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排煙機に必要な排煙風量はどんな基準で決まるのか|居室から特別避難階段や地下街まで解説

排煙機の排煙風量はどう決まるのか|排煙口を確認する女性検査員

排煙機は「動けば良い」わけではなく、防煙区画の床面積や設置場所に応じて具体的な排煙風量の数値基準が定められています。
建築基準法施行令第126条の3第1項第九号は居室等の排煙機について、特別避難階段の付室や非常用エレベーターの乗降ロビーには別の告示が、地下街の地下道にはさらに別の告示が数値を定めています。
設置場所によって基準が枝分かれしているため、報告書の数値がどの基準にもとづくものか分からないまま検査してしまうケースも少なくありません。
今回は東京都建築設備定期検査報告実務マニュアルの判定事例をもとに、排煙機に求められる排煙風量の基準を設置場所別に5つ整理して解説します。

排煙機の風量って、どこも同じ基準だと思っていました。

実は設置場所によって求められる数値がまったく違います
今回は居室から地下街まで順番に確認していきましょう。

うちはテナントビルなので、特別避難階段の排煙機もあります。

それなら1秒間に4立方メートルという基準が関わってきます。
詳しく見ていきます。

この記事の結論
  • 居室等に設ける排煙機は、防煙区画の床面積に応じて1分間に120立方メートル以上の排煙能力が必要です。
  • 2以上の防煙区画にかかる排煙機は、最大区画の床面積を基準に必要風量の係数が引き上げられます
  • 特別避難階段の階段室又は付室に設ける排煙機は1秒間に4立方メートル以上の空気を排出する能力が必要です。
  • 非常用エレベーターの乗降ロビーも同じ基準に従い、付室と兼用する場合は1秒間に6立方メートル以上に引き上げられます
  • 地下街の地下道に設ける排煙機は1秒間に5立方メートルまたは10立方メートル以上という、さらに大きな数値が求められます。

排煙機に必要な排煙風量を居室から地下街まで設置場所別に示す図解

居室等に設ける排煙機はどれだけの排煙風量が必要なのか

防煙区画の床面積から必要な排煙風量を計算する女性検査員
排煙機は防煙区画の床面積に応じて、具体的な数値で能力が定められています。
検査ではこの数値が実際に確保されているかを確認します。
検査項目 居室等に設ける排煙機の排煙風量は、どのような基準で確認するか。
判定基準 建築基準法施行令第126条の3第1項第九号の規定に適合しないこと、すなわち一の排煙口の開放に伴い自動的に作動し、かつ、1分間に120立方メートル以上で、防煙区画部分の床面積1平方メートルにつき1立方メートル(2以上の防煙区画部分に係る排煙機にあっては、床面積が最大の防煙区画部分の床面積1平方メートルにつき2立方メートル)以上の空気を排出する能力を有することが求められる。(検査方法:排煙風量の測定データにより確認する。)
排煙機の能力は、防煙区画の床面積で決まる計算式で示されます。
1つの防煙区画だけを受け持つ排煙機は、1分間に120立方メートル以上、かつ床面積1平方メートルあたり1立方メートル以上の空気を排出できなければなりません。
2つ以上の防煙区画を1台の排煙機で受け持つ場合は、そのうち床面積が最大の区画を基準に係数が2倍に引き上げられます。
平成12年建設省告示第1436号第一号ホを適用する大空間の排煙機には、これとは別に500立方メートル毎分以上という特例の数値が定められている場合があります。
検査では現地での実測ではなく、建築確認図書に記載された排煙風量が施工どおり確保されているかを、測定データや資料で確認します。

うちの排煙機、防煙区画がいくつあるのか把握していません。

図面で防煙区画の数と面積を確認すれば、必要な風量が逆算できます。

特別避難階段の階段室又は付室に設ける排煙機はどんな能力が必要なのか

特別避難階段の付室で排煙機の排出能力を確認する男性検査員
特別避難階段の付室は、避難する人が煙を吸わずに階段へたどり着くための空間です。
ここに設ける排煙機には、居室用とは別の数値基準があります。
検査項目 特別避難階段の階段室又は付室に設ける排煙機の排煙風量は、どのような基準で確認するか。
判定基準 平成28年国土交通省告示第696号第三号ロの規定に適合しないこと、すなわち排煙口の一の開放に伴い自動的に作動し、かつ、1秒間に4立方メートル以上の空気を排出する能力を有することが求められる。(検査方法:排煙風量の測定データにより確認する。)
付室の排煙機は、居室の排煙機とはまったく別の数値で規定されています。
建築基準法施行令第123条第3項第二号にもとづく平成28年国土交通省告示第696号は、特別避難階段の付室に設ける排煙機について1秒間に4立方メートル以上の空気を排出する能力を求めています。
これは秒あたりの数値なので、分あたりに換算すると240立方メートル毎分以上に相当します。
居室等の排煙機が防煙区画の床面積で数値が変わるのに対し、付室の排煙機は床面積にかかわらずこの数値が固定で求められる点が異なります。
検査では排煙口の開放に連動して自動的に作動するかもあわせて確認します。

