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工業地域の学校はなぜ原則建てられないのか|建築基準法別表第二(を)項第五号の規制を解説

工業地域の学校が建築できないことと幼保連携型認定こども園が対象外であることを解説するアイキャッチ画像

学校は、幼児や児童・生徒という多くの人が集まる施設です。
建築基準法別表第二(を)項は、工業地域に建ててはならない建築物を号ごとに列挙しています。
その中には、学校教育法上の学校も含まれています。
工業地域では、学校は用途そのものとして原則建築できません

工業地域の土地に幼稚園を建てたいという相談を受けたのですが、用途地域の制限に引っかかりますか。

実は工業地域には、学校を建てられないという建築基準法上のルールがあります。
まず条文で仕組みを確認しましょう。

工場ばかりの地域だから、子どもが通う施設は想定されていないということですか。

はい、別表第二(を)項第五号が、この規制を定めています。
順番に見ていきましょう。

この記事の結論
  • 工業地域では、建築基準法第48条第12項により別表第二(を)項に掲げる建築物は原則建てることができません。
  • 同項第五号は、学校教育法上の学校を名指しして建築を禁止しています
  • ただし条文は「学校(幼保連携型認定こども園を除く。)」と定め、幼保連携型認定こども園だけを対象外としています
  • 幼稚園型や保育所型など他の認定こども園は、もとになる施設が幼稚園保育所かで扱いが分かれます。
  • 例外的に建てる道は、特定行政庁の許可に限られます

工業地域では学校は建築禁止だが幼保連携型認定こども園だけは対象外であることをまとめた図解

工業地域で学校が原則建てられないのはなぜか

工場が並ぶ通りと学校の校舎建物に禁止マークが付いたイラスト
工業地域は、工場の操業を優先し、住環境や教育環境への配慮が薄い地域です。
建築基準法はこの趣旨に沿って、学校を名指しで規制しています。
建築基準法第48条第12項 工業地域内においては、別表第二(を)項に掲げる建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が工業の利便上又は公益上必要と認めて許可した場合においては、この限りでない。
建築基準法別表第二(を)項 工業地域内に建築してはならない建築物 五 学校(幼保連携型認定こども園を除く。)
条文は学校を、規模を問わず名指しで建築禁止の対象にしています
ホテルや旅館を定める第二号と同じく、面積を問わず一律に禁止される点が特徴です。
工業地域は工場の操業環境を優先し、幼児や児童・生徒という要保護性の高い人が集まる施設を想定していない地域だからです。
第48条第12項は工業地域の全般規定で、学校以外にも(を)項が列挙する複数の用途を同じ条項でまとめて禁止しています。
次は、この号がいう「学校」の中身を確認しましょう。

幼稚園も、この号でいう学校に含まれますか。

はい、学校教育法上の学校であれば含まれます。
次は学校の定義を見ていきましょう。

別表第二にいう「学校」とは具体的に何を指すのか

幼稚園建物と多層の校舎建物が並ぶイラスト
建築基準法そのものには、「学校」の定義がありません。
根拠を学校教育法にさかのぼって確認します。
学校教育法第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。
学校教育法第一条が列挙する9種類の施設が、そのまま「学校」として工業地域で建築禁止の対象になります
幼稚園から大学まで、校種を問わず一律に対象へ含まれる点が特徴です。
別表第二(を)項第五号は、この学校教育法上の学校をそのまま引用する形で規制対象を定めています。
反対に、学校教育法第一条に列挙されていない施設は、この号の「学校」には当たりません。
次は、学校のようで実は対象外となる代表例を確認しましょう。

幼稚園も学校教育法上の学校になるのですね。

はい、幼稚園も学校教育法第一条に列挙されています。
次は例外を見ていきましょう。

幼保連携型認定こども園はなぜこの「学校」から除かれるのか

小さな認定こども園の建物に許可マーク、学校の校舎建物に禁止マークが付いたイラスト
条文は「学校(幼保連携型認定こども園を除く。)」と、わざわざ除外を明記しています。
根拠を認定こども園法にさかのぼって確認します。
就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第2条第7項 この法律において「幼保連携型認定こども園」とは、(略)この法律の定めるところにより設置される施設をいう。
同法第26条第1項 学校教育法第五条、第六条本文、第七条、第九条、第十条、第八十一条第一項及び第百三十七条の規定は、幼保連携型認定こども園について準用する
幼保連携型認定こども園は、学校教育法第一条が列挙する学校のどれにも当たらない、独自の施設です
一方で認定こども園法第26条は、学校教育法の一部規定を幼保連携型認定こども園に準用すると定めています。
学校に準じた扱いを一部受けながらも学校教育法上の学校そのものではないため、別表第二はこの点を条文上はっきりさせる必要がありました。
その結果、幼保連携型認定こども園だけが(を)項第五号の「学校」から名指しで除かれています。
次は、他の種類の認定こども園がどう扱われるかを確認しましょう。

