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炭火焼き器の離隔距離はなぜ新たに決まったのか|木炭を使う厨房設備に加わった数値を解説

木炭を燃料とする炭火焼き器の離隔距離が対象火気省令別表第一に新設されたことを示すアイキャッチ

炭火焼き器の火力を強めたくて 壁ぎわに寄せて据えていませんか。
令和6年1月1日から 木炭を燃料とする炭火焼き器にも対象火気省令の別表に新しい離隔距離の数値が加わりました。
これまで厨房設備の別表には気体燃料のこんろやレンジの数値しかなく 炭火焼き器そのものの数値は載っていませんでした。
この記事では新しく決まった数値と、既存の炭火焼き器が見落としやすい点を解説します。

うちの炭火焼き器 前から同じ場所に据えてあるので 今さら測り直す必要はないですよね。

実は令和6年1月1日から 木炭を使う厨房設備にも新しい離隔距離の数値が加わりました。
据え付けた時期にかかわらず 一度確認しておくと安心です。

新しい数値というと 具体的に何センチ変わったのでしょうか。

対象火気省令の別表第一に 木炭を燃料とする炭火焼き器の行が新設されました。
不燃材料の壁かどうかで数字が変わります。

この記事の結論
  • 木炭を燃料とする炭火焼き器の離隔距離が、対象火気省令別表第一に新しく定められました。(消防予第306号)
  • 根拠となる通知は消防予第306号(令和5年5月31日)です。
  • 施行日は対象火気省令の一部改正部分について令和6年1月1日です。
  • 不燃材料以外の壁なら上方100センチメートル・側方前方後方各50センチメートルを保ちます。
  • 通知には蓄電池設備の経過措置は書かれていますが、厨房設備の経過措置は見当たりません。

炭火焼き器の離隔距離の見直しを検討部会の検討結果から新しい数値の追加と現地での実測まで順に示した図解

炭火焼き器の離隔距離はなぜ新たに決まったのか

炭火焼き器と検討部会の報告書を並べた図
厨房設備の離隔距離はもともと気体燃料のこんろやレンジを想定した数値でした。
木炭を使う炭火焼き器は 別表にその存在すら書かれていませんでした。
消防予第306号(令和5年5月31日 消防庁次長通知)第三 固体燃料を用いた火気設備の離隔距離の見直しに関する事項 1 厨房設備の離隔距離について
対象火気設備等の離隔距離を定めている対象火気省令別表第1に、新たに、固体燃料を用いた厨房設備の離隔距離を定めることとしたこと(新対象火気省令別表第1関係)。
炭火焼き器専用の数値がなかったことが見直しの理由です。
見直しは「火を使用する設備等の評価方法及び防火安全対策に関する検討部会」(部会長:松島均日本大学生産工学部特任教授)の検討結果を踏まえて行われました。
焼肉店や焼き鳥店のように木炭を燃料とする厨房設備は 従来の別表では気体燃料のこんろやレンジの延長で判断するしかありませんでした。
今回の改正で 木炭を燃料とする炭火焼き器という区分が別表第一に独立して加わりました。
数字が増えたのではなく これまで空欄だった場所に数字が入ったと考えてください。

