工業地域は、工場の操業環境を優先し、住居系の用途をきびしく制限する地域です。
建築基準法別表第二(を)項は、この地域に建ててはならない建築物を号ごとに列挙しています。
その中には、宿泊施設であるホテルや旅館も含まれています。
工業地域では、ホテルや旅館は用途そのものとして原則建築できません
工業地域の土地に小さめのビジネスホテルを建てたいという相談を受けたのですが、用途地域の制限に引っかかりますか。
実は工業地域には、ホテルや旅館を建てられないという建築基準法上のルールがあります。
まず条文で仕組みを確認しましょう。
工場ばかりの地域だから、宿泊施設は想定されていないということですか。
はい、別表第二(を)項第二号が、この規制を定めています。
順番に見ていきましょう。
- 工業地域では、建築基準法第48条第12項により別表第二(を)項に掲げる建築物は原則建てることができません。
- 同項第二号は、用途を問わずホテル又は旅館そのものを名指しして建築を禁止しています。
- 現行の旅館業法は営業区分を「旅館・ホテル営業」に統合していますが、別表第二の条文は制定時の「ホテル又は旅館」という表記のままです。
- 共同住宅や寄宿舎、下宿は(を)項の禁止対象に含まれておらず、工業地域でも建築できます。
- 面積の上限ではなく用途そのものの禁止のため、建てる道は特定行政庁の許可に限られます。
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目次
工業地域でホテルや旅館が原則建てられないのはなぜか

建築基準法はこの趣旨に沿って、宿泊施設であるホテルや旅館を名指しで規制しています。
建築基準法別表第二(を)項 工業地域内に建築してはならない建築物 二 ホテル又は旅館
(へ)項や(と)項の店舗や劇場のように床面積で線引きする号とは違い、面積を問わず一律に禁止される点が特徴です。
工業地域は工場の操業環境を優先し、不特定多数が出入りする宿泊施設を想定していない地域だからです。
第48条第12項は工業地域の全般規定で、ホテルや旅館以外にも(を)項が列挙する複数の用途を同じ条項でまとめて禁止しています。
次は、この号がいう「ホテル又は旅館」の中身を確認しましょう。
規模の小さいビジネスホテルでも、この号の対象になりますか。
はい、面積を問わず対象になります。
次は用語の中身を見ていきましょう。
「ホテル又は旅館」とは何を指すのか

根拠を旅館業法にさかのぼって確認します。
これは平成30年の法改正で、それまで別々だったホテル営業と旅館営業を一本化した結果です。
一方、建築基準法別表第二(を)項第二号は「ホテル又は旅館」という、統合前の呼び方をそのまま残しています。
条文の文言が古いままでも、実務上は現行の旅館・ホテル営業に当たる施設が規制対象になると考えられます。
次は、同じ宿泊施設でも規制対象に含まれないものを確認しましょう。
法律の名前が変わっても、条文の言葉は昔のままなのですね。
はい、こうした条文どうしのずれは珍しくありません。
次は下宿の扱いを見ていきましょう。
下宿や寄宿舎は同じ扱いを受けるのか

そのすべてが、建築基準法上も同じ扱いを受けるわけではありません。
そのため工業地域では、これらの用途は建築基準法上禁止されず建てられます。
一方、より規制が厳しい工業専用地域の(わ)項第三号は、共同住宅・寄宿舎・下宿までまとめて禁止しています。
同じ「泊まる場所」でも、工業地域と工業専用地域とでは規制の範囲が異なります。
次は、それでもホテルや旅館を建てたいときの手続きを確認しましょう。
下宿なら工業地域でも建てられるのですね。
はい、(を)項には列挙されていません。
次は例外の手続きを見ていきましょう。
例外的に建てられる道はあるのか

それでも、建てる道が完全に閉ざされているわけではありません。
同条第15項 特定行政庁は、前各項のただし書の規定による許可をする場合においては、あらかじめ、その許可に利害関係を有する者の出頭を求めて公開により意見を聴取し、かつ、建築審査会の同意を得なければならない。
この許可には、利害関係者への公開の意見聴取と建築審査会の同意が必要です。
第48条第16項は一部の許可について意見聴取や同意を省略できる特則を定めていますが、対象は第1項から第7項までの許可に限られます。
工業地域(第12項)の許可にはこの省略規定が及ばず、必ず意見聴取と同意の両方を経る必要があります。
次は、実務上どこから確認を始めればよいかを見ていきましょう。
工業地域の許可は、省略できる手続きが無いのですね。
はい、必ず両方の手続きを経る必要があります。
次は明日からの動き方を確認しましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

確認すべき点を整理します。
- 計画地が工業地域か工業専用地域かを、都市計画図で必ず確認する
- 建物の用途が旅館業法上の旅館・ホテル営業に当たるかを、営業許可の区分で確認する
- 下宿や寄宿舎など、規制対象に含まれない用途への変更が可能かも合わせて検討する
- 建築が難しい場合は、早い段階で特定行政庁の建築指導担当課へ相談する
都市計画図で工業地域か工業専用地域かを見極め、(を)項と(わ)項のどちらが適用されるかを判断します。
建物の用途が旅館業法上の旅館・ホテル営業に当たるかどうかも、営業許可の区分から確認します。
建築が難しい場合は、下宿等への用途変更や特定行政庁への事前相談も選択肢に入れます。
相談を受けたら、まず用途地域と建物の用途の両方を切り分けて確認しましょう。
用途地域と建物の用途、まずその2点を確認します。
はい、その2点が出発点です。
次はよくある質問を見ていきましょう。
よくある質問
まとめ
相談してくれた方には用途地域と建物の用途を確認するよう伝えてみます!
特定行政庁への相談も含めて、㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 建築基準法第48条第12項・第15項・第16項(e-Gov法令検索)
- 建築基準法別表第二(を)項第二号・(わ)項第一号及び第三号(e-Gov法令検索)
- 旅館業法第2条第1項・第2項(e-Gov法令検索)
※本記事は公表されている法令に基づく一般的な解説です。該当性の判断や特例許可の可否は個別の内容によって異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁にご確認ください。





