地下街に隣接する準地下街で、延べ面積が1,000平方メートルを超えているのに、まだスプリンクラー設備の設置義務が生じていないビルがあります。
一見すると矛盾しているようですが、これは消防法施行令が延べ面積だけでなく、もうひとつ別の面積も見ているためです。
地下街と準地下街は同じ地下の商業空間でも、判定に使う条文の作りがまったく違います。
この記事では準地下街だけに課される二重の面積基準を条文だけで確かめます。
うちの準地下街は延べ面積が1,000平方メートルを超えているのに、まだスプリンクラーが要らないと言われました。
消防法施行令第12条第1項第7号は、延べ面積のほかに用途部分の床面積も条件にしています。
準地下街はこの両方を満たさないと設置義務が生じません。
となりの地下街は延べ面積だけで決まると聞いたのですが、同じ扱いではないのですか。
はい、地下街と準地下街は号そのものが別です。
地下街は延べ面積だけ、準地下街は延べ面積と用途部分面積の両方を見ます。
- 準地下街は延べ面積1,000平方メートル以上と用途部分面積500平方メートル以上の両方を満たしてはじめてスプリンクラー設置義務が生じます
- 根拠は消防法施行令第12条第1項第7号です
- となりの地下街(十六の二)項は延べ面積だけで決まる別の号です
- 延べ面積は地下道全体、用途部分面積は特定用途に限った合計という数え方の違いがあります
- 通路そのものは用途部分の床面積には含まれません

目次
準地下街のスプリンクラー設置義務はどんな建物に生じるのか

まず対象になる建物の形を条文で確かめます。
地下道そのものだけでなく、地下道に面した建物の地階部分も含めて一体で判定します。
ただし店舗や飲食店といった特定の用途が地下道に面して存在することが条件で、用途のない単なる通路だけでは準地下街になりません。
この一体として扱われる範囲の広さが、次に説明する延べ面積の出発点になります。
地下道と建物の地階をまとめて一つの防火対象物として見るのですね。
そのとおりです。
まずは自分の建物がこの一体の範囲に入るかを図面で確認してください。
延べ面積1,000平方メートル以上だけで設置義務が決まるのか

延べ面積の条件とは別に、もう一つの条件が並んで書かれています。
一つ目は準地下街全体の延べ面積が1,000平方メートル以上であること。
二つ目は店舗や飲食店といった特定の用途に供される部分の床面積の合計が500平方メートル以上であることです。
延べ面積だけが1,000平方メートルを超えていても、用途部分の合計が500平方メートルに届かなければ、この号の対象にはなりません。
延べ面積が足りていても、それだけでは決まらないのですね。
二つの面積を両方とも満たすことが条件です。
片方だけでは設置義務は生じません。
なぜ用途部分の床面積も500平方メートル以上必要になるのか

比べてみると、準地下街だけに二つ目の条件がある理由が見えてきます。
地下街の定義そのものが店舗等の用途に供される部分を前提にしているため、延べ面積を測ればおのずと用途の広がりも反映されます。
一方の準地下街は建物の地階と地下道を合わせた範囲で、地階側には駐車場や倉庫のように火気を使わない部分が含まれることもあります。
延べ面積だけでは店舗等の実質的な広がりを測れないため、用途部分の床面積という物差しが別に必要になります。
準地下街は用途の違う部分が混ざりやすいから、面積を分けて見るのですね。
はい。
地下街と準地下街は別の号だと覚えておいてください。
二つの面積の数え方はどこで見分けるのか

数え方の範囲がそもそも違うことを条文で確かめます。
これに対して用途部分の床面積は、条文が名指しした用途に実際に供されている部分だけの合計です。
通路そのもの、機械室、共用の階段室といった部分は、用途部分の床面積には算入しません。
延べ面積は広く数え、用途部分の床面積は絞り込んで数える、という向きの違いを取り違えないことが大切です。
通路の面積は延べ面積には入るけれど、用途部分の合計には入らないのですね。
数える範囲が違う二つの面積だと意識してください。
図面に色分けして拾うと取り違えを防げます。
明日からなにを確認すればよいのか

まず建物が準地下街に当たるかを確認し、次に二つの面積を別々に測るのが正しい順番です。
- 建物の地階が地下道に面して別表第一(十六の三)項の準地下街に当たるかを確認する
- 地下道と地階を合わせた延べ面積が1,000平方メートル以上かを図面で数える
- 店舗等の用途に供される部分だけを拾い、床面積の合計が500平方メートル以上かを別に数える
- 両方を満たしていれば消防法施行令第12条第1項第7号の対象になる
延べ面積と用途部分の面積を、別々に数えればよいのですね。
二つの面積を別々に確認するのが確実です。
不明な点は所轄消防署へご相談ください。
よくある質問
まとめ
これで二つの面積を見る理由がすっきりしました!
延べ面積と用途部分面積の両方を確認するのが確実です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法施行令別表第一(十六の二)・(十六の三)(地下街・準地下街の定義)
- 消防法施行令第12条第1項第6号・第7号(スプリンクラー設備を設置する防火対象物)
- e-Gov法令検索(デジタル庁)
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





