廊下や階段の出入口を点検すると、誘導灯はあるのに誘導標識が見当たらない建物に出会うことがあります。
消防法施行令は避難口誘導灯・通路誘導灯・誘導標識のすべてに設置基準を定めていますが、実はこの3つを常に揃える必要はありません。
誘導灯を技術上の基準どおりに設置した部分については、誘導標識を設置しなくてよい場合が定められているのです。
どこまでが省略でき、どこからが省略できないのかを、消防法施行令と施行規則の条文にもとづいて解説します。
うちのビル、誘導灯は付いているんですが誘導標識が見当たらない場所があります。
これって設置漏れじゃないでしょうか。
実は消防法施行令第26条第3項に、誘導灯を設置すれば誘導標識を省略できるという規定があるんです。
じゃあうちの誘導灯もその条件に当てはまるかもしれないってことですね。
ただし誘導灯が届く範囲にだけ効く話です。
順番に確認していきましょう。
- 避難口誘導灯・通路誘導灯を技術基準どおりに設置すれば誘導標識を省略できます(消防法施行令第26条第3項)
- 省略できるのは誘導灯の有効範囲内の部分だけです
- 有効範囲は誘導灯までの歩行距離で決まります
- 有効範囲の外側の廊下や部分には誘導標識の設置義務が残ります
- 省略の判定は防火対象物全体ではなく部分ごとに行います
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目次
誘導標識はなぜすべての防火対象物に必要なのか

消防法施行令は防火対象物の用途や部分ごとに、この3つの設置義務を分けて定めています。
根拠は消防法施行令第26条第1項第四号で、別表第一(1)項から(16)項までの防火対象物が対象です。
基準は同条第2項第五号に定められ、緑色の標識を多数の者の目に触れやすい箇所に設けることが求められます。
一方、避難口誘導灯・通路誘導灯は同項第一号・第二号により、地階・無窓階・十一階以上の部分など一部の防火対象物に限って義務づけられています。
この先は誘導灯と誘導標識の設置義務がどう重なるのかを見ていきます。
誘導標識ってうちのビルにも必ず要るものなんでしょうか。
ほとんどの防火対象物で設置義務があります。
まず対象を確認しましょう。
誘導灯を設置すれば誘導標識は本当に不要になるのか

避難口誘導灯・通路誘導灯をきちんと設置している部分では、標識を重ねて設ける必要が無いという考え方です。
条件は避難口誘導灯又は通路誘導灯を、令第26条第2項の技術上の基準どおり、またはその例により設置していることです。
省略できるのは誘導標識そのものであって、誘導灯の設置義務が免除されるわけではありません。
また効果が及ぶのは誘導灯の有効範囲内の部分に限られ、条文上も「有効範囲内の部分について」と明記されています。
次は、この有効範囲がどうやって決まるのかを確認します。
誘導灯さえ付いていれば、建物のどこでも標識は要らなくなるということですか。
いいえ、誘導灯が届く範囲だけの話です。
次で範囲の決め方を見ましょう。
誘導灯の有効範囲はどうやって決まるのか

誘導灯の等級(A級・B級・C級)によって範囲の広さも変わります。
避難口誘導灯はA級で60メートル・B級で30メートル・C級で15メートルが目安です(避難の方向を示すシンボルがあると距離は短くなります)。
通路誘導灯はA級20メートル・B級15メートル・C級10メートルで、表示面の縦寸法が大きい等級ほど範囲が広くなります。
条文にはこのほか、表示面の縦寸法から距離を算出する計算式も定められています。
誘導灯の等級を確認しないと、有効範囲がどこまで届くかは決められません。
うちの誘導灯、A級なのかB級なのか正直分かりません。
本体の銘板に等級の表示があります。
点検記録にも残っているはずです。
有効範囲の外側はどう扱えばよいのか

範囲の外側にまで避難経路が続く場合は、扱いが変わります。
条文が省略を認めているのは「有効範囲内の部分について」だけで、範囲外の部分まで免除する規定ではありません。
長い廊下や折れ曲がった通路では、1つの誘導灯だけで全体をカバーできないことがあります。
その場合は、範囲の切れ目に誘導標識を設けるか、通路誘導灯を追加して有効範囲をつなぐ必要があります。
図面上で歩行距離を測らずに「誘導灯があるから大丈夫」と判断すると、この境目を見落とします。
うちは廊下が長いので、途中で範囲が切れていないか心配になってきました。
歩行距離を図面で実測すれば分かります。
次で確認の手順を見ましょう。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に、そもそもの設置義務がどこから来ているかもおさえておきましょう。
次に誘導灯までの歩行距離を図面で測り、有効範囲が廊下のどこまで届くかを把握します。
有効範囲の外側に誘導標識が無い部分があれば、標識の追加設置が必要になります。
自己判断で誘導標識を撤去・省略せず、所轄消防署に確認してから進めてください。
自己判断で標識を外さなくてよかったです。
まず歩行距離を測ってみます!
範囲の切れ目を見落とすと違反になるので、必ず確認してから進めてください。
よくある質問
まとめ
誘導灯がある場所と、標識が必要な場所の境目がはっきり分かりました。
まずうちの廊下の歩行距離から測ってみます。
境目の見落としは早めの確認で防げます。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 消防法第17条
- 消防法施行令第26条
- 消防法施行規則第28条の3
- e-Gov 法令検索
※本記事は公表されている法令および消防庁等の資料に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





