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準住居地域の劇場はなぜ客席が200平方メートル未満なら建てられるのか|建築基準法別表第二(と)項第五号の規制を解説

小さな劇場の建物が住宅街の角に建つ外観写真

準住居地域は、住居の環境を守りながらも沿道の店舗や娯楽施設をある程度受け入れる用途地域です。
そのため建築基準法別表第二(と)項第五号は、劇場や映画館を用途そのものでは禁止せず、規模によって線引きしています。
同じ劇場でも、隣の第二種住居地域では規模を問わず全面禁止になる用途があります。
準住居地域では客席の床面積の合計が二百平方メートルを境に、建築できるかどうかが分かれます

準住居地域に小さな映画館を建てたいという相談を受けたのですが、そもそも住居地域に建てられるものなのでしょうか。

建築基準法別表第二(と)項第五号に、規模で線引きする規定があります。
まず条文で仕組みを確認しましょう。

用途で一律に禁止されるわけではないのですね。

はい、境目は客席の床面積です。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 準住居地域では、建築基準法第48条第7項により別表第二(と)項に掲げる建築物は原則建てることができません。
  • 同項第五号は、劇場・映画館・演芸場・観覧場のうち客席部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のものを建築禁止の対象にしています
  • ナイトクラブその他これに類する用途で政令で定めるものは、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートル以上で対象になります。
  • 政令が定めるナイトクラブに類する用途は、客にダンスをさせかつ飲食をさせる営業のうち接待をしないものに限られます
  • 客席か用途全体かで測る範囲が違うため、面積を確認するときは対象部分を取り違えないことが重要です。

準住居地域の劇場が客席二百平方メートルで建築の可否が分かれることをまとめた図解

準住居地域の劇場はなぜ規模で建築の可否が分かれるのか

住宅街の一角に建つ小さな劇場のイラスト
準住居地域は、沿道の店舗や娯楽施設もある程度受け入れる用途地域です。
それでも劇場や映画館は、規模によって建築できるかどうかが分かれます。
建築基準法別表第二(と)項 準住居地域内に建築してはならない建築物 五 劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場のうち客席の部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のもの又はナイトクラブその他これに類する用途で政令で定めるものに供する建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のもの
この号は用途そのものではなく、床面積の合計という規模で建築の可否を線引きしています
第二種住居地域を定める(へ)項第三号は、劇場・映画館・演芸場・観覧場・ナイトクラブ等を規模を問わず建築禁止の対象にしています。
一方で準住居地域は、隣接する用途地域よりも一段階緩く、二百平方メートルという具体的な基準を設けています。
次は、この基準がどの部分の面積を指しているのかを確認しましょう。

第二種住居地域だと、規模にかかわらず建てられないということですか。

はい、へ項第三号ではそのとおりです。
次は準住居地域側の面積の測り方を見ていきましょう。

劇場とナイトクラブでは面積の測り方がどう違うのか

客席が小さい劇場と客席が大きい劇場を並べたイラスト
第五号は一つの号の中に、劇場等とナイトクラブ等という性質の違う二つの用途を並べています。
それぞれ床面積を測る範囲が異なる点に注意が必要です。
建築基準法別表第二(と)項第五号(再掲) 劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場のうち客席の部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のもの又はナイトクラブその他これに類する用途で政令で定めるものに供する建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のもの
劇場・映画館・演芸場・観覧場は「客席の部分」だけを測り、ナイトクラブ等は「その用途に供する部分」全体を測ります
劇場等はロビーや通路、事務室、映写室などを含めず、客席そのものの床面積だけで二百平方メートルを判定します。
一方ナイトクラブ等は、ダンスフロアだけでなく客席・厨房・通路なども含めた用途全体の床面積で判定します。
同じ「二百平方メートル」でも、対象になる面積の範囲が用途によって異なる点を押さえておきましょう。
次は、ナイトクラブその他これに類する用途とは具体的に何を指すのかを確認します。

劇場の場合、ロビーが広くても客席さえ小さければ大丈夫ということですか。

条文上は客席部分の面積だけで判定します。
次はナイトクラブに類する用途の定義を見ていきましょう。

ナイトクラブその他これに類する政令で定めるものとは何か

ダンスフロアと丸テーブルのある施設のイラスト
条文の「政令で定めるもの」の中身は、施行令に委ねられています。
実際の政令を見ると、対象になる施設の性質がかなり細かく限定されています。
建築基準法施行令第百三十条の九の二 法別表第二(と)項第五号及び第六号並びに(か)項の規定により政令で定めるナイトクラブに類する用途は、客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客の接待をするものを除く。)を営む施設(ナイトクラブを除く。)とする。
政令が定めるナイトクラブに類する用途は、ダンスと飲食の両方を伴い、かつ接待をしない施設に限られます
ダンスも飲食もさせるが接待はしない施設が、この号でいう「ナイトクラブに類する用途」に当たります。
逆に客の接待を伴う施設は、この定義から除かれ、別表第二(り)項に掲げるキャバレー等の系統として扱われます。
用途の実態にダンス・飲食・接待のどれが含まれるかで、当てはまる号そのものが変わってくる点に注意しましょう。
次は、この面積の測り方に潜む見落としやすい落とし穴を確認します。

