電気自動車の量産ラインでは、完成した車載用リチウムイオン蓄電池を一時的に工場の建屋内へ置く場面があります。
実はこの置き方、鋼板製の筐体で覆われた車載用電池であれば、一定の条件を満たすことで危険物の指定数量の合算に含めなくてよいと消防庁が示しているのをご存知でしょうか。
では、その条件を1つでも外すとどうなるのでしょうか。
本記事では令和5年7月7日付け消防危第214号を取り上げ、車載用リチウムイオン蓄電池がなぜ製造工程での一時保管に限り指定数量の合算から外れるのか、その条件と実務での注意点を解説します。
車の電池を工場の中に置いても大丈夫なんですか。
危険物の量が増えてしまいそうですが。
実は3つの条件を満たせば合算しなくてよいと決められています。
順番に見ていきましょう。
条件を外したらどうなるんでしょうか。
実は他の危険物と合算されて指定数量以上になることがあります。
その境目を見てみましょう。
- 電気自動車の製造等に伴い一時的に建築物内に置く必要がある車載用リチウムイオン蓄電池は、3つの条件を満たせば指定数量の合算に含めなくてよいとされています。
- 対象は鋼板製の筐体で覆われ、含有する危険物の量が指定数量未満、充電率が30パーセントを超えないものに限られます。
- 蓄電池どうしの間隔、建築物の壁・天井との間隔、他の可燃物との離隔も同時に満たす必要があります。
- 蓄電池を置く建築物は、壁及び天井の室内に面する部分を不燃材料で仕上げる必要があります。
- 条件を1つでも外れると、他の危険物と合算されて指定数量以上の危険物施設として扱われる可能性があります。
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目次
車載用リチウムイオン蓄電池はなぜ指定数量の通知が出たのか

台数が増えるほど、その電池が持つ危険物の量も無視できなくなってきます。
そのままの取扱いでは、置いた台数ぶんだけ危険物の量が合算され、思わぬうちに危険物施設としての許可が必要な水準に達しかねません。
そこで消防庁は、一定の条件を満たす車載用電池に限り、この合算から外してよいという運用を示しました。
では、その条件を満たす電池とはどんなものなのでしょうか。
実験結果をもとに決まったんですね。
どんな電池でもこの扱いを受けられるんでしょうか。
実は対象になる電池には3つの条件があります。
次はその中身を見てみましょう。
どの車載用リチウムイオン蓄電池が対象になるのか

条文を確認しましょう。
3つとも満たして初めて、この通知の対象になります。
さらに大前提として、電気自動車の製造等に伴い一時的に建築物内に置く必要がある場合という場面そのものに限られており、長期間の保管を想定した規定ではありません。
対象が確定したところで、次はどう置けばよいのかという貯蔵方法を見ていきます。
充電率30パーセントというのは低めなんですね。
置き方にも決まりがあるんでしょうか。
実は間隔にも細かい数値が決められています。
次はその中身を見てみましょう。
貯蔵方法はどんな間隔を求めているのか

条文で数値を確認しましょう。
複数台を並べるときは、水平方向と鉛直方向で必要な間隔が違う点に注意してください。
他の可燃物との間も、延焼を防ぐための十分な離隔が求められます。
実はこの間隔、置き方だけの話ではなく建築物そのものにも条件が及びます。
間隔さえ空ければ、どの建物に置いてもよいんでしょうか。
実は建築物の仕上げにも条件があります。
見落としやすい点を見ていきましょう。
実務で見落としやすいのはどこか

条文を確認しましょう。
さらに、車載用リチウムイオン蓄電池には似た名前の通知がほかに2つある点も見落としやすいポイントです。
耐火性のある布で覆って貯蔵する方法を定めた通知や、キュービクル式の蓄電池設備を対象にした通知は、それぞれ条件も数値もこの通知とは別に決められています。
布で覆う方法の条件に該当する電池や、既存のキュービクル式通知の条件に該当する電池には、この通知ではなくそちらの通知の運用が適用されます。
充電率30パーセントという数字も、屋内貯蔵所の基準にある60パーセントと混同しないよう注意が必要です。
似た通知が3つもあるとは思いませんでした。
実際に何を確認すればよいでしょうか。
確認するポイントを整理しましょう。
次で具体的に見ていきます。
明日からなにを確認すればよいのか

最後に、この通知が対象とする場面をもう一度確認しておきます。
次に、蓄電池どうしの間隔(水平640ミリメートル・鉛直2,000ミリメートル)、壁との間隔(400ミリメートル)、天井との間隔(2,000ミリメートル)を実際に測って記録しておきましょう。
建物側は、壁と天井の室内側が不燃材料で仕上げられているかを確認します。
布で覆う方法やキュービクル式の蓄電池設備が別にある場合は、どちらの通知の条件に該当するかを切り分けてから記録に残すことが実務上のポイントです。
間隔の実測、さっそくやってみます。
条件の実測と記録が一番の備えです。
次によくある質問をまとめます。
よくある質問
まとめ
条件さえ満たせば合算しなくてよいと分かりました!
今度は自社の置き方を確認してみます。
条件の実測と記録が一番の備えになります。
㈱防災屋でもご相談を承っております。
㈱防災屋 代表取締役/消防設備士
平成元年生まれ、三重県鈴鹿市出身。祖父が創業した消防設備業者で10年間勤務した後、独立・起業。現在は青木マーケ㈱、㈱防災屋、(一社)予防団の運営に携わる。Amazonベストセラー1位『改訂版 消防設備士0類』著者。月刊誌「電気と工事(オーム社)」でコラム連載中!
本記事の消防法令、消防用設備等の技術情報および記述内容を監修・編集しています。
詳しい経歴・保有資格を見る
- 鈴鹿工業高等専門学校 材料工学科 卒
- 静岡大学工学部物質工学科 材料科学コース 卒
- 静岡大学大学院工学研究科物質工学専攻 修了
- 消防設備士:甲種特類、甲種1~5類、乙種6・7類
- 危険物取扱者:甲種、乙種1~6類、丙種
- 防火対象物点検資格者/防災管理点検資格者/甲種防火管理者
- 第二種電気工事士/工事担任者(総合通信)/第三種電気主任技術者
- 自家用発電設備専門技術者/特種電気工事資格者/職長・安全衛生責任者
- eco検定/民泊適正管理主任者/フォークリフト運転技能講習 修了
趣味:ギター、バスケットボール(全国高専大会優勝・キャプテン)
参考・出典
- 鋼板製の筐体で覆われる車載用リチウムイオン蓄電池に係る指定数量について(令和5年7月7日付け消防危第214号 消防庁危険物保安室長)
- 消防法(昭和二十三年法律第百八十六号)第十一条の四
※本記事は公表されている法令および消防庁の通知に基づく一般的な解説です。条例や運用は市町村ごとに異なる場合があります。個別の判断は所轄消防署にご確認ください。





