精神病院の病室では、消火器や自動火災報知設備の置き方が一般の病院と違うことがあります。
これは基準を無視しているのではなく、患者の特性を踏まえた特例の運用によるものです。
昭和50年、消防庁は精神病院の重症患者用病棟に向けて、消防用設備等の配置を柔軟にする通知を発出しました。
この記事では、どこまで緩和が認められ、実務で何を確認すべきかを解説します。
病院の防火管理をしているのですが、精神科病棟だけ消火器の置き方が違うと言われました。
なぜそうなっているのでしょうか。
それは精神病院に向けて認められた特例かもしれませんね。
患者さんの特性を踏まえて、消防庁が配置の緩和を示しているんですよ。
点検もきちんとしているのですが、この緩和は届出だけで自動的に使えるものなんでしょうか。
いいえ、そこは誤解されやすい点です。
自動適用ではなく、消防長・消防署長による特例の認定が前提になります。
- 昭和50年7月12日、消防庁は消防安第84号で精神病院の消防用設備等の設置に関する特例の留意点を通知しました
- 対象は精神病院のうち重症患者用の病棟又は病室に限られます
- 消火器はナースステーションに集中して設置でき、屋内消火栓の赤色灯火も省略できます
- この緩和は消防法施行令第32条による特例認定を受けてはじめて使えるものです
- 廊下や階段など規則第23条第5項が定める場所には、緩和後も煙感知器の設置義務が残ります
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目次
なぜ精神病院だけ特別な設置基準が示されたのか

そうした特殊な環境が、消防用設備の置き方にも影響しています。
精神病院の病棟では、患者が誤って設備に触れたり、破損させたりするおそれが一般の病院より高いとされています。
そのままの基準どおりに設置すると、かえって維持管理に支障が出る場合があります。
そこで消防庁は、消防法施行令第32条による特例の運用にあたっての留意点を、昭和50年に通知の形で示しました。
この通知はあくまで運用上の留意点であり、対象施設の基準が自動的に免除されるわけではありません。
格子窓がある病室なんて、あまり考えたことがありませんでした。
特殊な環境だからこそ、基準の当てはめ方も特別に示されているんです。
次は対象になる病棟を見てみましょう。
対象になるのはどんな病棟なのか

対象になる病棟は、通知の中で絞り込まれています。
既存の病院に対する特例基準(昭和50年7月10日 消防安第77号)は、令別表第一(6)項イの病院・診療所等を対象に、病室等の区分ごとの特例を示しています。
その中で精神病院の重症患者用病棟又は病室だけは、77号の一般的な特例に加えて、消防安第84号による追加の緩和が上乗せされる位置づけになっています。
一般病棟や外来部分、事務室等はこの84号の対象には含まれません。
自分の施設のどの病棟が「重症患者用」に当たるかは、病棟の運用実態から所轄消防署と確認する必要があります。
うちの精神科病棟は、たしか重症の患者さんが多い病棟だったと思います。
それなら対象になっている可能性がありますね。
所轄消防署に病棟の位置づけを確認してみましょう。
通知は消防用設備の何を認めているのか

ここでは実務で影響の大きいものを取り上げます。
消火器は、通常なら歩行距離20メートル以内ごとに分散して置く必要がありますが、この通知は能力単位の合計をそろえたうえでナースステーションに集中させることを認めています。
屋内消火栓は目印になる赤色灯火を省略でき、スプリンクラーは散水部分がむき出しの開放型ヘッドや、作動を知らせる自動警報装置の省略まで認められています。
自動火災報知設備の地区音響装置は手動操作でよく、避難器具は二方向避難とスプリンクラー・自動火災報知設備がそろっていれば設置そのものを省略できます。
どの項目も、ナースステーションに常駐する職員が状況を把握していることを前提にした緩和である点は共通しています。
集めてよいのは消火器だけかと思っていました。
スプリンクラーまで緩められるとは知りませんでした。
そうなんです。
ただし、どれもナースステーションの職員体制が機能していることが前提です。
特例のどこを見落としやすいのか

実務で見落とされやすい点を整理します。
この緩和は消防法施行令第32条の特例であり、消防長又は消防署長が個別に「著しく少ない」と認めてはじめて使えます。通知はその運用の留意点にすぎず、施設側の判断だけで緩和を適用してよいわけではありません。
2つ目は、緩和の範囲が病室等に限られる点です。廊下や階段、エレベーターの昇降路といった規則第23条第5項が定める場所には、この特例のあとも煙感知器の設置義務がそのまま残ります。
3つ目は、増築や用途変更、病棟の運用変更があったときです。認定は当時の建物・運用状況を前提にしたものなので、状況が変われば所轄消防署への再確認が必要になります。
「昔からこの配置で認められている」という理由だけで、確認を省略しないようにしてください。
うちの病棟も、いつからこの配置なのか正直よく分かっていません。
それなら一度、認定の記録が残っているか確認しておくと安心です。
次は具体的な確認の順番を見てみましょう。
明日から何を確認すればよいか

確認する順番を決めておくと、迷わず動けます。
対象になりそうな病棟について、令32条の特例認定を受けているかどうかを、所轄消防署との協議記録や認定書類で確かめてください。
記録が見つかったら、実際の消火器やスプリンクラーの配置が、認定当時の内容と食い違っていないかを点検してください。
病棟の運用(重症患者用かどうか)や建物の改修があった場合は、その都度所轄消防署へ相談し、認定内容を見直す必要がないか確認しましょう。
判断に迷う場合は、自己判断で配置を変えず、先に消防署の予防課へ相談することをおすすめします。
まずは認定の記録が残っているかどうかを探してみます。
それが一番の近道です。
気になる点があれば、所轄消防署にも相談してみてくださいね。
よくある質問
まとめ
認定の記録がないまま配置だけ真似するのは危険だと分かりました。
まずは所轄消防署に確認してみます!
それが一番大切です。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 精神病院の消防用設備等の設置(抄)(昭和50年7月12日 消防安第84号 消防庁安全救急課長)
- 既存の病院に対する消防用設備等の技術上の特例基準(昭和50年7月10日 消防安第77号)
- 消防法施行令第32条(特例による基準の緩和)・消防法施行規則第6条(消火器具の設置)・消防法施行規則第14条第1項第4号(スプリンクラー設備の自動警報装置)・消防法施行規則第23条第5項(自動火災報知設備の感知器)
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