うちは焼肉屋ではないので 関係ないと思っていました。

厨房設備で木炭を燃やす機器を使っていれば 業態を問わず対象になります。
まず自店の機器が該当するか確認してください。

焼肉店の炭火焼き器はどんな設備が対象になるのか

炭火焼き器とガス式レンジを並べて対象火気設備の区分を示した図
対象になる機器は 対象火気省令が種類ごとに決めています。
厨房設備はその中の一つの区分です。
対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令第3条
令第5条第1項各号列記以外の部分の総務省令で定めるものは、第1号から第13号までに掲げる設備から配管設備等を除いたもの及び第14号から第21号までに掲げる設備とする。(略)一 炉 二 ふろがま 三 温風暖房機 四 厨房設備 五 ボイラー 六 ストーブ(移動式のものを除く。)(略)
厨房設備は21種類ある対象火気設備等の一つです。
炭火焼き器は据え付けて使う設備なので厨房設備に区分され 持ち運べる調理用器具(同省令第18条が扱う対象火気器具等)とは別の基準がかかります。
別表第一では 厨房設備の欄が気体燃料と固体燃料に分かれ 固体燃料の欄に木炭を燃料とする炭火焼き器という項目が新設されました。
ガス式のこんろやレンジと同じ厨房設備でも 燃料の種類によって当てはめる行が変わります。
自店の炭火焼き器が木炭以外の燃料を使うものであれば 別の行に当てはまるので銘板や仕様書で燃料を確認してください。

ガスの厨房設備は前に確認したので 炭火焼き器は初めて知りました。

炭火焼き器は固体燃料の厨房設備として ガスのこんろとは別の行で数字が決まります。
行を間違えると距離も間違えるので気をつけてください。

炭火焼き器の離隔距離は何センチと決まったのか

炭火焼き器から上方と側方と前方と後方へ距離を示した図
新しく加わったのは 上方・側方・前方・後方の四つの数字です。
相手の面が不燃材料かどうかで二段階に分かれています。
対象火気省令別表第一 厨房設備 固体燃料 木炭を燃料とする炭火焼き器
不燃材料で仕上げをした部分以外に対しては、上方100センチメートル・側方50センチメートル・前方50センチメートル・後方50センチメートル。不燃材料で有効に仕上げをした部分に対しては、上方80センチメートル・側方30センチメートル・後方30センチメートルとする。
不燃材料の壁かどうかで距離が二段階に分かれます。
木材など不燃材料以外の面が相手なら 上方100センチメートル 側方・前方・後方はそれぞれ50センチメートルです。
壁や天井を不燃材料で有効に仕上げてあれば 上方80センチメートル 側方・後方はそれぞれ30センチメートルまで縮められます。
前方については不燃材料で仕上げた場合の数字は示されておらず 別表のその欄は空欄のままです。
同じ厨房設備でも ガス式の据置型レンジ(上方100センチメートル・側方前方後方各15センチメートル)と比べると 炭火焼き器のほうが広い空きを求められています。

炭火焼き器のほうが数字が大きいのは 火力が強いからでしょうか。

木炭は燃焼が長く続き 温度も上がりやすいため 気体燃料の機器より広い距離が求められています。
まずは四方向を実際に測ってみてください。

実務で見落としやすいのはどこか

工事中の厨房カウンターと稼働中の厨房カウンターを並べた図
今回の改正には 見落としやすい点が二つあります。
施行日と 経過措置の有無です。
消防予第306号(令和5年5月31日 消防庁次長通知)第五 施行期日等に関する事項
1 施行期日について
改正省令のうち規則の一部改正、改正告示6号、改正告示8号及び改正告示9号については公布の日、改正省令のうち対象火気省令の一部改正及び7号告示については令和6年1月1日から施行することとしたこと(略)。
2 経過措置について
新対象火気省令第3条第17号に規定する蓄電池設備に新たに該当することとなるもの(略)については、当該規定は、適用しないこととしたこと(略)。
施行日が公布日と半年以上ずれています。
規則そのものの改正や離隔距離の試験方法の特例は公布日から施行されましたが 別表第一を含む対象火気省令本体の改正は令和6年1月1日からと半年以上先に設定されました。
通知に書かれている経過措置は蓄電池設備に新たに該当するものに限られており 木炭を燃料とする炭火焼き器についての経過措置は本文中に見当たりません。
つまり 施行日より前から炭火焼き器を使っていた店舗でも 施行日以降は新しい数値に照らして確認される可能性があります。
また 実際に取り締まりの根拠となるのは対象火気省令そのものではなく これに準じて市町村が定める火災予防条例です。条例への反映時期は自治体ごとに異なるため 所轄消防署への確認を省略しないでください。