認定こども園という名前がついていれば、みんな対象外になるのですか。

いいえ、幼保連携型だけが対象外です。
次は他の種類を見ていきましょう。

幼稚園型や保育所型の認定こども園はどう扱われるのか

幼稚園型と保育所型の建物が並び片方に禁止マーク片方に許可マークが付いたイラスト
認定こども園には、幼保連携型のほかにも複数の種類があります。
種類によって、工業地域での扱いが分かれます。
就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第3条第1項(要旨) 幼稚園又は保育所等の設置者は、その設置する幼稚園又は保育所等について都道府県知事の認定を受けることができる。
児童福祉法第39条第1項 保育所は、保育を必要とする乳児・幼児を…保育を行うことを目的とする施設(…幼保連携型認定こども園を除く。)とする。
幼稚園型認定こども園は、もとの施設が学校教育法上の幼稚園のままなので、工業地域では建築できません
条例で定める認定の基準を満たしても、施設としての法的な位置づけは幼稚園のままだからです。
一方、保育所型や地方裁量型の一部は、もとの施設が児童福祉法上の児童福祉施設であり学校教育法上の学校に当たらないため、(を)項第五号の対象になりません。
同じ「認定こども園」という呼び方でも、もとになる施設の法的な性質で工業地域における可否が分かれます。
次は、実務でどこを確認すればよいかを見ていきましょう。

見た目が似ていても、もとの施設で結果が変わるのですね。

はい、もとの施設の種類を確認することが欠かせません。
次は明日からの動き方を確認しましょう。

明日からなにを確認すればよいのか

製図机の図面とチェックリストを持つ建物のイラスト
工業地域で学校や認定こども園の計画に関わるときは、早い段階での確認が欠かせません。
確認すべき点を整理します。
  • 計画地が工業地域か工業専用地域かを、都市計画図で必ず確認する
  • 建物が学校教育法上のどの学校(幼稚園から高等専門学校まで)に当たるかを確認する
  • 認定こども園であれば幼保連携型かどうかを、認定書や設置根拠で確認する
  • 幼保連携型でない場合は、もとの施設が幼稚園か保育所かを確認する
計画地の用途地域を確認することが、何よりも先に必要な作業です
都市計画図で工業地域か工業専用地域かを見極め、(を)項と(わ)項のどちらが適用されるかを判断します。
建物が学校教育法上の学校か、認定こども園であれば幼保連携型かどうかも、認定書や設置根拠から確認します。
建築が難しい場合は、幼保連携型への移行や特定行政庁への事前相談も選択肢に入れます。
相談を受けたら、まず用途地域と施設の種類の両方を切り分けて確認しましょう。

用途地域と施設の種類、まずその2点を確認します。

はい、その2点が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。

よくある質問

Q工業地域には学校や保育施設を一切建てられませんか?
Aそうとは限りません。建築基準法別表第二(を)項第五号が禁止するのは学校教育法上の学校で、幼保連携型認定こども園や保育所は禁止対象に含まれていません。
Q認可外保育施設もこの号の対象になりますか?
A学校教育法上の学校にも児童福祉法上の保育所にも当たらない施設であれば、この号の直接の対象にはなりません。ただし施設の実態によって判断が分かれるため、個別の確認が必要です。
Q工業専用地域でも同じように学校は禁止されますか?
A禁止されます。別表第二(わ)項第一号は(を)項に掲げるものをそのまま禁止対象にしており、学校も同じく建築できません。
Qどうしても工業地域に学校を建てたい場合はどうすればよいですか?
A建築基準法第48条第12項のただし書により、特定行政庁が工業の利便上又は公益上必要と認めて許可すれば建築できます。ただし利害関係者への意見聴取と建築審査会の同意が必要です。

まとめ

工業地域では、建築基準法第48条第12項により別表第二(を)項に掲げる建築物は原則建築禁止です。
同項第五号は、学校教育法上の学校を名指しして禁止しています
ただし条文は「学校(幼保連携型認定こども園を除く。)」と定め、幼保連携型認定こども園だけを対象外としています
幼保連携型認定こども園は認定こども園法独自の施設で、学校教育法の一部規定が準用されるにとどまります。
幼稚園型認定こども園は、もとの施設が学校教育法上の幼稚園のままなので工業地域では建築できません
もとの施設が児童福祉法上の保育所であるものは、(を)項第五号の対象になりません。
例外的に建てる道は、特定行政庁の許可に限られます

相談してくれた方には用途地域と施設の種類を確認するよう伝えてみます!

特定行政庁への相談も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法第48条第12項(e-Gov法令検索)
  • 建築基準法別表第二(を)項第五号・(わ)項第一号(e-Gov法令検索)
  • 学校教育法第一条(e-Gov法令検索)
  • 就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第2条第7項・第3条第1項・第26条第1項(e-Gov法令検索)
  • 児童福祉法第39条第1項(e-Gov法令検索)

※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や特例許可の可否は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。

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