの破損閉塞等の故障が考えられるが、他に適当な消火装置があるか、という問いです。

回答は、シール部分の燃焼による火災に対して消火設備を設置するものであり、設問の消火設備で支障ないと思料するです。
照会者が心配しているのは浮屋根が飛散するような大規模な事態です。これに対して回答は、この消火設備が何を守るためのものかを示して答えています
浮屋根式タンクは液面が屋根で覆われているため、燃える余地があるのは屋根と側板の隙間にあるシール部分だけです。そこを消せる設備であれば足りるという整理です。

あわせて、この場合において危険物の規制に関する政令第11条第15号の防油堤の設置を必要とするか、という問いにも設置を必要とすると回答されています。屋根で覆われていてもタンクから危険物が流出する可能性は変わらないためです。

ゼネレーターを使う泡消火設備の種別は構成で変わる

ゼネレーターを使用する泡消火設備について、次の場合は危険物の規制に関する政令第20条の別表の何種消火設備に該当するか、という照会がありました。

  • ゼネレーターを固定して使用する場合、もしくは移動式の場合
  • ゼネレーターを固定し、ホースの接続をかえて他の消火設備に併用する場合
回答では、示された2つの図で結論が分かれました。
屋内貯蔵所のノズルからホースでゼネレーターにつなぎ、可搬動力ポンプで水槽から送水する構成については、政令別表中のいずれの消火設備にも該当しないが、第三種の消火設備に準ずるものとして政令第23条の適用される場合があるものと解するとされました。
一方、重油タンクのフォームチェンバーに配管でつなぎ、ホース接続カップリングを介してゼネレーターと水源に接続する構成については第三種の消火設備に該当するとされています。ホースの接続をかえて他の消火設備に併用する場合も同様です。
同じゼネレーターを使っていても、タンクの固定設備につながっているかどうかで種別が変わります

大型消火器の能力単位はA火災10以上B火災20以上

消火設備の区分は政令別表により第一種から第五種までそれぞれ定められていますが、第五種以外は具体的に種別または容量(重量)が定められていないため、運用をどうすべきかという照会がありました。具体的には次の2つのケースです。

  • 第四類危険物を指定数量の10倍貯蔵する建築面積33平方メートルの耐火構造の屋内貯蔵所に設置する消火設備。第四種の消火設備をその放射能力範囲が建築物その他の工作物および危険物を包含するように設け、並びに第五種の消火設備をその能力単位の数値が危険物の所要単位の数値の5分の1以上になるように設けることとなっているが、この第四種消火設備はいかなる規格のものであるべきか
  • 第四類第三石油類を指定数量貯蔵する屋外タンク貯蔵所に設置する消火設備。第四種および第五種の消火設備をそれぞれ1個以上設けることとなっているが、前記と同様のことが考えられる

照会者の懸念は、従前の条例準則に定める第三種の大型消火器(100能力単位)をもってこれにかえるとすれば、小規模な施設に対して消火設備が極めて過大なものになるという点でした。

回答は、消火器の規格(昭和36年消防庁告示第7号)第2条第2項の規定により定められた能力単位によられたいというものです。
具体的には大型消火器(第四種の消火設備)の能力単位は、A火災に適応するものは10以上、B火災に適応するものは20以上と定められています。
従前の条例準則の100能力単位に比べて大幅に小さい数値です。規格側で能力単位が定義されたことで、施設の規模に見合った消火器を選べるようになったという回答です。

第三類は乾燥砂しか適応せず所要単位が現実的でない

政令第20条に定める「著しく消火困難と認められたもの」に該当するカーバイドおよび生石灰の製造所について照会がありました。同条第1項第1号には、別表に掲げる設備のうち第一種・第二種または第三種、並びに第四種および第五種の消火設備を設置するよう定められています。

ところが政令別表によれば第三類に適応する消火設備は乾燥砂のみしかありません。総理府令別表第2により第五種の乾燥砂を設置するとすれば、能力単位が小さいため相当の数量が必要になります。照会に添えられた計算は次のとおりです。

  • カーバイド6,200トン・生石灰150トンを扱う第三種危険物製造所(建築物432.5平方メートルおよび木造350平方メートル)
  • 消火設備の所要単位は、カーバイド2,146・生石灰37で合計2,183単位
  • 1所要単位にスコップ2丁ずつなのでスコップは4,366丁、砂は約218トンとなる
この数字が示しているのは、別表を機械的に当てはめると設備が施設に対して過大になるという現実です。
砂218トンとスコップ4,366丁を工場に備えることは実質的に不可能です。福岡県からの照会でも「おびただしい量となり、適切な消火設備とは思えない」と述べられています。
基準どおりに数えると成立しないという状況を、数字で示して協議に持ち込んでいる点が実務の参考になります。

窒素ガス送入設備は第三種の消火設備に代わるものと認められる

そこで代替として示されたのが窒素ガス送入設備です。カーバイドの貯蔵タンクでタンク内部に大気圧以上の窒素ガスを圧入しているものについて、これを政令第23条の「予想しない特殊の構造」と認めることができるかという問いが立てられました。