前から使っている炭火焼き器なので 見直さなくてもよいと思っていました。

通知に書かれている経過措置は蓄電池設備だけで 厨房設備には触れられていません。
設置時期にかかわらず一度測っておくと安心です。

明日からなにを確認すればよいのか

巻尺で炭火焼き器と壁の間を測る様子
やることは 対象の確認と実測です。
条文は距離のほかに管理の努力義務も定めています。
消防法施行令第5条第1項第11号
対象火気設備等については、必要な点検及び整備を行い、その周囲の整理及び清掃に努める等適切な管理を行うこと
測るのは四つの向きすべてです。
まず自店の炭火焼き器が木炭を燃料とするものかどうかを確認し 別の燃料であれば別の行に当てはめます。
次に周囲の壁と天井が不燃材料で有効に仕上げてあるかを図面や内装工事の記録で確認し 上方・側方・前方・後方の四方向を実際に測ります。
数値を満たしていない場合は 焼き網の位置や排煙フードの高さを見直す前に まず所轄消防署へ相談してください。
自治体の火災予防条例への反映状況と施行日を合わせて確認しておくと 立入検査でも落ち着いて説明できます。

うちの炭火焼き器 まず四方向を測ってみます。

木炭を使う厨房設備かどうかの確認から始めてください。
不燃材料の仕上げが分かる書類があれば準備しておくとスムーズです。

よくある質問

Q練炭を使う焼き器も同じ数値になりますか?
A今回新設されたのは木炭を燃料とする炭火焼き器の行です。練炭やガスを熱源とする疑似炭火式の機器は同じ行に当てはまらない可能性があるため、機器の仕様書で燃料の種類を確認してください。
Q施行日より前から炭火焼き器を使っている場合はどうなりますか?
A通知に書かれている経過措置は蓄電池設備に新たに該当するものに限られており、厨房設備についての経過措置は見当たりません。設置時期にかかわらず、施行日以降は新しい数値に照らして確認しておくことをおすすめします。
Q対象火気省令の数値がそのまま自分の店に適用されますか?
A対象火気省令は市町村が定める火災予防条例の基準となるものです。実際に適用されるのは各市町村の条例であり、反映時期や細目が条例ごとに異なることがあるため、所轄消防署に確認してください。
Q前方の距離が示されていないのはなぜですか?
A通知や別表の本文に理由は書かれていません。不燃材料で仕上げた場合の前方の数値は示されておらず、対応する欄は空欄のままです。気になる場合は所轄消防署に確認してください。

まとめ

木炭を燃料とする炭火焼き器の離隔距離が、対象火気省令別表第一に新しく定められました
根拠は消防予第306号(令和5年5月31日消防庁次長通知)です
施行日は対象火気省令の一部改正部分について令和6年1月1日です
不燃材料以外の壁なら上方100センチメートル・側方前方後方各50センチメートルです
不燃材料で有効に仕上げてあれば上方80センチメートル・側方後方各30センチメートルまで縮められます
通知に書かれた経過措置は蓄電池設備だけで厨房設備には見当たりません
迷ったら機器の燃料と壁の仕上げを確認して所轄消防署に相談します

炭火焼き器も 別表第一の新しい行で数字を確認できるとわかりました。
今日のうちに四方向を測ってみます。

木炭を燃料とする炭火焼き器は令和6年1月1日から新しい数値が適用されます
㈱防災屋でもご相談を承っております。

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監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 消防予第306号(令和5年5月31日 消防庁次長通知)「消防法施行規則及び対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令の一部を改正する省令等の公布等について」第三・第五
  • 対象火気設備等の位置、構造及び管理並びに対象火気器具等の取扱いに関する条例の制定に関する基準を定める省令(平成14年総務省令第24号)第3条・第5条・別表第一
  • 消防法施行令第5条(対象火気設備等の位置、構造及び管理に関する条例の基準)

※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。

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