240立方メートルって言われても、多いのか少ないのかピンと来ません。

居室用の基準よりかなり大きな数値です。
避難路を守るための余裕とお考えください。

非常用エレベーターの乗降ロビーに設ける排煙機はどんな能力が必要なのか

非常用エレベーターの乗降ロビーで排煙機の風量を確認する女性検査員
非常用エレベーターの乗降ロビーも、火災時に消防隊が活動する重要な空間です。
この乗降ロビーの排煙機は、付室の基準を読み替えて適用します。
検査項目 非常用エレベーターの乗降ロビーに設ける排煙機の排煙風量は、どのような基準で確認するか。
判定基準 平成28年国土交通省告示第697号は、特別避難階段の付室に関する同第696号の規定を「付室」を「乗降ロビー」と読み替えて準用する。すなわち1秒間に4立方メートル以上(乗降ロビーが特別避難階段の付室を兼用する場合は1秒間に6立方メートル以上)の空気を排出する能力を有しないことが要是正の判断基準となる。(検査方法:排煙風量の測定データにより確認する。)
乗降ロビー単独の基準は、付室と同じ1秒間に4立方メートル以上です。
建築基準法施行令第129条の13の3第13項にもとづく平成28年国土交通省告示第697号は、告示第696号の「付室」を「乗降ロビー」に読み替えて準用しており、数値そのものは共通しています。
ただし乗降ロビーが特別避難階段の付室を兼用している場合は、開口面積や風道の断面積とあわせて排煙機の能力も1秒間に6立方メートル以上(360立方メートル毎分以上)に引き上げられます。
兼用しているかどうかは図面と現地の双方で確認し、該当する場合は取り違えないよう注意が必要です。

兼用かどうかで数値が変わるなんて、知りませんでした。

図面に「付室兼用」と書かれているかを最初に確認してください。

地下街の地下道に設ける排煙機はどんな能力が必要なのか

地下街の地下道で排煙機の排出能力を確認する男性検査員
地下街の地下道は地上への出口が限られるため、排煙機にも特に大きな能力が求められます。
ここでは専用の告示が、居室や付室とは異なる数値を定めています。
検査項目 地下街の地下道に設ける排煙機の排煙風量は、どのような基準で確認するか。
判定基準 昭和44年建設省告示第1730号の規定に適合しないこと、すなわち排煙口の一の開放に伴い自動的に作動し、かつ、1秒間に5立方メートル以上(一の排煙機が2以上の防煙区画部分に係る場合は10立方メートル以上)の室内空気を排出する能力を有することが求められる。ただし排煙口が当該防煙区画部分の床面積の50分の1以上の開口面積を有し、かつ直接外気に接する場合はこの限りでない。(検査方法:排煙風量の測定データにより確認する。)
地下道の排煙機は、これまでの基準の中でも最大級の数値です。
昭和44年建設省告示第1730号は、地下街の各構えに接する地下道について、1つの防煙区画だけを受け持つ排煙機には1秒間に5立方メートル以上(300立方メートル毎分以上)、2つ以上の防煙区画を受け持つ排煙機には1秒間に10立方メートル以上(600立方メートル毎分以上)の能力を求めています。
ただし排煙口が防煙区画の床面積の50分の1以上の開口面積を持ち、かつ直接外気に接している場合は、この排煙機の基準そのものが適用されません。
地下道は300平方メートル以内ごとに垂れ壁等で防煙区画を分ける仕組みなので、区画の数と排煙機の対応関係を図面で確認することが判定の第一歩になります。