接待の有無で当てはまる号が変わってしまうのですね。

はい、接待の有無は営業の実態を見て判断します。
次は面積の測り方の落とし穴を見ていきましょう。

面積を測るときに見落としやすい落とし穴はどこか

建物の平面図と客席エリアにメジャーを当てるイラスト
第五号は一つの号の中に基準が二つ入っているため、面積の集計を誤りやすい構造になっています。
実務でつまずきやすい点を整理しておきましょう。
建築基準法別表第二(と)項第五号(再掲) 劇場、映画館、演芸場若しくは観覧場のうち客席の部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のもの又はナイトクラブその他これに類する用途で政令で定めるものに供する建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のもの
客席部分だけを測る劇場等と、用途全体を測るナイトクラブ等を同じ感覚で計算すると数値を取り違えます
劇場等では客席以外(ロビー・通路・事務室・映写室等)を面積に含めて計算してしまうと、実際より過大に見積もる誤りが起きます。
逆にナイトクラブ等では、ダンスフロアだけを測って客席や厨房部分を除外してしまうと、過小に見積もる誤りが起きます。
また同一の建築物に複数の用途が混在する場合、それぞれの用途ごとに対象部分を切り分けて別々に集計する必要があります。
図面上でどこまでが「客席」でどこからが「その他」なのかを、着工前に必ず切り分けておきましょう。

複合施設だと、用途ごとに別々に面積を数えないといけないのですね。

はい、用途ごとの対象部分で分けて数えます。
次は実務での確認手順を見ていきましょう。

準住居地域に出店する前に何を確認すればよいか

窓口カウンターで図面を確認する担当者のイラスト
ここまでの内容は新築だけでなく、既存の建物の用途変更にも関わってきます。
最後に、実務でどこを確認すればよいかを整理しましょう。
建築基準法第87条第2項 建築物(次項の建築物を除く。)の用途を変更する場合においては、第48条第1項から第14項までの規定並びに第51条、第60条の2第3項及び第68条の3第7項の規定並びに条例の規定を準用する。
第87条第2項により、既存の建物の用途を変更する場合にも第48条の各項の規定が準用されます
既存のテナントを劇場やナイトクラブに用途変更する計画も、この準用の対象になり得ます。
確認すべきは、用途の実態がダンス・飲食・接待のどれに当たるかと、対象部分の床面積が二百平方メートル未満に収まるかの2点です。
条件を満たせない場合は、特定行政庁への特例許可の申請が必要になります。
出店の相談を受けたときは、まず用途の実態と図面上の対象部分を切り分けるところから始めましょう。

用途変更のときも、新築と同じ基準がそのまま適用されるのですね。

はい、新築と同じ基準が準用されます。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q準住居地域には劇場や映画館を一切建てられませんか?
A建てられる場合があります。建築基準法別表第二(と)項第五号は、劇場・映画館・演芸場・観覧場のうち客席部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のものだけを建築禁止の対象にしており、それ未満であれば対象になりません。
Qロビーや事務室も含めて床面積を計算しますか?
A含めません。劇場・映画館・演芸場・観覧場については条文が「客席の部分」の床面積と定めているため、ロビーや通路、事務室、映写室などは計算に含まれません。
Qダンスをさせる飲食店は必ずナイトクラブに類する用途になりますか?
Aなりません。建築基準法施行令第百三十条の九の二が定めるのは客の接待をしない施設に限られており、接待を伴う施設はこの定義から除かれ、別表第二(り)項のキャバレー等の系統として扱われます。
Q既存の店舗を劇場に用途変更するときも同じ基準が適用されますか?
A適用されます。建築基準法第87条第2項により、用途を変更する場合にも第48条の各項の規定が準用されるため、既存の建物であっても客席部分の床面積が二百平方メートル以上になると建築禁止の対象になります。

まとめ

準住居地域では、建築基準法第48条第7項により別表第二(と)項に掲げる建築物は原則建築禁止です。
同項第五号は、劇場・映画館・演芸場・観覧場のうち客席部分の床面積の合計が二百平方メートル以上のものを建築禁止の対象にしています
ナイトクラブその他これに類する用途は、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートル以上で対象になります。
政令が定めるナイトクラブに類する用途は、客にダンスをさせかつ飲食をさせる営業のうち接待をしないものに限られます
接待を伴う施設はこの定義から除かれ、別表第二(り)項のキャバレー等の系統として扱われます。
客席部分だけを測る劇場等と、用途全体を測るナイトクラブ等では対象になる面積の範囲が異なります
既存の建物の用途変更にも第87条第2項により同じ基準が準用されます

相談してくれた方には客席の面積と用途の実態を確認するよう伝えてみます!

用途変更の計画も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第48条第7項・第87条第2項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法別表第二(と)項第五号(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法施行令第百三十条の九の二(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や特例許可の可否は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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