あわせて福岡県からは、屋内タンクについてガス検知器により常にアセチレンガス量を検知し、230トンから500トンのタンクの最下部2箇所に50ミリメートルのパイプを取り付け、毎時80立方メートルから100立方メートルの窒素ガスを送入してアセチレンガスの爆発限界外に保つ設備をもって消火設備と認めてきたが、これを不燃性ガスの消火設備とみなしてよいか、という照会もなされています。

回答は、消火に十分な量の窒素ガスを保有する窒素ガス送入設備については、政令第23条の規定を適用し第三種の消火設備に代わるものと認めて差し支えないです。福岡県への回答も、設問の窒素ガス送入設備が消火に十分な量の窒素ガスを保有する場合は政令第23条を適用して差し支えないとされています。
条件は消火に十分な量の窒素ガスを保有していることの一点です。設備の名前ではなく、実際に消火できる量を持っているかどうかで判断されます
カーバイドは水と反応してアセチレンガスを発生させるため、水系の消火設備が使えません。窒素ガスで爆発限界外に保つという方法は、危険物の性質に合った合理的な対策といえます。

よくある質問

Q. 浮屋根タンクに防油堤は必要ですか?
必要です。チューブシール式のフローティングルーフタンクについても、危険物の規制に関する政令第11条第15号の防油堤の設置を必要とするとされています。屋根で液面が覆われていても、タンクから危険物が流出する可能性は変わらないためです。
Q. 大型消火器はどれくらいの能力単位が必要ですか?
消火器の規格(昭和36年消防庁告示第7号)第2条第2項により、大型消火器(第四種の消火設備)の能力単位はA火災に適応するものは10以上、B火災に適応するものは20以上と定められています。従前の条例準則の第三種の大型消火器(100能力単位)に比べて大幅に小さい数値です。
Q. 第三類の危険物には乾燥砂しか使えないのですか?
政令別表上は乾燥砂のみですが、消火に十分な量の窒素ガスを保有する窒素ガス送入設備については、政令第23条を適用して第三種の消火設備に代わるものと認めて差し支えないとされた事例があります。カーバイドは水と反応してアセチレンガスを発生させるため水系の設備が使えず、不燃性ガスによる対策が合理的です。
Q. ゼネレーターを使う泡消火設備は何種になりますか?
構成によって変わります。タンクのフォームチェンバーに配管でつながっている構成は第三種の消火設備に該当します。一方、屋内貯蔵所のノズルからホースでつなぎ可搬動力ポンプで送水する構成は、別表のいずれの消火設備にも該当しないが第三種に準ずるものとして政令第23条の適用される場合があるものと解するとされています。

まとめ

  • チューブシール式の浮屋根タンクの泡消火設備はシール部分の燃焼による火災に対するものであり、エアーホーム消火装置2基で支障ないとされた
  • 浮屋根タンクであっても政令第11条第15号の防油堤の設置は必要である
  • ゼネレーターを使用する泡消火設備は、タンクの固定設備につながっているかどうかで種別が変わる
  • 大型消火器(第四種)の能力単位はA火災に適応するものは10以上、B火災に適応するものは20以上
  • 第三類に適応する消火設備は乾燥砂のみで、カーバイド6,200トンの製造所では所要単位2,183となり砂218トンとスコップ4,366丁が必要になる
  • 消火に十分な量の窒素ガスを保有する窒素ガス送入設備は、政令第23条により第三種の消火設備に代わるものと認められる

表どおりに数えたら成立せんときは、数字で示して相談したらええんやな。

そのとおりです。
そのうえで代替案は、危険物の性質に合った方法を選んでください。カーバイドに水系の設備は使えません。

参考・出典

  • 危険物の規制に関する政令(昭和34年政令第306号)第11条第15号・第20条・第23条・別表 e-Gov法令検索
  • 危険物の規制に関する規則(昭和34年総理府令第55号)第34条・別表第2 e-Gov法令検索
  • 消火器の規格(昭和36年消防庁告示第7号)第2条第2項
  • チューブシール・フローティングルーフタンクの消火設備等について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から徳島県総務部長あて回答)
  • ゼネレーターを使用する泡消火設備について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から徳島県総務部長あて回答)
  • 屋内貯蔵所または屋外タンク貯蔵所の消火設備について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から富山県高岡市長あて回答)
  • カーバイド・タンクの窒素ガス送入装置について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から山形県民生部長あて回答)
  • カーバイド製造工場に設ける適切な消火設備について(昭和37年4月6日付け自消丙予発第44号 予防課長から福岡県民生部長あて回答)
  • 「消防実務六法 質疑応答編」(消防実務研究会編・東京法令出版)消火設備の基準に関する質疑応答を参考に、独自に解説を作成

※本記事は2026年8月時点の法令解釈に基づく一般的な解説です。個別の運用については所轄消防署にご確認ください。

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