地下道の排煙機って、そんなに大きな能力が必要なんですね。

地上への出口が限られる分、数値も厳しく設定されています。

排煙風量が不足しているときはどう判定するのか

排煙風量の測定データを建築確認図書と照合する女性検査員
数値そのものを覚えるだけでなく、なぜ不足が起きるのかを知っておくと判定がスムーズになります。
検査では実測値と設計上の必要風量を突き合わせて確認します。
検査項目 排煙風量が規定の数値に対して不足している場合、どのような点に注意して判定するか。
判定基準 東京都建築設備定期検査報告実務マニュアルの判定事例は、建築完了検査後に防煙区画の拡大・縮小を伴う内装改修が行われ、排煙設備の改修が伴っていない場合に排煙機の送風量が規定風量に対し過不足になっていることがあると注意を促している。国土交通大臣の認定や区画避難安全検証等が適用された特殊な構造の排煙設備は、排煙風量が建物固有の数値となるため、建築確認図書や防災計画書等の資料により確認する。
風量不足の多くは、建築後の改修に排煙設備が追いついていないことが原因です。
テナント入替え等で間仕切りを動かし防煙区画の面積が変わったにもかかわらず、排煙機の能力を見直していないケースが典型例です。
また国土交通大臣の認定を受けた排煙設備や、区画避難安全検証・階避難安全検証・全館避難安全検証が適用された建物の排煙機は建物固有の必要風量となり、ここまで紹介してきた一律の計算式では算出できません。
このような建物では、排煙風量が記載された建築確認図書等の資料を定期検査報告書に添付することが求められており、検査ではまずこの資料の有無を確認します。
資料が無い、あるいは資料と現況が食い違う場合は、実測データだけで判断せず、設計者や特定行政庁への確認を促す対応が必要です。

テナントが入れ替わるたびに、排煙のことまでは考えていませんでした。

内装を変えるときは防煙区画の面積も一緒に確認してください。

よくある質問

Q排煙機の排煙風量は、防煙区画の面積さえ分かれば誰でも計算できますか?
A基本的な計算式は施行令第126条の3第1項第九号に定められていますが、大臣認定や避難安全検証を適用した建物では建物固有の数値になるため、計算式ではなく建築確認図書等の資料で確認する必要があります。
Q特別避難階段の付室と非常用エレベーターの乗降ロビーの基準は、なぜ同じ数値なのですか?
A平成28年国土交通省告示第697号が、特別避難階段の付室を定める告示第696号の規定を「付室」を「乗降ロビー」に読み替えて準用しているためです。両者は避難時の煙の侵入を防ぐという同じ目的を持つ空間として扱われています。
Q地下街の地下道で排煙機の基準が適用されないのはどんな場合ですか?
A排煙口が防煙区画の床面積の50分の1以上の開口面積を持ち、かつ直接外気に接している場合です。この場合は自然排煙で足りるとみなされ、排煙機による数値基準そのものが適用されません。
Q排煙風量の数値が基準を満たしているかは、どうやって確認すればよいですか?
A検査では排煙風量の測定データを報告書に添付する必要があります。大臣認定等が適用された建物では実測ではなく、排煙風量が記載された建築確認図書や防災計画書等の資料で確認します。

まとめ

居室等に設ける排煙機は、防煙区画の床面積に応じて1分間に120立方メートル以上の能力が必要です。
2以上の防煙区画にかかる排煙機は、最大区画の床面積を基準に係数が引き上げられます
特別避難階段の階段室又は付室に設ける排煙機は1秒間に4立方メートル以上の能力が必要です。
非常用エレベーターの乗降ロビーも同じ基準に従い、付室を兼用する場合は1秒間に6立方メートル以上に引き上げられます
地下街の地下道に設ける排煙機は1秒間に5立方メートルまたは10立方メートル以上という数値が求められます。
大臣認定や避難安全検証が適用された建物は建物固有の数値となり、建築確認図書等の資料で確認します。
これらは建築基準法施行令第126条の3・第123条・第129条の13の3と関連告示にもとづく基準です。

排煙機の風量にも場所ごとの基準があるとは知りませんでした。
図面をもう一度見直してみます!

数値の根拠が分かると判定に自信が持てます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。

防火管理はプロにお任せ下さい

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お問い合わせ

監修・編集者
青木 俊輔
青木 俊輔

㈱防災屋 代表取締役/消防設備士

平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!

本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。

詳しい経歴・保有資格を見る
学歴
  • 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
  • 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
  • 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
保有資格
  • 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
  • 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
  • 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
  • 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
  • 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
  • eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了

趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)

主な活動

参考・出典

  • 建築基準法施行令第123条第3項第二号、第126条の3第1項第九号、第129条の13の3第13項
  • 平成12年建設省告示第1436号「火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分を定める件」第一号ホ
  • 平成28年国土交通省告示第696号「特別避難階段の階段室又は付室の構造方法を定める件」
  • 平成28年国土交通省告示第697号「非常用エレベーターの昇降路又は乗降ロビーの構造方法を定める件」
  • 昭和44年建設省告示第1730号「地下街に設ける非常用の照明設備、排煙設備及び排水設備の構造方法を定める件」

※本記事は公表されている法令および東京都建築設備定期検査報告実務マニュアルの判定事例に基づく一般的な解説です。条例や運用は特定行政庁ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄の特定行政庁または建築設備等検査員にご確認ください。

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